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隣国戦争編

024話 Signum Belli

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-オスロウ国 コロシアム-

第3回オスロウ国武闘大会の優勝セレモニーは翌日行われるらしい。

本日は国王様直々に優勝トロフィーと賞金の授与が行われる。
賞金と言っても情報の入った磁気カード的な物だ。
これで金銭的に困る事は無くなった。

優勝賞品の願いを叶えると言うのは翌日のセレモニー前に国王に謁見して内々に行われるらしい。

なんだ観客全員の前でサクラがギャルのパンティを欲しいと叫べないなら意味無いな。
つまらん。

取り敢えず、偽国王の御尊顔を拝謁しておこうかな。

傷の癒えたクリス君がサクラの方に歩み寄り、サクラと握手をする。
私も近付けば頭位撫でて貰えるだろうか?

「サクラ様、完敗です。自分の未熟さを再認識する事が出来ました。治療までしていただきありがとうございました。」

「問題ないぞ、お主も中々に手応えが有ったでござる。」

サクラのドヤ顔でふんぞり返っている、あの上から目線は身として少し恥ずかしい。
そもそもクリス君を治療したのは私だけどね。

金髪で爽やか系優男のクリス君がサクラと硬く握手する。
いいな~クリス君。
超爽やかだ。

シグは金髪長身イケメン青年て感じで、クリス君は爽やか少年と言ったイメージだ。
私はシグより断然クリス君の方が好みだな。

やはり率先して撫でられに行こうかなと思ったがサクラに白い目で見られそうなので止めた。

会場は新しく誕生した女性チャンピオンの話題で持ちきりだった。

ある程度歴史の有る武闘大会の中でも女性で優勝した人物はサクラが初めてらしく、その事も話題性が高い原因となっていた。

極め付けは、露出度の高いサクラの装備と抜群のスタイルに反則級に美しい容姿だ。
シグ以外にも貴族連中から求婚者にと話が来るに違いない。

まぁ、その点は少し楽しみでもある。




優勝トロフィー授与直前、その事件は突然に起こった。

ドオオオオオォォォン!!!

受賞式が始まる直前、VIP席近くの観客席から巨大な爆発音が響き大規模な爆発と煙が上がる。

あの場所は魔法障壁やら結界やらが多重に張られていたはず。
そんな厳重警備された場所が爆発するなんて何が有ったんだ?

大勢の観客の悲鳴が辺りに響き逃げ惑う人々で、観客席はパニック状態になっていた。
クリス君は王様の避難誘導へ向かい、シグや王国所属の兵士も戦闘準備を行い周囲の警戒をする。

セアスと一般兵も安全経路を確保し観客の避難誘導をしていた。

テロ?クーデター?
一体何が起きたんだろう?

こんなイベントはゲームに無かったと思う。
隠しイベントのフラグか何かか!?

「サクラ!これは!?」 

怪訝な表情のサクラは無言で首を振る。
まずは2人で観客席の爆心地に向かい状況を確認する事にした。

逃げ惑う観客に押され、中々前に進めない。
人波を掻き分けて、多重に魔法結界の貼られたVIP席に到着する。

その場所は偽王様が観戦していたすぐ近くの場所だった。

豪華な装飾が為されていたであろうその場所は、魔法結界が壊され高威力魔法の爆発物で抉られクレーターが出来ていた。

周辺にはその場に居た貴族の血液がや肉片が飛び散り、血の匂いと装飾品は焦げた様な匂いが漂い悲惨な状況をまざまざと晒していた。

思わず吐き気を感じ口を両手で押える。

「外側?内側か?多重魔法結界を破壊して、尚これだけの威力の魔法爆発を起せるのは上位魔法ハイスペルを使える魔法職か、爆発魔法を付与した武器を使用した遠隔攻撃の出来るアーチャーやガンナー、スナイパー。どちらにせよ高レベル帯の人物。」

「それってハイメス国との戦争イベントで戦うスペルマスターとか?」

「まだ閉会式も終わって無いのに、戦争が始まるとは思えないでござるが・・・」

「うん、早すぎる。私達以外に他の誰かが意図的にイベントを進めようとしているみたい。」

「詳しく調べる必要が有るでござるな。」

ハイメス国は魔法国家としてストーリーモード中盤で出てくる大国の一つで、オスロウ国とは仲が悪く常に小競り合いを繰り広げていると言う設定だった。

この国にも何人もスパイ居るらしく、偽国王討伐後にすぐに情報がハイメス国に通達され国家として傾いたオスロウに大軍隊を率いて攻め込み戦争が始まると言う感じだ。

その時にオスロウ国に協力し戦争を納める為に倒すのがハイメス国の王女にして最強のウィザード軍を指揮するスペルマスターの「デイア」。

魔法を完全反射する鏡の様に煌めく不思議なローブを身に纏った銀髪の美しい女性。
レイドボス扱いで、空中を浮遊する上に高い能力値と強力な極大攻撃魔法アルティメルスペルを使用してくる。

「洞窟のドラゴンの件もあるし、もしかしたら拙者達以外にも複数プレイヤーが転移している可能性が有るでござるな。」

「見分ける手段が無いからね。クリス君位の強さなら、プレイヤーと言われても納得してしまう。」

「クリス君?何でヤツを君付けしてるでござるか?」

「うん?お気に入りNPCだからだよ。」

クリス君の事をお気に入りと言うと、サクラは幾分拗ねた様な態度を取り始めた。
年上のなのに意外と子供っぽい所が有るな。

それにしても、他のプレイヤーか・・・
もしかしてDOSどっちゃんと咲耶の行方が途絶えたのは、他のプレイヤーと遭遇し戦いの最中戦死したとかないよね。

不吉な考えが頭に過る。

「フラグ管理がくるっているとか・・・」

「この世界自体、ゲームとそっくりでござるからな・・・拙者には憶測しか思い付かないでござる。」

フラグ管理的なスイッチを感じたのは武闘大会の招待のみで、他のイベントは知らないうちに終わっていたりイベント戦闘を回避出来たりとゲームの進行とは完全に逸脱している。

もはやゲームシステムとか関係が無い感じだな。

クリス君やシグ達の働きで王様と貴族達の避難も終わり、医療や飲食等の運営スタッフを残し観客も大半はコロシアムから帰還した様だ。

衛兵長セアスの話では街中でも小規模な爆発が何件か確認されているらしく、テロの可能性が有ると示唆していた。

街の住民にはなるべく自宅へ籠り待機する様に命じられていた。

近衛兵団以外の兵士や衛兵は街の見回りと状況確認を命じられ、労働組合ギルドにも多額の金額で国家周辺の状況確認や不審者の捜索の依頼が入り多数の冒険者パーティーが挙って依頼を受けていた。

結局授賞式は中止になり、明日の優勝セレモニーも無期限延期らしい。

この事件の噂はすぐさま国中に広がり、武闘大会で多くの観光客で栄えていたオスロウ国は騒然としていた。

事件の捜索等で今宵は夜通しで様々な職業の人々が活動するだろう。

私達も街の中の警備依頼を受諾し見回りをする事にした、この謎のイベントを捜索し解明しないと・・・

じっちゃんの名に懸けて!
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