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伝説の武器編

089話 称号「暗黒神討伐の英雄」

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-機械都市ギュノス国-

約3日間掛けて鎖国が完全解除された機械都市ギュノス国に着いた頃には夜の帳が降りていた。
ドーム状の防壁は解放され、守護機械兵ガーディアンも配置されては無かった。

私達は東大門で入国の受付けを終わらせる。

アルラトが入国審査を通過出来るか心配だったけど問題無く仮市民IDを取得出来る。

私達はその足で労働組合ギルドへ向かい労働組合ギルドカードの新規発行と市民IDとの統合手続きに成功した。

「どうしたでござるかアルラト?カードを眺めて。」

「僕こんなの貰ったの初めてだから!」

所持武器以外を携帯したのが初めてだったのか、労働組合ギルドカードを物珍しそうに太陽に翳して眺めている。

戦闘面以外では小学生位の子供と同じ感覚なのでとても可愛い。

最初、暗黒神ハーデスハーちゃんはアビスダンジョンから出ることが出来ないのではないかと話していたが、彼の予想に反して設定エリア外のフィールドへと出る事が出来た。

暗黒神ハーデスハーちゃんはプログラム上有り得ない事が、やはり納得いかない様で何やら考え込んでいた。

確かにNPCの行動範囲や行動パターンの設定は少ない。
ましてや街に配置されている人物がフィールドに出る事はまず有り得ない。

特に彼女はフロアボスだ。
普通のNPCとは桁違いのデータ容量の物体が徘徊出来るのだからプログラマーの観点から世界構造を考えた時この世界の異常さは尋常では無いんだろう。

でもリナやリオの様に村と都市を行き来し仕入れを行うNPCも居る。
やはりこの世界はゲームの枠に収まってない。

普通に人としての営みが普通に行われている位、ゲームとは逸脱して自立した世界だと考えるしかない。

異世界では有るけど、限りなくゲームシステムを反映した現実世界と言った感想だ。

しかし暗黒神ザナファ倒した事でストーリーモードは終了したはずだが、暗黒神ハーデスハーちゃんが言うにはアビスダンジョンを見る限り最後にアップデートされた最終ヴァージョンになっているはずだと話していた。

その為、ゲームで実装されていたイベントは全て反映されているんじゃないかとの事だった。

しかしアビスダンジョンの51階層への入口は開いて無く、世界は平和が訪れた様に見える。
私達はマザーブレインに会う為に都市中央のクリスタワタワーを目指した。




-クリスタルタワー 最下層-

マザーズルームへ到着した私達はマザーブレインに暗黒神ザナファ討伐のお礼を言われた。
中央制御装置のクリスタルの中で揺蕩うクトゥルは相変わらず無表情で光の無い金色の瞳で淡々と語った。

暗黒神ザナファの完全消滅を確認し、封印装置としての役割を終えた事。
たった今、機械都市ギュノス国より各国に暗黒神討伐の通達を行ったと話した。

システムコールにて「暗黒神討伐の英雄」の称号を得た。
結局マザーブレインでは別次元への帰還方法は演算範囲外との回答だった。

当然だろう情報が余りにも不足しているのだから。
私達はクリスタルタワーを後にして、今日はこの街で宿を取る為に西のリゾート区画へと足を運んだ。

西のリゾート区画は都市が完全開放された事も有り、メインストリートは大いに賑わっていた。

以前DOSどっちゃんが破壊したSPAヴァナヘイムの入口も完全に修繕され、営業を再開していた。

都市全体が停電していたおかげでSPAの入口を破壊した犯人の記録映像等は残っておらず、誰も罪には問われず新たに借金が増える事は無かった。

脳波スキャンされたらバレそうだから気を付けよう。
前回は停電で酷い目に遭ったが、後で必ず来ようと思った。

大型リゾートホテルのフロントでチェックインをしようと受付でギルドIDを提示すると従業員が焦り出し、バックルームに下がったかと思ったら支配人が現れて奥の応接室に通された。

どうやらマザーブレインの通達が、この街全域に配信されているらしく英雄冒険者と言う扱いになるらしい。

何とこの国の全てのサービス料金が半額となり、最上級顧客の待遇を永久に得られるらしい。

何とも凄い話になって来た。
これはこのままこの国に永住しても幸せに暮らせるんじゃ無いだろうか?

私達は支配人に案内され最上階の30階に有る10名は泊まれるVIP専用の超豪華ロイヤルスィートルームへ案内され、そこへ3日間宿泊する事になった。

キングサイズのベッドが5台配置されている大部屋が2部屋、中央に20畳程度の広さのリビングが有り機械都市ギュノス国全体の夜景が見渡せるパノラマビューな造りとなっている。

その他にもビリヤード台やバーカウンター、レトロなジュークボックス、大型ピアノまで設置して有る。

バスルームも5人以上同時に入れる様な広さのジェットバスの付いた高級仕様となっていて、まさに至れり尽くせりと言った感じだ。

「凄い。現代日本でも上位に入るんじゃない?」

「そうですね、夜景も素晴らしい。」

夜景を見つめるミカさんはとても絵になる。
しかし、男の声なので喋るとまだ違和感を感じる。

支配人が部屋の説明を終えて部屋を後にする。

それまで静かだった全員が「ひゃっほっ~い!」と言う様な叫びを上げながら広い部屋を走ったりベッドに飛び込んだり、弾けないピアノを弾いたりと年甲斐も無く燥いでいた。

特にアルラトは部屋中を走り回り、跳ねたり転がったりと忙しく動いていた。

「こんな扱いを受けたのははじめてでござるな!」

「うんうん、死に物狂いで戦った甲斐が有ったね!」

「暫くは休養しても良さそうですね。」

「そうだな。」

「こら、貴様は少し落ち着け。」

「ちょっ!パパ放して!」

まぁ今後の作戦会議もしないといけないのだけど、今は考えるのを止めよう。

・・・・久々にのんびりとバカンスを楽しんで羽を伸ばすのも悪くは無い。
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