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砂漠の国編

136話 学芸会的な・・・何か

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特別室の廊下には部屋の警備をしていたはずの兵士が気絶しているのが見える。

息を切らせながら、本物のセーニア姫が現れたの事に全員が唖然とした表情になる。

部屋に居る全員が同じ反応だが、それぞれ意味合いが違う。

何も知らされて無い王子様陣営はセーニア姫が2人居る事に驚き、私達王様陣営は逃げたはずのお姫様がお見合いに乱入して来た事に驚いていた。

お姫様が無事見つかった様で良かったとは思うけど、この状況をどう収拾すれば良いんだろうか?

「シノブ、ハーデスを偽物にする。ここからはアドリブだ。」

「わっ!びっくりした。」

【不可視化】状態のDOSどっちゃんが私に小さく耳打ちをする。

偽物にするって意味分からないんだけど?
詳しく!言葉少なく私の傍からDOSどっちゃんの気配が移動した。

暗黒神ハーデスハーちゃんと王様達の所に移動した様だ。

その時、扉の前のセーニア姫が腰に手を当てて暗黒神ハーデスハーちゃんを真直ぐ見据えて叫んだ。

「・・・所で!この状況はどういう事ですか!?」

混沌とした雰囲気の部屋に彼女の大声が響き、その後静寂が周囲を包む。

誰も答える事が出来ないで固まる。

ミカさんはお姫様に詳細の説明をしてないのだろうか?

そうこう考えている時に、暗黒神ハーデスハーちゃんが顔を伏せたまま立ち上がる。
神妙な雰囲気の中、彼は俯いたまま男性の声で静かに笑い始めた。

「クックックックックッ・・・・」

その声を聞いた部屋に居た全員がギョっとした表情で暗黒神ハーデスハーちゃんに対して身構える。

王子様陣営と彼の本当の声を知らない王様、王妃様や近衛兵までも驚く。

DOSどっちゃん、声の事は2人に話さなかったのか?
その後、王様と王妃様が明らかに演技と分かる様な大袈裟な演技をしだした。

2人は椅子から立ち上がり暗黒神ハーデスハーちゃんから離れる。

「ア、アナタハ、ナ・・・ナニモノデスカ!?」

「キサマムスメデハナイナ!?」

「ぶふっ!!げほっげほっ・・・」

デデーン!シノブアウトー!

脳内でSEとシステム音声で再現再生される。

王様と王妃様の余りにも御粗末な演技にプルプレートメイルの中で吹き出してしまう。
フルプレートにしておいて良かった。

今、理解した。

暗黒神ハーデスハーちゃんが偽物と入れ替わってましたって言う「設定」で、皆騙されていました的な〆方をするって事か。

「クックック・・・もう少しで、コダ国とピトゥリア国を一挙に手に入れられた物を!」

1人だけ通常の「厨二病」モードでノリノリの人が居た。
敢えて低めの声を出して魔王系ロールを始めている。

ここは私も参加しないといけないパターンか?
まずはこのフルプレートを脱ぐか。

私は焦りつつガチャガチャと鎧を脱ぎ始める。
数人が何事かと此方に視線を向けている。

少しだけ恥ずかしいので見ないで!
お姫様の偽物を見てて下さいお願いします。

「貴様は何者だ!私を幽閉した組織の者か!?」

「幽閉!?どう言う事ですか!?セーニア様!」

セーニア姫とアレクス王子の2人は演技じゃない。
天然だから台詞回しが超自然だ。

幽閉と言う言葉には王様も王妃様も驚きを隠せない。
ただの家出では無かったのか。

無事と言う事はミカさんが解決したんだろうけど、当事者のミカさんはハラハラした様な表情で現在完全に傍観を決め込んでいる。

「クハハハハハハッ!貴様に名乗る名前など無いわ!」

名乗らんのかい!

私は鎧を脱ぎながら、思わず心の中でツッコミを入れる。

ああ・・
もう重くて脱ぎにくい!

暗黒神ハーデスハーちゃんの大きく広げた両手が輝き、眩しい閃光を放ち始める。

部屋全体が異常に強い光に包まれ目が空けていられない。
そして大きな爆発音が鳴り響き部屋を砂煙が包む。

光が収まると特別室の壁に大穴が空き、そこから風が吹き砂煙が外へ流れ出す。

恐らくDOSどっちゃんが壁を銃で破壊し逃げる為の手引きをしたのだろう。

「逃げられた!?」「追うぞ!」「おう!」

王子側の近衛兵3名が壁の穴から外へ走って出ていく。
セーニア姫も飛び出そうとして4人の近衛兵に羽交い絞めされていた。

結局私は鎧を脱ぐのに手間取り何も出来ないまま「あんた誰?」的な視線を王子と従者の人々から浴びていた。

少し気不味い。

事情を知らない人から見たら、突然鎧を脱ぎだした変態に見えているかも知れない。

・・くそう、訴えてやる!




王子はコダ国の兵士に護衛され別室へ移動する。
私達はその隣室に移動し作戦会議をする事となる。

まずはお姫様側の状況確認と、こちらの作戦の擦り合わせが必要だ。
私は改めて自己紹介をしてセーニア姫と浴場に行く事になった。

護衛兼監視役と言った所だ。

また逃げたらたまらないしね。

その間にミカさんはサクラ達の状況確認に街へと戻って行った。
多分暗黒神ハーデスハーちゃんも合流するんじゃないかな。

「そなた・・・どこかで会った事が有るか?ああ、それとシノブと呼んで良いか?」

「ええ、構いませんよ。セーニア姫。」

「私もセーニアで良い。なかなか同世代と話す機会が少なくてな。」

姫が汚れた衣類を着替える序に大浴場に私と2人で入る事になった。

このお姫様は格闘技をしているのか、無駄なく絞られた美しい筋肉をしている。
腹筋も綺麗なシックスパック状に割れ、腕や太腿も高質化した筋肉が付いている。

「えーっと、じゃセーニア。事情を説明するね。」

「うん、よろしく頼む。」

湯舟の中で現在の行っていた作戦内容を姫様に伝える。
ミカさんから少し説明をして貰っていた様だが中途半端に聞いて飛び出したそうだ。

どうやら彼女は替え玉を使って強制的に婚約を纏められると勘違いしたらしい。
王様と王妃様の提案で婚約は姫の意思を尊重すると伝えると少し安心した様子だった。

「それならそうと言ってくれれば良かったのに。まったくミカエルは・・・」

「まぁどの道、アレクス王子には謝らないといけないね。」

話してみると気さくで笑顔が可愛い。
見た目は知的だが少し脳筋思考で直情的な女性だった。

良く分からないがテロ組織的な所に幽閉され、身代金を要求される所だった様だ。

ミカさんが組織の構成員の大半を倒し検挙済なので、より詳しい情報は後々分かるだろうと話していた。

「それにしてもミカエルは凄いな!剣聖級の強さだ。我が国に・・・いや、私専属の騎士になって貰えないだろうか!」

「それは無理だと思いますが、彼の強さは私も憧れです。」

途中からミカさんの話になり彼女は突然饒舌になり始めた。
彼女の華麗な戦い方が素晴らしいとか、まるで戦いの女神だとか恍惚の表情でべた褒めだった。

どうやらミカさんのファンになった様だ、その気持ちは分かる気がする。
彼は上位プレイヤーだ、そこら辺の戦士とは格が違う。

私達は暫く世間話に花を咲かせた。
そして程なくして浴場から上がり王様と王妃の待つ部屋へ戻った。
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