男爵令嬢と結婚するから婚約破棄?二代続けてふざけるな!この低脳がっ!!

三条桜子

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12.5 王女の退室後 ある大臣サイド

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 殿下の退室後、円卓会議場の扉は固く閉ざされた。

 「月、話せるか?」

 ソファーに倒れこむように横たわる男に声がかけられる。

 「ああ。大丈夫。寝ずの移動に疲れてるだけだ」

 月が上体を起こし座り直す。

 一斉に動きを止め、30人程の男達の意識が月に向けられる。

「皆様、報告致します。隣国の王は確かにあの親子三名の処刑をお望みです。更に、無抵抗での我が国の王権の委譲を望まれました。これは、強固に星が拒否致し、謁見場にて星は切り殺されました。然し、その忠誠心に免じて星の主人の王位継承を例外的に許可するとの言質を頂いております」

「月、お前の髪はどうした?」

「謁見場にて、『お前達の誠を見せよ。』とのやり取りがありまして、髪をくれてやりましたよ」

ニヤリと笑う。

「見れる面になったな」

と野次が飛ぶ。笑い声が上がる。

「殿下は、明日にも自決なさる」

老獪な爺達がニヤリと頷き会う。

「影を至急、殿下の毒のすり替えにやれ。決して死なせるな」

 命じられた官僚が扉を守る影へ命令を伝える。扉の影が次に仲間の影へ伝える。そうして、殿下が気付く間もなく毒はすり替えられる。

「殿下には、王位継承をしていただく。そもそも他の誰が出来るというのか?隣国なんぞ誰が言うことを聞くものか。フン」

 その通り。長い歴史で戦争をしたことはあっても、一つの国になった事がない。言葉も食べ物も違う。王権の委譲?上手くいかない事は目に見えている。
 
 王の見える景色と大臣の見える景色は少し違う。いくら冷酷で有能な隣国の王でも、植民地支配は出来ぬ。民にも心がある。チェスの駒とは違うのだ。何処までも抵抗する。そして些細な事で一揆が起こる。行き着く先はテロ・ゲリラ戦になる。正規軍がノイローゼになるのさ。

「王冠と錫杖は何処にあるか分かるか?王宮の宝物殿か?」
 
 今後の予定を気にする官僚が確認作業を始める。

「あれ?お前知らなかったのか。陛下がご存命のうちに殿下に渡されているんだぜ。当時の大臣も立ち会いでさ。」

「そうなのか?じゃあ、あのゴミ王は偽物か?」

老獪な爺が笑い出す。耳は遠くないらしい。

「あのゴミは、王ではない。即位の礼をしておらん。勝手に王宮に住んでいるだけじゃ。つまり公式には、この二年王座は空白である」

なかなか悪い顔である。

「では、ゴミ親子の処刑理由は、隣国に対する不敬となりますか?」

「その辺りの理由でよい。民衆も気にしまい」

明日は確実に処刑をする事が重要。民衆に紛れ込んだ間者を使い、隣国も見張っているだろう。


 
 あのくそみたいな悪役令嬢の望みは、王族全ての殲滅。それも九族皆殺し(一族皆殺しはヌルイってよ)更に、国家は隷属。国民は、飢え寒さ病気に苦しめという。

 17年だぞ?

 くそ悪役令嬢!やり過ぎだろ。俺達にだって五分の魂があるんだ。思い通りになってやるかよ!

 それに…男の側から言うと17年連れ添った古女房、飽きてるんだよな。17年だからな~。余りの執念深さに夫が震え上るぜ。
 だからこそ今回、隣国王はうちの王女の王位継承を認めたんだろ?小国出身で祖国と実家から絶縁された王妃。お前の産んだ子供……王になれると思っているのか?お前なんかあの国じゃ、愛されてるだけの後ろ盾のない女だろ?愛が無くなったら、今までのしっぺ返しが始まる。ふっ。どーせ性格悪すぎて隣国でもやらかしてんだろ?捨てられろ。いやお前が処刑されるのか…ざまぁ。爆竹鳴らしてお祝いだ。




所で、と若い大臣が話を変える。

「殿下きっと潔く毒を飲むんでしょうね?」

「ははは。男より男前だからな」 

騎士団長が笑う。

「目が覚めたら『生きてる』って怒るんじゃないか?」

その時は、その時。幸せな叱責だ。

「甘んじて受けよう」

気障な大臣が今日も気取る。笑い声があがる。

「楽しみだな」

皆の気持ちが一つになる。

「殿下を陛下と呼べる日が来る」

「あの方を王座に仰ぎ見る日をずっと待っていたんじゃ」

 そのためにお姫様が眠っている間に、王族の始末をつけておこう。ほんの些細な障害も残さない。官僚の目が語る。

 王冠は王女に似合うだろう。新しい時代の幕開けだ。



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