エイプリルフールに同性の恋人が出来たと嘘をついたら学校一の美少女である幼馴染みが異性に興味を持って貰おうと彼女になると言ってきた

ひゃみる

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新学期

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「桜が綺麗ですね」

 誠也と絢音が高校に入学して二度目の春。
 桜が満開な並木道を抜けたとこに二人が通う学校があり、向かっている最中。
 基本的に学校には歩いて行ける距離のため、のんびりと二人して登校している。
 制服は男女共に紺色のブレザーで、どこにでもありそうな感じだ。

「俺は花より団子だけど」
「それは誠くんらしいですね」
「男はそんなもんだよ」

 確かに綺麗ではあるが、見ていたいとは思えない。
 それに男は花見なんて名目で飲み食いしたいだけ。

「出来ることなら絢音の方が綺麗だよって言ってほしかったですけど」
「ア、アヤネノガキレイダヨー」
「棒読みで言われても嬉しくないです……」

 絢音のことは可愛いと思っているが、相手はずっと見てきた幼馴染み……今更面と向かって言うのは恥ずかしかった。
 イチャイチャするのは問題なかったのだけど、今まで言わなかった言葉を口にするのは抵抗がある。

「前は可愛いって言ってくれたのに……」
「え? 何て?」
「何でもないです。鈍感主人公」
「俺は鈍感じゃない」

 誠也の言葉に絢音はため息をついた。
 どう見ても誠也は鈍感であり、その自覚が本人にはない。
 ここ数日はずっとイチャイチャしているのだから、普通は気づいてもいいはずだ。
 なのに誠也は自分に異性に興味を持たすためだけだと思っている。
 それが絢音にはわかっているのだろう、毎日ため息が止まらない。

「あれだろ? 俺を彼氏役にして言い寄ってくる男を減らそうってことでしょ? わかってるから鈍感ではない。ラノベでたまにあるからな」

 確かにモテすぎるヒロインが主人公に偽装彼氏を頼むラノベはあるが、絢音はそんなことを一言も言っていない。
 ただ、誠也が勝手に思い込んでいるだけだ。

「もう今はそれでいいです。イチャイチャ出来ることにはかわりないですし」
「外でイチャつかないと意味ないからな」

 もうすぐ学校に着くので、二人はイチャイチャを開始する。
 絢音は手を繋ぐだけかと思ったのだろう、いきなり胸にうずめさせられて顔を真っ赤にさせた。
 外では初めてだから恥ずかしいのはしょうがないが、こうしないと見せつけることが出来ない。
 実際に見せつけることは成功しているようで、通りすがりの人は二人を見ている。
 見ている大半が二人が通っている学校の男子生徒で、誠也のことを見ながら「佐々木さんとイチャつきやがって……」などと呟く。

「あの……これはやり過ぎなのでは?」
「これくらいやらないとあんまり効果なさそうだから」

 ラブコメアニメのヒロイン並にモテるのだから、過剰なくらいが丁度良い。

「思ったんだが、これって少なくとも卒業までは付き合わないといけないってことだよね?」

 イチャイチャしていれば付き合っている噂が流れるだろうが、しなくなったら別れたと思うだろう。
 しばらくしたらこの関係は終わりだと思っていたけど、止めるわけにはいかなくなった。
 誠也が異性に興味を持ったと言ってこの関係を終わりにしたら、絢音に言い寄ってくる男子は増えてしまう。
 だから絢音のために卒業まではこの関係を続けなくてはならない。

「ふふ、そうですね」

 少なくともすぐ別れることがないとわかって、絢音は笑みを浮かべる。
 そして誠也に聞こえない小さい声で「やった」と呟く。
 二人は少しイチャイチャした後、学校に向かった。

☆ ☆ ☆

「混んでる……」

 クラスを確認しようとしてクラス表が張り出されている掲示板に行くと、人でいっぱいだ。
 これはしばらく人が引きそうにないので、少し離れたとこで待つことにした。

「その……学校でイチャついてこそ意味があるのでしませんか?」
「ん。そうだな」

 ここなら二、三年の人たちが来るので、見せつけるなら打ってつけの場所だ。
 絢音は物凄く顔を赤くしているが、どんなに恥ずかしくても誠也とイチャイチャしたいのだろう。

 早速見せつけるようにイチャつくと、すぐに周りの人たちは二人のことを見る。
 そして「あの佐々木さんに彼氏が?」とか、「佐々木さんとイチャイチャしてるヤツを海に沈めよう」などと聞こえてくる。

「時間の問題かと思ったけど、ついに付き合い始めたんだね」

 イチャついていると、二人の前に一人の男子生徒がやってきた。

彩羽いろは

 彼の名前は菊地彩羽きくちいろはで、誠也の友人であり、嘘のためだけに無理矢理彼氏役にされてしまった。
 栗色の髪は生まれつき、男性用の制服を着ていなかったら、女性と間違えてしまう人がいるくらい可愛らしい容姿。

「うう……出来ることなら名字で呼んでほしいんだけど……」

 この名前と容姿のせいで昔は良くからかわれていたようで、彩羽は自分の名前にコンプレックスを持っている。

「何を言っている。ラブコメアニメに出てくる男の娘みたいでいいじゃないか」
「良くないよ。絶対におとこのこのこが娘になってるじゃないか。僕はれっきとした男なのに……」
「この前男にナンパされてたけどな」
「それを言わないでよぉ……」

 中性的な顔立ちのために、私服だと初めて彩羽を見たら女性に間違われることが多い。
 絢音も顔見知りじゃなかったら、あの写真だけでは女の子と勘違いしていただろう。

「あんなの見たら誠くんじゃなくてもキュンキュンしてしまいますよ……何とかしないと……」

 涙目になっている彩羽は男性と思えないくらい可愛らしい。
 二人に気づかれないように深呼吸をした絢音は誠也に抱きつき……。

「男の子は誠くんに近づかないでください」

 睨み付けるように彩羽を見て、牽制をする絢音。

「いきなり何?」

 彼女なら普通は女の子を近づけないようにするはずだが、誠也には男の子を近づけないようにしなければならない。
 そんなことを思っているようで、絢音は彩羽に敵意剥き出しだ。

「あなたが誠くんを邪悪な道に踏み込ませた根元……近づけさせるわけにはいきません」
「え?」
「あなたがいるから誠くんは男の子に興味を持ったんです。だから誠くんに近づかないでください」

 学校では常に品行方正のはずの絢音がなりふり構っていられなくなっている。

「……まさか佐々木さんにあの写真見せたの?」
「そうだね。そしたらこうなった」
「なるほどね」

 何やら一人で納得したようで、彩羽は頷いた。
 先ほど時間の問題と言っていたことから、彩羽は絢音が誠也のことを好きだということに気づいている。
 あの写真を絢音に見せたことで、彼女が異性に興味を持たすために付き合おうと言ったこともわかったのだろう。

「これって完全に僕にとばっちりがきてるよね……」
「気にするな」
「気にするよ。焼き肉に惑わされないで断れば良かった」

 華奢な体躯の割りに彩羽は良く食べ、食べ放題と聞くと黙っていられない。
 でも、こんなことになってしまい、後悔してしまう彩羽であった。
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