放浪剣士は異世界ダンジョンを踏破する。

化茶ぬき

文字の大きさ
27 / 29

第26話 商会

しおりを挟む
 白堕を取り纏めている商会を潰そうと思う――そう伝えたジョニーの反応は淡泊だった。

「おお、いいんじゃねぇの? ギルドのほうでも結構問題になってたし、大々的に動くくらいならうちみてぇな小さなクランがやったほうがいい。好きにやれよ」

 淡泊と言うか、薄情のような気もするが。

 とりあえず商会を潰す許可を得たわけだが、ジョニーはまたも朝から外出中。有益な情報でもあれば、と思っていたが頼りにならないのはわかり切っている。

「そんじゃあ、どうする? 商会を潰すと言っても、正面から乗り込んで首謀者全員をぶっ飛ばすだけじゃ意味が無いからな」

「にゃっ……戦わない、のかにゃ?」

「いや、その可能性もゼロじゃないが、ただ組織を潰すだけでは意味が無い。売る奴と買う奴、どちらも潰した上で白堕の安全を保証する場が必要になる」

「……手が足りませんね」

「だな。とはいえ、俺たちに頼れる相手はいないし、とりあえずは売り手である商会を潰せればいいが、少なくとも白堕の安全は確保しないと」

「ギルドはダメなんでしょうか?」

「もし受け入れてくれるんなら、今まで放置していないだろ」

「うちのクランじゃダメにゃのかにゃ?」

 その言葉に、俺とヨミは同時にドロレスへと視線を向けた。

「……現在、確認できているだけで約二十名の白堕が商会に所属しています。その全てを受け入れるのは、さすがに無理ですね」

 なんとなく受け入れるのはクランじゃないほうが良い気もしている。冒険者がどうのではなく、もっと別の――しがらみの無い生き方をするべきだ。仮にそれで、ボグが仲間にならなかったとしても。

「受け入れ先を探すのは後にして、一先ず商会を潰してから考える、というのではダメなんですか?」

「ダメってことは無いが……仮に、俺らが商会を潰して白堕たちを自由の身にさせたとして――これで君らは自由だ。でも後のことは何も決まってない。一緒に考えよう――なんて奴ら、信用できるか? 少なくとも、最後まで全う出来ない者に人を救う資格は無い。と俺は思う」

「確かに。正鵠です。生活と仕事、そして安全を保障できない限りは――」

「二人とも、何を言ってるにゃん? 生活と仕事、安全は……まぁ、たぶん大丈夫にゃと思うけど――うちがあるにゃ」

「うち? ってのはネイルの……ああ、西にあるネイルの実家か?」

「そうにゃ。人手は足りてにゃいし、ボクの家族ににゃら任せられるにゃん」

「頼めるんですか?」

「ボクのお願いを断ることはできにゃいからにゃ。というわけで、手紙を書いて出してくるにゃ!」

 駆け出していったネイルを見送って。

「これで受け入れ先は確保できましたが……商会がある場所はわかっているんですか?」

 ヨミの視線がドロレスに向かう。

「商会は中央都市より東に位置する廃墟に拠点を構えています」

「居場所がわかっているのに放置している理由は?」

「それは、私の関知できるところではないので」

 売り手がいて、買い手がいる。それを、この世界で最も上位組織であるはずのギルドが放置しているとなると――政治か? さすがに元の世界では普通の高校生だった俺には、そういう組織間のいざこざや有力者云々についてはよくわからない。とはいえ、好きにしろと言われた以上は好きにする。責任はジョニーが取ってくれるはずだ。たぶん。

「……じゃあ、役割を決めよう」

「それは商会に踏み込んだ時の役割、でしょうか?」

「だな。俺たちは三人しかいないから効率的に動く必要がある。まず、室内侵入組は俺とネイルだ。ネイルの鼻ならどこにいるかわからない白堕たちを見付けることができるだろう。その隙に、俺は親玉を叩く」

「……私は何を?」

「ヨミの能力は外のほうが活かされる。だから、もしも外に別の仲間がいた時のための対処と、中から出てきた奴らを任せたい」

「捕らえるってことですか?」

「そこが俺にもわからないんだが、捕らえたところで意味はあるのか? 罰則も何も無いんじゃあ同じことの繰り返しだろ。白堕たちが安心できない」

「その点については大丈夫だと思います。ジョニー様が動いているはずですので」

「本当に大丈夫か? あの飲んだくれで」

「飲んだくれではありますが――切れます。信用してください」

 信用に足るだけの行動をしてくれれば疑うことも無いんだが。

「白堕の受け入れ先もある。商会を仕切ってる奴らの行く末も決まった。となれば――行くか」

「え、今からですか?」

「早いに越したことは無い。それに俺たちにはこれといった準備も必要ないからな。ネイル」

「にゃっ?」

 階段から下りてきたネイルを呼べば、耳がピンと立った。

「行けるか?」

「もちろんにゃ!」

「はぁ……まぁ、いいですけどね」

 ネイルが書いてきた手紙はドロレスに渡して、それぞれが装備を整えて玄関に集合した。

「では、お気を付けていってらっしゃいませ」

 何かを確信しているような眼に見送られ――中央都市、東側にある門を通り抜け、枯れ木の森を進んでいけば廃墟が見えてきた。

「突っ込むのかにゃ?」

「いや……どう思う? ヨミ」

「日が暮れるのを待ったほうがいいかもしれません。今なら白堕を救い出すことは容易いかもしれませんが、全員がいる確証もなければこの場にいない商会の人間が逃げて、また同じことが繰り返される可能性もありますので」

「にゃははっ、夜なら夜目が効く獣人の領域にゃん」

「とは言っても、ネイルは室内侵入組だけどな。……暫くは待機か」

 ヨミの言っていることは正しい。一網打尽にして、白堕を救い出せることが一番だが――本来であれば、それは俺たちの仕事では無い。

 白堕を救い出し、安全な場所で保護するまではいいが、組織の解体やら摘発はもっと別の然るべきところが行うべき案件だと思うが……おそらく、それでは本当の意味でボグからの信用は得られない気がする。

 まぁ、それもこれも全て俺の勘だ。始めから終わりまで――徹頭徹尾、勘でしか進んでいなくてさすがに荷が重くなってきた。



 三時間後――日暮れ。

 廃墟からは気付かれない距離にある枯れ大木の陰で、先程まで昼寝をしていたネイルが伸びをした。

「んにゃっ、そろそろ出番かにゃ?」

「すみません、フドーさん。監視を任せてしまって」

「いや、せめてこれくらいの役には立たないとな」

「それで、商会の者は集まっていますか?」

「全部で何人いるのかはわからないが、馬車が二台。少なくとも武装している奴が五人はいたな」

 それだけなはずは無いから、凡そ白堕と同じ数――二十人はいると考えるべきかな。

「にゃっはっは! 戦いにゃ!」

「外は私にお任せください。お二人は存分に」

「ネイルもヨミも、基本は不殺だ。あくまでも俺たちは無限回廊に挑戦する冒険者だからな。人殺しじゃない」

 これが終わってボグを仲間にできれば、やっと無限回廊に行ける。女帝・エレスとの御前試合からたったの数日だけだが、随分と長い間モンスターと戦っていない気がする。

 どうにも未だに人と戦うのは苦手意識がある。元の世界のことを考えれば当然だが――おかしな話、モンスターとの純粋な命の殺り取りのほうがよほど楽だ。

 とはいえ、俺の蒔いた種なわけで、俺がやらないわけにもいかない。

 ……さぁ、行こうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

世界最強の七賢者がお世話係の俺にだけはデレデレすぎる件

Y.
恋愛
国の頂点に君臨し、神にも等しい力を持つ『七賢者』。 火・水・風・土・光・闇・氷の属性を極めた彼女たちは、畏怖の対象として国民から崇められていた。 ――だが、その「聖域」の扉を一枚隔てた先では、とんでもない光景が広がっていた。 「アルトぉ、この服脱がせてー。熱いから魔法で燃やしちゃった」 「……アルトが隣にいないと、私、一生布団から出ないから」 「いいじゃない、減るもんじゃないし。さあ、私と混ざり合いましょう?」 彼女たちの正体は、私生活が壊滅的にポンコツで、特定の一人に依存しきったデレデレな美少女たちだった! 魔法の才能ゼロの雑用係・アルトは、世界で唯一「彼女たちの暴走魔力に耐えられる」という理由で、24時間体制の身の回りのお世話をすることに。 着替え、食事の介助、添い寝(!?)まで……。 世界最強の7人に取り合われ、振り回され、いじり倒される。 胃袋と心根をガッチリ掴んだお世話係と、愛が重すぎる最強ヒロインたちによる、至福の異世界ハーレムラブコメ、開幕!

処理中です...