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休職・ボランティア
第二十四話 大広湖
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ダンジョン・樹海林の先――ダンジョン・大広湖の中を三人は進んでいた。
大広湖とは、地面の八割が水没しているようなダンジョンで、そのほとんどは足首ほどの深さでハンターにとっては少し動きにくい程度だが、一部は地面の下に広がる深い湖へと潜るための入口となっている。
そして、当然の如く湖の中にはモンスターがいて、ゲームのシステムとしては息が続く約十分の間は水中での戦闘も可能だったが、操作性の難しさも相俟ってサンジュウシが水の中に潜ることは少なかった。何よりも、水中では銃が使えない。
「道の端に気を付けろよ。特に角は下に繋がっていることが多い」
目を凝らし慎重に進んでいけば水の中に落ちることは少ないが、モンスターの接近にも注意を払っているおかげで地面だけを見下ろしながら歩くことは難しい。とはいえ、地図を覚えているサンジュウシは、あやふやだが大まかな場所を記憶している。
「別にボクは泳げるけれど、イミルは?」
「無理。そもそも、イミルは、キャニオンビレッジ出身、だから」
人見知りを発動して初めてサンジュウシと会った時のようにたどたどしい喋り方のイミルは先頭を行き、大剣を背負うホーンは後方を付いて来ている。
バシャバシャと水を蹴る度に波紋が広がっていく。
大広湖にいるモンスターといえば、当然のことながら魚類や両生類などが多く、その中でも特に多いのがグルゲリーターと呼ばれるワニのようなモンスターだ。
イミルが立ち止まった先にいるグルゲリーターを眺めながらホーンがサンジュウシを越えてきた。
「数は?」
「四匹」
「じゃあ、倒そう」大剣の柄を掴んだホーンは腕に力を込めた。「ボクが左を。イミルには右を頼む」
「わかった」
確認しあった二人は同時に飛び出していった。
「おーおー……頼もしいねぇ」
大剣で真っ二つに、双剣で切り刻まれていくグルゲリーターを眺めながら、サンジュウシは笑みを浮かべて呟いた。
戦いたくないサンジュウシにとって代わりに戦ってくれる者が二人もいる状況は嬉しくもあるが、考えてみればそもそも二人がいなければ戦う状況には陥っていない矛盾点に気が付くと、大きく溜め息を吐いた。
「まぁ、考えないのが正解だな」自分自身に言い聞かせるよう吐き出すと、グルゲリーターを解体し回収する二人の間を通り抜けた。「そいつはあまり金にならない。行くぞ」
先を行くサンジュウシを追いかけた二人は自然と挟むように位置取りをして進んでいく。
これまで大草原、キャニオンビレッジ、樹海林とダンジョンや町を行き来していたサンジュウシだったが、実は一度として共に行動するイミル以外のハンターを見かけたことは無かったのだが、ここ大広湖にて初めてハンターパーティーに遭遇した。
「戦っているのはオオミズコウか」
三人組のハンターが戦っているのはオオサンショウウオを巨大化させたようなモンスターだ。特徴は手足と尻尾に付いている毒と、足首までしかない深さの水でも素早く動くことができる俊敏性で、危険度は五。高ランクハンターであれば倒すコツさえ知っていれば容易いモンスターで、仮に倒し方を知らなくともそれなりの腕があるハンターならば地道に倒せるレベルだろう。
問題は、三人が向かう道を塞ぐように戦っているということだ。
「ボクが手を貸してこようか。そうすればすぐに――」
大剣に手を掛けて踏み出したホーンの腕をサンジュウシが制するように止めた。
「いや、戦闘中のパーティーに手を貸すのはマナー違反だ。同じモンスターを狙っていたとしても静観するのが暗黙の了解。ここは待つしかない」
どれだけ急いでいたとしても、サンジュウシは元ハンターなのだ。その辺りは弁えている。
「あっ」サンジュウシが戦闘を眺めていると、ハンターの一人が尻尾に吹き飛ばされた。「死んだか?」
「たぶん生きてるよ。毒は食らったと思うけど」
そのことに気が付いているのか、残った二人のハンターは勝ちを急ぐようにオオミズコウに止めを刺すと、倒れた仲間の下に駆け寄っていった。そして生きていることを確かめると安心したように肩を落としたが、背嚢の中に手を入れると焦り出した。
「ない――くそっ! さっき使ったので最後だったんだ!」慌てる二人を横目に通り過ぎようとするサンジュウシ一行に気が付くと目を見開いて詰め寄った。「商人! 頼む、解毒薬を売ってくれ!」
「ん、ああ」
寄られた勢いに圧されて解毒薬を渡したサンジュウシは金を受け取ってから自らの服装を思い出した。大した意味も無く、戦わないことの意志を示すために着ていた商人のローブが、この場で意味を持ったのだ。
「売ってしまって良かったのか?」
「まぁ、別に高いもんでもなければ金も貰ったしな」
薬を飲ませ毒気が引いていくのを見たハンターたちがサンジュウシに頭を下げたのを見て、三人は再びダンジョンを先に進んでいく。
ダンジョン・大広湖の特徴として突然モンスターと遭遇するというよりは待ち伏せされているところで襲われることが多い。故に、サンジュウシのスキルによって避けて進んでいるせいもありハンターと出会うことも少ないのだ。
「……思ったんだが、この世界って人は死ぬのか?」
「ん? 何を言ってるの?」
疑問符を浮かべるイミルから後ろにいるホーンに視線を向けたサンジュウシは理解したように頷いた。
「ああ、そういう感じか。悪い、変なことを訊いたな」
ゲームとしてはモンスターに倒されたハンター――つまり、プレイヤーは倒されたときにいたダンジョンの入口に強制的に移動させられる。定義としては『死ぬ』が、究極的には間違いなく『生き返る』。
しかし、毒で焦っていたハンターやイミルとホーンの反応を見て、サンジュウシは気が付いた。
「そうか……死ぬのか」
二人にも聞こえないように呟いたサンジュウシは、静かに溜め息を吐いた。
そうこうしているうちに地図に記された場所までやってくると、三人は足を止めた。
「え、ここで合ってる?」振り返るイミルにサンジュウシは手に持つ地図を広げて見せた。「……あ、ここだね」
広く見通しの良い場所だが、中央に生えている大樹が水面に影を作っている。
「ホーン、仲間がいる気配あるか?」
「気配はわからない。けれど、十中八九あそこだろうな」
指した先には大樹がある。
「まぁ、そこしかねぇが……」サンジュウシは考えるようにしゃがみ込んで水面に視線を落とした。「面倒なんだよな。ここ」
大広湖の中でもこの場所だけは訪れる度に地面の下にある湖へと落ちる穴が変わる。もちろん、目を凝らせば穴に落ちず進むことは出来るが、戦闘を好まないサンジュウシにとって一所に長居するのは得策ではない。とはいえ、進まなければならないのだが。
「そこ、気を付けろ。落ちるぞ」イミルに代わって先頭を行くサンジュウシは確実に落ちないよう注意を払いながら一歩ずつ足を踏み出していく。「あとは……ん?」
大樹まで残り数メートルに迫ったところで足を止めると、しゃがみ込んで水面に手を着いた。
「どうした?」
ホーンの問い掛けに、サンジュウシは溜め息を吐きながら立ち上がった。
「大樹の周りは全て穴だ」本来ならば大樹に近寄ることなく通り過ぎる場所なので、知らないのも無理はない。「……跳ぶしかないな。誰から行く?」
問い掛けると、二人の視線はサンジュウシに注がれた。
「俺からか。まぁ、これくらいは――」助走を付けて穴を跳び越えると大樹にぶつかった。「っと……よし、来い」
手を差し出してイミルを受け止め、次いでホーンを受け止めれば樹の幹に手を掛けた。
「登れそう?」
「ああ、行けそうだ。ホーンから行くか?」
「……そうだね。ボクから」
角族の生き残りがいるのなら、とホーンが真っ先に登り、次いでイミルが。最後にサンジュウシが登っていくと、樹の上には三人が乗っても十分すぎるスペースがあり、そこには生活に必要なもの一式が揃っていた。
「人が住んでいた痕跡あり、か」サンジュウシは置かれていた銃を手に取った。「角族か?」
「わからない。でも――」何かに気が付いたホーンは落ちていた欠片を拾った。「これは角結晶の一部だ。角族の角は死ぬまで欠けることは無い。つまり……」
「つまり、いたとしても死んでいる、と。その欠片、貸してくれ」欠片を受け取ると、サンジュウシは背嚢から角結晶を取り出した。「これとこれ……同じ色じゃないか?」
空に向けて透かしながら確認するのをイミルが覗き込んできた。
「あ~、そうかも。じゃあ、その角結晶はここから飛んできたってこと? ……どうやって?」
「それが問題だな。少なくとも樹海林と大草原を挟んでいるわけだし人為的とは思えないが――っ!」
疑問を呈したその時、大樹が大きく揺れて三人は一斉に水面へと視線を落とした。
「あれは……なんだ?」
ホーンの問い掛けに、イミルは首を傾げたがサンジュウシだけは焦ったように汗が滲み出してきた。
「あれは――」水面の飛び出たヒレのついた尻尾を見たサンジュウシは生唾を呑み込んだ。「フォルスドラゴン。危険度・九のモンスターだ」
この世界に来てから最も危険度の高いモンスター――つまり、最も強いモンスターと出くわしてしまった。しかも、完全に狙いを澄まされて。
「くそっ」
これだから同じ場所に長居するものじゃないんだ、という気持ちを前面に押し出した悪態を吐いたサンジュウシだったが、それは同時にイミルとホーンにも伝わっていた。
緊張は伝わり――伝染する。
この世界では人が死ぬのだ。
選択肢は二つしかない。生きるか、死ぬか、だ。
大広湖とは、地面の八割が水没しているようなダンジョンで、そのほとんどは足首ほどの深さでハンターにとっては少し動きにくい程度だが、一部は地面の下に広がる深い湖へと潜るための入口となっている。
そして、当然の如く湖の中にはモンスターがいて、ゲームのシステムとしては息が続く約十分の間は水中での戦闘も可能だったが、操作性の難しさも相俟ってサンジュウシが水の中に潜ることは少なかった。何よりも、水中では銃が使えない。
「道の端に気を付けろよ。特に角は下に繋がっていることが多い」
目を凝らし慎重に進んでいけば水の中に落ちることは少ないが、モンスターの接近にも注意を払っているおかげで地面だけを見下ろしながら歩くことは難しい。とはいえ、地図を覚えているサンジュウシは、あやふやだが大まかな場所を記憶している。
「別にボクは泳げるけれど、イミルは?」
「無理。そもそも、イミルは、キャニオンビレッジ出身、だから」
人見知りを発動して初めてサンジュウシと会った時のようにたどたどしい喋り方のイミルは先頭を行き、大剣を背負うホーンは後方を付いて来ている。
バシャバシャと水を蹴る度に波紋が広がっていく。
大広湖にいるモンスターといえば、当然のことながら魚類や両生類などが多く、その中でも特に多いのがグルゲリーターと呼ばれるワニのようなモンスターだ。
イミルが立ち止まった先にいるグルゲリーターを眺めながらホーンがサンジュウシを越えてきた。
「数は?」
「四匹」
「じゃあ、倒そう」大剣の柄を掴んだホーンは腕に力を込めた。「ボクが左を。イミルには右を頼む」
「わかった」
確認しあった二人は同時に飛び出していった。
「おーおー……頼もしいねぇ」
大剣で真っ二つに、双剣で切り刻まれていくグルゲリーターを眺めながら、サンジュウシは笑みを浮かべて呟いた。
戦いたくないサンジュウシにとって代わりに戦ってくれる者が二人もいる状況は嬉しくもあるが、考えてみればそもそも二人がいなければ戦う状況には陥っていない矛盾点に気が付くと、大きく溜め息を吐いた。
「まぁ、考えないのが正解だな」自分自身に言い聞かせるよう吐き出すと、グルゲリーターを解体し回収する二人の間を通り抜けた。「そいつはあまり金にならない。行くぞ」
先を行くサンジュウシを追いかけた二人は自然と挟むように位置取りをして進んでいく。
これまで大草原、キャニオンビレッジ、樹海林とダンジョンや町を行き来していたサンジュウシだったが、実は一度として共に行動するイミル以外のハンターを見かけたことは無かったのだが、ここ大広湖にて初めてハンターパーティーに遭遇した。
「戦っているのはオオミズコウか」
三人組のハンターが戦っているのはオオサンショウウオを巨大化させたようなモンスターだ。特徴は手足と尻尾に付いている毒と、足首までしかない深さの水でも素早く動くことができる俊敏性で、危険度は五。高ランクハンターであれば倒すコツさえ知っていれば容易いモンスターで、仮に倒し方を知らなくともそれなりの腕があるハンターならば地道に倒せるレベルだろう。
問題は、三人が向かう道を塞ぐように戦っているということだ。
「ボクが手を貸してこようか。そうすればすぐに――」
大剣に手を掛けて踏み出したホーンの腕をサンジュウシが制するように止めた。
「いや、戦闘中のパーティーに手を貸すのはマナー違反だ。同じモンスターを狙っていたとしても静観するのが暗黙の了解。ここは待つしかない」
どれだけ急いでいたとしても、サンジュウシは元ハンターなのだ。その辺りは弁えている。
「あっ」サンジュウシが戦闘を眺めていると、ハンターの一人が尻尾に吹き飛ばされた。「死んだか?」
「たぶん生きてるよ。毒は食らったと思うけど」
そのことに気が付いているのか、残った二人のハンターは勝ちを急ぐようにオオミズコウに止めを刺すと、倒れた仲間の下に駆け寄っていった。そして生きていることを確かめると安心したように肩を落としたが、背嚢の中に手を入れると焦り出した。
「ない――くそっ! さっき使ったので最後だったんだ!」慌てる二人を横目に通り過ぎようとするサンジュウシ一行に気が付くと目を見開いて詰め寄った。「商人! 頼む、解毒薬を売ってくれ!」
「ん、ああ」
寄られた勢いに圧されて解毒薬を渡したサンジュウシは金を受け取ってから自らの服装を思い出した。大した意味も無く、戦わないことの意志を示すために着ていた商人のローブが、この場で意味を持ったのだ。
「売ってしまって良かったのか?」
「まぁ、別に高いもんでもなければ金も貰ったしな」
薬を飲ませ毒気が引いていくのを見たハンターたちがサンジュウシに頭を下げたのを見て、三人は再びダンジョンを先に進んでいく。
ダンジョン・大広湖の特徴として突然モンスターと遭遇するというよりは待ち伏せされているところで襲われることが多い。故に、サンジュウシのスキルによって避けて進んでいるせいもありハンターと出会うことも少ないのだ。
「……思ったんだが、この世界って人は死ぬのか?」
「ん? 何を言ってるの?」
疑問符を浮かべるイミルから後ろにいるホーンに視線を向けたサンジュウシは理解したように頷いた。
「ああ、そういう感じか。悪い、変なことを訊いたな」
ゲームとしてはモンスターに倒されたハンター――つまり、プレイヤーは倒されたときにいたダンジョンの入口に強制的に移動させられる。定義としては『死ぬ』が、究極的には間違いなく『生き返る』。
しかし、毒で焦っていたハンターやイミルとホーンの反応を見て、サンジュウシは気が付いた。
「そうか……死ぬのか」
二人にも聞こえないように呟いたサンジュウシは、静かに溜め息を吐いた。
そうこうしているうちに地図に記された場所までやってくると、三人は足を止めた。
「え、ここで合ってる?」振り返るイミルにサンジュウシは手に持つ地図を広げて見せた。「……あ、ここだね」
広く見通しの良い場所だが、中央に生えている大樹が水面に影を作っている。
「ホーン、仲間がいる気配あるか?」
「気配はわからない。けれど、十中八九あそこだろうな」
指した先には大樹がある。
「まぁ、そこしかねぇが……」サンジュウシは考えるようにしゃがみ込んで水面に視線を落とした。「面倒なんだよな。ここ」
大広湖の中でもこの場所だけは訪れる度に地面の下にある湖へと落ちる穴が変わる。もちろん、目を凝らせば穴に落ちず進むことは出来るが、戦闘を好まないサンジュウシにとって一所に長居するのは得策ではない。とはいえ、進まなければならないのだが。
「そこ、気を付けろ。落ちるぞ」イミルに代わって先頭を行くサンジュウシは確実に落ちないよう注意を払いながら一歩ずつ足を踏み出していく。「あとは……ん?」
大樹まで残り数メートルに迫ったところで足を止めると、しゃがみ込んで水面に手を着いた。
「どうした?」
ホーンの問い掛けに、サンジュウシは溜め息を吐きながら立ち上がった。
「大樹の周りは全て穴だ」本来ならば大樹に近寄ることなく通り過ぎる場所なので、知らないのも無理はない。「……跳ぶしかないな。誰から行く?」
問い掛けると、二人の視線はサンジュウシに注がれた。
「俺からか。まぁ、これくらいは――」助走を付けて穴を跳び越えると大樹にぶつかった。「っと……よし、来い」
手を差し出してイミルを受け止め、次いでホーンを受け止めれば樹の幹に手を掛けた。
「登れそう?」
「ああ、行けそうだ。ホーンから行くか?」
「……そうだね。ボクから」
角族の生き残りがいるのなら、とホーンが真っ先に登り、次いでイミルが。最後にサンジュウシが登っていくと、樹の上には三人が乗っても十分すぎるスペースがあり、そこには生活に必要なもの一式が揃っていた。
「人が住んでいた痕跡あり、か」サンジュウシは置かれていた銃を手に取った。「角族か?」
「わからない。でも――」何かに気が付いたホーンは落ちていた欠片を拾った。「これは角結晶の一部だ。角族の角は死ぬまで欠けることは無い。つまり……」
「つまり、いたとしても死んでいる、と。その欠片、貸してくれ」欠片を受け取ると、サンジュウシは背嚢から角結晶を取り出した。「これとこれ……同じ色じゃないか?」
空に向けて透かしながら確認するのをイミルが覗き込んできた。
「あ~、そうかも。じゃあ、その角結晶はここから飛んできたってこと? ……どうやって?」
「それが問題だな。少なくとも樹海林と大草原を挟んでいるわけだし人為的とは思えないが――っ!」
疑問を呈したその時、大樹が大きく揺れて三人は一斉に水面へと視線を落とした。
「あれは……なんだ?」
ホーンの問い掛けに、イミルは首を傾げたがサンジュウシだけは焦ったように汗が滲み出してきた。
「あれは――」水面の飛び出たヒレのついた尻尾を見たサンジュウシは生唾を呑み込んだ。「フォルスドラゴン。危険度・九のモンスターだ」
この世界に来てから最も危険度の高いモンスター――つまり、最も強いモンスターと出くわしてしまった。しかも、完全に狙いを澄まされて。
「くそっ」
これだから同じ場所に長居するものじゃないんだ、という気持ちを前面に押し出した悪態を吐いたサンジュウシだったが、それは同時にイミルとホーンにも伝わっていた。
緊張は伝わり――伝染する。
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選択肢は二つしかない。生きるか、死ぬか、だ。
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