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11. 報告会議
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「みんな揃ったな。報告会議始めるぞ。まず、今朝あった件(くだん)の殺傷事件から」
現在会議室にはジン、ダミアン、寧寧、マシュー、アリスが集められ報告会議をしている真っ最中である。ジンとダミアンが対応した事件の報告から始まる。
「犯人は推定年齢250歳、男性。今日午前9時頃クローズレーン120番地付近で2人を殺傷、その場で捕獲。被害者1人は死亡、もう1人は意識はあるが重傷を負っている。もうすぐ取り調べされるだろうが自分でも何が起こったのかよくわからないと言っていた。真偽のほどは不明、あと動機も。これは警察の裏付け捜査を待つしかないだろうな」
ジンが今朝あった吸血鬼による殺傷事件を報告すると、一緒に対応していたダミアンが横から口を挟む。
「自制できないのは初めてだから信じてくれっつってましたね、嘘なのかなんなのか知らねえっすけど」
「……最近同じ供述がよく見られます。それが本当だった場合なかなかまずいかと」
上品なセンター分けの黒髪と線が細い金縁の丸眼鏡せいでどこからどう見てもインテリ眼鏡にしか見えないマシューが無表情で答えた。IQが高く対吸血鬼班ではトップの頭脳を持っているが、マシューはインテリな見た目とは裏腹にゴリゴリの戦闘要員だ。
「どういうことだ?」
「ここ最近頻発してる殺傷事件一見すると関連性はなさそうですが、供述を鑑みると何か同一の原因があるかもしれません」
「なんか吸血鬼が殺人に走るような原因があるってことー?」
机に肘をつきながら話を聞いていた寧寧は、気の抜けた声で疑問を口にだす。
「吸血鬼が制御不能になるくらいの吸血衝動を引き起こしたり、狂暴性が高まるには何か原因が……寧寧、会議中に肘をつくな。行儀が悪い」
「行儀ってウケるー。なにマシューって坊っちゃんなの?丸眼鏡だしポイっちゃっぽいけどー」
眼鏡は関係ないだろ、と目をスッと細め冷ややかな雰囲気を纏い始めるマシューを見て、また始まったかとジンは片手で顔を覆った。マシューと寧寧は静と動、水と油のようにお互い正反対の性質を持っており、犬猿の仲であった。対吸血鬼戦闘の際は弱点を補いながら行動できるためパートナーとして駆り出されることが多いのだが、普段はどうやら全く相容れないらしい。
「はいはい!ジン副班長。関連してるかもしれないことがあって一旦わたし報告いいですか?」
「アリス、何だ言ってみろ」
「はい。いまノアに色々協力してもらって吸血鬼の基本と身体構造、反応を調べてるんですけど」
「何かわかったのか」
「わかったというか経験したというか。ノアが言うにはわたしの血の匂いが甘いらしいんですよね。それで原因を調べるためにこの前血を嗅いでもらったんですよ」
「……何だって?」
何でそんな危険なことやってんだよお前、というジンの視線にヘラっと笑ってアリスは先を続ける。
「ちょっとデータがとりたかったもんで」
「吸血鬼に血を嗅がせにいく馬鹿がどこにいる」
「えへ。ここにおります」
ニコニコ悪びれる様子なくアリスは胸元で挙手をした。なんだってどいつもこいつもこんな手が掛かるんだ、とジンはブツブツ言っている。
「……それで」
ジンは溜め息混じりに先を促すとアリスを見た。
「それで、ですね。血をもっと近くで嗅いでもらおうとしたら、ノアの吸血衝動が強く出たんです。ノアは200年以上生きているのでコントロール不可にはならないはず。でも自制がままならないようで結局ストップをかけられました」
「制御ができなかったのか?」
「はい、たぶんギリギリのところでって感じで。ノアくらいの吸血鬼なら問題ない範囲なはずなのに何かおかしいなと思ってたんです。で、さっきちょっと思ったんですけど、似てませんか?最近の事件のケースと」
話を聞いていたジン、マシュー、ダミアン、寧寧はそれぞれ経験してきた事件を思い出しているのか、考えている様子だ。一番先に言葉を発したのはマシューだった。
現在会議室にはジン、ダミアン、寧寧、マシュー、アリスが集められ報告会議をしている真っ最中である。ジンとダミアンが対応した事件の報告から始まる。
「犯人は推定年齢250歳、男性。今日午前9時頃クローズレーン120番地付近で2人を殺傷、その場で捕獲。被害者1人は死亡、もう1人は意識はあるが重傷を負っている。もうすぐ取り調べされるだろうが自分でも何が起こったのかよくわからないと言っていた。真偽のほどは不明、あと動機も。これは警察の裏付け捜査を待つしかないだろうな」
ジンが今朝あった吸血鬼による殺傷事件を報告すると、一緒に対応していたダミアンが横から口を挟む。
「自制できないのは初めてだから信じてくれっつってましたね、嘘なのかなんなのか知らねえっすけど」
「……最近同じ供述がよく見られます。それが本当だった場合なかなかまずいかと」
上品なセンター分けの黒髪と線が細い金縁の丸眼鏡せいでどこからどう見てもインテリ眼鏡にしか見えないマシューが無表情で答えた。IQが高く対吸血鬼班ではトップの頭脳を持っているが、マシューはインテリな見た目とは裏腹にゴリゴリの戦闘要員だ。
「どういうことだ?」
「ここ最近頻発してる殺傷事件一見すると関連性はなさそうですが、供述を鑑みると何か同一の原因があるかもしれません」
「なんか吸血鬼が殺人に走るような原因があるってことー?」
机に肘をつきながら話を聞いていた寧寧は、気の抜けた声で疑問を口にだす。
「吸血鬼が制御不能になるくらいの吸血衝動を引き起こしたり、狂暴性が高まるには何か原因が……寧寧、会議中に肘をつくな。行儀が悪い」
「行儀ってウケるー。なにマシューって坊っちゃんなの?丸眼鏡だしポイっちゃっぽいけどー」
眼鏡は関係ないだろ、と目をスッと細め冷ややかな雰囲気を纏い始めるマシューを見て、また始まったかとジンは片手で顔を覆った。マシューと寧寧は静と動、水と油のようにお互い正反対の性質を持っており、犬猿の仲であった。対吸血鬼戦闘の際は弱点を補いながら行動できるためパートナーとして駆り出されることが多いのだが、普段はどうやら全く相容れないらしい。
「はいはい!ジン副班長。関連してるかもしれないことがあって一旦わたし報告いいですか?」
「アリス、何だ言ってみろ」
「はい。いまノアに色々協力してもらって吸血鬼の基本と身体構造、反応を調べてるんですけど」
「何かわかったのか」
「わかったというか経験したというか。ノアが言うにはわたしの血の匂いが甘いらしいんですよね。それで原因を調べるためにこの前血を嗅いでもらったんですよ」
「……何だって?」
何でそんな危険なことやってんだよお前、というジンの視線にヘラっと笑ってアリスは先を続ける。
「ちょっとデータがとりたかったもんで」
「吸血鬼に血を嗅がせにいく馬鹿がどこにいる」
「えへ。ここにおります」
ニコニコ悪びれる様子なくアリスは胸元で挙手をした。なんだってどいつもこいつもこんな手が掛かるんだ、とジンはブツブツ言っている。
「……それで」
ジンは溜め息混じりに先を促すとアリスを見た。
「それで、ですね。血をもっと近くで嗅いでもらおうとしたら、ノアの吸血衝動が強く出たんです。ノアは200年以上生きているのでコントロール不可にはならないはず。でも自制がままならないようで結局ストップをかけられました」
「制御ができなかったのか?」
「はい、たぶんギリギリのところでって感じで。ノアくらいの吸血鬼なら問題ない範囲なはずなのに何かおかしいなと思ってたんです。で、さっきちょっと思ったんですけど、似てませんか?最近の事件のケースと」
話を聞いていたジン、マシュー、ダミアン、寧寧はそれぞれ経験してきた事件を思い出しているのか、考えている様子だ。一番先に言葉を発したのはマシューだった。
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