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第二世界 ドデルヘン(まったり学園生活もいいもんだ)
第三十七話 ここは何処?
しおりを挟む二度の人生を通して生まれて初めてのキス。三十何がし年もの間、大事に守ってきた俺の唇がとうとう奪われる時が来てしまった。
接吻の感触。それは長く想像していたのとはちょっと違った。まず初めに感じたのは冷んやりとした感触。エルフって人族よりも体温が低いのかな。でも冷たいのもまた心地よい。それに俺の唇で温めてやるから構わないのだ。
そして案外固かった。少しザラザラするかな? 冬は乾いて唇が乾燥するとか学生時代に女子が良く言ってたもんなあ。
一旦唇を離すが、すぐに再び口づけをした。俺は情熱的なのだ。コツコツと硬い音がした……。
あれ? やっぱりなんか変じゃない?
おい、ルシア? 俺は瞑っていた目蓋を持ち上げる。あれ? 俺はこれでもかと目を開く。しかし――。
光が全く存在しない闇だった。
えっ!? どういうこと?
ま、ま、ま、まさか!?
長い間、目を開いていたけど、やはり何も見えなかった。はぁ……。これは認めるしかないか。どうやら転生してしまったようだ。なんてことだ。人生の春が訪れたと思ったのに。まさかの未遂に終わっただと。
あまりのショックに暫く立ち直れなかった……。
コンコンコン……。
何か音が聞こえた気がして我に返る。
あれ? もしかしていつのまにか寝ていた? ここ暖かいし、なんかすぐに眠くなるんだよね。
しかし相変わらず闇が続いている。一体ここは何処なんだ。昼の存在しない世界に来てしまったのだろうか。しかも世界が狭すぎる。なんせ俺の体一個分しかないんだ。
そして未練たらしくまた思い出してしまった。畜生、ルシアとの接吻を邪魔しやがって! 舌いれたかったのに! この恨みは一生忘れないぞ。俺の一生なんてすぐに終わるけどな!
怒りに任せて狭い世界に頭突きする。なんか頭以外はあまり上手に動かないのだ。
ピキピキピキという音がした。俺の頭の割れる音じゃないぞ。世界の境界から僅かに光が漏れ出していた。おお!? もしかして外があるのか!
その後は、とにかく頭突きしまくった。
うっ、なんかクラクラしてきた。そろそろ止めないと頭が悪くなりそうだ。そう思い始めていたとき、ついに闇の世界の壁が崩れ落ちた。
うおっ、眩しい! 突き刺す光線に暫くの間まともに目が開けられなかった。
ふむ、どうやら俺は閉じ込められていたようだ。見上げた先には濃紺の空が広がっていた。ここは何処だ? 周りはごつごつとした岩壁? 吹き抜けの洞窟? 頭がクエスチョンマークで一杯だ。
そんな俺の視界が突然、白一色で覆われた。 これは雲じゃないよな。あれ? なんかどっかで見たようなシルエットだ。
そう、それは巨大な白竜だった。
「おお、我が子よ! ついに生まれたのね!」
俺を見下ろす竜がそう吠えた。誰に言ってるの? 回りを見回すけど誰もいない。割れた卵が傍に転がっていた。えええっ!?
まさかの竜に転生ですか!? 爬虫類人生ですか!?
あまりの事実に打ちのめされていた。その間にどこからか洞窟に侵入者が飛び込んで来た。全身青づくめの装備を身に纏った人間だった。
なんだ? 若そうな青年だな。冒険者一人で竜を討伐しに来たのか!? おい、無茶は止めろ! それとも相当の手練れなのか? まさかいきなり勇者と遭遇?
あれ……。でもこの場合、俺は人間に味方しても殺されるだけでは? 俺どうやら赤ちゃん竜だし。視界に端に映る自分の腕や足が完全に爬虫類なのはだいぶ前から気づいていた。ただ認めなくなかったのだ。
よし、白龍さん、やってしまいなさい! 勇者だろうが賢者だろうが食い殺してやるのだ。
つーか、さっきからいっさい声が出ねーし! そんなことしてる間に冒険者風の男は俺の元へと駆け寄って来た。やばい殺される!?
しかし、その男は俺をすっと抱え上げた。糞っ、竜の子供を攫って売る方だったか! 俺みたいに愛らしい竜だと宝にしかみえないのだろう。
おい、ママン!? なにぼーっと見てるのよ! 愛しの我が子を助けてくれよ!
「おぉぉぉおお!?」
目の前で男が目を見開いて絶叫する。なにこいつ超怖い。
「なんて愛らしいんだ! 待望の子がついに生まれたのだな! しかも男の子か! ああ、我が息子よ!」
えっ? どういうこと? オレ、竜。オマエ、人間。そのサイズでうちのママンと性交できるとはとうてい思えんが……。馬並みならぬ、竜並みって奴ですか?
「おおっ!? 急に名が閃いたぞ! カイトだ! カイト=ブランド。お前は今日からその名で生きるが良い!」
「カイト……。いい名ですね」
白竜がぐわっと大きな口を開ける。いやはや牙が立派ですね。絶対にママンには逆らえない。
「ホワイティでかした!」
「これで一安心です。卵を産んでもこれまでは孵化せずに死んでしまってばかりで……。ずっと心配でしたの」
「ああ、百年かかったな。苦労した甲斐があったじゃないか」
あなた達はいったい何歳なのでしょうか? とりあえず鑑定してみる。あ、父親も竜だった。スキルを見ると二人とも人化のスキルを有していた。なるほどね。いや、正直少し安心したよ。このまま馬鹿でかい爬虫類人生を送らないといけないかと思ってたよ。
ママンが人化していなかったのは、俺の卵を温めていたのだろう。
おお、そうだ! 大事な事を思い出した。持ち越しはちゃんとできているんだろうな。まずはアイテムから……。
『赤竜の涙』『赤竜の鱗』『闇竜の鱗』『闇竜の牙』
以上四点。それしかなかった。そうだった。ほとんど無限収納に入れていたのだ。あそこに入れていたものは持ってこれないのを忘れていた。竜グッズはどうせ暫く使わないだろうとアタッシュケースに投げ込んでいたのだ。いきなりあんなことになったので準備する暇がなかったのだ。まあ、いまさら後悔しても仕方ない。次回は気をつけよう。
気を取り直して、スキルをチェックすることにした。
『異世界言語』『鑑定(10)』『隠蔽(10)』『武術中級(10/10)』『交渉術(5)』『馬術初級(2/5)』『算術上級(20/20)』『飛翔術初級(3/5)』『無病息災』『成長促進』『経験値増加(2)』『闇魔法超級(1/20)』『スキル鑑定』『無限収納(低)』『異世界アタッシュケース(中)』『魔法吸収初級(3/5)』『和食創造』『神器破壊』『炎纏闘術』『即死回避』『白竜の加護』『次元回廊(眷属世界)』
ふむ、改めて見ると結構な量のスキルだな。どこかでスキル統合とか起きることを願おう。その方がなにかと都合が良いはずだ。
しかし、今回の世界では出番が無さそうなものもあるな。まず、『馬術』。竜が馬になんて乗るのだろうか……。そして、『飛翔術』……。いや、自分の翼で飛べるし。
ああ、やはり十二神の加護はなくなったか。これで魔法は闇魔法だけになってしまった。無くなって初めて神の有難さが身に染みる。
そして見慣れないものがあった。『白竜の加護』。これはおそらくママンが白竜だからだろう。鑑定すると要はHPの自動回復のようだ。しかも周りの仲間にも僅かにだが効果があるようだ。ちなみにパパンは青竜だったが、それにちなんだスキルは見当たらない。つかえねー奴。『人化』はまだ覚えてないようだ。残念。
問題は『次元回廊』。これはなんざんしょ? 俺はスキルを鑑定する。
その時、聞き覚えのある憎たらしい声が俺の頭に響いた――。
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