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ハネムーン編
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「翔、起きて」
「おい、着いたぞ、翔」
心地よい揺れと暖かい風に包まれ、俺はいつの間にか深い眠りに入っていた。
まどろみの中、とても強い光が瞼に差し込んだ。
慣らす様に、ゆっくりと目を開ける。
「こ、ここが、ハワイ……!」
俺は人生初めての海外で、大事な旦那様との新婚旅行に来ていた。
陽気な空気、南国の植物、真っ青な空、広大なビーチ。
目に入る景色全てが新鮮で、俺はただただ興奮した。
「翔様ってば、飛行機にガチガチに緊張してると思ったら次の瞬間にはすーぐ寝ていらっしゃるんですもん。おいしいお酒もフルーツもたくさんありましたのに」
「ハル、旅行は一週間あるんです。これからたくさん楽しんでいただけばいいでしょう」
ビーチに似合わない高級ハイヤーは、今日から俺たちが宿泊するホテルにすでに到着していた。
どうやら俺は飛行機が着陸した後も目を覚まさない爆睡っぷりだったようだ。
「飛行機なんて乗るの初めてで緊張して緊張して……昨日から一睡もできなかったんですよ」
「翔様、飛行機が落ちたらどうしようってずっと言ってましたもんね」
「わ、笑わないでくださいよ。海外なんて一生縁がないと思ってたんですから」
目の前いっぱいに広がるこのホテル。一体何階まであるのか不明なくらいに、デカイ。
こんなでっかいホテルを丸々一週間、神楽関係者のみで貸切にしているというのだからこれまたスケールがでかすぎて目眩がしそうだ。
「翔様のお荷物、お部屋までお持ちします」
澪はいつもの様に慣れた手つきで、ハイヤーの荷台から荷物を下ろしていく。
「コラ、やめろ」
その様子を見た欄が、厳しい目つきで澪を叱る。
澪は少しハッとした表情を見せてから、その手を止めた。
「何回も言っただろ。今回はお前ら二人も休暇だ。仕事すんな」
「蘭様……申し訳ございません」
「謝んな。プライベートまで堅苦しくするんじゃねぇよ」
いつも通りの口の悪さだったが、2年一緒に過ごしてきた俺にはわかる、蘭のこの言動には優しが詰まっていることを。
もちろん、俺よりもずっと前から一緒にいた、今ここにいる人間全員が、それを理解していた。
「澪、春輝。これを渡しておく。旅行中自由に使ってね。もちろん限度はないから」
蓮はおもむろにポケットから真っ黒なカードを取り出し、安藤夫妻に差し出した。いわゆる魔法のカードってやつだ。
ハルはそのカードを見やると、「えっ!いいんですか!やった!」と目を輝かせて歓喜した。
「こらハル。受け取れません、蓮様」
「受け取ってくれた方が俺たちの為になるんだけどな」
「で、ですが」
「二人には感謝してるんだ。本当に、俺たちみんなね。それに、二人にも新婚旅行に行って欲しいと言ったのは他でもない、二人の愛する翔の願いなんだから」
ね、と蓮は笑顔でカードを差し出し、澪は一瞬ためらった後、それを静かに受け取った。
二人の会社で働くようになってから、日々やりがいを感じながら仕事に生きていた。
そんな俺たちに、そろそろ新婚旅行くらい行けとつっついたのは安藤夫妻だった。
「本当に、ありがとうございます。蓮様、蘭様、翔様」
「嬉しいです~!遠慮なく使わせていただきますねっ」
安藤夫妻は俺たちに深々と頭を下げる。それを見て、また蘭は「だからその態度やめろって言ってんだろ」と悪態をついたが、その表情は優しいものだった。
「別途必要なものは、こっちの社員に手配させるか外注するから、二人も自由に行動していい。俺たちに同行してもいいし、二人で行きたいところに行っても良いよ。同じホテルだけど階は別にしてるから、気兼ねなく羽を伸ばしてね」
「えっえっ!じゃあ、翔様お借りしてショッピング行ってもいいですか?」
「んー、翔を俺達から引き剥がすの以外でお願いしたいかな」
いつでもどこでも独自のワールド全開な彼を、「やめなさい、ハル」と慌てて澪が止めに入る。
「じゃあ、私達はショッピング行ってきますから、お三方はさっそくビーチに行ってみるのはいかがですか?」
「ビーチ?」
「翔様、楽しみにしてらしたじゃないですか。海で泳ぐぞーって。このホテル、裏にプラベートビーチがありますから」
まさに鶴の一声。天気もいいし、あっついし、泳ぐのには良いロケーションだ。
「あ、俺、海、行きたいかもです」
「じゃあ、チェックインしたら水着に着替えて行ってみようか、翔」
「は、はい!ありがとう、蓮くん」
蓮は俺の頭をポンと優しく撫でると、キャリーケースを引きながらホテル内へと向かう。
俺もその後に続こうと歩き出すと、後ろからトントン、と肩を叩かれた。
「翔様、翔様」
「ハルさん、なんですか?」
「準備用の品、ちゃんと持ってきてますから、必要な時は言ってくださいね」
「準備?」
「いやー夢がありますね、海外でバージン卒業だなんてっ」
「ぶっ!」
予想していなかった突然の話題に、俺は思わず吹き出し、咳き込んだ。
そして先を行く蓮や蘭に聞こえないように、小声で返す。
「な、な、何を言ってるんですかっ」
「えー?そりゃ新婚旅行なんだからしますよね?双子さん達だって絶対そのつもりですよ~?」
意地悪ではなく、本心で言っているのだろう。ハルは自分のことのように楽しそうに笑う。
ハルが言うことは正論だ。
そりゃ、いつもは仕事が忙しくてすれ違い気味な俺たちが1週間もずっと一緒に過ごすんだ。
しかも新婚旅行という名目で。そりゃ、考えてみれば期待するのが当然だろう。
「で、でも俺、結局いつも怖くて途中で逃げちゃうし」
「何がそんなに怖いんです?」
「そ、そりゃ初めてなんだから怖いに決まってます」
暑い夏のあの日。俺が初めて二人に自分の気持ちを伝えた時、たしかに俺は覚悟していたんだ。
心から二人と繋がりたいと思っていたんだと思う。
けどいざ、そこに触れる、となった時、やっぱり怖くて,俺は途中で怖気付いてしまった。
だけどそんな俺を、二人は優しく受け止めてくれた。
だから今になってもずっと、互いの身体に触れ合うけれど、まだ繋がってはいない。
「翔様の気持ちはよくわかります。初めては怖い。けど、初めてを大切な人と一緒に迎えるのって、幸せなことですよ」
にへら、とハルは笑って言う。大切な人、というのは澪のことだと、聞かなくたってわかる。
(俺の初めてを、大切な二人と一緒に、か)
そう、無意識に反芻した。
俺だって、二人が好きだ。期待に応えたいし、喜んでもらいたい。興味だってある。だけど……
「おい、何してんだ。あんまり離れんな」
「あ、今行きます!」
離れてこそこそと話しているのが欄に見つかった。俺は駆け足で二人の元へ向かう。
離れ際、ハルは力強く親指を立ててウインクを送ってきた。俺は気恥ずかしくなってすぐに目を逸らし、逃げる様にその場から離れた。
「…………ひ……っろ!」
部屋で水着に着替え、さっそくビーチに降り立つ。
広大な砂浜と青い海の景色は圧巻だ。
「翔、ちゃんと日焼け止め塗った?」
「あ、忘れてた」
「ハワイの日差しナメてたら半日で真っ黒になっちゃうよ、おいで」
蓮はビーチに設置された日除けのパラソルの下で、こいこいと俺に手招きをした。
相変わらず、我が夫ながら引き締まった綺麗な体、抜群のスタイル、甘いマスクで文句のつけようのないビジュアルだ。
裸はいつも見てるけど見慣れることはない。むしろ水着姿は初めてで、少し目のやり場に困ってしまう。
「塗ってあげる、ここ、座って」
「うん」
ビーチマットの上に膝を立てて座る蓮の足の間を指さされ、言われるがままそこへ背を向けて体育座りした。
すると、数秒後には少しだけひんやりとした感覚が背中を這う。蓮が丁寧に日焼け止めを塗ってくれているのだろう。
「翔はかわいいな、ほんと」
「えっ?今可愛いポイントありました?」
「だってこんなに素直にいうこと聞いてくれるから、ね」
蓮の言葉の意味がわからずにいると、突然、全身に快感が走った。
日焼け止めでぬるぬるに濡れた蓮の掌が、突如前に移動してきたのだ。その掌は、俺の胸をわざとらしく掠める。
「……っ、ん」
「心配だな、翔、だめだよ。俺たち以外の言うことそんなに素直に聞いちゃ」
「あ、の、蓮くん、何して……」
「ここもちゃんと塗ってあげないと」
「っ、も、大丈夫、ですから」
ぬるぬると上半身を弄りながら、時々触れる胸の突起への刺激に、ビクンと体が跳ね、声が漏れるのを我慢できなかった。
「こっちの人は、翔みたいに小柄で色白で可愛らしいアジア人を好むんだよ。だから、絶対俺たちのそばを離れちゃダメだからね」
「蓮、く……分かったから……っここ、外だから」
「ん~?外だね」
「俺、勃っちゃう、やめてくださ……」
「いいよ。大丈夫」
「だ、いじょうぶじゃないです……っん、誰か来たら……」
「ちなみにね、翔」
突然、後ろからぎゅうと身体を抱きしめられる。その際、腰のあたりに硬くて熱いものがぐっ、と触れた。
それがなんなのかは、見なくたってわかる。お約束だからだ。
「俺はもう、勃ってる」
「……っ!ちょ…っ蓮くん、ダメ……ッ」
そのまま身体を後ろに強く引かれ、柔らかいビーチマットの上に背中から倒れた。
俺の上にはもちろん、愛する夫の姿が。
「泳ぐ前に少しだけ、シようよ。ね、」
「蓮くん、人が来ますから!ここでは」
「あ、ほんとだね、人が来た」
意地悪く笑う蓮の目線の先には、遅れてやってきたもう一人の夫、蘭の姿があった。
蘭もまた完璧なスタイルに程よく筋肉がついて、非の打ち所がない肉体を出し惜しみせず、水着姿で登場した。
「早速サカってんのかよ」
「だって、こんなに無防備に肌なんて見せられたらさ。蘭も混ざる?」
「当たり前」
蘭も蓮と同じく、何のためらいもなく、ビーチマットの上に乗りかかった。
顎を掴まれ、ちゅう、と軽く口付けられる。
「っん、んぅ……っちょ、待って!俺、外は嫌です」
「翔、大丈夫。プライベートビーチも、滞在中は貸切だ。誰も来ないよ」
「っ、や、だめ……!」
蓮は手際よく俺の水着を引っ張り、いとも簡単に、俺は生まれたままの姿になってしまった。
「さっきホテル関係者にも入らないように念を押したから、大丈夫だろ」
「っな!でも、こんな、明るいところで」
「お前の身体が隅々まで見れるし、むしろ良んじゃね」
「あ、ちょ、ちょっと、二人とも、待っ……ん、んむ…っ!」
俺の反論など聞かないとでも言うように、強引に口を塞がれた。
そっから先は、いつも通り。
初の海外で、青い空、白い砂浜、陽気な日差しが差し込む中、波の音を聞きながら、二人にめちゃくちゃに愛されるとことから新婚旅行がスタートしたのだった。
「おい、着いたぞ、翔」
心地よい揺れと暖かい風に包まれ、俺はいつの間にか深い眠りに入っていた。
まどろみの中、とても強い光が瞼に差し込んだ。
慣らす様に、ゆっくりと目を開ける。
「こ、ここが、ハワイ……!」
俺は人生初めての海外で、大事な旦那様との新婚旅行に来ていた。
陽気な空気、南国の植物、真っ青な空、広大なビーチ。
目に入る景色全てが新鮮で、俺はただただ興奮した。
「翔様ってば、飛行機にガチガチに緊張してると思ったら次の瞬間にはすーぐ寝ていらっしゃるんですもん。おいしいお酒もフルーツもたくさんありましたのに」
「ハル、旅行は一週間あるんです。これからたくさん楽しんでいただけばいいでしょう」
ビーチに似合わない高級ハイヤーは、今日から俺たちが宿泊するホテルにすでに到着していた。
どうやら俺は飛行機が着陸した後も目を覚まさない爆睡っぷりだったようだ。
「飛行機なんて乗るの初めてで緊張して緊張して……昨日から一睡もできなかったんですよ」
「翔様、飛行機が落ちたらどうしようってずっと言ってましたもんね」
「わ、笑わないでくださいよ。海外なんて一生縁がないと思ってたんですから」
目の前いっぱいに広がるこのホテル。一体何階まであるのか不明なくらいに、デカイ。
こんなでっかいホテルを丸々一週間、神楽関係者のみで貸切にしているというのだからこれまたスケールがでかすぎて目眩がしそうだ。
「翔様のお荷物、お部屋までお持ちします」
澪はいつもの様に慣れた手つきで、ハイヤーの荷台から荷物を下ろしていく。
「コラ、やめろ」
その様子を見た欄が、厳しい目つきで澪を叱る。
澪は少しハッとした表情を見せてから、その手を止めた。
「何回も言っただろ。今回はお前ら二人も休暇だ。仕事すんな」
「蘭様……申し訳ございません」
「謝んな。プライベートまで堅苦しくするんじゃねぇよ」
いつも通りの口の悪さだったが、2年一緒に過ごしてきた俺にはわかる、蘭のこの言動には優しが詰まっていることを。
もちろん、俺よりもずっと前から一緒にいた、今ここにいる人間全員が、それを理解していた。
「澪、春輝。これを渡しておく。旅行中自由に使ってね。もちろん限度はないから」
蓮はおもむろにポケットから真っ黒なカードを取り出し、安藤夫妻に差し出した。いわゆる魔法のカードってやつだ。
ハルはそのカードを見やると、「えっ!いいんですか!やった!」と目を輝かせて歓喜した。
「こらハル。受け取れません、蓮様」
「受け取ってくれた方が俺たちの為になるんだけどな」
「で、ですが」
「二人には感謝してるんだ。本当に、俺たちみんなね。それに、二人にも新婚旅行に行って欲しいと言ったのは他でもない、二人の愛する翔の願いなんだから」
ね、と蓮は笑顔でカードを差し出し、澪は一瞬ためらった後、それを静かに受け取った。
二人の会社で働くようになってから、日々やりがいを感じながら仕事に生きていた。
そんな俺たちに、そろそろ新婚旅行くらい行けとつっついたのは安藤夫妻だった。
「本当に、ありがとうございます。蓮様、蘭様、翔様」
「嬉しいです~!遠慮なく使わせていただきますねっ」
安藤夫妻は俺たちに深々と頭を下げる。それを見て、また蘭は「だからその態度やめろって言ってんだろ」と悪態をついたが、その表情は優しいものだった。
「別途必要なものは、こっちの社員に手配させるか外注するから、二人も自由に行動していい。俺たちに同行してもいいし、二人で行きたいところに行っても良いよ。同じホテルだけど階は別にしてるから、気兼ねなく羽を伸ばしてね」
「えっえっ!じゃあ、翔様お借りしてショッピング行ってもいいですか?」
「んー、翔を俺達から引き剥がすの以外でお願いしたいかな」
いつでもどこでも独自のワールド全開な彼を、「やめなさい、ハル」と慌てて澪が止めに入る。
「じゃあ、私達はショッピング行ってきますから、お三方はさっそくビーチに行ってみるのはいかがですか?」
「ビーチ?」
「翔様、楽しみにしてらしたじゃないですか。海で泳ぐぞーって。このホテル、裏にプラベートビーチがありますから」
まさに鶴の一声。天気もいいし、あっついし、泳ぐのには良いロケーションだ。
「あ、俺、海、行きたいかもです」
「じゃあ、チェックインしたら水着に着替えて行ってみようか、翔」
「は、はい!ありがとう、蓮くん」
蓮は俺の頭をポンと優しく撫でると、キャリーケースを引きながらホテル内へと向かう。
俺もその後に続こうと歩き出すと、後ろからトントン、と肩を叩かれた。
「翔様、翔様」
「ハルさん、なんですか?」
「準備用の品、ちゃんと持ってきてますから、必要な時は言ってくださいね」
「準備?」
「いやー夢がありますね、海外でバージン卒業だなんてっ」
「ぶっ!」
予想していなかった突然の話題に、俺は思わず吹き出し、咳き込んだ。
そして先を行く蓮や蘭に聞こえないように、小声で返す。
「な、な、何を言ってるんですかっ」
「えー?そりゃ新婚旅行なんだからしますよね?双子さん達だって絶対そのつもりですよ~?」
意地悪ではなく、本心で言っているのだろう。ハルは自分のことのように楽しそうに笑う。
ハルが言うことは正論だ。
そりゃ、いつもは仕事が忙しくてすれ違い気味な俺たちが1週間もずっと一緒に過ごすんだ。
しかも新婚旅行という名目で。そりゃ、考えてみれば期待するのが当然だろう。
「で、でも俺、結局いつも怖くて途中で逃げちゃうし」
「何がそんなに怖いんです?」
「そ、そりゃ初めてなんだから怖いに決まってます」
暑い夏のあの日。俺が初めて二人に自分の気持ちを伝えた時、たしかに俺は覚悟していたんだ。
心から二人と繋がりたいと思っていたんだと思う。
けどいざ、そこに触れる、となった時、やっぱり怖くて,俺は途中で怖気付いてしまった。
だけどそんな俺を、二人は優しく受け止めてくれた。
だから今になってもずっと、互いの身体に触れ合うけれど、まだ繋がってはいない。
「翔様の気持ちはよくわかります。初めては怖い。けど、初めてを大切な人と一緒に迎えるのって、幸せなことですよ」
にへら、とハルは笑って言う。大切な人、というのは澪のことだと、聞かなくたってわかる。
(俺の初めてを、大切な二人と一緒に、か)
そう、無意識に反芻した。
俺だって、二人が好きだ。期待に応えたいし、喜んでもらいたい。興味だってある。だけど……
「おい、何してんだ。あんまり離れんな」
「あ、今行きます!」
離れてこそこそと話しているのが欄に見つかった。俺は駆け足で二人の元へ向かう。
離れ際、ハルは力強く親指を立ててウインクを送ってきた。俺は気恥ずかしくなってすぐに目を逸らし、逃げる様にその場から離れた。
「…………ひ……っろ!」
部屋で水着に着替え、さっそくビーチに降り立つ。
広大な砂浜と青い海の景色は圧巻だ。
「翔、ちゃんと日焼け止め塗った?」
「あ、忘れてた」
「ハワイの日差しナメてたら半日で真っ黒になっちゃうよ、おいで」
蓮はビーチに設置された日除けのパラソルの下で、こいこいと俺に手招きをした。
相変わらず、我が夫ながら引き締まった綺麗な体、抜群のスタイル、甘いマスクで文句のつけようのないビジュアルだ。
裸はいつも見てるけど見慣れることはない。むしろ水着姿は初めてで、少し目のやり場に困ってしまう。
「塗ってあげる、ここ、座って」
「うん」
ビーチマットの上に膝を立てて座る蓮の足の間を指さされ、言われるがままそこへ背を向けて体育座りした。
すると、数秒後には少しだけひんやりとした感覚が背中を這う。蓮が丁寧に日焼け止めを塗ってくれているのだろう。
「翔はかわいいな、ほんと」
「えっ?今可愛いポイントありました?」
「だってこんなに素直にいうこと聞いてくれるから、ね」
蓮の言葉の意味がわからずにいると、突然、全身に快感が走った。
日焼け止めでぬるぬるに濡れた蓮の掌が、突如前に移動してきたのだ。その掌は、俺の胸をわざとらしく掠める。
「……っ、ん」
「心配だな、翔、だめだよ。俺たち以外の言うことそんなに素直に聞いちゃ」
「あ、の、蓮くん、何して……」
「ここもちゃんと塗ってあげないと」
「っ、も、大丈夫、ですから」
ぬるぬると上半身を弄りながら、時々触れる胸の突起への刺激に、ビクンと体が跳ね、声が漏れるのを我慢できなかった。
「こっちの人は、翔みたいに小柄で色白で可愛らしいアジア人を好むんだよ。だから、絶対俺たちのそばを離れちゃダメだからね」
「蓮、く……分かったから……っここ、外だから」
「ん~?外だね」
「俺、勃っちゃう、やめてくださ……」
「いいよ。大丈夫」
「だ、いじょうぶじゃないです……っん、誰か来たら……」
「ちなみにね、翔」
突然、後ろからぎゅうと身体を抱きしめられる。その際、腰のあたりに硬くて熱いものがぐっ、と触れた。
それがなんなのかは、見なくたってわかる。お約束だからだ。
「俺はもう、勃ってる」
「……っ!ちょ…っ蓮くん、ダメ……ッ」
そのまま身体を後ろに強く引かれ、柔らかいビーチマットの上に背中から倒れた。
俺の上にはもちろん、愛する夫の姿が。
「泳ぐ前に少しだけ、シようよ。ね、」
「蓮くん、人が来ますから!ここでは」
「あ、ほんとだね、人が来た」
意地悪く笑う蓮の目線の先には、遅れてやってきたもう一人の夫、蘭の姿があった。
蘭もまた完璧なスタイルに程よく筋肉がついて、非の打ち所がない肉体を出し惜しみせず、水着姿で登場した。
「早速サカってんのかよ」
「だって、こんなに無防備に肌なんて見せられたらさ。蘭も混ざる?」
「当たり前」
蘭も蓮と同じく、何のためらいもなく、ビーチマットの上に乗りかかった。
顎を掴まれ、ちゅう、と軽く口付けられる。
「っん、んぅ……っちょ、待って!俺、外は嫌です」
「翔、大丈夫。プライベートビーチも、滞在中は貸切だ。誰も来ないよ」
「っ、や、だめ……!」
蓮は手際よく俺の水着を引っ張り、いとも簡単に、俺は生まれたままの姿になってしまった。
「さっきホテル関係者にも入らないように念を押したから、大丈夫だろ」
「っな!でも、こんな、明るいところで」
「お前の身体が隅々まで見れるし、むしろ良んじゃね」
「あ、ちょ、ちょっと、二人とも、待っ……ん、んむ…っ!」
俺の反論など聞かないとでも言うように、強引に口を塞がれた。
そっから先は、いつも通り。
初の海外で、青い空、白い砂浜、陽気な日差しが差し込む中、波の音を聞きながら、二人にめちゃくちゃに愛されるとことから新婚旅行がスタートしたのだった。
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