異世界のネコ科ってどこからどこまでですか?

化茶ぬき

文字の大きさ
20 / 23
リバーエッジ

第二十話 奪還作戦Ⅲ

しおりを挟む
 そして三日が経ち、リバーエッジ奪還作戦決行日。

 作戦はシンプルだ。レオが指揮を執るバルバリザーク王国・ルネが指揮を執るウッドビーズ・リブラが指揮を執るフィルドブルの三方向から同時にリバーエッジを攻める。勝利条件は二つ。デーモンたちの撤退か、皆殺し。

「上手くいくと思うか?」

「我らの戦力は申し分ない。内通者がいるかもしれない、という点での疑問であれば――そちらについても問題はないはずだ」

「どちらかと言えば、あっちが大丈夫かってことだけどな」

 視線の先にはリバーエッジのほうを見据えるアヤメの姿が。この三日で落ち着くどころか、むしろ研ぎ澄まされたような気がする。

「そちらについても問題は無い。アヤメもわかっているはずだ。我らがどれほど強くとも力を合わせなければ勝つことは難しい。どれだけ心が乱れていようとやることは変わらない。敵を殺すだけだ」

「まぁ、そりゃあそうだが」

 俺たちがいるのはバルバリザーク王国の門の外側で、背後に集まりつつある師団と兵を眺めているとその間を割るように白虎とその上に乗るペロがやってきた。

「マタタビ殿、ジュウゴ殿、伝令である。今より十分後、初陣突撃。作戦開始である」

「わかった。伝えてこよう」

 そう言って、ジュウゴはアヤメの下へ向かった。

 初陣――この場からは俺たち三人と白虎、それに巫女を捜すためにと頼み込んだペロ。ウッドビーズからはスコーピオン率いる第一師団が。フィルドブルからはタナトス率いる第四師団がリバーエッジに攻め入る。そして場が混乱したら各陣営で防衛しつつ圧していく算段だ。荒い作戦だが、下手に策を弄するより最終的には力押しで勝負は決する。まぁ、ジュウゴの言う通り俺たちのやることは変わらない。

 鋼鉄の籠手を着けても普通に動けるようにはなったし、良い頃合いだ。

「マタタビよ、気が付いているか?」

 戻ってくるや否やジュウゴは小声で問い掛けてきた。

「ヤバい気配についてか? 多分いるよな、強い奴が」

「おそらくアヤメは気が付いていない」

「それほど余裕が無い、ってことか?」

「いや、俺様の獲物ってことだ」

「ああ、そういうこと……任せるよ」

 俺には露払いのほうがお似合いだ。

 そうこうしている間に十分が経ち、レオがやってきた。ちなみにどの陣営にも加わっていないクルシュ王子は城の守りを固めている。

「さぁ、人間としての意地を見せるときだ! 尊厳を示せ! デーモン共を皆殺しにするぞぉおお!」

 後ろじゃあ大層盛り上がっているが、先陣を切るこっちはすこぶる冷静だ。

「ジュウゴ、アヤメ。開幕の合図だ」

 そう言えば、ジュウゴとアヤメはそれぞれ手の中に火の球と重力の球を作り上げ、リバーエッジで待ち構えるデーモンたちに向かって放り投げた。すると、二つの球はデーモンたち数十人を吹き飛ばして開戦の雄叫びが上がった。

「行くぞ、貴様等」

 三人と二匹が歩き出し、徐々に速度を増していく。

 ジュウゴとペロは剣を抜き、アヤメは体を浮かし、白虎は威嚇するように喉を鳴らしがら牙を剥いた。

 デーモン側は剣や槍を構えて迎え撃つ準備万端って感じだ。

「俺が行く」

 前に出てデーモンたちの数メートル前で急ブレーキを掛けながら、振り上げた腕に捻りを伝えながら地面を殴り付けた。その瞬間、デーモンたちの立つ地面が突き出るように隆起して十数体を吹き飛ばした。

 鋼鉄の籠手のおかげで出来た新しい技だ。名付けて黒豹流武術・筍抜根。捻りの力を地面に伝えて斜め方向に突き上げるの技だが、元より広範囲攻撃を持っていなかったから多用することになりそうだ。

 そして、戦いが始まった。

 ジュウゴとアヤメはデーモンを倒しつつ、どんどん内側へと進んでいくが俺はそうもいかない。地道にコツコツと近くにいる奴らの骨を折り、内臓を破壊していくしかない。

 白虎は俺からあまり離れずに戦っているが、ペロはデーモンたちの間を抜けながら所々にある家の中を確認して回っている。

 籠手のおかげでデーモンの攻撃を避けずに受けることができるから戦いやすくはなっているがさすがに数が多い。

「五千は多い、なっ!」

 掴んだデーモンを投げ飛ばし、他のデーモンにぶつかったところに飛び蹴りを食らわせれば背後の数体含めて吹き飛んでいった。

 そろそろ武器を出したいところだが、これだけ囲まれていてはまだ効力を発揮できない。

「――ん?」

 先に進んでいたジュウゴとアヤメがデーモンを殺しながら引き返してきた。

「どうした?」

「人間だ」

「ん?」

 戻ってきたジュウゴに問い掛ければ一言答えが返ってきただけで俺の周りのデーモンに剣を振り下ろし始めた。じゃあ、とアヤメのほうに視線を向ければ眉間に皺を寄せて近寄ってきたデーモンに掌を向けて、動きを止めた。

「奴ら――人間を盾にしていますわ」

「……ん?」

 聞いてもいまいち良くわからなかったが軍勢の先を見て、言っていることの意味がわかった。

「ああ、人間の盾、か」

 盾のように構えた板に、血を流し傷だらけの人間が張り付けられている。その数、凡そ二十から三十ってところか。広範囲攻撃が主で人間まで傷付けてしまう可能性が高い二人は下手に攻撃できない。アヤメは未だしもジュウゴなら躊躇うことなく人間諸共殺すと思っていたのだが――まぁ、それはいい。

「じゃあ、俺が動きを止めるからその間にアヤメの力で盾ごと人間を回収しろ。できるだろ?」

「ええ、奴らが手を放しさえすれば可能ですわ」

「よし。それまでの間、ジュウゴは周りのデーモンたちを頼む。ペロ!」

 呼べば、ペロはすぐにやってきた。

「なんであるか?」

「人間盾を持っている奴らの動きを止める。手伝ってくれ」

「なるほど。お任せあれ」

 牽制するように近寄ってくるデーモンたちに向かって駆け出し跳び上がった。体を捻り回して――地面に足、膝に加えて拳を振り下ろす。

「黒豹流武術――竹林根切・改!」

 これも鋼鉄の籠手のおかげで改良を加えた技だが、要は触れる面積が多い分だけ威力が上がるというわけだ。そのせいもあってか振り返ったところにいるジュウゴとアヤメも地面の揺れに耐えていたが、力とは関係ないのか盾を浮かせて王国のほうへと飛ばしていった。

 揺れに耐えて盾を放さないデーモンたちにはペロが剣を突き立てて盾を掴む腕を斬り放していく。

「白虎、アヤメを守れ!」

 人間盾を防衛ラインまで運ぶアヤメは白虎に任せて、俺とジュウゴは盾を失ったデーモンたちに居直った。

「これで躊躇いなく殺せるな。人間を虐めた罪をその身に刻め!」

 炎を纏った剣でデーモンを切り刻んでいくジュウゴに続いて、俺は討ち漏らされたデーモンを殺していく。恨みは無いが戦争だ。少なくともそちらが殺す気でいる限りは、こちらも殺す。

「さて――っ!」

 リバーエッジの北西は都市の名にもなっている川が流れる山があるのだが、そっちのほうから背筋が凍るほどの寒気を感じた。

 ジュウゴのほうに問い掛けるように視線を向ければ、不敵な笑みを浮かべ山のほうを凝視していた。

「あいつは俺様の獲物だ!」

 そう言って足から炎を吹き出して飛んでいくジュウゴを止めることは出来ない。力を合わせなければ勝つことは難しい、とか言っていた張本人がそれを守らないのかよ。

 おそらくさっきの寒気は殺気だろう。どれだけ強い敵であろうとも一対一なら心配はしていないが、どれだけの数がいるかわからない以上は俺も後を追うしかない。だが、今はそれよりも確認しなければならないことがある。

「マタタビ殿!」

「わかっている。この先に人間が捕らえられているはずだ」

 人間の盾が出てきた時点で、この付近に人間を捕らえている場所があるのは間違いない。

「……頃合いだな」

 手を合わせて籠手を破竹へと変化させた。

 この場を基点にして援軍を待つ。そして、ペロが捜している巫女を見つけ出すんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

魔法使いの国で無能だった少年は、魔物使いとして世界を救う旅に出る

ムーン
ファンタジー
完結しました! 魔法使いの国に生まれた少年には、魔法を扱う才能がなかった。 無能と蔑まれ、両親にも愛されず、優秀な兄を頼りに何年も引きこもっていた。 そんなある日、国が魔物の襲撃を受け、少年の魔物を操る能力も目覚める。 能力に呼応し現れた狼は少年だけを助けた。狼は少年を息子のように愛し、少年も狼を母のように慕った。 滅びた故郷を去り、一人と一匹は様々な国を渡り歩く。 悪魔の家畜として扱われる人間、退廃的な生活を送る天使、人との共存を望む悪魔、地の底に封印された堕天使──残酷な呪いを知り、凄惨な日常を知り、少年は自らの能力を平和のために使うと決意する。 悪魔との契約や邪神との接触により少年は人間から離れていく。対価のように精神がすり減り、壊れかけた少年に狼は寄り添い続けた。次第に一人と一匹の絆は親子のようなものから夫婦のようなものに変化する。 狂いかけた少年の精神は狼によって繋ぎ止められる。 やがて少年は数多の天使を取り込んで上位存在へと変転し、出生も狼との出会いもこれまでの旅路も……全てを仕組んだ邪神と対決する。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...