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リバーエッジ
第二十話 奪還作戦Ⅲ
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そして三日が経ち、リバーエッジ奪還作戦決行日。
作戦はシンプルだ。レオが指揮を執るバルバリザーク王国・ルネが指揮を執るウッドビーズ・リブラが指揮を執るフィルドブルの三方向から同時にリバーエッジを攻める。勝利条件は二つ。デーモンたちの撤退か、皆殺し。
「上手くいくと思うか?」
「我らの戦力は申し分ない。内通者がいるかもしれない、という点での疑問であれば――そちらについても問題はないはずだ」
「どちらかと言えば、あっちが大丈夫かってことだけどな」
視線の先にはリバーエッジのほうを見据えるアヤメの姿が。この三日で落ち着くどころか、むしろ研ぎ澄まされたような気がする。
「そちらについても問題は無い。アヤメもわかっているはずだ。我らがどれほど強くとも力を合わせなければ勝つことは難しい。どれだけ心が乱れていようとやることは変わらない。敵を殺すだけだ」
「まぁ、そりゃあそうだが」
俺たちがいるのはバルバリザーク王国の門の外側で、背後に集まりつつある師団と兵を眺めているとその間を割るように白虎とその上に乗るペロがやってきた。
「マタタビ殿、ジュウゴ殿、伝令である。今より十分後、初陣突撃。作戦開始である」
「わかった。伝えてこよう」
そう言って、ジュウゴはアヤメの下へ向かった。
初陣――この場からは俺たち三人と白虎、それに巫女を捜すためにと頼み込んだペロ。ウッドビーズからはスコーピオン率いる第一師団が。フィルドブルからはタナトス率いる第四師団がリバーエッジに攻め入る。そして場が混乱したら各陣営で防衛しつつ圧していく算段だ。荒い作戦だが、下手に策を弄するより最終的には力押しで勝負は決する。まぁ、ジュウゴの言う通り俺たちのやることは変わらない。
鋼鉄の籠手を着けても普通に動けるようにはなったし、良い頃合いだ。
「マタタビよ、気が付いているか?」
戻ってくるや否やジュウゴは小声で問い掛けてきた。
「ヤバい気配についてか? 多分いるよな、強い奴が」
「おそらくアヤメは気が付いていない」
「それほど余裕が無い、ってことか?」
「いや、俺様の獲物ってことだ」
「ああ、そういうこと……任せるよ」
俺には露払いのほうがお似合いだ。
そうこうしている間に十分が経ち、レオがやってきた。ちなみにどの陣営にも加わっていないクルシュ王子は城の守りを固めている。
「さぁ、人間としての意地を見せるときだ! 尊厳を示せ! デーモン共を皆殺しにするぞぉおお!」
後ろじゃあ大層盛り上がっているが、先陣を切るこっちはすこぶる冷静だ。
「ジュウゴ、アヤメ。開幕の合図だ」
そう言えば、ジュウゴとアヤメはそれぞれ手の中に火の球と重力の球を作り上げ、リバーエッジで待ち構えるデーモンたちに向かって放り投げた。すると、二つの球はデーモンたち数十人を吹き飛ばして開戦の雄叫びが上がった。
「行くぞ、貴様等」
三人と二匹が歩き出し、徐々に速度を増していく。
ジュウゴとペロは剣を抜き、アヤメは体を浮かし、白虎は威嚇するように喉を鳴らしがら牙を剥いた。
デーモン側は剣や槍を構えて迎え撃つ準備万端って感じだ。
「俺が行く」
前に出てデーモンたちの数メートル前で急ブレーキを掛けながら、振り上げた腕に捻りを伝えながら地面を殴り付けた。その瞬間、デーモンたちの立つ地面が突き出るように隆起して十数体を吹き飛ばした。
鋼鉄の籠手のおかげで出来た新しい技だ。名付けて黒豹流武術・筍抜根。捻りの力を地面に伝えて斜め方向に突き上げるだけの技だが、元より広範囲攻撃を持っていなかったから多用することになりそうだ。
そして、戦いが始まった。
ジュウゴとアヤメはデーモンを倒しつつ、どんどん内側へと進んでいくが俺はそうもいかない。地道にコツコツと近くにいる奴らの骨を折り、内臓を破壊していくしかない。
白虎は俺からあまり離れずに戦っているが、ペロはデーモンたちの間を抜けながら所々にある家の中を確認して回っている。
籠手のおかげでデーモンの攻撃を避けずに受けることができるから戦いやすくはなっているがさすがに数が多い。
「五千は多い、なっ!」
掴んだデーモンを投げ飛ばし、他のデーモンにぶつかったところに飛び蹴りを食らわせれば背後の数体含めて吹き飛んでいった。
そろそろ武器を出したいところだが、これだけ囲まれていてはまだ効力を発揮できない。
「――ん?」
先に進んでいたジュウゴとアヤメがデーモンを殺しながら引き返してきた。
「どうした?」
「人間だ」
「ん?」
戻ってきたジュウゴに問い掛ければ一言答えが返ってきただけで俺の周りのデーモンに剣を振り下ろし始めた。じゃあ、とアヤメのほうに視線を向ければ眉間に皺を寄せて近寄ってきたデーモンに掌を向けて、動きを止めた。
「奴ら――人間を盾にしていますわ」
「……ん?」
聞いてもいまいち良くわからなかったが軍勢の先を見て、言っていることの意味がわかった。
「ああ、人間の盾、か」
盾のように構えた板に、血を流し傷だらけの人間が張り付けられている。その数、凡そ二十から三十ってところか。広範囲攻撃が主で人間まで傷付けてしまう可能性が高い二人は下手に攻撃できない。アヤメは未だしもジュウゴなら躊躇うことなく人間諸共殺すと思っていたのだが――まぁ、それはいい。
「じゃあ、俺が動きを止めるからその間にアヤメの力で盾ごと人間を回収しろ。できるだろ?」
「ええ、奴らが手を放しさえすれば可能ですわ」
「よし。それまでの間、ジュウゴは周りのデーモンたちを頼む。ペロ!」
呼べば、ペロはすぐにやってきた。
「なんであるか?」
「人間盾を持っている奴らの動きを止める。手伝ってくれ」
「なるほど。お任せあれ」
牽制するように近寄ってくるデーモンたちに向かって駆け出し跳び上がった。体を捻り回して――地面に足、膝に加えて拳を振り下ろす。
「黒豹流武術――竹林根切・改!」
これも鋼鉄の籠手のおかげで改良を加えた技だが、要は触れる面積が多い分だけ威力が上がるというわけだ。そのせいもあってか振り返ったところにいるジュウゴとアヤメも地面の揺れに耐えていたが、力とは関係ないのか盾を浮かせて王国のほうへと飛ばしていった。
揺れに耐えて盾を放さないデーモンたちにはペロが剣を突き立てて盾を掴む腕を斬り放していく。
「白虎、アヤメを守れ!」
人間盾を防衛ラインまで運ぶアヤメは白虎に任せて、俺とジュウゴは盾を失ったデーモンたちに居直った。
「これで躊躇いなく殺せるな。人間を虐めた罪をその身に刻め!」
炎を纏った剣でデーモンを切り刻んでいくジュウゴに続いて、俺は討ち漏らされたデーモンを殺していく。恨みは無いが戦争だ。少なくともそちらが殺す気でいる限りは、こちらも殺す。
「さて――っ!」
リバーエッジの北西は都市の名にもなっている川が流れる山があるのだが、そっちのほうから背筋が凍るほどの寒気を感じた。
ジュウゴのほうに問い掛けるように視線を向ければ、不敵な笑みを浮かべ山のほうを凝視していた。
「あいつは俺様の獲物だ!」
そう言って足から炎を吹き出して飛んでいくジュウゴを止めることは出来ない。力を合わせなければ勝つことは難しい、とか言っていた張本人がそれを守らないのかよ。
おそらくさっきの寒気は殺気だろう。どれだけ強い敵であろうとも一対一なら心配はしていないが、どれだけの数がいるかわからない以上は俺も後を追うしかない。だが、今はそれよりも確認しなければならないことがある。
「マタタビ殿!」
「わかっている。この先に人間が捕らえられているはずだ」
人間の盾が出てきた時点で、この付近に人間を捕らえている場所があるのは間違いない。
「……頃合いだな」
手を合わせて籠手を破竹へと変化させた。
この場を基点にして援軍を待つ。そして、ペロが捜している巫女を見つけ出すんだ。
作戦はシンプルだ。レオが指揮を執るバルバリザーク王国・ルネが指揮を執るウッドビーズ・リブラが指揮を執るフィルドブルの三方向から同時にリバーエッジを攻める。勝利条件は二つ。デーモンたちの撤退か、皆殺し。
「上手くいくと思うか?」
「我らの戦力は申し分ない。内通者がいるかもしれない、という点での疑問であれば――そちらについても問題はないはずだ」
「どちらかと言えば、あっちが大丈夫かってことだけどな」
視線の先にはリバーエッジのほうを見据えるアヤメの姿が。この三日で落ち着くどころか、むしろ研ぎ澄まされたような気がする。
「そちらについても問題は無い。アヤメもわかっているはずだ。我らがどれほど強くとも力を合わせなければ勝つことは難しい。どれだけ心が乱れていようとやることは変わらない。敵を殺すだけだ」
「まぁ、そりゃあそうだが」
俺たちがいるのはバルバリザーク王国の門の外側で、背後に集まりつつある師団と兵を眺めているとその間を割るように白虎とその上に乗るペロがやってきた。
「マタタビ殿、ジュウゴ殿、伝令である。今より十分後、初陣突撃。作戦開始である」
「わかった。伝えてこよう」
そう言って、ジュウゴはアヤメの下へ向かった。
初陣――この場からは俺たち三人と白虎、それに巫女を捜すためにと頼み込んだペロ。ウッドビーズからはスコーピオン率いる第一師団が。フィルドブルからはタナトス率いる第四師団がリバーエッジに攻め入る。そして場が混乱したら各陣営で防衛しつつ圧していく算段だ。荒い作戦だが、下手に策を弄するより最終的には力押しで勝負は決する。まぁ、ジュウゴの言う通り俺たちのやることは変わらない。
鋼鉄の籠手を着けても普通に動けるようにはなったし、良い頃合いだ。
「マタタビよ、気が付いているか?」
戻ってくるや否やジュウゴは小声で問い掛けてきた。
「ヤバい気配についてか? 多分いるよな、強い奴が」
「おそらくアヤメは気が付いていない」
「それほど余裕が無い、ってことか?」
「いや、俺様の獲物ってことだ」
「ああ、そういうこと……任せるよ」
俺には露払いのほうがお似合いだ。
そうこうしている間に十分が経ち、レオがやってきた。ちなみにどの陣営にも加わっていないクルシュ王子は城の守りを固めている。
「さぁ、人間としての意地を見せるときだ! 尊厳を示せ! デーモン共を皆殺しにするぞぉおお!」
後ろじゃあ大層盛り上がっているが、先陣を切るこっちはすこぶる冷静だ。
「ジュウゴ、アヤメ。開幕の合図だ」
そう言えば、ジュウゴとアヤメはそれぞれ手の中に火の球と重力の球を作り上げ、リバーエッジで待ち構えるデーモンたちに向かって放り投げた。すると、二つの球はデーモンたち数十人を吹き飛ばして開戦の雄叫びが上がった。
「行くぞ、貴様等」
三人と二匹が歩き出し、徐々に速度を増していく。
ジュウゴとペロは剣を抜き、アヤメは体を浮かし、白虎は威嚇するように喉を鳴らしがら牙を剥いた。
デーモン側は剣や槍を構えて迎え撃つ準備万端って感じだ。
「俺が行く」
前に出てデーモンたちの数メートル前で急ブレーキを掛けながら、振り上げた腕に捻りを伝えながら地面を殴り付けた。その瞬間、デーモンたちの立つ地面が突き出るように隆起して十数体を吹き飛ばした。
鋼鉄の籠手のおかげで出来た新しい技だ。名付けて黒豹流武術・筍抜根。捻りの力を地面に伝えて斜め方向に突き上げるだけの技だが、元より広範囲攻撃を持っていなかったから多用することになりそうだ。
そして、戦いが始まった。
ジュウゴとアヤメはデーモンを倒しつつ、どんどん内側へと進んでいくが俺はそうもいかない。地道にコツコツと近くにいる奴らの骨を折り、内臓を破壊していくしかない。
白虎は俺からあまり離れずに戦っているが、ペロはデーモンたちの間を抜けながら所々にある家の中を確認して回っている。
籠手のおかげでデーモンの攻撃を避けずに受けることができるから戦いやすくはなっているがさすがに数が多い。
「五千は多い、なっ!」
掴んだデーモンを投げ飛ばし、他のデーモンにぶつかったところに飛び蹴りを食らわせれば背後の数体含めて吹き飛んでいった。
そろそろ武器を出したいところだが、これだけ囲まれていてはまだ効力を発揮できない。
「――ん?」
先に進んでいたジュウゴとアヤメがデーモンを殺しながら引き返してきた。
「どうした?」
「人間だ」
「ん?」
戻ってきたジュウゴに問い掛ければ一言答えが返ってきただけで俺の周りのデーモンに剣を振り下ろし始めた。じゃあ、とアヤメのほうに視線を向ければ眉間に皺を寄せて近寄ってきたデーモンに掌を向けて、動きを止めた。
「奴ら――人間を盾にしていますわ」
「……ん?」
聞いてもいまいち良くわからなかったが軍勢の先を見て、言っていることの意味がわかった。
「ああ、人間の盾、か」
盾のように構えた板に、血を流し傷だらけの人間が張り付けられている。その数、凡そ二十から三十ってところか。広範囲攻撃が主で人間まで傷付けてしまう可能性が高い二人は下手に攻撃できない。アヤメは未だしもジュウゴなら躊躇うことなく人間諸共殺すと思っていたのだが――まぁ、それはいい。
「じゃあ、俺が動きを止めるからその間にアヤメの力で盾ごと人間を回収しろ。できるだろ?」
「ええ、奴らが手を放しさえすれば可能ですわ」
「よし。それまでの間、ジュウゴは周りのデーモンたちを頼む。ペロ!」
呼べば、ペロはすぐにやってきた。
「なんであるか?」
「人間盾を持っている奴らの動きを止める。手伝ってくれ」
「なるほど。お任せあれ」
牽制するように近寄ってくるデーモンたちに向かって駆け出し跳び上がった。体を捻り回して――地面に足、膝に加えて拳を振り下ろす。
「黒豹流武術――竹林根切・改!」
これも鋼鉄の籠手のおかげで改良を加えた技だが、要は触れる面積が多い分だけ威力が上がるというわけだ。そのせいもあってか振り返ったところにいるジュウゴとアヤメも地面の揺れに耐えていたが、力とは関係ないのか盾を浮かせて王国のほうへと飛ばしていった。
揺れに耐えて盾を放さないデーモンたちにはペロが剣を突き立てて盾を掴む腕を斬り放していく。
「白虎、アヤメを守れ!」
人間盾を防衛ラインまで運ぶアヤメは白虎に任せて、俺とジュウゴは盾を失ったデーモンたちに居直った。
「これで躊躇いなく殺せるな。人間を虐めた罪をその身に刻め!」
炎を纏った剣でデーモンを切り刻んでいくジュウゴに続いて、俺は討ち漏らされたデーモンを殺していく。恨みは無いが戦争だ。少なくともそちらが殺す気でいる限りは、こちらも殺す。
「さて――っ!」
リバーエッジの北西は都市の名にもなっている川が流れる山があるのだが、そっちのほうから背筋が凍るほどの寒気を感じた。
ジュウゴのほうに問い掛けるように視線を向ければ、不敵な笑みを浮かべ山のほうを凝視していた。
「あいつは俺様の獲物だ!」
そう言って足から炎を吹き出して飛んでいくジュウゴを止めることは出来ない。力を合わせなければ勝つことは難しい、とか言っていた張本人がそれを守らないのかよ。
おそらくさっきの寒気は殺気だろう。どれだけ強い敵であろうとも一対一なら心配はしていないが、どれだけの数がいるかわからない以上は俺も後を追うしかない。だが、今はそれよりも確認しなければならないことがある。
「マタタビ殿!」
「わかっている。この先に人間が捕らえられているはずだ」
人間の盾が出てきた時点で、この付近に人間を捕らえている場所があるのは間違いない。
「……頃合いだな」
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