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転職・アクセサリー職人
第十八話 御前会議
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時はサンジュウシが初めて鑑定所に訪れてアクセサリーの鑑定を済ませた少し後に遡る――ここはキャニオンビレッジの先、ダンジョン・大砂漠にある洞窟の中。
地面に腰を下ろし酒を酌み交わす髭を蓄えた十一人の大男たちの中にはキャニオンビレッジで商人だったサンジュウシと取引をした山賊のボスもいた。
「さて、お前ら。定期会合なわけだが……金集めが悪過ぎる。儂が指定した額に達したのは何人だ? 手を挙げてみろ」ドスの利いた声によって、おずおずと手を挙げたのは三人だけだった。「少ねぇよなぁ。どんなことをしてもいいと言ったはずだ。それぞれに使える道具も渡したはずだ。それなのにこの体たらく――どうする? おめぇら一回死ぬか?」
その言葉に場が凍り付き、全員が酒を飲む手を止めた。
だが、その中の一人が静かに手を挙げた。
「頭取、ちょっといいですか?」
「ん? ケイジュか。なんだ?」
「実は金になりそうな話がありまして……」
「お前のところの稼ぎは足りているだろ。多めに上げる分には構わないが、それで他の奴の足りない分を補うのは許さねぇぞ」
「ええ、わかっています。とりあえず話を聞いてもらえますか?」問い掛けると渋々ながらも頷いた頭取を見て、ケイジュは言葉を続けた。「俺の受け持ちはクロムシティ付近なのは知っていると思いますが、街には何人かうちの密偵と言いますか……要は金になりそうな情報を持ってくる奴がいるんです。その中の一人が鑑定所にいまして、数日前にある物を鑑定したらしいのです」
「まどろっこしい。ある物とはなんだ?」
「これです」
取り出した物を投げると、頭取は目も向けずに受け取った。
「……魔アクセか? こんなもんダンジョンでザラに手に入るだろ」
「いえ、どうやら作った物のようです」
「それも珍しくはねぇな。腕の良い職人なら素材があれば狙って作れるし、腕の悪い職人でも百個に一個はまぐれで作れる」言いながら酒を飲み、凄むような視線を向けると首を傾げた。「違うか?」
「その通りです。ですが、問題はこれを作ったのが新人の職人で、狙ってもいないのに百個のうち三十個以上が魔アクセサリーだった、と。すべてがそれかそれ以上のクオリティーで、です」
すると、話を聞いていた全員がざわつき始めた。その中には当然、サンジュウシのことを知っている山賊のボスもいるが、アクセサリーを作ったのが同じ人物だとは知る由も無い。
「無自覚の天才ということか……たしかに手駒にできれば金の生る木になりそうだが――」頭取の話に耳を傾ける九人をぐるっと見回すと、ケイジュにアクセサリーを投げ返した。「何か考えがあるのか?」
「あります。どうやらこの職人、街ではちょっとした人気者らしく人知れず連れ去るのは難しい。そして、おそらく勧誘にも乗ってこないでしょう。なので、まずは弱味を握るための人員と、それを利用するための人員が欲しいのです」
「上手くいく保証は?」
「クロムシティはうちの庭です」言って、手の中のアクセサリーを見詰めると静かに鼻息を出した。「八割程度でしょうか」
「なら、好きな奴と組め。但し、稼ぎが合わせた分に届かなければ、その分はお前に払ってもらうぞ。ケイジュ」
「問題ありません。では――イカイ、サイリ、それにノロ。手を貸してくれ」
名前を呼び酒瓶を掲げると三人も同じように瓶を掲げ、一斉に飲み干した。
「珍しく同盟が出来上がったってところだな。期待しているぞ、お前ら」
「お任せください。ああ、ただ一つだけ」ケイジュが人差し指を立てると、ニヤリと笑ってみせた。「クロムシティにいるハンター共と戦争になる可能性がある、とだけ言っておきます」
「ふんっ。過程はどうあれ金さえ持って来れば何をしようと構わん。好きにしろ」
頭取の許可を得た瞬間に先程できたばかりの同盟四人が静かにほくそ笑んだ。
つまり、四人はこの場に来る前から打ち合わせ済みだったということだ。それぞれがそれぞれの役割を分担するために――彼らは頭取すらも欺こうとしていた。
しかし、そこは十人の荒くれ者を束ねる頭取だ。全てを理解した上で、知らぬ振りをした上で許可を出していた。
頭取が行う定期会合。別名・御前会議。そこには――山賊、海賊、盗賊などあらゆる厄介者がいる。
もちろん、サンジュウシはそのことを知らない。元よりゲーム内にはモンスター以外の敵はいなかったのだ。
戦争になる可能性がある――しかし、その事実についてサンジュウシは知る由も無い。
地面に腰を下ろし酒を酌み交わす髭を蓄えた十一人の大男たちの中にはキャニオンビレッジで商人だったサンジュウシと取引をした山賊のボスもいた。
「さて、お前ら。定期会合なわけだが……金集めが悪過ぎる。儂が指定した額に達したのは何人だ? 手を挙げてみろ」ドスの利いた声によって、おずおずと手を挙げたのは三人だけだった。「少ねぇよなぁ。どんなことをしてもいいと言ったはずだ。それぞれに使える道具も渡したはずだ。それなのにこの体たらく――どうする? おめぇら一回死ぬか?」
その言葉に場が凍り付き、全員が酒を飲む手を止めた。
だが、その中の一人が静かに手を挙げた。
「頭取、ちょっといいですか?」
「ん? ケイジュか。なんだ?」
「実は金になりそうな話がありまして……」
「お前のところの稼ぎは足りているだろ。多めに上げる分には構わないが、それで他の奴の足りない分を補うのは許さねぇぞ」
「ええ、わかっています。とりあえず話を聞いてもらえますか?」問い掛けると渋々ながらも頷いた頭取を見て、ケイジュは言葉を続けた。「俺の受け持ちはクロムシティ付近なのは知っていると思いますが、街には何人かうちの密偵と言いますか……要は金になりそうな情報を持ってくる奴がいるんです。その中の一人が鑑定所にいまして、数日前にある物を鑑定したらしいのです」
「まどろっこしい。ある物とはなんだ?」
「これです」
取り出した物を投げると、頭取は目も向けずに受け取った。
「……魔アクセか? こんなもんダンジョンでザラに手に入るだろ」
「いえ、どうやら作った物のようです」
「それも珍しくはねぇな。腕の良い職人なら素材があれば狙って作れるし、腕の悪い職人でも百個に一個はまぐれで作れる」言いながら酒を飲み、凄むような視線を向けると首を傾げた。「違うか?」
「その通りです。ですが、問題はこれを作ったのが新人の職人で、狙ってもいないのに百個のうち三十個以上が魔アクセサリーだった、と。すべてがそれかそれ以上のクオリティーで、です」
すると、話を聞いていた全員がざわつき始めた。その中には当然、サンジュウシのことを知っている山賊のボスもいるが、アクセサリーを作ったのが同じ人物だとは知る由も無い。
「無自覚の天才ということか……たしかに手駒にできれば金の生る木になりそうだが――」頭取の話に耳を傾ける九人をぐるっと見回すと、ケイジュにアクセサリーを投げ返した。「何か考えがあるのか?」
「あります。どうやらこの職人、街ではちょっとした人気者らしく人知れず連れ去るのは難しい。そして、おそらく勧誘にも乗ってこないでしょう。なので、まずは弱味を握るための人員と、それを利用するための人員が欲しいのです」
「上手くいく保証は?」
「クロムシティはうちの庭です」言って、手の中のアクセサリーを見詰めると静かに鼻息を出した。「八割程度でしょうか」
「なら、好きな奴と組め。但し、稼ぎが合わせた分に届かなければ、その分はお前に払ってもらうぞ。ケイジュ」
「問題ありません。では――イカイ、サイリ、それにノロ。手を貸してくれ」
名前を呼び酒瓶を掲げると三人も同じように瓶を掲げ、一斉に飲み干した。
「珍しく同盟が出来上がったってところだな。期待しているぞ、お前ら」
「お任せください。ああ、ただ一つだけ」ケイジュが人差し指を立てると、ニヤリと笑ってみせた。「クロムシティにいるハンター共と戦争になる可能性がある、とだけ言っておきます」
「ふんっ。過程はどうあれ金さえ持って来れば何をしようと構わん。好きにしろ」
頭取の許可を得た瞬間に先程できたばかりの同盟四人が静かにほくそ笑んだ。
つまり、四人はこの場に来る前から打ち合わせ済みだったということだ。それぞれがそれぞれの役割を分担するために――彼らは頭取すらも欺こうとしていた。
しかし、そこは十人の荒くれ者を束ねる頭取だ。全てを理解した上で、知らぬ振りをした上で許可を出していた。
頭取が行う定期会合。別名・御前会議。そこには――山賊、海賊、盗賊などあらゆる厄介者がいる。
もちろん、サンジュウシはそのことを知らない。元よりゲーム内にはモンスター以外の敵はいなかったのだ。
戦争になる可能性がある――しかし、その事実についてサンジュウシは知る由も無い。
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