太陽と月みたいな友達ふたりとモブの俺(オメガバース)

さや

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●●の友よ

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 重い話をする前に少しでも光とうちとけようというミッションは失敗に終わった……ような気がする。
 おそらく、諒介には最初からそんな思惑は存在しないのだろうが。




 諒介が前日のアウティングの件を簡潔に説明すると、光の態度はがらりと変わった。

「……へー……」

 警戒心もあらわに諒介と達樹を上から下までまじまじと眺める。

 自分が同性の性の対象になるなど考えたこともない達樹と違い、光は校内はおろか近所の大人から同じ中学生まで幅広く言い寄られつけ回され待ち伏せされ、電車やバスに乗れば痴漢に遭い、酷いときは路地裏に引っ張り込まれそうになったこともあるという。その反応は当然と言えた。

「……で、心配して来てくれたんだ? アルファ様たちが」

 アルファと言われて達樹は『そんなバカな』と思った。
 いくらなんでも自分がアルファに見えるはずがない。
 もしかして逆に到底オメガには見えないというだけの消去法なのかもしれない。
 べつにオメガになりたかったわけではないが、達樹の内心は複雑だった。

「……俺も、オメガなんだけど」
「俺もだ」
「……へ?」

 光がぽかんと口を開けた。

「オメガ……?」
「そう」
「え? ええ?? えええ??? ええええ????」

 肯定すると、なにを言われたのかわからないという様子でおろおろしはじめる。

「100万歩譲って成瀬は納得……できねーし柚木はもっと納得できねー‼」

 それは喜べばいいのか悲しめばいいのか。達樹は苦笑いを浮かべた。

「地味だしな、俺」
「確かに、俺には癒されない気がする」

 諒介も独自の解釈で頷いている。どうやら諒介にとってオメガの必修科目は「癒し」らしい。なぜなのかはわからないが。

「じゃなくて、柚木は文武両道のクールビューティーとか言われてめっちゃ女にモテるじゃねーか‼」
「……モテるの?」

 訊くと、諒介は首を横に振った。

「知らん」
「他校にファンクラブあるだろ‼」
「マジか」

 感心したが、諒介はにべもなかった。

「それはモテるとは言わないだろ。手近にある無料コンテンツみたいなもんだ」

 その言い草に顔も知らない他校の少女たちが不憫になったが、諒介が小学生の頃、『たまには笑って手くらい振ってくれてもいいじゃない』と一部の女子たちに詰め寄られていたのを知っているだけになにも言えなかった。

「背だって低くないし」

 確かに、170センチは超えていそうだから中2男子としては十分だろう。
 だが、諒介はまたしても首を横に振った。

「もう止まった。それにチ●コは小さい」



 その場の時が止まった。



「……おい」

 さすがになにか言わねばと達樹が口を開こうとしたとき、光が両手でがしっと諒介の手を取った。

「……心の友よ‼」

 どうやら彼の心に響いたらしい。

「この場合、どっちかって言うと『身体の友』じゃ……」
「響きがいかがわしい」

 みなまで言わせず達樹は諒介の言葉を遮った。

「りょーちゃんって呼んでいい?」

 本人無自覚の捨て身の告白は、光の心にいたく響いたようだ。

「いいけど」
「オレは光で‼ ピカちゃんだけはナシの方向で」
「わかった」

 諒介が頷くと、光はきらきらとした瞳で達樹を振り返った。
 とんでもなく美しいのだが、おそらく性器のサイズの告白を促されているのだろう。

「……チ●コは普通だと思う……たぶん……」

 平均値よりはやや小ぶりだが、下限と上限の差を思えば中央値はもう少し下がるはずだ。……多分。そういうことにしている。

「身長は?」
「164」

 重ねて訊かれて素直に返す。
 本当に、こんな身長でアルファなわけがないと思う。

「身体の友よ‼ タッちゃんよ‼」

 思い切り手を握られて謎の括りに入れられて達樹は叫び返した。

「響きがいかがわしい‼」

 あと、その昔のアニメで高校野球をしそうな呼び方は決定なのか、ならばこちらは南と呼んでもいいのかなどいろいろ言いたいことはある。

 そのとき、ふと諒介がこぼした。

「だいぶ近づいたな」

 進学前、最後に会ったとき、達樹と諒介の身長差は15センチだったと達樹も思い出した。
 懐かしい、楽しかった時間。

「タツ」
「え?」

 急に昔の呼び方で呼ばれて、頭を下げられた。
「今まで、避けててごめん」
「────」

 一瞬で視界が滲んだ。

「今はまだ気持ちの整理がつかないけど、そのうち絶対全部話すから、見捨てないでくれるとありがたい」
「わかった」

 そんなの、言われるまでもない。達樹は涙を拭って、笑ってしっかりと頷いた。

「嫌われてなかっただけでも気が軽くなった。ちゃんと待ってる」
「……ごめん」







『本当は、全部話すつもりだった』と。

 何年か経った後、諒介はこのときのことを振り返って言った。
 だけど、達樹を前にしたらどうしても勇気が出なかったと。嫌われるのが怖かったと。

 その腕に、そっくりな小さな命を抱いて。
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