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未実装大陸編

109話 古代遺跡

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-アニマ国 ショップ街道-

石造りの舗装がされた街道の左右には露店が数多く出店されており地元民や観光客が多く見受けられ賑わっていた。

手作りの民芸品やアクセサリーが立ち並び目を引かれる。
魔力を帯びている品も有りゲームでは見た事の無いアイテムも多く品揃えされていた。

今まで訪れた街の品揃えとは少し違うので暗黒神ハーデスハーちゃんも興味深そうに手に取って眺めていた。

「見た事無いアイテムばかりだね。」

「いや、どうも没アイテムの様だ。何品か企画書で見た事が有る、良くは知らんがな。」

暗黒神ハーデスハーちゃんが言うにはゲーム製作中に没になった未実装のアイテムが数多く有るらしく、その残骸データとも言うべきアイテムが販売されているとの事だ。

この島自体が未実装データそのものと言った所だそうだ。

未実装アイテムって事はぶっ壊れた性能の装備やゲームバランスを崩壊させる様なアイテムが存在するんじゃないかと思い聞いてみたが、仮に存在しても市場に流れる事は無いだろうと言っていた。

確かにそうか。
そんなアイテムが有ったら国宝級の扱いで保管されているだろう。

亜人種デミヒューマンのNPCって数人しか出てこなかったよね?沢山出て来る予定は有ったの?」

「コスチュームとか猫耳は初期から有ったな。いずれ大型アップデートで実装予定が有ったんじゃないか?サービス中止が決定した時点で中途半端に出来上がっていたのだろう、我は把握して無いがな。」

「おーい!2人共!何してるでござるか?置いてくでござるよ!」

サクラの声がして、ふと目を向けると皆と結構距離が開いていたのに気が付き急いで追いつく。

サクラの声を聞いた亜人の人々が怪訝な視線を向けるのが雰囲気で分かる。
観光客が多い中でも一際美形揃いの集団で声が男性なのだから目立たない訳が無い。

無頓着なサクラは最近自身の声で有る事と他者の反応に慣れ過ぎている傾向にある為、全く気になってい無い様子だ。
正直気にしているのは最近ではミカさんだけだ。

周囲からクスクスと笑い声が聞こえる。
地元民らしき人々は「あのジュースを飲んだのよ。」と口々に話していた。

少し歩いた所で露天街に到着し水着を販売している店を発見する。
私達は各々水着を買い、ホテルへ帰還して着替える。

地味目の水着が有って良かった・・・が露出度が多い水着の品揃えが良いのは老犬店主の趣味なのだろうか。

まぁ皆は肉体美に自信が有るのか気にして無い様だが、こう言う所が中身が男性と女性の違いじゃないだろうか。

水着に着替えてからは周囲からの熱視線が凄い、主にサクラと咲耶への視線だ。

生地の少ない水着に今にもはみ出そうな放漫ボディで堂々と公道を練り歩いているのだから注目の的だ。

ミカさんは視線に途中で気付き、早々に上着を着こんでいた。
DOSどっちゃんは普段の装備で【不可視化】を使って背後に居るはず・・・多分。

暗黒神ハーデスハーちゃんはポリシーに反するとか言って着替える事無く暑苦しい漆黒のローブを纏っているので別の意味で視線を集めていた。

「お主、その恰好は暑くないでござるか?」

「【スヴァリンの小手】を装備しているからな、問題無い。」

「火炎耐性のヤツですね。」

私達は観光地の浜辺から島をぐるっと回る様に歩く。
日が落ち始め辺りを夕日がオレンジ色に染める頃、島の南端に当たる古代遺跡群に到着した。

観光地として整備されている区画と、遺跡研究チームによる発掘区画に分けられており発掘区画は白衣を着た研究員と大勢の発掘員が発掘作業を行っている。

周囲を多くの腕章を付けた冒険者達と衛兵が厳重な警備を敷いており立入禁止区域をなっていた。

「結構厳重そうですね。」

「まぁ、今日は下見って事で良いんじゃないですか?」

観光用の古代遺跡説明板には1000年以上昔に栄えた都市の残骸で高度な文明を誇っていたと説明書きが有り錆びた機械片や石化した用途不明のアイテムが出土しているらしい。

素人目には建物の形跡は一切無く、荒れ果てた瓦礫群にしか見えない。

採掘がおこなわれている場所には地下へ続いている階段が露わになっており、怪我を負った複数の冒険者達の姿が見えた。

「あれ?貴女はサクラさん?」

不意に高位と分かる銀色の鎧に身を包んだ薄青髪の猫人間種ワーキャットが話しかけて来た。

10代中盤から後半だろうか?
人間種ヒューマン寄りの色白の肌に薄青色の髪の毛の頭部には猫耳の美少女が3人の狼人間種ワーウルフの衛兵と共に近付いて来る。

あの特徴?
あれがサクラの話していた子なのかな?

しかし話していた印象と少しだけ違う。
彼女は多分戦士職のウォーリアーだろうか。

第一印象は「新世紀●ヴァンゲリオン」に出て来た「綾波●イ」っぽい。
その猫耳っにケモナーのサクラが反応した。

「シャル殿!シャル殿ではござらんか!」

「数日ぶりね、後で知ったのですがサクラさんは有名人だったのですね。」

サクラはドヤ顔でエヘンと巨大な胸を張る。
狼人間種ワーウルフの衛兵の目が彼の胸に集中しているのが分かる。

外見が狼寄りの狼人間種ワーウルフの衛兵で、私は見分けが付かないが反応から察するに多分3人共性別は男だ・・・いや、雄と言うべきか?

「皆さんが英雄と名高い「深紅の薔薇」の・・・お会い出来て光栄です!」

「こちらこそ、サクラがお世話になった様で。はじめまして、「深紅の薔薇」のギルドマスターをしているミカエル=アルファと申します。」

ミカさんが自己紹介をすると、彼女と衛兵が膝を付きかしこまる。
そして彼女から改めて自己紹介をされる。

彼女はこの国の戦士部門長を任されているシャルと言う猫人間種ワーキャットの少女だった。

そして彼女が公営競売場オークション希少鉱石レアメタルの出品者と同一人物だった。

この遺跡で発掘された希少鉱石レアメタルをアニマ国の代表として機械都市ギュノス国へ売りに来ていたとの話だ。

遺跡研究者の見解で15億ゴールドの売上を予想していたが実際は3倍以上の値が付いた事で国を挙げて遺跡発掘に力を入れる事になったらしく大勢の調査員や作業員が投入されたとの事だ。

そして遺跡盗掘者の侵入を防ぐ為に衛兵が遺跡防衛に駆り出されたと言っていた。
今日はたまたま見回りに遺跡に来て、偶然サクラと再会したらしい。

サクラはシャルに頼み、明日アニマ国の国王に謁見出来る様に手配して貰える事となった。
何とも運が良い出会いをしたものだ。

「では明日の早朝に宿へ迎えにまいります。」

シャルと別れ遺跡を後にする頃には太陽の半分は水平線に涼んでいた。
約半日を掛けてアニマ国を時計回りにぐるっと一周し宿泊施設に戻る。

街には松明による街灯が灯され昼間の雰囲気と違った風景を作り出していた。

夜のビーチは遊泳禁止では無いが一般的に泳いでいる人は居ない。
水着に着替えたが結局今日は泳ぐ暇が無かったのは残念だ。

私達は名物の海鮮料理に舌包みを打ち、宿に帰還して休息を取る。
ギュノス国に比べたら快適とは言えないがハンモックで寝るのは初体験なので少し楽しみだ。

明日は国王との謁見だけど何を着て会えば良いんだろうか・・・

シャルは水着だと喜ぶかも知れませんと冗談を言っていたが、サクラ辺りが真に受けないと良いけど。

私は波打ち際に優しく響く潮騒の音を聞きながら、いつしか眠りに付いていた。
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