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73話 花火大会 2
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現在約七時。夏祭りのために交通止めになった道路の真ん中を沢山の人たちが賑やかに歩く。俺はその群衆の中でも一際目立つ二人の後ろをそっと付いていく。
二人は周囲の目を気にせず楽しそうに笑い話をしているが、俺はどうも周りの目が気になって肩身が狭かった。
「屋台って言ったらやっぱりたこ焼きじゃない?」
「そうなの?私は夏祭りに来たことがないから」
「そうだよそうだよ!ついでにイカ焼きとか焼きそばとかりんご飴とかわたあめとかね!」
「フフッ、全部食べ物だ」
「あれ?確かにそうかも」
「ハハッ。いつも食べ物のことばかり考えてるんだな」
「もぉ、茶化さないでよ……蓮君のバカ」
那乃の言葉一つひとつがとても愛らしくて、魅力的に感じた。那乃の挙動の一つを取っても、俺は無意識にそれを目で追ってしまっている。
瑠魅に買い物の帰りに言われたあの一言が俺の頭の中の片隅にずっとある。
なぜか那乃を意識してしまっている。友だちだと割り切ったはずなのに、告白も断ると決めたはずなのに……いざ那乃を目の前にするとその決心が揺らぐ。
「屋台、行くんだろ?早くしないと花火が始まるぞ」
「そうだね。よぉし、いっぱい食べるよ、瑠魅ちゃん!」
「そうね。もう……ううん、初めての夏祭りだものね」
「……………そうだな。このメンバーで来れるのはこれで最後だもんな」
「蓮君、何か言った?」
「いや。ただ、花火が楽しみだなってな。」
俺はそう笑って誤魔化した。瑠魅は少し複雑そうな顔をしていた。たぶん、瑠魅には俺が何て言ったのか聞こえてたのだろう。
二人は再び楽しげに話をしながら進んでいく。
「ふぅ……楽しまないとな」
二人の背中を長めながら俺はため息をつく。これからはトコトン楽しんでいくって決めたからな。暗いことを考えるのは今じゃなくても良い。
~~~~
「やっぱり屋台の周りは人が多いね」
「うん。でも、那乃ちゃんが食べたいって言ってた焼きそば、少し空いてるよ」
「じゃあ、初めは焼きそばからにしよっか!蓮君もそれで良い?」
「良いんじゃないか。屋台の焼きそばは美味いからな」
「決まりっ!じゃあ行こっか」
その後俺らは那乃を筆頭に屋台を回って行った。主に食べ物系の屋台だったが、それ以外にも射的や金魚すくいといったものもやったが、俺は特に活躍もせずに終わった。
こう言うのは普通、男が射的とかで何かを取ってプレゼント、の流れなんだけど、女性陣……特に瑠魅が凄すぎて俺の出る幕はなかった。
まぁ、無様を晒さずに済んだと思えば良いのかもしれない。
「うぅ……もぉ食べれないよぉ……」
「頑張って。あと一つだよ」
屋台の裏手にある森に三人で抜けて、さきほど買ってきた食べ物を食べていた。初めは凄かった那乃の食い意地も、たこ焼き一個を前にその意地も消え去っていた。
何度か口に運ぶものの、断念。それを何度か繰り返し続ける。俺はその様子を見て無意識的に声をかけていた。
「しょうがない。俺が食うわ」
「ホントに……?わたしと同じくらい食べてたけど、大丈夫?」
「誰のせいだと?……まぁ、男子ならこの程度は余裕だよ」
はっきりと言えば苦しい。動くのも億劫になるほど気持ちが悪い。だが、ここまで何一つとして活躍出来ていないのだ。ここらで俺も活躍出来ると言うことを見せてやりたい。
「ありがと。じゃあ……その………あーん」
「……えっ?」
照れくさそうに那乃が俺の方にたこ焼きを差し出してきた。那乃は恥ずかしいのか、顔を真っ赤して俯いている。
俺は目の前に差し出されたたこ焼きを見つめて固まる。
この爪楊枝は先程まで那乃が使っていたもの……つまり、これは間接キス……。それだけならまだ良い。中学の時も間接キス程度ならあった。だが、『あーん』は新手すぎる。
「あ、あの……色々と、その……辛いので」
「え、あ、あぁ、すまん」
俺は恐る恐るそのたこ焼きを頬張った。冷めていると言うこと以外特に何も分からないまま俺はそのたこ焼きを食べきる。
「「…………」」
気まずい空気が俺らの間に流れる。顔を上げるとなぜか毎度目が合って、それが恥ずかしくて目を逸らす。そして、また顔を上げれば……。そんなやり取りを二、三度繰り返した後、瑠魅がワザとらしく咳払いした。
「んん………私も居るのだけど?」
「あ、あぁ……そうだよな!もちろんそうだよ!」
「う、うん!そんなの当たり前だよ!」
あまりにもテンパって俺らは意味のわからない言葉を口走った。
「アハッ」
「ハハッ」
「フフッ」
その後、俺らは顔を見合わせて声を出して笑いあった。何が可笑しかったのかなんて分からないが、どこか面白かった。
「じゃあ、そろそろ行くか」
「………そうだね」
「うん」
ひとしきり笑い合った後、俺はゴミ袋を片手に立ち上がりそう宣言した。その言葉に対して瑠魅はいつも通り落ち着いた様子だったが、那乃の表情は少し固く緊張しているようだった。
俺はその表情を見て、改めてこの後あるであろう事を思い出す。
「少し時間はあるしゆっくり行こう」
「じゃあ、私たちちょっと寄りたいところあるから、先に行っててもらえる?」
「ん?分かった。場所が決まったら連絡する」
俺はそれだけ言ってその場から逃げるように去った。この早まる鼓動を否定する別の言い訳を無意識に欲して……。
~~~~~~~~~~~~~~
大変なことになりました。なんと、この物語の5話目……『転校生』の内容が全て真っ白に……。あの話の内容を覚えている、なんて事は無く朧気です。しかし、あの話自体はそこまで重要では無い……と記憶しているので気軽に書こうかなと。
当時と今では文章等々が異なるので、不安ではありますが、この物語を無事に完結させるために頑張ります!
拙い部分が多々あると思いますが是非この作品共々これからもよろしくお願いします!
二人は周囲の目を気にせず楽しそうに笑い話をしているが、俺はどうも周りの目が気になって肩身が狭かった。
「屋台って言ったらやっぱりたこ焼きじゃない?」
「そうなの?私は夏祭りに来たことがないから」
「そうだよそうだよ!ついでにイカ焼きとか焼きそばとかりんご飴とかわたあめとかね!」
「フフッ、全部食べ物だ」
「あれ?確かにそうかも」
「ハハッ。いつも食べ物のことばかり考えてるんだな」
「もぉ、茶化さないでよ……蓮君のバカ」
那乃の言葉一つひとつがとても愛らしくて、魅力的に感じた。那乃の挙動の一つを取っても、俺は無意識にそれを目で追ってしまっている。
瑠魅に買い物の帰りに言われたあの一言が俺の頭の中の片隅にずっとある。
なぜか那乃を意識してしまっている。友だちだと割り切ったはずなのに、告白も断ると決めたはずなのに……いざ那乃を目の前にするとその決心が揺らぐ。
「屋台、行くんだろ?早くしないと花火が始まるぞ」
「そうだね。よぉし、いっぱい食べるよ、瑠魅ちゃん!」
「そうね。もう……ううん、初めての夏祭りだものね」
「……………そうだな。このメンバーで来れるのはこれで最後だもんな」
「蓮君、何か言った?」
「いや。ただ、花火が楽しみだなってな。」
俺はそう笑って誤魔化した。瑠魅は少し複雑そうな顔をしていた。たぶん、瑠魅には俺が何て言ったのか聞こえてたのだろう。
二人は再び楽しげに話をしながら進んでいく。
「ふぅ……楽しまないとな」
二人の背中を長めながら俺はため息をつく。これからはトコトン楽しんでいくって決めたからな。暗いことを考えるのは今じゃなくても良い。
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「やっぱり屋台の周りは人が多いね」
「うん。でも、那乃ちゃんが食べたいって言ってた焼きそば、少し空いてるよ」
「じゃあ、初めは焼きそばからにしよっか!蓮君もそれで良い?」
「良いんじゃないか。屋台の焼きそばは美味いからな」
「決まりっ!じゃあ行こっか」
その後俺らは那乃を筆頭に屋台を回って行った。主に食べ物系の屋台だったが、それ以外にも射的や金魚すくいといったものもやったが、俺は特に活躍もせずに終わった。
こう言うのは普通、男が射的とかで何かを取ってプレゼント、の流れなんだけど、女性陣……特に瑠魅が凄すぎて俺の出る幕はなかった。
まぁ、無様を晒さずに済んだと思えば良いのかもしれない。
「うぅ……もぉ食べれないよぉ……」
「頑張って。あと一つだよ」
屋台の裏手にある森に三人で抜けて、さきほど買ってきた食べ物を食べていた。初めは凄かった那乃の食い意地も、たこ焼き一個を前にその意地も消え去っていた。
何度か口に運ぶものの、断念。それを何度か繰り返し続ける。俺はその様子を見て無意識的に声をかけていた。
「しょうがない。俺が食うわ」
「ホントに……?わたしと同じくらい食べてたけど、大丈夫?」
「誰のせいだと?……まぁ、男子ならこの程度は余裕だよ」
はっきりと言えば苦しい。動くのも億劫になるほど気持ちが悪い。だが、ここまで何一つとして活躍出来ていないのだ。ここらで俺も活躍出来ると言うことを見せてやりたい。
「ありがと。じゃあ……その………あーん」
「……えっ?」
照れくさそうに那乃が俺の方にたこ焼きを差し出してきた。那乃は恥ずかしいのか、顔を真っ赤して俯いている。
俺は目の前に差し出されたたこ焼きを見つめて固まる。
この爪楊枝は先程まで那乃が使っていたもの……つまり、これは間接キス……。それだけならまだ良い。中学の時も間接キス程度ならあった。だが、『あーん』は新手すぎる。
「あ、あの……色々と、その……辛いので」
「え、あ、あぁ、すまん」
俺は恐る恐るそのたこ焼きを頬張った。冷めていると言うこと以外特に何も分からないまま俺はそのたこ焼きを食べきる。
「「…………」」
気まずい空気が俺らの間に流れる。顔を上げるとなぜか毎度目が合って、それが恥ずかしくて目を逸らす。そして、また顔を上げれば……。そんなやり取りを二、三度繰り返した後、瑠魅がワザとらしく咳払いした。
「んん………私も居るのだけど?」
「あ、あぁ……そうだよな!もちろんそうだよ!」
「う、うん!そんなの当たり前だよ!」
あまりにもテンパって俺らは意味のわからない言葉を口走った。
「アハッ」
「ハハッ」
「フフッ」
その後、俺らは顔を見合わせて声を出して笑いあった。何が可笑しかったのかなんて分からないが、どこか面白かった。
「じゃあ、そろそろ行くか」
「………そうだね」
「うん」
ひとしきり笑い合った後、俺はゴミ袋を片手に立ち上がりそう宣言した。その言葉に対して瑠魅はいつも通り落ち着いた様子だったが、那乃の表情は少し固く緊張しているようだった。
俺はその表情を見て、改めてこの後あるであろう事を思い出す。
「少し時間はあるしゆっくり行こう」
「じゃあ、私たちちょっと寄りたいところあるから、先に行っててもらえる?」
「ん?分かった。場所が決まったら連絡する」
俺はそれだけ言ってその場から逃げるように去った。この早まる鼓動を否定する別の言い訳を無意識に欲して……。
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大変なことになりました。なんと、この物語の5話目……『転校生』の内容が全て真っ白に……。あの話の内容を覚えている、なんて事は無く朧気です。しかし、あの話自体はそこまで重要では無い……と記憶しているので気軽に書こうかなと。
当時と今では文章等々が異なるので、不安ではありますが、この物語を無事に完結させるために頑張ります!
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