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Round.3 乙女の媚薬作戦、薬師も巻き添え
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恋愛指南書に導かれた令嬢は、ついに「禁断の一手」に踏み切る——
それは、宮廷一の知恵者である魔法薬師の力を借りることだった。
恋する乙女の行動力を、決して侮ってはいけない。
特に、祖母の恋愛指南書という「秘密兵器」を手にした時には——
「今度こそ、必ず成功させますわ!」
午後の陽射しが差し込む自室で、カミラは拳を握りしめていた。手にした『淑女のための恋愛指南書』が、まるで彼女の決意に共鳴するように温かく光っている。
昨日の作戦は部分的に成功だった。アシュランが自分の仕草に反応し、他の男性の前ではするな、と嫉妬まで見せてくれた——
「でも、まだ足りませんわ」
指南書の第七の秘訣のページを開くと、そこには刺激的な文字が踊っていた。
『第七の秘訣:より積極的な戦略——媚薬という選択肢』
『男性の心を完全に揺さぶりたい時、古来より女性たちが用いてきたとっておきの手段があります。それは、愛の魔法薬——媚薬の使用です。ただし、これは諸刃の剣。使用には細心の注意と、信頼できる魔法薬師の協力が不可欠です』
カミラは首を傾げた。
「媚薬って……一体何ですの?」
指南書には詳しい説明が書かれていない。ただ、『男性の心を揺さぶる』『とっておきの手段』という言葉に、何となく特別なものだということは伝わってくる。
「でも、アシュラン様はいつも冷静でいらして……」
普通のアプローチでは、彼の頑固な「結婚まで待つ」という方針を崩せそうにない。
「よし、決めましたわ」
カミラは立ち上がり、指南書を胸に抱いた。この謎の『媚薬』について、専門家に聞いてみよう。
「ルシアンに相談しましょう」
*
王宮の地下にある魔法薬師の工房は、色とりどりの薬草と魔法の道具で満ち溢れていた。天井から吊り下げられた薬草の束が、微かに甘い香りを放っている。
棚には様々な形の瓶が並び、中で光る液体や煙を吐く粉末が蠢いている。壁に掛けられた魔法陣からは、一定のリズムで魔力が脈動していた。
「……また貴女ですか」
振り返ったその瞳は氷のように冷たく、その声は静かに響いた。
彼は、宮廷付きの魔法薬師ルシアン・ベルモント。濃紺のローブに身を包み、耳にかかるほどの黒髪は無駄なく整えられ、光を受けて冷ややかに揺れる。完璧すぎるほど整った顔立ちに、目の下のクマだけが人間的な翳りを添えていた。
きっと毎夜、研究に没頭しているのだろう。その証拠に、彼の瞳は常に鋭く冷たく、近寄りがたい雰囲気を醸し出している。王宮の女性たちは皆、彼に憧れながらも恐れをなして近づけずにいた。
「ルシアン!お疲れさまですわ」
カミラは満面の笑みで駆け寄った。幼なじみ特有の遠慮のなさで。
「……どうせろくでもない用件でしょう。アシュラン王子との件で何か企んでいるに違いない」
ルシアンは呆れたように溜息をついた。この二人の恋愛騒動には、子どもの頃から散々巻き込まれてきたのだ。
「さすがルシアン、よく分かりますわね」
「貴女とアシュラン王子が絡む時は、必ず面倒事になる。私はそれを幼い頃から嫌というほど見てきました」
ルシアンは手にしていた薬瓶を、やや乱暴に棚に戻した。
「まあまあ、そう怒らないで。今回は本当に困っているんですの」
カミラは指南書を胸に抱きながら、上目遣いで見つめる。この技は昔からルシアンに通用していた。
「……はあ。で、今度は何をやらかすつもりですか」
「実は……その……」
カミラは頬を染めながら、手にした指南書のページを見つめた。
「媚薬というものについて、教えていただきたくて」
「……は?」
ルシアンの手が完全に止まった。
「媚薬って、一体どんなものなんですの?指南書に書いてあったのですが、詳しいことが分からなくて」
「……カミラ。貴女、媚薬が何なのか知らずに私に聞きに来たんですか」
「はい!きっとルシアンなら何でも知ってると思って」
カミラの無邪気な笑顔に、ルシアンは頭を抱えた。
「……まったく、貴女という人は」
ルシアンは深い溜息をつく。
「媚薬というのは、相手の……その……恋愛感情を人為的に高めたり、時には操ったりする魔法薬のことです」
「まあ、そんなものがあるんですの?」
カミラの瞳がきらりと輝いた。
「それなら、アシュラン様に――」
「絶対にだめです」
ルシアンの声が一段と低くなった。彼が本気で怒った時の声だ。
「なぜですの?」
「貴女は一体何を考えているんですか。媚薬がどれほど危険な代物か、少しは想像してください」
ルシアンの瞳が、危険な光を帯びた。
「人の心を操るような薬など、倫理に反します。それに、そんなもので得た愛情に、一体何の意味があるというのですか」
「そ、そうですの……」
カミラは肩をすくめた。ルシアンが怒ると、王宮中の魔法使いでも震え上がる。
「でも、他に方法が……」
「……まったく」
ルシアンは深い溜息をついた。そして、少し考えるように沈黙した。
「ただし」
「え?」
「『恋心を穏やかに高める』程度の、極めて安全な薬草なら、話は別です」
カミラの瞳が再び輝いた。
「本当ですの?」
「既に心の中にある想いを、少しだけ表に出しやすくする程度のものです。相手に恋愛感情がなければ全く効果はありませんし、嫌がることを強要することもできません」
「それで十分ですわ!」
カミラは身を乗り出した。
「しかし、厳しい条件があります」
「条件?」
「第一に、相手を傷つけるような使い方は絶対にしないこと」
「もちろんです」
「第二に、効果が現れても、相手が嫌がった時は絶対に引き下がること」
「はい」
「第三に、私を二度とこんなことに巻き込まないこと」
最後の条件に、カミラは苦笑いを浮かべた。
「……努力します」
「努力じゃなくて約束してください」
「はい、約束しますわ」
ルシアンは仕方なさそうに頷いた。
「それでは、『アモーレブレンド』の作り方をお教えしましょう」
*
「アモーレブレンドといっても、特別複雑な調合をするわけではありません」
ルシアンは棚から小さな包みを取り出した。動作の一つ一つが無駄なく美しい。
「これは『ロゼクール』という薬草です。恋する気持ちを穏やかに高める効果があります」
薄桃色の可愛らしい葉だった。手に取ると、ほのかに甘い香りがする。
「通常の紅茶に少量加えるだけです。ただし……」
「ただし?」
「作り手の純粋な愛情がないと、効果は現れません」
「愛情?」
「相手を陥れよう、騙そうという気持ちでは無効。純粋に相手を愛し、幸せになりたいという想いが込められていることが条件です」
カミラは胸に手を当てた。自分の気持ちは純粋だろうか。
(陥れる?そんなつもり毛頭ありませんわ)
「大丈夫です。私の気持ちは純粋ですわ」
「……そう願いたいものですね」
ルシアンは少し表情を和らげた。
「アシュラン王子は貴女を深く愛していらっしゃいます。しかし、それ故に自制していらっしゃるのです」
「自制?」
「王子は貴女を大切に思うがゆえに、結婚前に手を出すことを良しとしていらっしゃらない。貴女を守ろうとされているのです」
カミラの心が温かくなった。
「だから、アモーレブレンドで王子のお気持ちが表に出やすくなっても、最終的には貴女が『安心感』を与えてあげることが重要です」
「安心感……」
「『私を愛していることを、素直に表現してもいいんだ』と、王子に感じさせてあげることです」
ルシアンの言葉に、カミラは深く頷いた。
「分かりました。ありがとうございます、ルシアン」
「……まったく、なぜ私がこんなことを」
ルシアンは薬草の包みを彼女に手渡しながらぼやいた。
「くれぐれも量は控えめに。そして、二度と私を巻き込まないでください」
*
その日の夕方、カミラは自室でティーセットの準備をしていた。
アモーレブレンドの準備は思っているより緊張する作業だった。まず、いつもより丁寧に茶葉を選び、湯温も慎重に調整する。
「作り手の愛情が大切……」
カミラは茶葉にロゼクールを少量混ぜながら、アシュランへの想いを込めた。
『アシュラン様、あなたを愛しています。あなたの優しさも、私を大切にしてくれる気持ちも、全て理解しています。だから、もう少しだけ、素直になってください』
温めたティーポットに茶葉を入れ、適温のお湯を注ぐ。すると、ふわりと甘い香りが立ち上った。普通の紅茶よりも、どこか魅惑的な香りだ。
「まあ、良い香り……」
5分ほど蒸らしてから、美しいカップに注ぐ。薄桃色に染まった紅茶は、まるで夕焼け空のようだった。
準備完了。あとは、アシュランを自室に招くだけだ。
*
「カミラから招待状?」
アシュランは執務室で、使用人から手渡された手紙を開いた。可愛らしい便箋に、カミラの丁寧な文字で書かれている。
『アシュラン様
お忙しい毎日をお過ごしのことと存じます。
もしお時間がございましたら、お茶でもいかがでしょうか。
美味しい紅茶をご用意してお待ちしております。
カミラ』
「また何か企んでいるな……」
アシュランは苦笑いを浮かべた。最近のカミラは明らかに何かを仕掛けてくる。
でも、彼女の健気な努力は愛おしい。今度はどんな作戦を練ってきたのだろう。
「分かりました。お受けいたしますとお伝えください」
*
カミラの部屋は、いつもより丁寧に飾り付けられていた。薔薇の花が活けられ、魔法の明かりが暖かく部屋を照らしている。
「いらっしゃいませ、アシュラン様」
カミラは最高の笑顔で王子を迎えた。今日は特に可愛らしく、薄青のドレスが彼女の美しさを引き立てている。
「お招きありがとう。今日はまた、特別に良い香りがするね」
アシュランが座ると、カミラは愛情を込めて淹れた紅茶を差し出した。
「特別な茶葉を使いましたの。きっとお気に召すと思います」
「ありがとう」
アシュランはカップを受け取り、香りを確かめた。
「確かに、普通の紅茶とは違うね。とても……甘い香りがする」
アシュランの瞳に、一瞬鋭い光が宿った。この香り、どこか魔法的な気配がする。まさか……。
(カミラ、今度は何を混ぜたんだい?)
しかし、アシュランは何も言わずに紅茶を口にした。
「美味しいよ。何だか心が暖かくなる味だ」
「良かったですわ」
カミラは安堵の表情を見せた。そして、指南書で学んだ仕草を実践しながら、自然に会話を進める。
アシュランも普通に応えていたが、内心では考えていた。
(間違いない。何かが混ざっている。おそらく、感情を高める系の薬草だろう)
魔法に敏感な王族として、薬草の微妙な魔力も察知できる。しかし、害のないものだと分かると、アシュランは苦笑いを浮かべた。
(まったく……君はいつもそうやって一生懸命で)
カミラの健気な努力を見ていると、少しくらい付き合ってあげたくなる。そして、二杯目を飲み終える頃——
ふと、身体が暖かくなってきた。心臓が、ドクン、と大きな音を立てる。
(これは……)
最初は演技のつもりで始めた優しい言葉が、いつの間にか本心から出てくるようになっていた。
「カミラ……」
アシュランは二杯目を飲み終えると、わざと少し甘い声で呼びかけた。
「はい」
「君は本当に愛らしいね」
いつもより優しい言葉に、カミラの心が跳ねた。アモーレブレンドの効果が現れているのかもしれない。
「ありがとうございます」
カミラは上目遣いで答える。
「特に、その瞳が……まるで星が宿っているみたいだ」
アシュランの視線が、いつもより暖かいものを含んでいた。これは演技のつもりだった。カミラの企みに付き合ってあげようという優しさで。
「アシュラン様……」
カミラは席を立ち、アシュランの隣に座った。
「どうしたんだい?」
「もっと近くで、お話ししたくて」
カミラの肩がアシュランの腕に触れる。すると、王子の呼吸が少し荒くなった。
(あれ……?)
アシュランは困惑した。冷静に騙されているフリをしているはずの自分の身体がやけに熱い。カミラの肩から伝わる体温に心臓が大きく跳ねた。
「カミラ……君は本当に、僕の心を揺さぶるのが上手だね」
「そんなつもりはありませんわ」
「でも、こんなに近くにいられると……君の香りが、僕の全てを包み込んでしまいそうだ」
アシュランの手が、自然にカミラの頬に触れた。最初は演技のつもりだったのに、いつの間にか本当に触れたくなっていた。
(これは……薬のせい?それとも……)
「アシュラン様……」
「君にはかなわないなあ」
いつも綺麗な笑顔を貼り付けているアシュランからは見慣れないへにゃりとした笑顔。
その表情と言葉は、もはや演技ではなかった。アモーレブレンドが彼の心の奥深くに眠っていた想いを表面に押し上げていく。
「いつも君を見ていると、胸が暖かくなる。君の笑顔が一番美しいよ」
心臓が早鐘の様に鳴り始め、呼吸も荒くなる。
(これは…本当に効いているのか?それとも……)
「アシュラン様、婚約者として……、もう少し関係を深めたいのです……」
カミラの瞳に涙が浮かんだ。
「本当に?」
こくんと頷く涙目のカミラにアシュランはいつもの冷静さを取り繕うことも難しかった。カミラの手を取った。薬草の効果なのか、はたまた本望か、自身でもどちらか分からなかったがこのまま自分の欲望に身を任せてしまおうか。アシュランはそんなことを考える。
「君の手は、こんなにも小さくて暖かい……まるで陽だまりに触れているようだ」
アシュランの声が、いつもより低く、甘く響く。身体の奥から湧き上がってくる熱が、彼の声にも影響を与えていた。
「カミラ……」
アシュランがカミラに顔を近づけてくる。
カミラの心臓が激しく鼓動した。ついに……ついに!
しかし、その瞬間。
「……だめだ」
アシュランが突然立ち上がった。熱くなった身体に冷や水を浴びせるように、意志の力で自分を制した。
「え?」
最後の一線で、アシュランが踏みとどまった。アモーレブレンドが効いているからこそ、今カミラに手を出すわけにはいかない。
「やっぱり、今はまだ早すぎる」
アシュランは頭を振った。
「なぜですの?」
カミラは困惑した。今度こそ成功するかと思ったのに。
「君は純真すぎるんだ。僕が君の清らかさを損なうわけにはいかない」
「損なうだなんて……」
「結婚するまで、君は完璧な淑女でいなければならない。それが君のためなんだ」
アシュランの言葉は優しいが、固い決意に満ちていた。
「でも……」
「カミラ」
アシュランはカミラを見つめた。その瞳に、複雑な感情が宿っている。
胸の鼓動の速さに、薬草の気配を悟りながらも──
アシュランはただ微笑んだ。
「時が来れば分かる。必ず、君を幸せにしてみせるから」
アシュランはカミラの額にキスをして、部屋を出て行った。
*
一人になったカミラは、テーブルに突っ伏した。
「また失敗……」
アモーレブレンド作戦も、結局は阻まれてしまった。
「でも……」
カミラは顔を上げた。
「次こそは……」
カミラは指南書を開いた。
「あきらめませんわ。必ず、アシュラン様の心を完全に奪ってみせます」
*
翌日の午後、カミラは再びルシアンの工房を訪れていた。
「……また貴女ですか。私は王宮の薬師であって、恋愛指南係ではないのですが」
ルシアンは振り返ると、明らかに迷惑そうな表情を浮かべた。
「どうだったんですか、アモーレブレンドは」
「効果はありました。アシュラン様がいつもとは違う雰囲気で」
「それは良かった。では、もうこれで――」
「でも、やっぱり最後は止められてしまいました」
カミラの言葉に、ルシアンの表情が険しくなった。
「……まさか、もっと強力なものをとか言わないでしょうね」
「いえいえ!そんなつもりはありませんわ」
カミラは慌てて手を振った。
「ただ、他に方法はないかと……」
「私に頼らず、自分で考えてください」
ルシアンは冷たく言い放った。
「魔法に頼るのではなく、アシュラン王子の心に直接働きかける方法を」
「心に直接?」
「王子が『結婚まで待つ』理由を理解し、それに対する答えを示すことです」
ルシアンの言葉に、カミラはハッとした。
「アシュラン様が私を大切に思ってくださっているから、待とうとされているのですものね」
「その通りです。でしたら――」
「私の方から、『大丈夫』だと伝えれば良いのですわね」
カミラの瞳が輝いた。
「私に二度と関わらせないという条件でなら、その通りです」
「ありがとうございます、ルシアン!」
カミラは立ち上がった。
「今度こそ、成功させてみせますわ」
恋愛指南書を胸に抱きながら、カミラは工房を後にした。
その後ろ姿を見送りながら、ルシアンは小さく溜息をついた。目の下のクマが、少し濃くなったような気がする。
「……まったく、いつまで私を巻き込む気なんですか、あの二人は」
それは、宮廷一の知恵者である魔法薬師の力を借りることだった。
恋する乙女の行動力を、決して侮ってはいけない。
特に、祖母の恋愛指南書という「秘密兵器」を手にした時には——
「今度こそ、必ず成功させますわ!」
午後の陽射しが差し込む自室で、カミラは拳を握りしめていた。手にした『淑女のための恋愛指南書』が、まるで彼女の決意に共鳴するように温かく光っている。
昨日の作戦は部分的に成功だった。アシュランが自分の仕草に反応し、他の男性の前ではするな、と嫉妬まで見せてくれた——
「でも、まだ足りませんわ」
指南書の第七の秘訣のページを開くと、そこには刺激的な文字が踊っていた。
『第七の秘訣:より積極的な戦略——媚薬という選択肢』
『男性の心を完全に揺さぶりたい時、古来より女性たちが用いてきたとっておきの手段があります。それは、愛の魔法薬——媚薬の使用です。ただし、これは諸刃の剣。使用には細心の注意と、信頼できる魔法薬師の協力が不可欠です』
カミラは首を傾げた。
「媚薬って……一体何ですの?」
指南書には詳しい説明が書かれていない。ただ、『男性の心を揺さぶる』『とっておきの手段』という言葉に、何となく特別なものだということは伝わってくる。
「でも、アシュラン様はいつも冷静でいらして……」
普通のアプローチでは、彼の頑固な「結婚まで待つ」という方針を崩せそうにない。
「よし、決めましたわ」
カミラは立ち上がり、指南書を胸に抱いた。この謎の『媚薬』について、専門家に聞いてみよう。
「ルシアンに相談しましょう」
*
王宮の地下にある魔法薬師の工房は、色とりどりの薬草と魔法の道具で満ち溢れていた。天井から吊り下げられた薬草の束が、微かに甘い香りを放っている。
棚には様々な形の瓶が並び、中で光る液体や煙を吐く粉末が蠢いている。壁に掛けられた魔法陣からは、一定のリズムで魔力が脈動していた。
「……また貴女ですか」
振り返ったその瞳は氷のように冷たく、その声は静かに響いた。
彼は、宮廷付きの魔法薬師ルシアン・ベルモント。濃紺のローブに身を包み、耳にかかるほどの黒髪は無駄なく整えられ、光を受けて冷ややかに揺れる。完璧すぎるほど整った顔立ちに、目の下のクマだけが人間的な翳りを添えていた。
きっと毎夜、研究に没頭しているのだろう。その証拠に、彼の瞳は常に鋭く冷たく、近寄りがたい雰囲気を醸し出している。王宮の女性たちは皆、彼に憧れながらも恐れをなして近づけずにいた。
「ルシアン!お疲れさまですわ」
カミラは満面の笑みで駆け寄った。幼なじみ特有の遠慮のなさで。
「……どうせろくでもない用件でしょう。アシュラン王子との件で何か企んでいるに違いない」
ルシアンは呆れたように溜息をついた。この二人の恋愛騒動には、子どもの頃から散々巻き込まれてきたのだ。
「さすがルシアン、よく分かりますわね」
「貴女とアシュラン王子が絡む時は、必ず面倒事になる。私はそれを幼い頃から嫌というほど見てきました」
ルシアンは手にしていた薬瓶を、やや乱暴に棚に戻した。
「まあまあ、そう怒らないで。今回は本当に困っているんですの」
カミラは指南書を胸に抱きながら、上目遣いで見つめる。この技は昔からルシアンに通用していた。
「……はあ。で、今度は何をやらかすつもりですか」
「実は……その……」
カミラは頬を染めながら、手にした指南書のページを見つめた。
「媚薬というものについて、教えていただきたくて」
「……は?」
ルシアンの手が完全に止まった。
「媚薬って、一体どんなものなんですの?指南書に書いてあったのですが、詳しいことが分からなくて」
「……カミラ。貴女、媚薬が何なのか知らずに私に聞きに来たんですか」
「はい!きっとルシアンなら何でも知ってると思って」
カミラの無邪気な笑顔に、ルシアンは頭を抱えた。
「……まったく、貴女という人は」
ルシアンは深い溜息をつく。
「媚薬というのは、相手の……その……恋愛感情を人為的に高めたり、時には操ったりする魔法薬のことです」
「まあ、そんなものがあるんですの?」
カミラの瞳がきらりと輝いた。
「それなら、アシュラン様に――」
「絶対にだめです」
ルシアンの声が一段と低くなった。彼が本気で怒った時の声だ。
「なぜですの?」
「貴女は一体何を考えているんですか。媚薬がどれほど危険な代物か、少しは想像してください」
ルシアンの瞳が、危険な光を帯びた。
「人の心を操るような薬など、倫理に反します。それに、そんなもので得た愛情に、一体何の意味があるというのですか」
「そ、そうですの……」
カミラは肩をすくめた。ルシアンが怒ると、王宮中の魔法使いでも震え上がる。
「でも、他に方法が……」
「……まったく」
ルシアンは深い溜息をついた。そして、少し考えるように沈黙した。
「ただし」
「え?」
「『恋心を穏やかに高める』程度の、極めて安全な薬草なら、話は別です」
カミラの瞳が再び輝いた。
「本当ですの?」
「既に心の中にある想いを、少しだけ表に出しやすくする程度のものです。相手に恋愛感情がなければ全く効果はありませんし、嫌がることを強要することもできません」
「それで十分ですわ!」
カミラは身を乗り出した。
「しかし、厳しい条件があります」
「条件?」
「第一に、相手を傷つけるような使い方は絶対にしないこと」
「もちろんです」
「第二に、効果が現れても、相手が嫌がった時は絶対に引き下がること」
「はい」
「第三に、私を二度とこんなことに巻き込まないこと」
最後の条件に、カミラは苦笑いを浮かべた。
「……努力します」
「努力じゃなくて約束してください」
「はい、約束しますわ」
ルシアンは仕方なさそうに頷いた。
「それでは、『アモーレブレンド』の作り方をお教えしましょう」
*
「アモーレブレンドといっても、特別複雑な調合をするわけではありません」
ルシアンは棚から小さな包みを取り出した。動作の一つ一つが無駄なく美しい。
「これは『ロゼクール』という薬草です。恋する気持ちを穏やかに高める効果があります」
薄桃色の可愛らしい葉だった。手に取ると、ほのかに甘い香りがする。
「通常の紅茶に少量加えるだけです。ただし……」
「ただし?」
「作り手の純粋な愛情がないと、効果は現れません」
「愛情?」
「相手を陥れよう、騙そうという気持ちでは無効。純粋に相手を愛し、幸せになりたいという想いが込められていることが条件です」
カミラは胸に手を当てた。自分の気持ちは純粋だろうか。
(陥れる?そんなつもり毛頭ありませんわ)
「大丈夫です。私の気持ちは純粋ですわ」
「……そう願いたいものですね」
ルシアンは少し表情を和らげた。
「アシュラン王子は貴女を深く愛していらっしゃいます。しかし、それ故に自制していらっしゃるのです」
「自制?」
「王子は貴女を大切に思うがゆえに、結婚前に手を出すことを良しとしていらっしゃらない。貴女を守ろうとされているのです」
カミラの心が温かくなった。
「だから、アモーレブレンドで王子のお気持ちが表に出やすくなっても、最終的には貴女が『安心感』を与えてあげることが重要です」
「安心感……」
「『私を愛していることを、素直に表現してもいいんだ』と、王子に感じさせてあげることです」
ルシアンの言葉に、カミラは深く頷いた。
「分かりました。ありがとうございます、ルシアン」
「……まったく、なぜ私がこんなことを」
ルシアンは薬草の包みを彼女に手渡しながらぼやいた。
「くれぐれも量は控えめに。そして、二度と私を巻き込まないでください」
*
その日の夕方、カミラは自室でティーセットの準備をしていた。
アモーレブレンドの準備は思っているより緊張する作業だった。まず、いつもより丁寧に茶葉を選び、湯温も慎重に調整する。
「作り手の愛情が大切……」
カミラは茶葉にロゼクールを少量混ぜながら、アシュランへの想いを込めた。
『アシュラン様、あなたを愛しています。あなたの優しさも、私を大切にしてくれる気持ちも、全て理解しています。だから、もう少しだけ、素直になってください』
温めたティーポットに茶葉を入れ、適温のお湯を注ぐ。すると、ふわりと甘い香りが立ち上った。普通の紅茶よりも、どこか魅惑的な香りだ。
「まあ、良い香り……」
5分ほど蒸らしてから、美しいカップに注ぐ。薄桃色に染まった紅茶は、まるで夕焼け空のようだった。
準備完了。あとは、アシュランを自室に招くだけだ。
*
「カミラから招待状?」
アシュランは執務室で、使用人から手渡された手紙を開いた。可愛らしい便箋に、カミラの丁寧な文字で書かれている。
『アシュラン様
お忙しい毎日をお過ごしのことと存じます。
もしお時間がございましたら、お茶でもいかがでしょうか。
美味しい紅茶をご用意してお待ちしております。
カミラ』
「また何か企んでいるな……」
アシュランは苦笑いを浮かべた。最近のカミラは明らかに何かを仕掛けてくる。
でも、彼女の健気な努力は愛おしい。今度はどんな作戦を練ってきたのだろう。
「分かりました。お受けいたしますとお伝えください」
*
カミラの部屋は、いつもより丁寧に飾り付けられていた。薔薇の花が活けられ、魔法の明かりが暖かく部屋を照らしている。
「いらっしゃいませ、アシュラン様」
カミラは最高の笑顔で王子を迎えた。今日は特に可愛らしく、薄青のドレスが彼女の美しさを引き立てている。
「お招きありがとう。今日はまた、特別に良い香りがするね」
アシュランが座ると、カミラは愛情を込めて淹れた紅茶を差し出した。
「特別な茶葉を使いましたの。きっとお気に召すと思います」
「ありがとう」
アシュランはカップを受け取り、香りを確かめた。
「確かに、普通の紅茶とは違うね。とても……甘い香りがする」
アシュランの瞳に、一瞬鋭い光が宿った。この香り、どこか魔法的な気配がする。まさか……。
(カミラ、今度は何を混ぜたんだい?)
しかし、アシュランは何も言わずに紅茶を口にした。
「美味しいよ。何だか心が暖かくなる味だ」
「良かったですわ」
カミラは安堵の表情を見せた。そして、指南書で学んだ仕草を実践しながら、自然に会話を進める。
アシュランも普通に応えていたが、内心では考えていた。
(間違いない。何かが混ざっている。おそらく、感情を高める系の薬草だろう)
魔法に敏感な王族として、薬草の微妙な魔力も察知できる。しかし、害のないものだと分かると、アシュランは苦笑いを浮かべた。
(まったく……君はいつもそうやって一生懸命で)
カミラの健気な努力を見ていると、少しくらい付き合ってあげたくなる。そして、二杯目を飲み終える頃——
ふと、身体が暖かくなってきた。心臓が、ドクン、と大きな音を立てる。
(これは……)
最初は演技のつもりで始めた優しい言葉が、いつの間にか本心から出てくるようになっていた。
「カミラ……」
アシュランは二杯目を飲み終えると、わざと少し甘い声で呼びかけた。
「はい」
「君は本当に愛らしいね」
いつもより優しい言葉に、カミラの心が跳ねた。アモーレブレンドの効果が現れているのかもしれない。
「ありがとうございます」
カミラは上目遣いで答える。
「特に、その瞳が……まるで星が宿っているみたいだ」
アシュランの視線が、いつもより暖かいものを含んでいた。これは演技のつもりだった。カミラの企みに付き合ってあげようという優しさで。
「アシュラン様……」
カミラは席を立ち、アシュランの隣に座った。
「どうしたんだい?」
「もっと近くで、お話ししたくて」
カミラの肩がアシュランの腕に触れる。すると、王子の呼吸が少し荒くなった。
(あれ……?)
アシュランは困惑した。冷静に騙されているフリをしているはずの自分の身体がやけに熱い。カミラの肩から伝わる体温に心臓が大きく跳ねた。
「カミラ……君は本当に、僕の心を揺さぶるのが上手だね」
「そんなつもりはありませんわ」
「でも、こんなに近くにいられると……君の香りが、僕の全てを包み込んでしまいそうだ」
アシュランの手が、自然にカミラの頬に触れた。最初は演技のつもりだったのに、いつの間にか本当に触れたくなっていた。
(これは……薬のせい?それとも……)
「アシュラン様……」
「君にはかなわないなあ」
いつも綺麗な笑顔を貼り付けているアシュランからは見慣れないへにゃりとした笑顔。
その表情と言葉は、もはや演技ではなかった。アモーレブレンドが彼の心の奥深くに眠っていた想いを表面に押し上げていく。
「いつも君を見ていると、胸が暖かくなる。君の笑顔が一番美しいよ」
心臓が早鐘の様に鳴り始め、呼吸も荒くなる。
(これは…本当に効いているのか?それとも……)
「アシュラン様、婚約者として……、もう少し関係を深めたいのです……」
カミラの瞳に涙が浮かんだ。
「本当に?」
こくんと頷く涙目のカミラにアシュランはいつもの冷静さを取り繕うことも難しかった。カミラの手を取った。薬草の効果なのか、はたまた本望か、自身でもどちらか分からなかったがこのまま自分の欲望に身を任せてしまおうか。アシュランはそんなことを考える。
「君の手は、こんなにも小さくて暖かい……まるで陽だまりに触れているようだ」
アシュランの声が、いつもより低く、甘く響く。身体の奥から湧き上がってくる熱が、彼の声にも影響を与えていた。
「カミラ……」
アシュランがカミラに顔を近づけてくる。
カミラの心臓が激しく鼓動した。ついに……ついに!
しかし、その瞬間。
「……だめだ」
アシュランが突然立ち上がった。熱くなった身体に冷や水を浴びせるように、意志の力で自分を制した。
「え?」
最後の一線で、アシュランが踏みとどまった。アモーレブレンドが効いているからこそ、今カミラに手を出すわけにはいかない。
「やっぱり、今はまだ早すぎる」
アシュランは頭を振った。
「なぜですの?」
カミラは困惑した。今度こそ成功するかと思ったのに。
「君は純真すぎるんだ。僕が君の清らかさを損なうわけにはいかない」
「損なうだなんて……」
「結婚するまで、君は完璧な淑女でいなければならない。それが君のためなんだ」
アシュランの言葉は優しいが、固い決意に満ちていた。
「でも……」
「カミラ」
アシュランはカミラを見つめた。その瞳に、複雑な感情が宿っている。
胸の鼓動の速さに、薬草の気配を悟りながらも──
アシュランはただ微笑んだ。
「時が来れば分かる。必ず、君を幸せにしてみせるから」
アシュランはカミラの額にキスをして、部屋を出て行った。
*
一人になったカミラは、テーブルに突っ伏した。
「また失敗……」
アモーレブレンド作戦も、結局は阻まれてしまった。
「でも……」
カミラは顔を上げた。
「次こそは……」
カミラは指南書を開いた。
「あきらめませんわ。必ず、アシュラン様の心を完全に奪ってみせます」
*
翌日の午後、カミラは再びルシアンの工房を訪れていた。
「……また貴女ですか。私は王宮の薬師であって、恋愛指南係ではないのですが」
ルシアンは振り返ると、明らかに迷惑そうな表情を浮かべた。
「どうだったんですか、アモーレブレンドは」
「効果はありました。アシュラン様がいつもとは違う雰囲気で」
「それは良かった。では、もうこれで――」
「でも、やっぱり最後は止められてしまいました」
カミラの言葉に、ルシアンの表情が険しくなった。
「……まさか、もっと強力なものをとか言わないでしょうね」
「いえいえ!そんなつもりはありませんわ」
カミラは慌てて手を振った。
「ただ、他に方法はないかと……」
「私に頼らず、自分で考えてください」
ルシアンは冷たく言い放った。
「魔法に頼るのではなく、アシュラン王子の心に直接働きかける方法を」
「心に直接?」
「王子が『結婚まで待つ』理由を理解し、それに対する答えを示すことです」
ルシアンの言葉に、カミラはハッとした。
「アシュラン様が私を大切に思ってくださっているから、待とうとされているのですものね」
「その通りです。でしたら――」
「私の方から、『大丈夫』だと伝えれば良いのですわね」
カミラの瞳が輝いた。
「私に二度と関わらせないという条件でなら、その通りです」
「ありがとうございます、ルシアン!」
カミラは立ち上がった。
「今度こそ、成功させてみせますわ」
恋愛指南書を胸に抱きながら、カミラは工房を後にした。
その後ろ姿を見送りながら、ルシアンは小さく溜息をついた。目の下のクマが、少し濃くなったような気がする。
「……まったく、いつまで私を巻き込む気なんですか、あの二人は」
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