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第三世界 メルカド(金こそ全てだ!)
第六十三話 お約束?
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「あ、カイ兄だー!」
長い廊下の向こう。トテトテと兎耳娘が走ってきて俺に抱きついた。
「お、いい匂いがするな」
フローラルな香りだ。
「えへへへー。アーちゃんと一緒にお風呂入ってたのー」
「チカ! 淑女が無暗に男性に抱き着いたら駄目よ!」
「カイ兄だもんー」
言い訳になってない言い訳をするチカ。ガウンを羽織るアルタはため息をついていた。彼女も風呂上りのせいか上気した顔だ。おお、胸元がエロい。
「ちょ! どこ見ているのよ!」
「胸に決まってるだろ!」
「開き直らないでよ!」
うーん、やっぱり少し酔っぱらているようだ。欲望に忠実に胸をガン見してしまう。
「カイ兄ー! アーちゃんの凄いんだよー。お風呂に浮くのー」
「何いってるのよ!? ほら、カイトも風呂に入って早く寝なさい! 明日は朝早いのよ」
「朝市楽しみ―」
「ああそうだな」
お休みと挨拶して二人と別れる。ちっ……。お約束の展開を逃したようだ。
「おお! さすが伯爵邸、いや伯爵城の風呂だな!」
馬鹿でかい浴槽。中央でライオンが大きな口を開けていた。当然ながらその口からは勢いよくお湯が流れ出ている。小さいマーライオンみたいだ。いや、本場も実際は世界の残念スポットとか言われてるけどさ。
俺は体に清潔の魔法をかけ浴槽に入る。ごめんなさい。風呂場にまで物騒な刀を持参してしまいました。だってそうしないと生活魔法すら使えないし。でも裸に刀を想像してみて欲しい。どうみても危ない人だよね……。
「ひいっ!?」
ほら、怖がってるでしょ。って誰?
「あれ? パドも入っていたのか」
「な、な、なんでカイトが入ってくるのさ!?」
浴槽に深く身を沈め、隅っこに後ずさる。パドの所作は所々女っぽいんだよな。中性的な顔でそれをやらないで欲しい。俺が変質者みたいじゃないか。
「いやあ、酔いを冷ますには風呂だろ。おぉぅ……。この湯温ちょうどいいな!」
「鍵をかけてたはずのに……」
はて、そんなのされてたっけ?
「ああ、なんか扉が少しガタついていたような気がしたけど」
爺ちゃんの田舎は東北の片田舎だった。寂れた家でさ、隙間風も多かったんだよね。あそこの風呂場の扉も同じような感じだったのだ。だから気にせず少し力を込めて横に引いただけだ。まあ、なんか変な破片が飛んだけど。気にしちゃまけだよね。
「あいかわらず馬鹿力だね……」
「だいたい風呂はみんなでわいわいと入るほーが楽しいだろうが」
「僕は一人でしか入ったことないよ! ダンジョンの温泉は別だけど……」
「領主様のご子息は贅沢ですのー」
「ちゃかさないでよ!」
「いやいや、パドがまさか伯爵家のご子息様だとはな。庶民だとばっかり思ってたわ」
「失礼だね。家名がついているんだから少なくとも貴族じゃないか」
いや、日本にいるとさ、普通にみんな苗字あるし。だからあまりそういう風に考えないんだよね。
「でも良い街じゃないか。優しい父親と母親。パドは幸せ者だな」
「う、うん……。でもやっぱり欲深い人はいるよ。領主の地位だって決して安泰じゃないんだ」
「ふーん。そんなもんなのかね。無縁な俺にはそういうのは良くわからないな」
「いや、カイトはすでに領主だからね」
まあそうなんだけどさ。俺の場合はナノルーフと代官に任せきりだからな。今度自分の領地にも行ってみようかな。
でもなんとなくわかる。ここの臣下にも俺の事を快く思わない輩もいたようだし。人の数だけ欲望があるのだろう。
風呂に浸かりながら、港町アーリアのことをパドに教えてもらう。主に料理や食材についてだけどね。
「ふう、体も解れたことだし俺は先にあがるぞ。パドはまだ上がらないのか?」
「う、うん……。もう少しだけ温まっていく」
「なんだよ。お前も意外と風呂好きなんだな」
入部する前はあんなこと言ってたが実は興味があったのだろう。俺は浴槽からあがり脱衣所へと向かう。あー、この世界で唯一の不満は冷たい炭酸が飲めないことだ。風呂上りに特にその思いが強くなる。スカッとしたいよね。
バシャン――。
ん? 大きな水音に俺は背後を振り返る。パドがうつ伏せ状態で湯に浮いていた。
「おい! 何やってるんだよ!」
パドを抱きかかえて浴槽の床に寝かす。顔が真っ赤だ。湯に浸かり過ぎてのぼせたのだろう。これはすぐに涼しい場所に移さないと駄目だな。脱衣所の外に運ばないと。
ぷにっ――。
「ふへっ?」
パドを再び抱え上げようとして、俺は肩に手を伸ばしたはずだが……。
ぷにぷに――。
目測を誤ったようで左手が別のものに触れてしまった。なにこれ気持ちいい。
ぷにぷにぷに。
「ァ……ゥ……」
手に吸いつくようなこの感触、なんか病みつきになるかも。はて、なんだろ。俺は左手に視線を移す。
「えぇぇええええ!?」
横たわる純白な肢体が赤味を帯びている。上せているからだろう。それはまあいいだろう。問題は俺の左手が肩から逸れて別の部分に触れていたのだ。そこには小ぶりだが確かな丘が存在する。俺の手の平にすっぽりと収まるジャストサイズ。頭頂部には確かにつぶらな薄紅色のポッチも……。
「男なのになんでパイパイが!?」
恐る恐る男子たる象徴へと目を向ける――。
「ぶほっ!?」
ついてない! ついてないよ! 毛の一本すら生えてないよ!
「なんで!? どうして!? へ!? ふひっ!? は!?」
「ゥ…ゥ……ゥ………」
「あああっ!? そ、そうだ! と、と、と、とにかく涼しい場所に移さないと、と、と!」
俺はパドを抱え上げ、なるべく下を見ないように脱衣所へ運ぶ。今見たらヤバい。絶対ヤバい! 犯罪者になるのはまだ早い。いや、これからもなるつもりはないけど。
「くっ、これは拷問か……」
ぐったりとしたパドを脱衣所によしかけ服を着せていく。見てはならない。でも見ないと服をうまく着せれないのだ。なにこの白くて長い布……。ああ、そうかそういうことか。どうやらパドは胸にさらしを巻いていたようだ。なんでそんなことを。
「くぅっ、こいつは男だ、男だ、男だ……」
無理やり思い込み何とか服を着せることに成功した。端から見たら少女に悪戯する犯罪者でしかないよな。良かった誰も来なくて。
「うん、こうみるとどう見ても男じゃないか!」
「ゥ…ゥ……」
いや、可愛いかも……。どうみても美少女だ。一度意識するともう男には見えなかった。ていうか初対面からして僕っ娘だと思ってたし!
お姫様抱っこして俺は長い廊下を歩く。そういえばこれするの何度目だろう。途中、メイドさんを見つけたのでパドの部屋まで案内してもらった。
「おそらく軽い湯当たりだ。窓をあけ涼しくしてやってくれ」
「湯当たりですか。そうですか……。畏まりました」
メイドが訝し気にこちらを見る。俺は目を逸らしてそそくさと自室へと戻った。
「ふう……。なんかめちゃくちゃ疲れたぞ」
ベッドに腰を下ろして考える。なんてことだ。あいつ女のくせになんで男として振る舞っているんだ。そういえば、あいつはいつもトイレで着替えをしてたな。肌に虐待された痣とかあるのかと思ってたよ。
ああそうか、だからいつも俺がシャワー浴びた後とか怒ってたのか。上半身裸で暑い暑いと手で扇いでいると林檎のように顔を赤らめて叱ってくるんだよね。早く服を着ろって。
美少女に上半身を見せつける俺……。完全に変態じゃん。
コンコンコン――。
部屋の扉が叩かれた。誰だよこんな時間に? オレ今日はさすがにもう寝たい。
コンコンコン――。
「一体誰だよこんな時間に!」
「ブ、ブランド卿! や、夜分遅くに誠に申し訳ございません。閣下が少しだけお話になりたいと……」
「あ? あ、ああ……。わかった」
何の用だろう。なんかとっても嫌な予感がする。
「申し訳ないね。こんな遅くに」
通されたのは領主の執務室のようだ。例の老齢の執事風の男性が傍らに控えていた。身辺警護もこの人が兼ねているのだろうか。
「いえいえ、それで話っていうのは?」
「いや、どうもうちのパドが先ほど具合が悪くなって倒れたと聞いてな」
ギクッ――。という音が聞こえた気がした。まずいやばいぞこの展開は危険。
「ああ、そうみたいだな」
「それでバロン、なんだったかな?」
バロンと呼ばれた執事が領主の言葉を引き継ぐ。
「ええ、どうやらパド様はお風呂で湯当たりをされましたようで、そこのブランド卿に部屋まで運んで頂いたそうです」
「ほう……」
領主様の目が怪しく光った。
「つかぬことを聞くが、ブランド卿はうちのパドと一緒に風呂に入るような仲なのですかな?」
「は? いや全然。まったく。なんか脱衣所を出た辺りでさ、パドがグッタリと廊下に横たわっていたんだよ」
「それで?」
「顔は上気してたからな。涼しい場所に移そうと思ってたらちょうどメイドさんに会ったんだよ。だから自室まで運んであげたってわけさ。それにそもそも男同志で風呂に入るのって普通じゃないのか? 貴族は違うのかい? もしかして同性愛者じゃないと入らないのか?」
「そうではないが……。バロン?」
「さて、判断がつきませぬな」
「そんなことを確認するために俺を呼びつけたのか?」
少し不機嫌そうに声を荒げてみた。
「い、いやそういうわけじゃない。卿は美食家だと聞いてな。おい、バロン」
「こちらにこの街の美食スポットが掲載されております。明日以降の散策にお役立ていただければ幸いでございます。明日も朝早いと聞いておりました故、夜分になってしまいました」
「ああなるほどね。いやいや親切にどうも」
「短い滞在だけど、我が街を楽しんでもらえると嬉しいよ」
「ありがとう。では失礼しますね」
「あ、ブランド卿」
「な、なに?」
部屋を出ようとしたら再び声をかけられた。おい、なんだよバレたのか。
「どうか、これからもパドと仲良くしてやって欲しい」
「ああもちろんだ」
領主と執事が頭を下げるなか、そそくさと執務室を後にする。やっべぇぇえ。マジ危なかった。もしパドが女の子だと知っていたらどうする気だったのだろう。闇夜に紛れて暗殺されたらどうしよう。
あーもうほんと色々と面倒臭い。早く寝て、街で買い物してさっさと学園に帰りたい――。
「あ、カイト……。ノックしても返事ないから寝たかと思ってた……」
部屋の扉の前でパドが待ち構えていました。両手には大きな枕を抱えている。顔を赤らめもじもじと俺を見あげる。
ちょ、勘弁してくれぇぇえええ!
長い廊下の向こう。トテトテと兎耳娘が走ってきて俺に抱きついた。
「お、いい匂いがするな」
フローラルな香りだ。
「えへへへー。アーちゃんと一緒にお風呂入ってたのー」
「チカ! 淑女が無暗に男性に抱き着いたら駄目よ!」
「カイ兄だもんー」
言い訳になってない言い訳をするチカ。ガウンを羽織るアルタはため息をついていた。彼女も風呂上りのせいか上気した顔だ。おお、胸元がエロい。
「ちょ! どこ見ているのよ!」
「胸に決まってるだろ!」
「開き直らないでよ!」
うーん、やっぱり少し酔っぱらているようだ。欲望に忠実に胸をガン見してしまう。
「カイ兄ー! アーちゃんの凄いんだよー。お風呂に浮くのー」
「何いってるのよ!? ほら、カイトも風呂に入って早く寝なさい! 明日は朝早いのよ」
「朝市楽しみ―」
「ああそうだな」
お休みと挨拶して二人と別れる。ちっ……。お約束の展開を逃したようだ。
「おお! さすが伯爵邸、いや伯爵城の風呂だな!」
馬鹿でかい浴槽。中央でライオンが大きな口を開けていた。当然ながらその口からは勢いよくお湯が流れ出ている。小さいマーライオンみたいだ。いや、本場も実際は世界の残念スポットとか言われてるけどさ。
俺は体に清潔の魔法をかけ浴槽に入る。ごめんなさい。風呂場にまで物騒な刀を持参してしまいました。だってそうしないと生活魔法すら使えないし。でも裸に刀を想像してみて欲しい。どうみても危ない人だよね……。
「ひいっ!?」
ほら、怖がってるでしょ。って誰?
「あれ? パドも入っていたのか」
「な、な、なんでカイトが入ってくるのさ!?」
浴槽に深く身を沈め、隅っこに後ずさる。パドの所作は所々女っぽいんだよな。中性的な顔でそれをやらないで欲しい。俺が変質者みたいじゃないか。
「いやあ、酔いを冷ますには風呂だろ。おぉぅ……。この湯温ちょうどいいな!」
「鍵をかけてたはずのに……」
はて、そんなのされてたっけ?
「ああ、なんか扉が少しガタついていたような気がしたけど」
爺ちゃんの田舎は東北の片田舎だった。寂れた家でさ、隙間風も多かったんだよね。あそこの風呂場の扉も同じような感じだったのだ。だから気にせず少し力を込めて横に引いただけだ。まあ、なんか変な破片が飛んだけど。気にしちゃまけだよね。
「あいかわらず馬鹿力だね……」
「だいたい風呂はみんなでわいわいと入るほーが楽しいだろうが」
「僕は一人でしか入ったことないよ! ダンジョンの温泉は別だけど……」
「領主様のご子息は贅沢ですのー」
「ちゃかさないでよ!」
「いやいや、パドがまさか伯爵家のご子息様だとはな。庶民だとばっかり思ってたわ」
「失礼だね。家名がついているんだから少なくとも貴族じゃないか」
いや、日本にいるとさ、普通にみんな苗字あるし。だからあまりそういう風に考えないんだよね。
「でも良い街じゃないか。優しい父親と母親。パドは幸せ者だな」
「う、うん……。でもやっぱり欲深い人はいるよ。領主の地位だって決して安泰じゃないんだ」
「ふーん。そんなもんなのかね。無縁な俺にはそういうのは良くわからないな」
「いや、カイトはすでに領主だからね」
まあそうなんだけどさ。俺の場合はナノルーフと代官に任せきりだからな。今度自分の領地にも行ってみようかな。
でもなんとなくわかる。ここの臣下にも俺の事を快く思わない輩もいたようだし。人の数だけ欲望があるのだろう。
風呂に浸かりながら、港町アーリアのことをパドに教えてもらう。主に料理や食材についてだけどね。
「ふう、体も解れたことだし俺は先にあがるぞ。パドはまだ上がらないのか?」
「う、うん……。もう少しだけ温まっていく」
「なんだよ。お前も意外と風呂好きなんだな」
入部する前はあんなこと言ってたが実は興味があったのだろう。俺は浴槽からあがり脱衣所へと向かう。あー、この世界で唯一の不満は冷たい炭酸が飲めないことだ。風呂上りに特にその思いが強くなる。スカッとしたいよね。
バシャン――。
ん? 大きな水音に俺は背後を振り返る。パドがうつ伏せ状態で湯に浮いていた。
「おい! 何やってるんだよ!」
パドを抱きかかえて浴槽の床に寝かす。顔が真っ赤だ。湯に浸かり過ぎてのぼせたのだろう。これはすぐに涼しい場所に移さないと駄目だな。脱衣所の外に運ばないと。
ぷにっ――。
「ふへっ?」
パドを再び抱え上げようとして、俺は肩に手を伸ばしたはずだが……。
ぷにぷに――。
目測を誤ったようで左手が別のものに触れてしまった。なにこれ気持ちいい。
ぷにぷにぷに。
「ァ……ゥ……」
手に吸いつくようなこの感触、なんか病みつきになるかも。はて、なんだろ。俺は左手に視線を移す。
「えぇぇええええ!?」
横たわる純白な肢体が赤味を帯びている。上せているからだろう。それはまあいいだろう。問題は俺の左手が肩から逸れて別の部分に触れていたのだ。そこには小ぶりだが確かな丘が存在する。俺の手の平にすっぽりと収まるジャストサイズ。頭頂部には確かにつぶらな薄紅色のポッチも……。
「男なのになんでパイパイが!?」
恐る恐る男子たる象徴へと目を向ける――。
「ぶほっ!?」
ついてない! ついてないよ! 毛の一本すら生えてないよ!
「なんで!? どうして!? へ!? ふひっ!? は!?」
「ゥ…ゥ……ゥ………」
「あああっ!? そ、そうだ! と、と、と、とにかく涼しい場所に移さないと、と、と!」
俺はパドを抱え上げ、なるべく下を見ないように脱衣所へ運ぶ。今見たらヤバい。絶対ヤバい! 犯罪者になるのはまだ早い。いや、これからもなるつもりはないけど。
「くっ、これは拷問か……」
ぐったりとしたパドを脱衣所によしかけ服を着せていく。見てはならない。でも見ないと服をうまく着せれないのだ。なにこの白くて長い布……。ああ、そうかそういうことか。どうやらパドは胸にさらしを巻いていたようだ。なんでそんなことを。
「くぅっ、こいつは男だ、男だ、男だ……」
無理やり思い込み何とか服を着せることに成功した。端から見たら少女に悪戯する犯罪者でしかないよな。良かった誰も来なくて。
「うん、こうみるとどう見ても男じゃないか!」
「ゥ…ゥ……」
いや、可愛いかも……。どうみても美少女だ。一度意識するともう男には見えなかった。ていうか初対面からして僕っ娘だと思ってたし!
お姫様抱っこして俺は長い廊下を歩く。そういえばこれするの何度目だろう。途中、メイドさんを見つけたのでパドの部屋まで案内してもらった。
「おそらく軽い湯当たりだ。窓をあけ涼しくしてやってくれ」
「湯当たりですか。そうですか……。畏まりました」
メイドが訝し気にこちらを見る。俺は目を逸らしてそそくさと自室へと戻った。
「ふう……。なんかめちゃくちゃ疲れたぞ」
ベッドに腰を下ろして考える。なんてことだ。あいつ女のくせになんで男として振る舞っているんだ。そういえば、あいつはいつもトイレで着替えをしてたな。肌に虐待された痣とかあるのかと思ってたよ。
ああそうか、だからいつも俺がシャワー浴びた後とか怒ってたのか。上半身裸で暑い暑いと手で扇いでいると林檎のように顔を赤らめて叱ってくるんだよね。早く服を着ろって。
美少女に上半身を見せつける俺……。完全に変態じゃん。
コンコンコン――。
部屋の扉が叩かれた。誰だよこんな時間に? オレ今日はさすがにもう寝たい。
コンコンコン――。
「一体誰だよこんな時間に!」
「ブ、ブランド卿! や、夜分遅くに誠に申し訳ございません。閣下が少しだけお話になりたいと……」
「あ? あ、ああ……。わかった」
何の用だろう。なんかとっても嫌な予感がする。
「申し訳ないね。こんな遅くに」
通されたのは領主の執務室のようだ。例の老齢の執事風の男性が傍らに控えていた。身辺警護もこの人が兼ねているのだろうか。
「いえいえ、それで話っていうのは?」
「いや、どうもうちのパドが先ほど具合が悪くなって倒れたと聞いてな」
ギクッ――。という音が聞こえた気がした。まずいやばいぞこの展開は危険。
「ああ、そうみたいだな」
「それでバロン、なんだったかな?」
バロンと呼ばれた執事が領主の言葉を引き継ぐ。
「ええ、どうやらパド様はお風呂で湯当たりをされましたようで、そこのブランド卿に部屋まで運んで頂いたそうです」
「ほう……」
領主様の目が怪しく光った。
「つかぬことを聞くが、ブランド卿はうちのパドと一緒に風呂に入るような仲なのですかな?」
「は? いや全然。まったく。なんか脱衣所を出た辺りでさ、パドがグッタリと廊下に横たわっていたんだよ」
「それで?」
「顔は上気してたからな。涼しい場所に移そうと思ってたらちょうどメイドさんに会ったんだよ。だから自室まで運んであげたってわけさ。それにそもそも男同志で風呂に入るのって普通じゃないのか? 貴族は違うのかい? もしかして同性愛者じゃないと入らないのか?」
「そうではないが……。バロン?」
「さて、判断がつきませぬな」
「そんなことを確認するために俺を呼びつけたのか?」
少し不機嫌そうに声を荒げてみた。
「い、いやそういうわけじゃない。卿は美食家だと聞いてな。おい、バロン」
「こちらにこの街の美食スポットが掲載されております。明日以降の散策にお役立ていただければ幸いでございます。明日も朝早いと聞いておりました故、夜分になってしまいました」
「ああなるほどね。いやいや親切にどうも」
「短い滞在だけど、我が街を楽しんでもらえると嬉しいよ」
「ありがとう。では失礼しますね」
「あ、ブランド卿」
「な、なに?」
部屋を出ようとしたら再び声をかけられた。おい、なんだよバレたのか。
「どうか、これからもパドと仲良くしてやって欲しい」
「ああもちろんだ」
領主と執事が頭を下げるなか、そそくさと執務室を後にする。やっべぇぇえ。マジ危なかった。もしパドが女の子だと知っていたらどうする気だったのだろう。闇夜に紛れて暗殺されたらどうしよう。
あーもうほんと色々と面倒臭い。早く寝て、街で買い物してさっさと学園に帰りたい――。
「あ、カイト……。ノックしても返事ないから寝たかと思ってた……」
部屋の扉の前でパドが待ち構えていました。両手には大きな枕を抱えている。顔を赤らめもじもじと俺を見あげる。
ちょ、勘弁してくれぇぇえええ!
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