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異世界崩壊編 前編
173話 強化版「魔人クトゥル」
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マザーブレインがクリスタル容器内部で両手を広げる。
その瞬間、部屋全体が激しく振動し壁が液体の様に流動しながらグラグラと波打つ。
流動して波打つ部屋の壁から無数の巨大な赤い腕が生える。
見た目はまるで障子を突き破って腕が出るギミックのお化け屋敷の様だ。
ゲームではクリスタルっぽい腕が4本だったはずだけど部屋全体に広がる腕の数はゆうに40本以上生えている。
そして1本1本がリアルで不気味だ。
つい最近百鬼夜行でリアル妖怪との戦いを実際体験した私達は少し恐怖耐性が付いていると思う。
「逃げ場が無いね。」
「多少部位破壊しないと、中央の弱点部分に当たるクリスタル容器に近付けそうに無いな。」
「咲耶は完全補助に回って下さい、ハーデスは電撃以外の魔法で腕を攻撃してください。
シノブも【影分身】でDOSの護衛を、DOSは中距離からマザーブレインの直線上に待機し銃撃をお願いします。サクラは私と共に本体を狙います!」
「了解!」「K!」「ふん、まかせろ。」
「了解です。」「行くでござる!」
DOSは初撃から課金弾を込めた【アグネイヤ】で強力な貫通弾をマザーブレイン本体に向けて放った。
マザーブレイン本体の前に6本の腕が移動し壁を造る様に重なり合う形で防御する。
そして着弾と共に腕を2本貫通し破壊、3本目の腕に遮られ本体は無傷で終わる。
「・・・流石に守りは硬いか。」
「うん、でも赤い腕2本同時に破壊出来たよ!」
「・・・いや!見ろ!」
消滅したはずの赤い腕が根元から徐々に再生を始めた。
部位破壊と言っても本体にダメージを与えるのは容易では無い様だ。
DOSの初撃に呼応する様に彼の周囲を巨大な腕が取り囲む。
私は分身体と共にDOSを防御する事に専念する。
腕に対して暗殺特殊技能は無効化されている様だ。
ダメージによる破壊しか無い訳か、これは骨が折れそうだ。
彼の最大攻撃力の銃撃をマザー本体に与える為に彼からマザー本体への直線上に空間を作る必要が有る。
「暗黒神ハーデス!こっちは大丈夫だからミカさん達の援護を!」
「任せておけ!」
「あまり前に出過ぎないで下さいよ!あっ!おい!話を聞けって!」
暗黒神ハーデスは咲耶の話が聞こえて無い様な素振りで走り出す。
黒衣を翻し至近距離から火炎系の極大攻撃魔法を放ち複数の腕にダメージを与える。
この世界では距離に応じて魔法ダメージ量が違うという通常の物理法則に沿った設定になっているので、最近は魔法職のセオリーとも言える後方待機型のスタンスを捨ててアグレッシブに前衛に出て行く戦闘スタイルを取っている。
暗黒神ハーデス自体の近接戦闘や回避スキルは高くない。
その事で回復役に回っている咲耶が怒るという感じだ。
「サクラ左右に展開して優先攻撃順位を集中させるぞ!」
「任せるでござる!」
ミカさんとサクラは左右に分かれて腕を斬り倒しながら真直ぐ本体のクリスタル容器に目掛けて進んでいる。
当然DOS攻撃目標を定めていた腕は2人に向かい始める。
この腕はどの程度かは分からないけど斬撃耐性を有している感覚が有る様に思える。
これもゲームには無かった設定だ。
腕は倒しても再度生えて来て常に40本を維持している様な感じだ。
腕自体はそこまで強くは無い、物理攻撃と本体への防御が主体で攻撃もしてくる。
ゲームで言う所の体力は腕を倒しても減っているはずだ。
しかし、これだけ直ぐに生えてくると全く実感が湧かない。
2人が本体付近に到達すると、本体直ぐ脇からクリスタルの様な物質で出来た4本の腕が生えて来た。
あれはゲームで見た本体の腕だ。
その4本の腕は電撃系の上位魔法と極大攻撃魔法で2人を迎撃する。
こちらの電撃攻撃は無効化するフィールドの癖に敵は使用してくるとは何とも都合が良い。
最高レベルの2人とは言え、流石に無傷とはいかない。
その為、電撃属性攻撃に弱いDOSは中距離以上近付く事が出来ない。
プレイヤーの電撃魔法は無効化する癖に相手が使って来るのには理由が有る。
昔サクラから聞いた話だが、サービス開始から3回目か4回目のガチャ更新された時のアイテムを活かす為だと言う。
その超激レア衣装に防御力0だが魔法反射効果の付いた衣装【天之羽衣】と言う装備らしい。
それを装備していると魔法職でも単独でマザーブレイン撃破が可能となる物だ。
ハイメス国のデイアさんが装備していた物と同じ性能のアイテムの様だ。
ガチャの回転数を上げる為に実装して、その装備を活かす為に電撃攻撃をワザと運営が用意したんだと豪語していた。
その裏話を暗黒神ハーデスがあっさりと認めていた。
ただ、実際は【黒猫スーツ】よりも人気が無く取得率が少なかったらしい。
その為かサービス終了時には超激レア装備の一角となっていたらしい。
「赤い腕はギミックの一環でダメージが通って無い可能性が有りますね。」
「マジでござるか!拙者10本は破壊したでござる。骨折り損でござる。」
瞬間的にマザーブレインの黄金色の両目が光り一瞬だけ部屋全体が暗闇に覆われた。
何がおきたんだ?と思った時にサクラと咲耶がその場に倒れ体が灰色に染まる。
・・・これは【即死の魔眼】だ。
高確率で全体即死効果をもたらす攻撃。
最強のレイドボス破壊神アザドゥが稀に使って来るプレイヤー泣かせのボス固有の特殊技能のはずだ。
魔力系の状態異常と暗殺特殊技能に対する耐性の無いサクラと咲耶に対しては効果が抜群だ。
実際に完全に防げるのは状態城無効化能力を持つ鎧【アイギスの鎧】を装備したミカさんと、種族特性で守られたDOS位だ。
ミカさんは直ぐに近くに居たサクラを蘇生したが、後方にいる咲耶を蘇生するには一旦後退するしかない。
私の持っている最後の即時復活薬【アナスタシン】を使うか迷うが、それを察したミカさんがサクラを前衛に残し後退を始めた。
DOSと暗黒神ハーデスがミカさんとサクラを囲む通常の腕を牽制する。
何とか咲耶を蘇生し態勢を立て直す。
「ガキィィン」と言う金属が始める様な物凄い音が部屋に響く。
本体付近で4本のクリスタルの腕を相手に戦うサクラの刀が砕け散り驚愕の表情を浮かべる。
「な、なん・・・だと!?」
2本装備している内の1本の乱れ桜吹雪が目の前で砕けた。
以前サクラが言っていたが彼の愛刀は武器耐久力を課金アイテムで強化し、耐久値が無限になっていたはずだ。
武器破壊出来るはずがない。
驚きを隠せないサクラは動揺し動きが止まりマザーブレインの放った極大攻撃魔法を真面に喰らい瀕死になりながら後退する。
「がはっ・・・馬鹿な!?壊れるはずがないでござる!」
「耐久値を無視した武具破壊なのか?」
有り得無い事が起き、サクラが唖然とする。
当然だ壊れるはずの無い武器を壊す特殊技能なんて聞いた事が無い。
むしろ、そんな特殊技能を実装したらプレイヤーから猛抗議が来るに違いない。
昔暗黒神ハーデスに聞いた事が有る。
MMORPGが流行り始めた初期には回線落ちしただけで所持アイテム全ロストと言う凶悪なペナルティのゲームも有ったらしい。
その時周囲の腕がサクラ一斉に襲い掛かり、殴打により更に後方に弾き飛ばされる。
「サクラしっかりして下さい!皆も距離を取れ!」
ミカさんの指示で私達は中距離に陣を取り、周囲の腕を破壊しながら態勢を整える為に回復・補助魔法を掛けて貰う。
そのまま相手の攻撃を耐え続け消耗戦の様な状態に突入してしまった。
その瞬間、部屋全体が激しく振動し壁が液体の様に流動しながらグラグラと波打つ。
流動して波打つ部屋の壁から無数の巨大な赤い腕が生える。
見た目はまるで障子を突き破って腕が出るギミックのお化け屋敷の様だ。
ゲームではクリスタルっぽい腕が4本だったはずだけど部屋全体に広がる腕の数はゆうに40本以上生えている。
そして1本1本がリアルで不気味だ。
つい最近百鬼夜行でリアル妖怪との戦いを実際体験した私達は少し恐怖耐性が付いていると思う。
「逃げ場が無いね。」
「多少部位破壊しないと、中央の弱点部分に当たるクリスタル容器に近付けそうに無いな。」
「咲耶は完全補助に回って下さい、ハーデスは電撃以外の魔法で腕を攻撃してください。
シノブも【影分身】でDOSの護衛を、DOSは中距離からマザーブレインの直線上に待機し銃撃をお願いします。サクラは私と共に本体を狙います!」
「了解!」「K!」「ふん、まかせろ。」
「了解です。」「行くでござる!」
DOSは初撃から課金弾を込めた【アグネイヤ】で強力な貫通弾をマザーブレイン本体に向けて放った。
マザーブレイン本体の前に6本の腕が移動し壁を造る様に重なり合う形で防御する。
そして着弾と共に腕を2本貫通し破壊、3本目の腕に遮られ本体は無傷で終わる。
「・・・流石に守りは硬いか。」
「うん、でも赤い腕2本同時に破壊出来たよ!」
「・・・いや!見ろ!」
消滅したはずの赤い腕が根元から徐々に再生を始めた。
部位破壊と言っても本体にダメージを与えるのは容易では無い様だ。
DOSの初撃に呼応する様に彼の周囲を巨大な腕が取り囲む。
私は分身体と共にDOSを防御する事に専念する。
腕に対して暗殺特殊技能は無効化されている様だ。
ダメージによる破壊しか無い訳か、これは骨が折れそうだ。
彼の最大攻撃力の銃撃をマザー本体に与える為に彼からマザー本体への直線上に空間を作る必要が有る。
「暗黒神ハーデス!こっちは大丈夫だからミカさん達の援護を!」
「任せておけ!」
「あまり前に出過ぎないで下さいよ!あっ!おい!話を聞けって!」
暗黒神ハーデスは咲耶の話が聞こえて無い様な素振りで走り出す。
黒衣を翻し至近距離から火炎系の極大攻撃魔法を放ち複数の腕にダメージを与える。
この世界では距離に応じて魔法ダメージ量が違うという通常の物理法則に沿った設定になっているので、最近は魔法職のセオリーとも言える後方待機型のスタンスを捨ててアグレッシブに前衛に出て行く戦闘スタイルを取っている。
暗黒神ハーデス自体の近接戦闘や回避スキルは高くない。
その事で回復役に回っている咲耶が怒るという感じだ。
「サクラ左右に展開して優先攻撃順位を集中させるぞ!」
「任せるでござる!」
ミカさんとサクラは左右に分かれて腕を斬り倒しながら真直ぐ本体のクリスタル容器に目掛けて進んでいる。
当然DOS攻撃目標を定めていた腕は2人に向かい始める。
この腕はどの程度かは分からないけど斬撃耐性を有している感覚が有る様に思える。
これもゲームには無かった設定だ。
腕は倒しても再度生えて来て常に40本を維持している様な感じだ。
腕自体はそこまで強くは無い、物理攻撃と本体への防御が主体で攻撃もしてくる。
ゲームで言う所の体力は腕を倒しても減っているはずだ。
しかし、これだけ直ぐに生えてくると全く実感が湧かない。
2人が本体付近に到達すると、本体直ぐ脇からクリスタルの様な物質で出来た4本の腕が生えて来た。
あれはゲームで見た本体の腕だ。
その4本の腕は電撃系の上位魔法と極大攻撃魔法で2人を迎撃する。
こちらの電撃攻撃は無効化するフィールドの癖に敵は使用してくるとは何とも都合が良い。
最高レベルの2人とは言え、流石に無傷とはいかない。
その為、電撃属性攻撃に弱いDOSは中距離以上近付く事が出来ない。
プレイヤーの電撃魔法は無効化する癖に相手が使って来るのには理由が有る。
昔サクラから聞いた話だが、サービス開始から3回目か4回目のガチャ更新された時のアイテムを活かす為だと言う。
その超激レア衣装に防御力0だが魔法反射効果の付いた衣装【天之羽衣】と言う装備らしい。
それを装備していると魔法職でも単独でマザーブレイン撃破が可能となる物だ。
ハイメス国のデイアさんが装備していた物と同じ性能のアイテムの様だ。
ガチャの回転数を上げる為に実装して、その装備を活かす為に電撃攻撃をワザと運営が用意したんだと豪語していた。
その裏話を暗黒神ハーデスがあっさりと認めていた。
ただ、実際は【黒猫スーツ】よりも人気が無く取得率が少なかったらしい。
その為かサービス終了時には超激レア装備の一角となっていたらしい。
「赤い腕はギミックの一環でダメージが通って無い可能性が有りますね。」
「マジでござるか!拙者10本は破壊したでござる。骨折り損でござる。」
瞬間的にマザーブレインの黄金色の両目が光り一瞬だけ部屋全体が暗闇に覆われた。
何がおきたんだ?と思った時にサクラと咲耶がその場に倒れ体が灰色に染まる。
・・・これは【即死の魔眼】だ。
高確率で全体即死効果をもたらす攻撃。
最強のレイドボス破壊神アザドゥが稀に使って来るプレイヤー泣かせのボス固有の特殊技能のはずだ。
魔力系の状態異常と暗殺特殊技能に対する耐性の無いサクラと咲耶に対しては効果が抜群だ。
実際に完全に防げるのは状態城無効化能力を持つ鎧【アイギスの鎧】を装備したミカさんと、種族特性で守られたDOS位だ。
ミカさんは直ぐに近くに居たサクラを蘇生したが、後方にいる咲耶を蘇生するには一旦後退するしかない。
私の持っている最後の即時復活薬【アナスタシン】を使うか迷うが、それを察したミカさんがサクラを前衛に残し後退を始めた。
DOSと暗黒神ハーデスがミカさんとサクラを囲む通常の腕を牽制する。
何とか咲耶を蘇生し態勢を立て直す。
「ガキィィン」と言う金属が始める様な物凄い音が部屋に響く。
本体付近で4本のクリスタルの腕を相手に戦うサクラの刀が砕け散り驚愕の表情を浮かべる。
「な、なん・・・だと!?」
2本装備している内の1本の乱れ桜吹雪が目の前で砕けた。
以前サクラが言っていたが彼の愛刀は武器耐久力を課金アイテムで強化し、耐久値が無限になっていたはずだ。
武器破壊出来るはずがない。
驚きを隠せないサクラは動揺し動きが止まりマザーブレインの放った極大攻撃魔法を真面に喰らい瀕死になりながら後退する。
「がはっ・・・馬鹿な!?壊れるはずがないでござる!」
「耐久値を無視した武具破壊なのか?」
有り得無い事が起き、サクラが唖然とする。
当然だ壊れるはずの無い武器を壊す特殊技能なんて聞いた事が無い。
むしろ、そんな特殊技能を実装したらプレイヤーから猛抗議が来るに違いない。
昔暗黒神ハーデスに聞いた事が有る。
MMORPGが流行り始めた初期には回線落ちしただけで所持アイテム全ロストと言う凶悪なペナルティのゲームも有ったらしい。
その時周囲の腕がサクラ一斉に襲い掛かり、殴打により更に後方に弾き飛ばされる。
「サクラしっかりして下さい!皆も距離を取れ!」
ミカさんの指示で私達は中距離に陣を取り、周囲の腕を破壊しながら態勢を整える為に回復・補助魔法を掛けて貰う。
そのまま相手の攻撃を耐え続け消耗戦の様な状態に突入してしまった。
応援ありがとうございます!
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