11 / 12
風邪、その1
しおりを挟む
いつも年寄りの昔話に付き合わせてばかりなので、つい最近のこともお話ししてみようと思います。最近の話、と言ってもやっぱり年寄りの無駄話に変わりはないんですけどね。
80歳も過ぎた頃から、体力の衰えを感じることが増えました。年寄りの病気、というと肺炎が有名どころのひとつじゃないかと思います。風邪は万病のもとなんて言いますけど、年を取ってからは特に、風邪くらい、と油断していたら大変なことになってしまう、と痛感しています。そう、今回はわたしが肺炎で入院した時のおはなしです。
保育所に通う前は全く風邪なんてひかなかったひ孫。でも、保育所に通い始めて、色んな子と接するようになってからは風邪と熱の連続でした。一緒に住んでいるわたしも、気を付けてはいてもひ孫から風邪をもらうことが何度かあって、これまでに2回、ひ孫の風邪が原因で入院しました。
1回目は初夏の頃でした。この時は、1週間くらい調子が悪くて寝たり起きたりの生活をしていました。お正月に生まれたせいか、暑さに弱いわたしは、冬よりも夏に体調を崩すことが多いんです。
「病院で薬もらったんだから大丈夫。ほっといて」と言うわたしに、うるさいくらいに「明日も受診しないと」と繰り返す孫と喧嘩になったのが入院の2日前。
入院の前の日は、いつもは夜7時を過ぎないと帰ってこないはずの孫が、どういうわけかお昼過ぎには帰っていました。私の様子を見た孫が「ほとんど飲まず食わずでしょ」と、家の近くのお医者さんに勝手に電話して、往診で点滴をしてもらったんです。これだけでも、本当に余計なお世話……。わたしが、肘の内側に点滴の針が刺さっているのを忘れて、腕を曲げてしまって点滴が漏れたら、孫はまた往診をお願いして、針を刺し直してもらい……。それでも、また点滴の針が刺さっているのを忘れて腕を曲げて、また点滴漏れ。この時は、ほとんど点滴が終わっていたので3回目の往診はありませんでしたけれど。この後が、孫のすごいところというか、迷惑なところというか……。「これじゃあダメ。家にいたら治らない!」と、いつもお世話になっている総合病院の先生に直接電話をして翌日の入院を決めてしまったのです。薬が切れるまでは病院に行く必要はない、わざわざ先生に診てもらわなくてもいい、とわたしは何度も言ったんですけど、体調が悪い私がベッドから動けないのをいいことに、孫は別の部屋でいつもの主治医の先生に電話。どんな話をしたのか分かりませんけど「明日、入院決まったから。朝イチで病院行くから。仕事休むから」と戻ってきた孫。「行く必要ないから!」と怒るわたしに対して「もう先生と約束したんだから、顔だけでも見せに行かんと。先生と直接話して、入院しなくて良さそうなら帰ってくればいいじゃん」と孫も譲りません。
翌朝、文句を言いながら病院へ行くと、先生も入院させる気満々の様子。「もうベッドの準備はできてるから」って。「帰ります」なんて言える雰囲気じゃなかったので、そのまま入院することになりました。入院病棟へ行く途中、「総合病院なのに時間外に○○先生を呼べー、って電話して、ばあちゃんが飲み食いできなくなったから入院させて、体力も心配だから、って迷惑な家族だよねー。先生には平謝りしとかないと」と孫は笑っていました。わたしも「大げさな子ね……恥ずかしい……」と思いました。でも、入院直後に主治医からは「今日が入院すべきタイミングだったよ」と言われてしまいました。
確かに、入院の前々日くらいから当日朝にかけては何も食べる気が起きなかったんです。でも、いつもの先生の顔を見た時、思わず「先生、いつまでも入院したくないからちゃんと食べます」って約束したことを覚えています。入院したその日は大きな点滴の袋が繋がっていましたけど、先生と約束した通り、入院した日の夕食から出された食事を全部食べたので次の日からは点滴はグッと減りました。孫は「飲食できない状態だから入院を、って頼んだのに、初日から全部食べたんじゃあ、私が嘘ついて入院させたみたいじゃん」と文句を言っていましたけど。でも、大好きな先生と約束したんですから、食べるに決まってるでしょ?
そんなこんなで、わたしの入院生活は1週間くらいで終わり。こうやってお話ししてみると大したことじゃないんですけどね。2回目の風邪のおはなしは、また今度。年寄りの長話は嫌われてしまいますから。
80歳も過ぎた頃から、体力の衰えを感じることが増えました。年寄りの病気、というと肺炎が有名どころのひとつじゃないかと思います。風邪は万病のもとなんて言いますけど、年を取ってからは特に、風邪くらい、と油断していたら大変なことになってしまう、と痛感しています。そう、今回はわたしが肺炎で入院した時のおはなしです。
保育所に通う前は全く風邪なんてひかなかったひ孫。でも、保育所に通い始めて、色んな子と接するようになってからは風邪と熱の連続でした。一緒に住んでいるわたしも、気を付けてはいてもひ孫から風邪をもらうことが何度かあって、これまでに2回、ひ孫の風邪が原因で入院しました。
1回目は初夏の頃でした。この時は、1週間くらい調子が悪くて寝たり起きたりの生活をしていました。お正月に生まれたせいか、暑さに弱いわたしは、冬よりも夏に体調を崩すことが多いんです。
「病院で薬もらったんだから大丈夫。ほっといて」と言うわたしに、うるさいくらいに「明日も受診しないと」と繰り返す孫と喧嘩になったのが入院の2日前。
入院の前の日は、いつもは夜7時を過ぎないと帰ってこないはずの孫が、どういうわけかお昼過ぎには帰っていました。私の様子を見た孫が「ほとんど飲まず食わずでしょ」と、家の近くのお医者さんに勝手に電話して、往診で点滴をしてもらったんです。これだけでも、本当に余計なお世話……。わたしが、肘の内側に点滴の針が刺さっているのを忘れて、腕を曲げてしまって点滴が漏れたら、孫はまた往診をお願いして、針を刺し直してもらい……。それでも、また点滴の針が刺さっているのを忘れて腕を曲げて、また点滴漏れ。この時は、ほとんど点滴が終わっていたので3回目の往診はありませんでしたけれど。この後が、孫のすごいところというか、迷惑なところというか……。「これじゃあダメ。家にいたら治らない!」と、いつもお世話になっている総合病院の先生に直接電話をして翌日の入院を決めてしまったのです。薬が切れるまでは病院に行く必要はない、わざわざ先生に診てもらわなくてもいい、とわたしは何度も言ったんですけど、体調が悪い私がベッドから動けないのをいいことに、孫は別の部屋でいつもの主治医の先生に電話。どんな話をしたのか分かりませんけど「明日、入院決まったから。朝イチで病院行くから。仕事休むから」と戻ってきた孫。「行く必要ないから!」と怒るわたしに対して「もう先生と約束したんだから、顔だけでも見せに行かんと。先生と直接話して、入院しなくて良さそうなら帰ってくればいいじゃん」と孫も譲りません。
翌朝、文句を言いながら病院へ行くと、先生も入院させる気満々の様子。「もうベッドの準備はできてるから」って。「帰ります」なんて言える雰囲気じゃなかったので、そのまま入院することになりました。入院病棟へ行く途中、「総合病院なのに時間外に○○先生を呼べー、って電話して、ばあちゃんが飲み食いできなくなったから入院させて、体力も心配だから、って迷惑な家族だよねー。先生には平謝りしとかないと」と孫は笑っていました。わたしも「大げさな子ね……恥ずかしい……」と思いました。でも、入院直後に主治医からは「今日が入院すべきタイミングだったよ」と言われてしまいました。
確かに、入院の前々日くらいから当日朝にかけては何も食べる気が起きなかったんです。でも、いつもの先生の顔を見た時、思わず「先生、いつまでも入院したくないからちゃんと食べます」って約束したことを覚えています。入院したその日は大きな点滴の袋が繋がっていましたけど、先生と約束した通り、入院した日の夕食から出された食事を全部食べたので次の日からは点滴はグッと減りました。孫は「飲食できない状態だから入院を、って頼んだのに、初日から全部食べたんじゃあ、私が嘘ついて入院させたみたいじゃん」と文句を言っていましたけど。でも、大好きな先生と約束したんですから、食べるに決まってるでしょ?
そんなこんなで、わたしの入院生活は1週間くらいで終わり。こうやってお話ししてみると大したことじゃないんですけどね。2回目の風邪のおはなしは、また今度。年寄りの長話は嫌われてしまいますから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる