濡れ衣で婚約破棄された天使様は専属執事に溺愛されながら田舎でほのぼの暮らしを満喫する

ひゃみる

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恋人同士

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「お嬢様、これからどうなさるおつもりですか?」

 森の中を移動中、ハウルはエレナに尋ねた。
 エレナのことはすぐに隣国まで知れ渡ってしまうだろう。
 そんな中、どこか街で暮らすわけにもいかず、森の中にある村あたりで過ごさなければならない。
 森の中の村だとほとんど自給自足の生活を余儀なくされ、今まで貴族として暮らしていたエレナには厳しいだろう。

「そうですね……私たちを受け入れてくれる村を探しましょう」
「それが現実的ですね」

 いくら何でも森や山の中にある村では、エレナのことを知ってる人は少ないはずだ。

「村を探すのも大事ですけど、私たちは身分を偽らなければなりません」

 犯罪の烙印を押されたエレナに貴族を名乗ることなんて出来るわけもなく、何か別の身分が必要だろう。

「だから……私とハウルはこれから……恋人同士ということにします」
「お嬢様?」

 先ほどエレナが転移魔法で突然現れた時より驚いているハウル。

「私たちは主従関係なのですよ。それなのにお嬢様と恋人同士になるなど……」
「ハウルは私に忠誠を誓ったのでしょう? なら私の言うことは聞きなさい」
「失礼いたしました。このハウル……不精ながらお嬢様の恋人役を務めさせていただきます」
「よろしい」

 主であるエレナが命じたのであれば、ハウルはそれに従わなければならない。

「それから恋人同士でお嬢様と呼ぶのは変です。よってこれから私のことはエレナと呼ぶように」
「……かしこまりました」

 主従の関係になる前は二人きりの時にハウルは名前で呼んでいたので呼ぶことは可能だが、やっぱり少し抵抗があるようだ。

「それと今後はため口で喋りなさい。年上のハウルが彼女の私に敬語なんて変ですもの」
「かしこまりました」
「ハウル?」
「わ、わかった」

 エレナの有無を言わざる迫力に、ハウルは頷くことしか出来なかった。
 もう何年も敬語で接していたから癖で敬語が出ることがあるかもしれないが、エレナに言われたのだからハウルはそうするだけだ。

「こうやって話すと昔を思い出しますね」
「そうだね」

 ハウルは将来、エレナに仕えることが決まっており、主のことを知る目的のために子供の頃は幼馴染みのように一緒にいた。
 だからハウルはエレナのことを誰よりもわかっている。
 エレナの婚約が決まった時にハウルは少し複雑な気分になってしまったが、ただの使用人と王族……彼に異を唱えることなど出来はしない。

「昔はハウルと結婚するって言ってたよね」
「そ、それは忘れてください」

 ハウルの言葉にエレナは顔を真っ赤にさせる。
 男女の幼馴染みがいたとしたら結構な確率であるだろう、エレナは絶対にハウルと結婚したいと言っていた。
 貴族と使用人が結婚出来るわけもなく、早々に婚約者が決まってしまったのだが。
 ということはエレナの初恋はハウルであり、今も密かにその想いを心の中に閉まっていたりする。
 ハウルはエレナに忠実のため、気持ちがバレてしまったら絶対にジョージとの結婚に反対していただろう。
 だからエレナはハウルへの気持ちを絶対に秘密にしていなければならなかった。
 反対してしまえば、ハウルが追放されてしまうのだから。

「そ、それより喉が渇いてしまいました」
「急だったので収納魔法でしまってある水しかありませんが……」
「それで構いません。後、タメ口」
「し、失礼……ごめん」

 ハウルはすぐに謝ると、収納魔法から水筒に入った水を取り出す。

「水が全身に染み渡りますね」

 冷たい水を飲んだエレナは素直な感想を口にする。
 ハウルの収納魔法は時間停止がついており、冷やしたままの状態で保存が可能だ。
 それに今は暑い夏……貴族たちが良く飲むホットな紅茶やコーヒーより、エレナにとっては冷たい水のが美味しく感じる。

「俺も飲んでいい?」
「ええ……ん? 待ってください。このお水を飲むんですか?」
「それしかないからしょうがない」
「そ、そそそそれはダメです」

 エレナは先ほどより真っ赤になり、ハウルに水筒を渡そうとしない。

「何でダメ?」
「そ、そんなの間接キスになるからに決まっているでしょう」
「そうか……昔はあれだけ仲が良かったのに、俺とは間接キス出来ないのか……」
「……昔のことを持ち出すなんて卑怯です」

 今では主従関係だが、昔の二人は本当に兄妹のように育った幼馴染みだ。
 そんなハウルにお願いされては、エレナに断ることは出来なかった。
 エレナから水筒を受け取ったハウルは水を飲んで喉を潤していく。
 間接キスを意識しているエレナには刺激が強く、それだけで恥ずかしくなってしまう。

「さて、村でも探そうか」
「はい……」

 喉を潤した二人は村を探すために歩くのだった。
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