平凡ばあちゃんの思い出話

ミズキケイ

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風邪、その1

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 いつも年寄りの昔話に付き合わせてばかりなので、つい最近のこともお話ししてみようと思います。最近の話、と言ってもやっぱり年寄りの無駄話に変わりはないんですけどね。
 80歳も過ぎた頃から、体力の衰えを感じることが増えました。年寄りの病気、というと肺炎が有名どころのひとつじゃないかと思います。風邪は万病のもとなんて言いますけど、年を取ってからは特に、風邪くらい、と油断していたら大変なことになってしまう、と痛感しています。そう、今回はわたしが肺炎で入院した時のおはなしです。
 保育所に通う前は全く風邪なんてひかなかったひ孫。でも、保育所に通い始めて、色んな子と接するようになってからは風邪と熱の連続でした。一緒に住んでいるわたしも、気を付けてはいてもひ孫から風邪をもらうことが何度かあって、これまでに2回、ひ孫の風邪が原因で入院しました。
 1回目は初夏の頃でした。この時は、1週間くらい調子が悪くて寝たり起きたりの生活をしていました。お正月に生まれたせいか、暑さに弱いわたしは、冬よりも夏に体調を崩すことが多いんです。
 「病院で薬もらったんだから大丈夫。ほっといて」と言うわたしに、うるさいくらいに「明日も受診しないと」と繰り返す孫と喧嘩になったのが入院の2日前。
 入院の前の日は、いつもは夜7時を過ぎないと帰ってこないはずの孫が、どういうわけかお昼過ぎには帰っていました。私の様子を見た孫が「ほとんど飲まず食わずでしょ」と、家の近くのお医者さんに勝手に電話して、往診で点滴をしてもらったんです。これだけでも、本当に余計なお世話……。わたしが、肘の内側に点滴の針が刺さっているのを忘れて、腕を曲げてしまって点滴が漏れたら、孫はまた往診をお願いして、針を刺し直してもらい……。それでも、また点滴の針が刺さっているのを忘れて腕を曲げて、また点滴漏れ。この時は、ほとんど点滴が終わっていたので3回目の往診はありませんでしたけれど。この後が、孫のすごいところというか、迷惑なところというか……。「これじゃあダメ。家にいたら治らない!」と、いつもお世話になっている総合病院の先生に直接電話をして翌日の入院を決めてしまったのです。薬が切れるまでは病院に行く必要はない、わざわざ先生に診てもらわなくてもいい、とわたしは何度も言ったんですけど、体調が悪い私がベッドから動けないのをいいことに、孫は別の部屋でいつもの主治医の先生に電話。どんな話をしたのか分かりませんけど「明日、入院決まったから。朝イチで病院行くから。仕事休むから」と戻ってきた孫。「行く必要ないから!」と怒るわたしに対して「もう先生と約束したんだから、顔だけでも見せに行かんと。先生と直接話して、入院しなくて良さそうなら帰ってくればいいじゃん」と孫も譲りません。
 翌朝、文句を言いながら病院へ行くと、先生も入院させる気満々の様子。「もうベッドの準備はできてるから」って。「帰ります」なんて言える雰囲気じゃなかったので、そのまま入院することになりました。入院病棟へ行く途中、「総合病院なのに時間外に○○先生を呼べー、って電話して、ばあちゃんが飲み食いできなくなったから入院させて、体力も心配だから、って迷惑な家族だよねー。先生には平謝りしとかないと」と孫は笑っていました。わたしも「大げさな子ね……恥ずかしい……」と思いました。でも、入院直後に主治医からは「今日が入院すべきタイミングだったよ」と言われてしまいました。
 確かに、入院の前々日くらいから当日朝にかけては何も食べる気が起きなかったんです。でも、いつもの先生の顔を見た時、思わず「先生、いつまでも入院したくないからちゃんと食べます」って約束したことを覚えています。入院したその日は大きな点滴の袋が繋がっていましたけど、先生と約束した通り、入院した日の夕食から出された食事を全部食べたので次の日からは点滴はグッと減りました。孫は「飲食できない状態だから入院を、って頼んだのに、初日から全部食べたんじゃあ、私が嘘ついて入院させたみたいじゃん」と文句を言っていましたけど。でも、大好きな先生と約束したんですから、食べるに決まってるでしょ?
 そんなこんなで、わたしの入院生活は1週間くらいで終わり。こうやってお話ししてみると大したことじゃないんですけどね。2回目の風邪のおはなしは、また今度。年寄りの長話は嫌われてしまいますから。
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