異世界 de ソウルコレクター

白水 翔太

文字の大きさ
41 / 72
第二世界 ドデルヘン(まったり学園生活もいいもんだ)

第三十八話 次元回廊

しおりを挟む
『主様、その名の通りでございます』

 突然の声に驚いた俺はキョロキョロと当たりを見回す。だが、両親以外の誰も見当たらなかった。なんだ気のせいか。気のせいに違いない。

『いえいえ、その世界にわたくしめは存在しておりませんで』

 頭に直接響いた。それは聞き覚えあるが、あえて聞きたいとは思わない嫌味ったらしい声だ。思い当たる奴は一人しかいない。ただ認めたくなかった。

『主様、失礼ですが考えていることがダダ漏れですよ』

 ちっ! それよりも、なんで別世界のお前の声が俺に聞こえるんだよ。

『主様のスキルの賜物でございます』

 次元回廊か……。このスキルの効果は?

『その名の通り世界と世界を繋ぐものでございます』

 次元の狭間はどこにも見えないけどな。まあいい。このスキルがあれば別世界の者との会話が可能ということか?

『いえ、それはごく一部の機能でございます。それを使えば、主様の今いらっしゃる世界とわたくしめのいる世界。その間の行き来が思いのままに可能でございます』

 えぇぇえええ!? マジかよ! そんな話聞いてねーよ!

『ええ、ご説明しておりませんでしたので』

 ふざけるな! 俺が魔王を倒すまでの間、どんだけ悩んだと思っているんだ! お前と会ったのはかなり早いタイミングだっただろ! これまで葛藤してきた時を返せ!

若人わこうどは悩むだけ悩むがいいのです』

 そういうことじゃないだろ! 俺はもう二度とルシア達に会えないと思って……。

『では、今からこちらにお呼びしましょうか?』

 なに!? ちょ! 待て待て待て待て待て!

『どうかしたのですか?』

 どうしたもこうしたもあるか!? 俺はルシアにいつか必ず戻って来ると言ったんだ。

『ですから、戻って来ればよいのでは?』

 あそこまで引っ張ったんだぞ。直ぐに「やぁ、ただいま!」なんて軽いノリで行けるか馬鹿野郎!?

『僭越ではございますが、主様それは間違っております」

 なにがだよ! どう考えても「はあ?」ってなるに決まってるだろ!

「いえ、まだルシア様たちは屋敷に戻ってきておりません。ですからこの場合は「お帰りなさい」とお迎えするのが正しいかと』

 そういう話をしてるんじゃねえんだよ!

『そうそう、失念しておりました』

 あ?

『精神がそちらの体に定着するまで。つまり、二年ほどは世界間の移動はできません。わたくしめを通しての連絡なら可能ではございますが」

 この糞野郎! お前、俺をおちょくっていやがるだろ!

『まさか! わたくしめも最近歳でして。直ぐに大事な事を忘れてしまうのですよ。いやはや寄る年波には勝てません。フフフフ……』

 絶対にわざとだコイツ。

『それに、わたくしめは申し上げました。これからもずっと主様のお力になることを誓います、と」

 あれはそういうことだったのか。要するに、こいつの手の平の上でもて遊ばれていたってことか。
はぁ……。なんかもう疲れたよ。

 ん? ということは、一度渡った世界は全て自由に回れるようになるってことなのか?

『その限りではありません。一つだけ条件がございます』

 それは?

『その世界で眷属をつくる必要があります』

 眷属ねえ……。して、眷属の定義は?

『そうですね。少なくとも亜神級以上の存在を隷属しなければなりません』

 亜神の上って神様しかいなくね? ハードルがたけーな。そうするとコールマンは少なくとも亜神級以上ということか……。まあ、創造神ミヤロスの実の兄貴だしな。明らかに魔王よりも強そうだし。

『まあ、主様のことですから運命が引き合わせてくれるかと』

 そうか……。もしかしてお前さ、この世界の事もよく知っているんじゃないのか?

『いえ、さすがに万能なわたくしめでもそこまでは……』

 いま何気に自分は凄いぞアピールしなかったか? あ、そうだ。もう一つ聞きたいことがある。

『はい、なんでございましょう?』

 そっちの世界に移動すると俺の姿はどうなるんだ? まさか竜だったりするのか? そしたら誰も俺だってわからないぞ。これは事前に確認しておくべき重要な事だな。

『ところで主様、ご両親が心配していますよ?』

 いいから質問に答えやがれ!

「ねえ、あなた……。この子、さっきからピクリとも動かなくなったけど大丈夫かしら」
「ああ……。我らの呼びかけにも一切反応しないな。医者に連れて行った方がいいかもしれん」

 あ、両親が俺をガン見していた。脳内会話をしていて全然気づかなかったよ。くっ! コールマン! とりあえずまた今度だ。お前を呼び出したいときはどうすればいいんだ?

『次元回廊のスキルを鑑定すれば良いだけです。それでは良き竜生を……」

 執事が胸に手をあて、流麗にお辞儀する姿が目に浮かぶ。正直、ルシアの待っている世界と連絡がとれるのは凄く嬉しい。でも、あいつはそれをわかっているのだ。絶対に俯いて口角を吊り上げているはずだ。畜生め。だいたい眷属なら眷属らしく主に報告すべきだろうが。全然忠実じゃねえぞあいつ。

「どうしましょう! カイトがプルプルと震え出したわ」
「ま、不味いな! やはりなんかの病気かもしれない! 急いで医者に連れて行くぞ!」

 病院の一室で、俺はついにこの世界での産声をあげる。

「ギャァアア!?」

「あ、あなた!? やっとこの子が鳴きましたわ!」
「ああ、元気な鳴き声だ。これも先生のお蔭です」

「いやいやいや。儂の力というよりもこれの力じゃな。景気づけにもう一本いっておこうか」

「ギャァアアア!?」

(あはははは!)
(あの竜の子、おもしろいね~)
(泣いてるのに鳴いてるだって、きゃはははは)
(アンコール! アンコール!)

「ふむ、なぜかもう一本いかないと駄目なような気がしてきた)

 そういって、医者は太い筒を俺へと近づける。

「グァッ! グァツ!」

(いけいけGO!GO!)
(竜の子、ファイト―!)
(いっぽーん!)

「グギャァアアア!?」

 こうして俺は正常なのに竜用のブットイ注射を合計三本も尻尾に打たれる羽目にあった。人間でいえば尻の穴に直接注射針を刺すような感じだ。気絶するほど痛かった……。

 妖精たちは腹を抱えて笑い転げていた。この恨みはらさでおくべきか。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~

仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。  そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。   しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。   ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。   武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」  登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。   これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...