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砂漠の国編

133話 極秘任務

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時は少し戻る・・・

-コダの街-

早朝の内にピトゥリア国の王子様御一行をコダ城に御案内して、我々はお姫様探しを始める。

国王は以前にも国外逃亡未遂が有ったと言う話をしていたが、正直セーニア姫が国外逃亡されていたら我々では手に負えない。

国と国を跨ぐ整備の整った関所や船着場には既に兵士を手配済らしく情報が入れは確保は容易だろう。

セーニア姫はこの国に潜伏している可能性が高いが目撃情報が極端に低い。

外交を担当する宰相に相当する位置の大臣ら数名が言うには、恐らく何らかのトラブルに巻き込まれているんじゃないかと言う見解だった。

その事を踏まえ我々の捜索方針が固まる。
通常の捜索業務は一般兵に任せ、我々は別動隊として動く事になった。

今回の我々のミッションは国内でマフィアやテロ組織の建物と想定されている場所の調査だ。
それぞれ単独で同時に潜入する手はずを立てた。

潜入目標の建物は丁度4ヶ所、僕とサクラと咲耶にアルラトに分かれて該当の建物に向かう。
一応それぞれ数名の兵士がサポートする事になって居る。

ギースが念の為と、この国で捕まった人物が使用していた「偽造ギルドカード」を更に改造して人数分渡してくれた。

マフィア相手とは言え偽造ギルドカードを使うのはどうかと思うけど・・・

守護神メジード討伐の件で僕達の顔はこの国で有名で隠密活動には不向きだからだ。

咲耶が面倒だから建物ごと全部燃やして事故って事にすれば良いんじゃないかと危険な事を言いだす。

当然却下だ。

そして姫の安全が第一だと注意した。

全く過激派みたいな危険な思想でも持っているのか?

改めて僕は全員に再確認を促す、今回の目的は殲滅では無く救出だ。
セーニア姫の身の安全が第一だ。

「よし、じゃぁ行くぞ皆!作戦名【色仕掛け】実行するでござる!」

「お、おう!」「おけ!」「おー!」

今回の作戦立案はサクラなので、サクラが皆に号令をかける。

作戦名そのままで、ほぼ無策に近いがサクラと咲耶とアルラトはノリノリな様で多数決で負けた。

まぁ特に代替案が有る訳でも無いしそれに無理に色仕掛けをする必要は無い訳だし、個々のアイディアに任せよう。

コダ国の兵士も居る事だし、そうそう無茶な事はしないと願いたい。

それに僕も【シヌイ・コーク】を飲んでから以前の様に男性相手に臆する事が無くなった。
今では上手く女性を演じる自信は有る。

そうだ、これはネカマプレイでは無く女性のロールプレイだ。

人材配置は情報収集していた段階で得た情報を基に1番の有力候補を自分が担当する様にしておいた。
僕が担当する場所は、王女が国外逃亡をする時に手助けをした従者のソーサラーが所属していたギルド。

その後誘拐未遂を手助けしていた連中から派生した組織らしい。

恐らく姫を唆し、国外逃亡をする様に仕向け道中誘拐する手はずだったのだろうと兵士長ギースが仮説を立てていた。

従者のソーサラーは証拠不十分だったが、解雇され他国へと流れて行ったらしい。

名前はミナ=モトシズ・・・少し前に機械都市ギュノス国の温泉街で事件を起こした容疑者の1人だ。

意外な所で繋がっている物だな。

さてと、どうしようかな?




皆と別れ1時間余り、潜入先の建物の前に到着する。
その建物は石造りの2階建てで周囲の建物に比べたらそこそこ大きい。

表向きは「万屋よろづや」と看板を掲げている。
簡単に言うと何でも屋といった所か。

万屋よろづやと言う単語から社長は銀髪の甘党で部下に怪力中華娘と眼鏡が本体のアイドルオタクを連想してしまう。

鉛筆からミサイルまでとは行かないまでも、兵器売買の化粧品会社「KAORU」と繋がっていると考えると裏で何をしているか分かった物じゃない。

周囲の建物に補助役の兵士を隠れる様に待機させる。
内部潜入は僕1人の方が行動し易い、内部から逃亡を図る人物を職務質問して貰おう。

まずは変装からだ。

自分のアイテムストレージを確認し黒いフルフェイスマスクの兜と黒のビキニアーマーを取り出す。

髪を束ね巻く様にして完全に兜の中に納める。

色仕掛けをするつもりは無いが、これでミカエル=アルファと言う有名冒険者には見えないだろう。

ハッタリ用に準備した偽物の紹介状を持ち万屋よろづやに足を踏み入れる。
1階は酒場の様になっていて酒場様のカウンターと万屋よろづや用のカウンターが有る。

僕が店に足を踏み入れるとテーブルに座っていた冒険者達が一斉に此方を向く。
雰囲気から言って酒を飲んでいる連中も全員ここの一味だろう。

僕は万屋よろづやのカウンターに行き、座っている男に向かって話を始める。

「ギュノス国で出会ったミナと言う女性の紹介で仲間に加えて貰う為に来た者だが。社長にお目通りを願いたいのですが。」

そう言って偽物の紹介状を渡す。

一瞬怪訝そうな表情をしたが書状に目を通すと1度部屋の奥に下がって行った。
その後、カウンターに居た男が上役の女性を連れて来て奥の別室に通された。

皮で出来た戦闘用の軽スーツを着た女性は20代後半の割にしなやかそうな筋肉を持ち戦闘経験が豊富そうな印象を受けた。

頭上には黒い犯罪者印どくろマークが有り、作り笑顔で対応している。
ギルドカードの確認をしたいと言われ、偽造ギルドカードを提示する。

その後地下に案内され、入社試験を行うと言われる。
恐らく偽の紹介状の時点でバレているはずだから相手の芝居に合わせよう。

地下室は広い石造りの空間と奥に何個かの牢らしき物が見える。

中には白いフードの人物が1人、別の牢には多種多様な亜人種デミヒューマンが閉じ込められている。

彼等は人身売買の商品だろうか?周囲を確認していると14名位の筋骨隆々の戦士職の男達が僕を取り囲む。

男共の頭上にも色とりどりの犯罪者印どくろマークが付いており、低俗なエロ漫画に出そうな下卑た笑みを浮かべながらジリジリを近付いて来る。

「フフフ、試験・・・と言ったけど、嘘よ。ごめんなさいね。貴女は何者で何が目的なのか聞かせてくれないかしら?どうせ国に雇われた冒険者なんでしょう?」

「いいえ、私はミナさんの紹介で万屋よろづやに就職しに来たんですけど。」

敢えてシラを切ってみる。
女性は不愉快な表情を浮かべ、「チッ」と舌打ちした後に配下の男共に僕を襲う様に指示を出す。

「そう、残念だわ。今新規作用は募集してないの。折角時間を割いて面接をしてあげたのだから、貴女の着ている装備を置いて帰って貰えるかしら?ああ、そうそう。ついでにその美しい体で部下を優しく癒して頂こうかしら。お前らも癒して欲しいよな?」

「ヘッヘッヘ・・・そりゃもう!」

「抜群のスタイルだしな。その兜の下も期待できそうだぜ!」

「不細工なら兜被せたまま可愛がってやるよ!げっへっへ!」

うっわ、最悪だ。

負ける気はサラサラ無いがリアルでこう言う台詞を投げかけられる立場になるとドン引きだ。

それに少しは此方の情報を聞き出す為に会話をするとか有るだろ!
知能指数が低いのか理知的な会話を出来無いのは本当に残念だ。

まぁ、リアルで同じ状況ならヒ弱な僕は簡単に土下座して財布を差し出す自信が有るが、しかしこの世界では違う。

この場に居る見た目だけの筋肉馬鹿全員を素手で瞬殺出来るだけの能力を保有している。
むしろ手加減の方が不安だ、シノブやサクラ程上手く出来る自信が無い。

「大人しくじっとしてな!」

数人が小型のナイフと剣で襲い掛かって来る。

僕は直立不動のまま抵抗する事無く、その全ての攻撃を特殊技能スキル【仁王立ち】で受け止める。

【仁王立ち】は攻撃回避率がゼロになる代わりに自身の優先攻撃順位ヘイトを50パーセント上昇。
回避率のパーセンテージ分が防御・魔法防御に加算されるロード固有の特殊技能スキルだ。
その為、今僕の体は一般人が持てる武器程度では傷付ける事の出来ない位に硬化している。

ギィィィン!!

金属が激しく当たる様な甲高い音が鳴り、小型ナイフは砕け散り長剣は火花を散らし刃が盛大に欠ける。

「なっ!?」
「なんだぁ!?」

当然、攻撃を仕掛けて来た男共が驚愕する。

ビキニアーマーの鎧部分と素肌を晒している場所全て硬化し、男共が斬りかかった剣の刃が当たっている場所は一切出血する事無く無傷なのだ。

「な!なんだコイツは!」

「今腕が痺れたぞ!どんな体してんだ!」

「お、おい!ボスを呼んで来い!」

「こいつヤバイぞ!尋常じゃねぇ!」

男共は見た所レベルにして20~30程度だろう。

基本防御性能の高いロードと言う職業でレベル100の僕には、例え裸だったとしてもダメージを当てる事の出来ないだろう。

ただ先端恐怖症なので目を剣先で突かれそうになったら絶対回避する自信が有る。

・・・取り敢えずココのボスを読んで頂ける様で話が早い。

「では、死なない程度に癒してあげましょうか。・・・物理的にね。」

ボスが来るまでサクラに習った手加減方法の実践と行きましょうか。
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