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機械都市編

055話 予言者から救世主へクラスアップした

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村の中央に高さ2ートル程度の高台が作られており、私達はレジスタンス設立の代表挨拶をして欲しいと言われていた。

そもそもこの世界の人はレジスタンスと言う言葉を知らないと言った感じだった。
ニュアンスで何となく理解している様に見える。

正確には抵抗や反対をする力や運動って咲耶が言ってたけど、この場合このレジスタンスって名称は当て嵌るのかな?

ゲームで使われていたから気にして無かったけど。
まぁ良いか。




早朝8時にエレンとナナに起こされて、村の広場へと案内される。

その広場には村人ほぼ全員と全兵士含め約400名以上が広場に密集して集まっていた。
広場に入りきらずに路地も埋まっている状態だった。

私はゴウトから拡声器の様な道具を手渡される。

魔法道具?
違うこれは機械だ。

この村に拡声器が有る事が少し驚く。
軍隊で使っているのだろうか。

私は小声で咲耶に話し掛ける。

「ねぇ、咲耶・・・凄く恥ずいんですけど。」

「NPCのモブですよ?気にせず堂々としてて下さい。」

咲耶はNPCと割り切っているから全く緊張している様子は無い。
私は大勢の人前に立つ様な経験自体リアルで無かったので非常に緊張する。

大体この大勢の人の前で何を話せと言うのか・・・
ギュノス国の技術で作られた拡声器を握る手に汗が滲む。

集まった人達が静まり返り、視線が一斉に此方を向く。

・・・うわぁ緊張する。
適当に済ませて咲耶に交代しよう。

壇上の上に上がり拡声器を持って1歩踏み出すと、ざわついていた会場が静まる。
そして大勢の視線が一気に私に向けられる。

・・・うっわっ!
何コレ緊張するなって方が無理っしょ!?

私は深呼吸をしてゆっくりと離し始める。
自己紹介と・・・友人を助けに行く!離す内容はこれで良いよね?

「えーと、シノブと言います。冒険者をしています。諸事情により食堂でウエィトレスをしています、私の友人とこの村の友達で同僚のリナとリオを救う為にレジスタンスに参加しました。他にも数名この村の人が閉じ込められていると聞きました。必ず助け出しますので宜しくお願いします。」

知り合いの村人や常連客の人から「たのんだぞ!」と歓声が上がる。
しかし兵士の人々からはパラパラと小さな拍手が上がる。

・・・あれ?何か反応が微妙だぞ。

変な事言ったっけ。
もう少しこう何かリアクションが有る物だと思っていたので拍子抜けした感じ。

何となく思っていた反応と違っていたので少しだけモヤモヤする。
私は咲耶に拡声器を渡し、そっと後ろに控える。

咲耶は拡声器を構え仁王立ちの状態で大きく一呼吸して、周囲を見据える。
そして5分程の沈黙が続く、最初はザワついていたが会場が完全に静寂に包まれた頃に咲耶が語り始める。

「我々はこれから起きる事を知っている!先程挨拶したシノブは夢で神から受ける掲示にて未来が分かる予言者だ!!この発言を聞いた人間は信じていないだろう!!」

はぁ!?
大衆の面前で何言い出すんだコイツ!?

彼の発言を後ろで聞いて唖然する。

前にサクラによって作られた予言者設定を使い始めたぞ!?
自分だってストーリーを知ってるんだから自分が予言者って事にすれば良いのに・・・

なんで私ばっかり。

「今から話す事を心して聞け!!」

その後20分延々と私が神の使徒でうんぬんかんぬん・・・とまるで宗教の教祖の如く持ち上げ始め、更に30分世界崩壊の事柄を語り集まった人々の不安を煽り始めた。

「彼女は神の加護を得た救世主メシアだ!」

そして最後の20分は私が神に変わり暗黒神を滅ぼす救世主メシアだと宣言する。

救世主メシアって・・・
飯屋で働いてはいるけど。

・・・と親父ギャグを思い付くが状況が全く笑えない。

咲耶は徐にアイテムストレージから【雷槌ミョルニル】を取り出し空へと掲げる。
雷撃を纏った神々しい大槌にこの会場に居た誰もが釘付けになる。

「うおおおおおっ!」

そして兵士を中心に偶然居合わせた冒険者達からも物凄い歓声が上がる。
まさに会場のボルテージは最高潮と言った感じへと雰囲気がガラッと変わる。

華奢な見た目の男装女子が超巨大な神器とも見える武器を掲げ、高らかに叫ぶ。

「いいか者共!私達は神の啓示を受けた使徒である!兵士の中には私達が圧倒的な力を持って守護機械兵ガーディアンの1体を破壊したのを見ていた者も居るだろう!その場に居た者は存分に語るがいい!そして残り3体の守護機械兵ガーディアンも見事打倒し、我々は伝説を作る!その戦いに参加した皆も伝説にその名を刻むのだ!我が軍の名はサスケノハナ!この作戦に参加出来る栄誉を存分に噛みしめるが良い!・・・・以上だ!」

広場に集まった住民の表情は、最初の20分唖然としていた。
30分が過ぎる頃には暗く絶望の表情に変化し、最後の言葉で希望と自信に満ちた表情に変化していた。

そして咲耶の演説が終わると同時に全ての人々が歓声を挙げていた。

あれだ、この手法はカルト宗教で良くやるヤツだ。
不安と恐怖を強烈煽り救済を示す会話術。

その後、私達が立てた作戦はゴウトの口から説明された。

私と咲耶と魔法が使用出来る少数部隊で守護機械兵ガーディアンを各個撃破していき、各大門に約80名配置して待機。

4体目の守護機械兵ガーディアン破壊後、四方の大門が一斉に解放されるので都市内部に潜入する。

そして閉じ込められている国民の避難誘導をする。

避難民の簡易住居を都市より10キロメートル離れた場所に現在200名で作成を開始している。

約1億人を解放させるので全員収納出来無い。
もしかしたら都市に残る人も居るかも知れない。

大門解放後は私と咲耶は自由行動って感じ。
ほぼストーリーモードの正規ルートで進んだと思った方が良い。

私達がマザーブレインを倒さないといけない流れだ。

咲耶がスピーチ後にテヘペロと謝られた。
もう良いよ好きに設定を盛ってくれ。

大門を強制解放させると内部セキリュティシステムが作動して入国IDを持たない人間を強制排除が開始する。

入国IDを持たない私達は確実に排除対象に指定される。
戦闘は免れない。

私達は内部に潜入しシステムの根幹をなすマザーブレインへ向かう。
内部でDOSどっちゃんとサクラと会えれば良いけど。

作戦は3日後。
大半の兵士は避難所の作成に回っているので村には余り残っていない。

お世話になった店長夫婦に挨拶をしてリオとリナを必ず助けると約束し作戦決行日を待つ事になった。
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