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88話 7日目
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──ピピピピピピピピ。
甲高い機械音と共に俺の意識がゆっくりと覚醒し始める。上半身を少し起こせばカーテンの隙間から漏れた太陽の光が目に直撃して思わず顔をしかめる羽目になった。
今日やる事を考えるとどうも元気にはなれない。この起床ほどじゃないが憂鬱な気分だ。
出来ることならずっと寝ていたい。起きてしまえばもう動くしかない。もう言い訳も逃げることも出来ない。
俺は今日瑠魅に告白する。それは一週間前から決まっていたし、昨日も寝る前に覚悟していた。なのに、いざ目の前に迫るとどうしても逃げたくなる。
「ふぅ…………」
昨日も目を瞑りながらシュミレーションは何度もやった。キザなことを言う気もないし格好付ける気もサラサラない。ただ好きだと言うだけ……付き合って欲しいと言うだけなのに………どうも楽観視出来ない。
緊張で俺の足取りは普段以上に重い。
ドアを開ければいつも通り俺の鼻をくすぐる朝食の良い香り。
「………おはよう蓮翔」
「あ、あぁ。おはよう」
その時俺は瑠魅の挨拶に対して僅かに違和感を覚えた。
だが、今の俺はそんな事に思考を回せるほどの余裕を持ち合わせてはいない。
今になって気付いたが、俺はある事を完全に失念していた。
それはそもそも今日告白する事を瑠魅も知っているという事だ。
考えてみれば当たり前の事だ。この関係……この一週間の出来事自体がそれを前提として成り立っていた関係なのだから。
告白に目が行き過ぎてその過程の事を完全に忘れていた。今日一日どうやって瑠魅と接していくべきか……。
「じゃ、じゃあ……私は先に行くね」
「え?あ、あぁ……行ってらっしゃい……」
そんな事を考えていると瑠魅は一足先に家を出て行った。普段よりかなり早い時間だが、俺はその事に意識が向かないでいた。
そして、気が付くとテーブルにはいつの間にか朝食と昼食用の弁当が置いてあった。
俺は「いただきます」と言ってトーストに手をつけた。そこでふと弁当の上に置かれている丁寧に折り畳まれた紙の存在に気づいた。
その紙を手に取って開くとそこには『今日の放課後屋上。それまではあまり話さないようにしよう』と書かれていた。
「…………」
この提案は俺としては嬉しいところもある。瑠魅に無理に絡んでも今の俺ではドジをして迷惑をかける可能性が大いにあるからだ。でも、これが遠回しに瑠魅の答えということもありえる。
「…………ふぅ」
紙をそっとテーブルに置いて天井を眺める。
この告白がどうなるか分からないと表面上では思っていた。でも、それは間違いみたいだ。
いざ振られる事を意識すると胸の奥が締め付けられるような痛みが胸中にじんわりを染みる。
俺ではもうどうしようもない。今の俺は緊張よりも不安や恐怖の方が強い。
これが失敗したら俺と瑠魅の関係性がどう変化するのか、それを考えるだけで身震いする。
「告白って………スゲェ怖いな……」
~~~~
俺は昔のように遅刻ギリギリの時間に学校に着いた。
「今日は遅いんだな」
「……海斗か」
「今日の昼、久々に一緒に食わねぇか?」
「……いいな」
「だろ?じゃあまた来るよ」
「あぁ」
俺は自分の席に向かう海斗の背中を眺めながら俺は良い友を持ったと改めて思えた。
「……やるぞ。やるしかないんだから」
海斗のためにも……那乃のためにも俺は前向きにならないとな。
そもそもまだ瑠魅の答えが確定したわけじゃないんだし、そこまで暗くなる必要は無い………とは言ってもそう簡単に切り替えが出来るほど器用じゃないんだよな。
「おはようございます。じゃあホームルームを始めます」
~~~~
「連絡もないのでこれでホームルームを終わりたいと思います。気を付けて部活や帰宅するように」
気が付ければ既に放課。不安なものがある時に限って時間が経つのが早い。
俺はちらっと瑠魅の方を盗み見ると既にバッグを片手に教室を出るところだった。
俺もそれに合わせて素早く荷物を片付けて教室を出た。
屋上に着く時間が僅差しかないとちょっと気まずいので俺は遠回りをして行くことにした。
瑠魅に迷惑をかけることになるけど、今は落ち着きたい気分だった。
遠回りと言ってもそこまで複雑な構造じゃないから瑠魅よりも少しだけ遅れて俺も屋上に着いた。
屋上は禁止自体は明確にされていないが教室から結構距離があるのと掃除されていないせいで汚れているという理由から基本的に人気はない。
キィィと言う耳障りな音と共に屋上に出る。秋ということもあり風がまだ気持ちよく感じられた。
そして屋上に出ると中央で瑠魅はただ空を見て佇んでいた。
「瑠魅、待たせたね」
「ううん。私が早かっただけだから」
全身が微かに震え始めた。緊張と不安で鼓動が必要以上に早まる。
「…………」
「…………」
何からいえば良いのかが分からない。どんな言い出しが良いのか検討もつかない。
それでも、瑠魅はただ静かに待ってくれている。
俺はもう考えるのをやめた。その代わりに、フッと頭の中に湧いたイメージが俺の口を懸命に動かし始める。
「……この一週間、俺のワガママに付き合ってくれてありがとう」
「…………」
「俺は瑠魅が好きだ。好きになった理由とかはすぐに思い付かないけど、俺は………君のことが好きだ」
普段なら恥ずかしくて言えないようなセリフ。でも今はそんな言葉がスっと出て来る。瑠魅がどんな表情でどんな感情を抱いているのか、俺は怖くて目を背けたかった。
それでも俺は瑠魅の瞳を見続けた。そんな時、瑠魅の瞳が僅かに揺れたように見えた。
「……………それがたとえ余命1年しか残らなくても……?」
「あぁ。だって俺は、余命1年の君に恋をしたんだから」
長い静寂が俺と瑠魅の間に流れた。その間、俺はなぜか妙に落ち着いていた。緊張も不安も恐怖も確かに俺の心にあるのに、なぜか俺の体の震えは止まっていた。
永遠とも一瞬とも思えた時間が過ぎ、瑠魅はゆっくりと口を開いた。
「私はあなたにいつも助けらればかり。独りぼっちだった私の孤独を奪ってくれ、私の友達になってくれて………今度はこんな私を好きだと言ってくれた」
俺は口を開くことが出来ずにじっと瑠魅を見つめた。瑠魅は目尻に涙を浮かべたままフッと笑みを零して言った。
「こんな私で良ければよろしくお願いします」
~~~~~~~~~~~~~~~~
お久しぶりです!最近は本当に寒いですね。もうコタツから出れない………。
さて、この作品もこの話を持ってちょうど90話(閑話とか入れてだけど……)となりました!!
次回はついに最終話となります。不定期更新にもほどがありましたがようやく次回、無事に最終話を迎えられそうです。
次の投稿は明日!是非最後まで読んでいただけると幸いです!最後にちょっとばかり作者から感謝メッセージのようなものも入れる予定なので、時間のある方はそちらも読んでいただけると嬉しいです!
あと一話となりましたが、最後までどうか作品共々よろしくお願いします!
甲高い機械音と共に俺の意識がゆっくりと覚醒し始める。上半身を少し起こせばカーテンの隙間から漏れた太陽の光が目に直撃して思わず顔をしかめる羽目になった。
今日やる事を考えるとどうも元気にはなれない。この起床ほどじゃないが憂鬱な気分だ。
出来ることならずっと寝ていたい。起きてしまえばもう動くしかない。もう言い訳も逃げることも出来ない。
俺は今日瑠魅に告白する。それは一週間前から決まっていたし、昨日も寝る前に覚悟していた。なのに、いざ目の前に迫るとどうしても逃げたくなる。
「ふぅ…………」
昨日も目を瞑りながらシュミレーションは何度もやった。キザなことを言う気もないし格好付ける気もサラサラない。ただ好きだと言うだけ……付き合って欲しいと言うだけなのに………どうも楽観視出来ない。
緊張で俺の足取りは普段以上に重い。
ドアを開ければいつも通り俺の鼻をくすぐる朝食の良い香り。
「………おはよう蓮翔」
「あ、あぁ。おはよう」
その時俺は瑠魅の挨拶に対して僅かに違和感を覚えた。
だが、今の俺はそんな事に思考を回せるほどの余裕を持ち合わせてはいない。
今になって気付いたが、俺はある事を完全に失念していた。
それはそもそも今日告白する事を瑠魅も知っているという事だ。
考えてみれば当たり前の事だ。この関係……この一週間の出来事自体がそれを前提として成り立っていた関係なのだから。
告白に目が行き過ぎてその過程の事を完全に忘れていた。今日一日どうやって瑠魅と接していくべきか……。
「じゃ、じゃあ……私は先に行くね」
「え?あ、あぁ……行ってらっしゃい……」
そんな事を考えていると瑠魅は一足先に家を出て行った。普段よりかなり早い時間だが、俺はその事に意識が向かないでいた。
そして、気が付くとテーブルにはいつの間にか朝食と昼食用の弁当が置いてあった。
俺は「いただきます」と言ってトーストに手をつけた。そこでふと弁当の上に置かれている丁寧に折り畳まれた紙の存在に気づいた。
その紙を手に取って開くとそこには『今日の放課後屋上。それまではあまり話さないようにしよう』と書かれていた。
「…………」
この提案は俺としては嬉しいところもある。瑠魅に無理に絡んでも今の俺ではドジをして迷惑をかける可能性が大いにあるからだ。でも、これが遠回しに瑠魅の答えということもありえる。
「…………ふぅ」
紙をそっとテーブルに置いて天井を眺める。
この告白がどうなるか分からないと表面上では思っていた。でも、それは間違いみたいだ。
いざ振られる事を意識すると胸の奥が締め付けられるような痛みが胸中にじんわりを染みる。
俺ではもうどうしようもない。今の俺は緊張よりも不安や恐怖の方が強い。
これが失敗したら俺と瑠魅の関係性がどう変化するのか、それを考えるだけで身震いする。
「告白って………スゲェ怖いな……」
~~~~
俺は昔のように遅刻ギリギリの時間に学校に着いた。
「今日は遅いんだな」
「……海斗か」
「今日の昼、久々に一緒に食わねぇか?」
「……いいな」
「だろ?じゃあまた来るよ」
「あぁ」
俺は自分の席に向かう海斗の背中を眺めながら俺は良い友を持ったと改めて思えた。
「……やるぞ。やるしかないんだから」
海斗のためにも……那乃のためにも俺は前向きにならないとな。
そもそもまだ瑠魅の答えが確定したわけじゃないんだし、そこまで暗くなる必要は無い………とは言ってもそう簡単に切り替えが出来るほど器用じゃないんだよな。
「おはようございます。じゃあホームルームを始めます」
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「連絡もないのでこれでホームルームを終わりたいと思います。気を付けて部活や帰宅するように」
気が付ければ既に放課。不安なものがある時に限って時間が経つのが早い。
俺はちらっと瑠魅の方を盗み見ると既にバッグを片手に教室を出るところだった。
俺もそれに合わせて素早く荷物を片付けて教室を出た。
屋上に着く時間が僅差しかないとちょっと気まずいので俺は遠回りをして行くことにした。
瑠魅に迷惑をかけることになるけど、今は落ち着きたい気分だった。
遠回りと言ってもそこまで複雑な構造じゃないから瑠魅よりも少しだけ遅れて俺も屋上に着いた。
屋上は禁止自体は明確にされていないが教室から結構距離があるのと掃除されていないせいで汚れているという理由から基本的に人気はない。
キィィと言う耳障りな音と共に屋上に出る。秋ということもあり風がまだ気持ちよく感じられた。
そして屋上に出ると中央で瑠魅はただ空を見て佇んでいた。
「瑠魅、待たせたね」
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「……この一週間、俺のワガママに付き合ってくれてありがとう」
「…………」
「俺は瑠魅が好きだ。好きになった理由とかはすぐに思い付かないけど、俺は………君のことが好きだ」
普段なら恥ずかしくて言えないようなセリフ。でも今はそんな言葉がスっと出て来る。瑠魅がどんな表情でどんな感情を抱いているのか、俺は怖くて目を背けたかった。
それでも俺は瑠魅の瞳を見続けた。そんな時、瑠魅の瞳が僅かに揺れたように見えた。
「……………それがたとえ余命1年しか残らなくても……?」
「あぁ。だって俺は、余命1年の君に恋をしたんだから」
長い静寂が俺と瑠魅の間に流れた。その間、俺はなぜか妙に落ち着いていた。緊張も不安も恐怖も確かに俺の心にあるのに、なぜか俺の体の震えは止まっていた。
永遠とも一瞬とも思えた時間が過ぎ、瑠魅はゆっくりと口を開いた。
「私はあなたにいつも助けらればかり。独りぼっちだった私の孤独を奪ってくれ、私の友達になってくれて………今度はこんな私を好きだと言ってくれた」
俺は口を開くことが出来ずにじっと瑠魅を見つめた。瑠魅は目尻に涙を浮かべたままフッと笑みを零して言った。
「こんな私で良ければよろしくお願いします」
~~~~~~~~~~~~~~~~
お久しぶりです!最近は本当に寒いですね。もうコタツから出れない………。
さて、この作品もこの話を持ってちょうど90話(閑話とか入れてだけど……)となりました!!
次回はついに最終話となります。不定期更新にもほどがありましたがようやく次回、無事に最終話を迎えられそうです。
次の投稿は明日!是非最後まで読んでいただけると幸いです!最後にちょっとばかり作者から感謝メッセージのようなものも入れる予定なので、時間のある方はそちらも読んでいただけると嬉しいです!
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