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74話 花火大会 3
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~姫野 那乃視点~
「ふぅ……」
さっきからずっと鼓動が激しい。体全身に響くほど鈍く、力強く脈打ってる。
わたしはこの関係を無理に壊そうとする自分自身が嫌い。でも、何もせずに自分から離れる蓮くんを眺める事しか出来ないのもイヤ。
出来ることなら、この関係でこれらもずっと過ごしていきたい。社会に出てからも何気ない会話で笑い合えるような……たまに会って雑談できるような、そんな関係。
何度そう自分に言い訳しても、結局どれも違う。わたしは蓮くんとそんな関係で居たいわけじゃない。わたしは……彼の隣を独占したい。
「…………」
顔をあげればいつもよりもオメカシをしたわたし。
覚悟は決まったよね。わたしはもう妥協したくは無い。瑠魅ちゃんには悪いけど、もう待てないよ。
『行ってらっしゃい』
「…………」
ハッとして鏡に映る自分を見る。そこには無意識に笑みを浮かべた自分が映っている。目の前に映る彼女に"行ってらっしゃい"、そう言われた気がした。
「うん。行ってくるよ」
わたしはトイレの前で待ってくれている瑠魅ちゃんと合流するために、蓮くんに告白するためにそこから一歩を踏み出した。
~~~~
「ごめん、待たせちゃったよね」
「ううん。それよりも、もう大丈夫なの?」
「うん。もう大丈夫」
わたしはもしかしたら、もう答えを知ってるのかもしれない。
目の前に居る女の子の笑みを前にして、わたしの胸を何かがゾワゾワと蝕んでいくような感覚が湧いた。
「瑠魅ちゃんは良いの?」
「………うん。私は分かるの。どんな答えが返ってくるのか……だから、良いの」
「そっか。じゃあ、行こっ」
それからわたし達は蓮くんが教えてくれた場所まで二人で向かう。
でも、その道中には賑やかな会話はなかった。わたしは今、会話をするような余裕はなかったから、その無言の空間が返って心地よかった。
~~~~
~千堂 蓮翔視点~
人の波がとめどめなく押し寄せて、花火の見える河原は既に人で覆い尽くされている。
俺はそこから少し離れた小さな橋で下を流れる川を見下ろしていた。角度的には悪くない位置。立っていないと見ずらいと言うデメリットはあるものの、それを除けば人も疎らで見やすい場所。
あと二分で花火が始まる。花火が打ち上がる時間は二十分程度。二十分もあると考えるべきか、二十分しかないと考えるべきか。
脳裏にはずっと那乃との記憶が映像のように流れる。この心地の良い関係を壊れることが怖い。俺の答え一つでどうにでもなるこの関係。どう答えてもこの関係は壊れる。どうせ、いつかは消えてなくなる関係なのに………俺はこの関係性を失うのをとても惜しく感じている。
「蓮くん、お待たせ」
「…………あぁ。間に合って良かったよ」
那乃と瑠魅が到着すると同時に眩い光が空を照らした。ちょうど花火が打ち上がる時間になったようだ。
俺は那乃の後ろに居る瑠魅を見た。瑠魅はどこか冷たく、諦観とも取れる寂しい表情を浮かべて花火を見上げていた。
その横顔は何ものにも比べられないほど儚く、触れてしまえば消え去ってしまうと思えるほど希薄なものだった。
俺も視線を上にやって打ち上がり続ける花火を見た。でも、俺の心はどこか落ち着かない。
俺はこれじゃない何かを求めていた。俺は無意識に視線を花火からズラして横へと向ける。
そこには花火に魅入る二人の少女が居た。
「………綺麗だ」
何を見て、何を思ってそう呟いなのか分からない。でも、目の前に広がる光景が全て輝いて見えた。
それはきっと花火だけじゃない。そもそも花火では無い何か………もしかしら、俺は既に"恋"と言うものをしてしまっているのかもしれない。
いや……昔からずっと、遠い昔からしていた。ただ、それを真正面から受け止める勇気がなかっただけかもしれない。
胸の内から湧き出る熱い何かが俺の理性を刺激する。体がふわつき、焦点の先にあるもの以外の全てがボヤけて見えた。
「どうかしたの?」
「……いや、何でもない」
「そっか。花火、キレイだよね」
「あぁ……ホントに綺麗だ」
打ち上がる花火が一層輝いて見えた。世界が変わったように目に映る全てのものが煌めいて映る。
自分の本当の気持ちに気付いただけなのに、世界はこうも変わって見えた。
~~~~
「花火、終わっちゃったね」
「そうだな。案外呆気なかったな」
「うん。でも、キレイだったよ」
花火が終わり、周りから片付けをする音がチラホラと聞こえる。でも、俺たちはその場から動かなかった。
煙だけを残し何の余韻もない空を意味もなく見上げる。
虚しさと寂しさで心にポッカリと穴が空いたように感じる。
「………蓮くん」
「どうした?」
「ちょっとだけ、時間もらっても良いかな?」
「ッ………あ、あぁ」
名前を呼ばれて反射的に視線を那乃に向けると、そこには上目遣いに頬を赤らめた那乃の姿があった。
俺はその様子に思わず息を呑んだ。淡白な回答しか出来ないほど頭は真っ白だった。
「私、ちょっとトイレに行ってくるよ」
「あ、瑠魅……」
「…………ありがと、瑠魅ちゃん」
その場から逃げるようにして走り去っていく瑠魅。その場にはもう俺と那乃しかいない。何とも言えない空気が俺らの間に流れた。
少しの間の無言。俺と那乃はその間もずっと視線を合わせていた。
「わたし、蓮くんの事が好きなの。友だちとしてじゃないくて……男の子として」
「ッ…………!!」
心臓の脈打つ音だけが俺の耳を支配した。目の前にいる少女は今にも泣きそうなほど目を潤わせ、俺を見上げている。
一瞬にして俺の頭にはいくつも言葉が浮かぶ。でも、その中のどんな言葉も喉を通ることなく消えていく。
どれも軽く上っ面な言葉にしか思えず、俺は言葉にできない煩わしさに怒りすらも感じた。
その間も那乃は俺の言葉を待って静かに佇む。
長い沈黙。俺の答えは決まっている。ずっと前から決めていたのに……心が揺らいだ、揺らいでしまった。
「……………那乃」
「えっ、あ……なに、かな?」
「俺もさ………好きだよ、那乃のこと」
「えっ?」
頭は真っ白。なのに言葉はどんどん浮かび上がり、意志とは関係なく口は動き出す。
「俺、昔から好きだった。だから………」
~~~~~~~~~~~~~~
ここにて、夏休み回無事終了とさせていただきます!話が消えると言うハプニングはありましたが、何とかそう時間も掛からずに仕上げる事が出来ました。
次回は二学期始業式です!夏休み回が思ったよりも長引いてしまったので、二学期は少し短めに……と考えています。
拙い部分も多々あると思いますが、これからも作品共々よろしくお願いします!
「ふぅ……」
さっきからずっと鼓動が激しい。体全身に響くほど鈍く、力強く脈打ってる。
わたしはこの関係を無理に壊そうとする自分自身が嫌い。でも、何もせずに自分から離れる蓮くんを眺める事しか出来ないのもイヤ。
出来ることなら、この関係でこれらもずっと過ごしていきたい。社会に出てからも何気ない会話で笑い合えるような……たまに会って雑談できるような、そんな関係。
何度そう自分に言い訳しても、結局どれも違う。わたしは蓮くんとそんな関係で居たいわけじゃない。わたしは……彼の隣を独占したい。
「…………」
顔をあげればいつもよりもオメカシをしたわたし。
覚悟は決まったよね。わたしはもう妥協したくは無い。瑠魅ちゃんには悪いけど、もう待てないよ。
『行ってらっしゃい』
「…………」
ハッとして鏡に映る自分を見る。そこには無意識に笑みを浮かべた自分が映っている。目の前に映る彼女に"行ってらっしゃい"、そう言われた気がした。
「うん。行ってくるよ」
わたしはトイレの前で待ってくれている瑠魅ちゃんと合流するために、蓮くんに告白するためにそこから一歩を踏み出した。
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「ごめん、待たせちゃったよね」
「ううん。それよりも、もう大丈夫なの?」
「うん。もう大丈夫」
わたしはもしかしたら、もう答えを知ってるのかもしれない。
目の前に居る女の子の笑みを前にして、わたしの胸を何かがゾワゾワと蝕んでいくような感覚が湧いた。
「瑠魅ちゃんは良いの?」
「………うん。私は分かるの。どんな答えが返ってくるのか……だから、良いの」
「そっか。じゃあ、行こっ」
それからわたし達は蓮くんが教えてくれた場所まで二人で向かう。
でも、その道中には賑やかな会話はなかった。わたしは今、会話をするような余裕はなかったから、その無言の空間が返って心地よかった。
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~千堂 蓮翔視点~
人の波がとめどめなく押し寄せて、花火の見える河原は既に人で覆い尽くされている。
俺はそこから少し離れた小さな橋で下を流れる川を見下ろしていた。角度的には悪くない位置。立っていないと見ずらいと言うデメリットはあるものの、それを除けば人も疎らで見やすい場所。
あと二分で花火が始まる。花火が打ち上がる時間は二十分程度。二十分もあると考えるべきか、二十分しかないと考えるべきか。
脳裏にはずっと那乃との記憶が映像のように流れる。この心地の良い関係を壊れることが怖い。俺の答え一つでどうにでもなるこの関係。どう答えてもこの関係は壊れる。どうせ、いつかは消えてなくなる関係なのに………俺はこの関係性を失うのをとても惜しく感じている。
「蓮くん、お待たせ」
「…………あぁ。間に合って良かったよ」
那乃と瑠魅が到着すると同時に眩い光が空を照らした。ちょうど花火が打ち上がる時間になったようだ。
俺は那乃の後ろに居る瑠魅を見た。瑠魅はどこか冷たく、諦観とも取れる寂しい表情を浮かべて花火を見上げていた。
その横顔は何ものにも比べられないほど儚く、触れてしまえば消え去ってしまうと思えるほど希薄なものだった。
俺も視線を上にやって打ち上がり続ける花火を見た。でも、俺の心はどこか落ち着かない。
俺はこれじゃない何かを求めていた。俺は無意識に視線を花火からズラして横へと向ける。
そこには花火に魅入る二人の少女が居た。
「………綺麗だ」
何を見て、何を思ってそう呟いなのか分からない。でも、目の前に広がる光景が全て輝いて見えた。
それはきっと花火だけじゃない。そもそも花火では無い何か………もしかしら、俺は既に"恋"と言うものをしてしまっているのかもしれない。
いや……昔からずっと、遠い昔からしていた。ただ、それを真正面から受け止める勇気がなかっただけかもしれない。
胸の内から湧き出る熱い何かが俺の理性を刺激する。体がふわつき、焦点の先にあるもの以外の全てがボヤけて見えた。
「どうかしたの?」
「……いや、何でもない」
「そっか。花火、キレイだよね」
「あぁ……ホントに綺麗だ」
打ち上がる花火が一層輝いて見えた。世界が変わったように目に映る全てのものが煌めいて映る。
自分の本当の気持ちに気付いただけなのに、世界はこうも変わって見えた。
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「花火、終わっちゃったね」
「そうだな。案外呆気なかったな」
「うん。でも、キレイだったよ」
花火が終わり、周りから片付けをする音がチラホラと聞こえる。でも、俺たちはその場から動かなかった。
煙だけを残し何の余韻もない空を意味もなく見上げる。
虚しさと寂しさで心にポッカリと穴が空いたように感じる。
「………蓮くん」
「どうした?」
「ちょっとだけ、時間もらっても良いかな?」
「ッ………あ、あぁ」
名前を呼ばれて反射的に視線を那乃に向けると、そこには上目遣いに頬を赤らめた那乃の姿があった。
俺はその様子に思わず息を呑んだ。淡白な回答しか出来ないほど頭は真っ白だった。
「私、ちょっとトイレに行ってくるよ」
「あ、瑠魅……」
「…………ありがと、瑠魅ちゃん」
その場から逃げるようにして走り去っていく瑠魅。その場にはもう俺と那乃しかいない。何とも言えない空気が俺らの間に流れた。
少しの間の無言。俺と那乃はその間もずっと視線を合わせていた。
「わたし、蓮くんの事が好きなの。友だちとしてじゃないくて……男の子として」
「ッ…………!!」
心臓の脈打つ音だけが俺の耳を支配した。目の前にいる少女は今にも泣きそうなほど目を潤わせ、俺を見上げている。
一瞬にして俺の頭にはいくつも言葉が浮かぶ。でも、その中のどんな言葉も喉を通ることなく消えていく。
どれも軽く上っ面な言葉にしか思えず、俺は言葉にできない煩わしさに怒りすらも感じた。
その間も那乃は俺の言葉を待って静かに佇む。
長い沈黙。俺の答えは決まっている。ずっと前から決めていたのに……心が揺らいだ、揺らいでしまった。
「……………那乃」
「えっ、あ……なに、かな?」
「俺もさ………好きだよ、那乃のこと」
「えっ?」
頭は真っ白。なのに言葉はどんどん浮かび上がり、意志とは関係なく口は動き出す。
「俺、昔から好きだった。だから………」
~~~~~~~~~~~~~~
ここにて、夏休み回無事終了とさせていただきます!話が消えると言うハプニングはありましたが、何とかそう時間も掛からずに仕上げる事が出来ました。
次回は二学期始業式です!夏休み回が思ったよりも長引いてしまったので、二学期は少し短めに……と考えています。
拙い部分も多々あると思いますが、これからも作品共々よろしくお願いします!
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