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隣国戦争編

026話 長い待ち時間的な

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-オスロウ国 王宮控室-

早朝に国王の使いを名乗る貴族と数名兵士が宿屋を訪れた。
私とサクラは早急に準備を整え偽国王の住む王宮へと案内された。

高級な造りの割に乗り心地の悪い馬車で送迎をされ、立派な家具に囲まれた個室へと通され待たされる事約2時間。

余り寝ていない私はソファでウトウトしていたが如何やら寝てしまっていた様で、気が付いたらサクラに密着し肩を枕にして眠っていた様だ。

「お、お、おき、起きたで、ご、ごござるか?」

「ん・・・おはよう。」

肩を震わせながら喋る。

なんだろう反応が変だ。
毎日堂々と女湯に入りに行く程、精神が太々しいサクラも国王様と謁見するのは緊張するのだろうか?

寝ぼけ眼を擦りながら大きく伸びをする。
ベッドとかじゃなくても、授業中とか何故か眠くなるのは脳がリラックスしているからなのだろうか。

サクラの話だと1時間近く眠っていたらしい。

リアル世界の高校登校に電車を利用しているが、たまたま1本早く乗った時につい寝てしまい終点で駅員に起こされ見事大遅刻をした事を思い出した。

地方の田舎では電車は特急を含めても1時間に1~2本しか無い。
利用者が少ない分、非常に不便なのである。

今では遠い昔の様な感覚にすら感じる。

不意に部屋の扉がノックされ聖騎士団長のシグが笑顔で入室してきた。
傷は回復魔法ですっかり癒えた様で怪我や包帯は見受けられなかった。

シグはおもむろにサクラの前に膝ま付き手の甲にキスをした。
敬愛の印に騎士とかがするアレだ。

見るからにドン引きしているサクラを見て苦笑する。

当然猫の姿をした私には見向きもしない。
女性の前で動物に優しい男はモテルのになぁ・・・

やっぱりこの男は顔面偏差値の高いだけの残念イケメンの可能性が高い。
付き合っている内は優しいが、結婚して歳を取ったら浮気するタイプだな。

「サクラ様、昨日は優勝おめでとうございます。決勝で貴女と戦えなかった弱き私めをお許しください。」

「ああ、どうもでござる。それに別に全く気にしてないでござる。」

超塩対応に負けもせず、いつかクリスを倒せる力を得て貴女を迎えに行きますと再度求愛を行っていた。

そのクリス君もサクラに負けてんだけどね。
気概だけは立派だ。

BLの薄い本好きの友人なら歓喜しそうなシュチュエーションだ。
まぁシグはサクラが女だと信じ込んでいるので成立している状況なのだが・・・

「それより、いつまで待っていれば良いのだ。かれこれ2時間も待たされているぞ。」

サクラが睨みながらシグに問いただすと、「怒った顔もまた美しい」とどんな状況でもポジティブに口説くなんて金髪イケメンにしか出来ない芸当だろうと見ていて感心する。

サクラが男で無ければ、この積極的に褒める姿勢で大抵の女性は落ちるだろう。

シグの話では今朝、ハイメス国の使者により正式に宣戦布告の書状が届けられたとの事だった。
その事を受け王と幹部貴族、各騎士団長等で緊急会議が行われていたらしい。

そして武闘大会優勝者のサクラに戦争参加の依頼をする事が決定したのだと。

当然軍に所属するのではなく、あくまでも労働組合ギルドとしての参加依頼なので軍の作戦行動に従う必要は無く遊撃として戦って欲しいとの事だった。

この流れはゲームそのまま、私の考えた良い所取りルートは潰えた様だ。
その後シグに案内され私達は謁見の間へと足を運んだ。




-オスロウ国 王宮謁見の間-

部屋を守護する2人の兵士により大きな扉が開かれ、高価な絨毯が敷かれた大広間へと通された。部屋の両脇には30名以上の貴族と思わしき人達と近衛兵が整列している。

真直ぐ伸びた赤い絨毯の先には豪華な玉座に鎮座する偽国王と、その傍らには昨日と同様に大剣を背に漆黒の鎧を纏ったクリス君とダンネル大臣が待機していた。

予備の鎧だろうか完全に修復されている。
国王は長い髭を蓄え高位な服を着た小太りの男性で、見た目は普通の人間種ヒューマンに見える。

ゲームでは、この国の宝物庫に厳重に管理されている【イシコリドメの鏡】を手にれ偽国王に翳すと正体を現す。

「表を上げよ。先の武闘大会、真に見事な戦いであった。そなたの様に強く美しい剣士を是非我が王国軍に招きたいと思う。申し訳ないが、昨日の授賞式と優勝式はしばらく延期となるのを許して欲しい。聞いておるやもしれんが今隣国ハイメスが宣戦布告をしてきておる。本日より我がオスロウ軍も進軍をする手筈になっておる。武闘大会で優勝の誉有る其方にも是非御助力を頂きたいと国王はおっしゃられておる。」

ダンネル大臣が偽国王に替わり、国王の言葉を私達に告げる。

ダンネル大臣の額に汗が滲んでいる。
仕事とは言え戦争の協力を武闘大会優勝者に申し出るのは正直どうかしていると思う。

シグから事前に聞かされては居たが、私達に拒否権は無い。

拒否した場合その場で処刑しろとまでは対面状いかないだろうが、暗殺やスパイの嫌疑を掛けられて・・・と言う事は有るかも知れないと言っていた。

不意にダンネル大臣の言葉を遮り、偽国王が話し出す。

「武勲高き其方達の実力を貸して欲しいのだ。我が軍の先頭に立ち敵将を撃ち滅ぼして欲しいのだ。我がオスロウ国を勝利に導く為に力を貸してはくれぬか?」

今国王は、そなた「達」と言った。
どうやら【黒猫スーツ】の認識阻害が効いていない。
私の事はプレイヤーと認識しているのだろう。

イベントを進める為に王の頼みを快諾すると貴族連中から騒めきと喜びの声が聞こえて来た。

昨日の武闘大会でクリス君との戦闘を見ていたのだろう。
サクラの圧倒的な強さに関しては信用が高い。

何でも魔法師団を率いる最強のスペルマスターのデイア以外にも「姿無き魔槍」と「爆雷の女神」の異名を持つ最強の戦士が居ると斥候に出て生きて帰った者が証言していたと言う。

ゲームではそんなNPCは存在しなかった。
もしかしてプレイヤーなのか?それとも特殊なNPCなのか。

そんなこんなで不安が残る状態では有るが偽国王の元、オスロウ国とハイメス国の戦いの火蓋は切って落とされたのだった。
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