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異世界崩壊編 前編

184話 バンボゥ国壊滅

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-バンボゥ国-

ギュノス国でシノブ殿と別れ、転送装置を使用し拙者達はバンボゥ国の南端に辿り着く。
以前はギュノス国から船で3日間掛かったバンボゥ国への旅路も一瞬だ。
ワープとは全く便利なモノだ。

バンボゥ国は今まで訪れた街の中でも被害状況酷く、見える範囲で街や城は完全に破壊されてNPC達の死体がゴロゴロと横たわっていた。

綺麗に整備されていた住居区画や運河は燃えた残った瓦礫と崩れて濁った浅い沼地に様な姿に変貌していた。

「酷い状況ですね、生きている人々の姿は・・・無さそうですね。これだけの被害状況では、もう此処には誰も居ないかもしれませんね。」

「どうするでござる?1度ギュノスに戻るでござるか?」

「コダ国に向かいましょう。1週間もしない内にバンボゥ国が陥落した所を見るとコダ国も無事では無いかも知れない。」

ミカエル殿は常に冷静な状況判断をする。

つい数ヶ月前に訪れた裕福な国、広大な土地を有し貴族社会を形成している大都市があっさり破壊されたのだ。
敵戦力は相当のモノなのだろう。

「シノブさんはどうするのですか?彼女とは此処で落ち合う予定でしたよね?」

「我はシノブを1人にするのは反対だ。ギュノス国内なら安全かも知れんが、ヴルドゥとクトゥルの会話内容から察するにヨグトスはシノブを殺さない様に指示を出している節が有る。何か別の利用価値を見出しているやも知れん。」

「確かに・・・シノブは殺すな的な事を言っていたな。彼女が死んだ場合、現実世界の肉体に何か影響が出て次元上昇アセンションの妨げになると言う事だろうか?」

拙者が以前シノブ殿に犯罪者印どくろマークが付いた時に、彼女に頼まれて消えるかどうかの実験で殺そうとした事が有った。

犯罪者印どくろマークの付いたプレイヤーは別のプレイヤーにPVPで倒される事により、報奨金分資産から差し引かれ犯罪者印どくろマークが消失するシステムだ。

しかし、彼女に致命傷を与えてもどうしても殺す事が出来なかった。
意識を失ったシノブ殿に完全回復薬【ハイエリクサー】を使用して事情を説明したが信じて貰えなかった。

今思うとこの世界での彼女の体は、初めから死ねない様に設定されているんじゃ無いだろうか?
拙者が知る限り彼女が死んだ所は見た事が無い。

どの戦闘でもSP切れで気絶する事は有っても死んで蘇生した所を見た事が無いのだ。

彼女が破壊神アザドゥから聞いた話と合わせると、この世界の基盤を担う彼女は死ぬ事は出来ない。
彼女以外の全てを壊した時、シノブ殿はどうなるのだろうか?

「そうですね、シノブを待ちましょうか。コダ国は気になりますが・・・」

「私が斥候に行ってきましょう、皆はシノブを待っていてくれ。」

DOSドス殿が名乗りを挙げて立ち上がる。
「深追いせずに直ぐに戻って下さい。」とミカエル殿が指示を出し軽く手を振り転送装置へと向かって行った。

拙者達はDOSドス殿の帰りとシノブ殿との合流までの間、街の入口の開けた場所にキャンプを作り破壊された街の散策を行う事となった。

外観が無事な建物も有るが入口が破壊され、部屋内部は荒らされていた。

生きている人々の気配は無く無残に殺され腐敗が始まった骸ばかりで1人1人弔いたいが流石に多すぎて無理そうだ。
部屋の布地やカーテンを使い骸を覆う位しか出来ない。

特になんの発見等も無く、小1時間程散策をしてキャンプへ戻る。

やがて全員がキャンプに戻り、街の状況に落胆する。

NPCとは言え実際の人間と見分けが付かない、多数の死体を目にして食欲も失せると言う物だ。

それにしてもDOSドス殿が遅い。
シノブ殿は仕方が無いにせよ斥候に数時間は掛かりすぎの様な気がするが。

「何か有ったのかもな。」

「私がコダ国まで様子を見に行きましょう。大丈夫です、様子を見てすぐ戻りますから。」

「分かりました。咲耶お願いします。」

今度は咲耶殿が転送装置を起動しコダ国へDOSドス殿を向かえに行った。
そして1時間が経つが一向に2人が戻って来る気配が無かった。

おかしい・・・
絶対に何か事件に巻き込まれている気がする。

当然ミカエル殿、ハーデス殿、クリス殿も皆同じ事を考えている。

「絶対に何か有ったのでござる!」

「ええ、間違いありませんね。どうするべきか・・・」

暫くミカエル殿が考え、何か結論を出した様に顔を上げる。

「サクラとクリスは此処に残ってシノブを待っていて貰えますか?私達は一足先にコダ国へ向かいます。シノブと合流してから追って来てください。」

「分かったでござる。」

「分かりました。お気を付けて。」

そう言い残すとミカエル殿とハーデス殿は転送装置を使い姿を消した。

DOSドス殿と咲耶殿程の者が帰還出来ない状況に陥る事など有るのだろうか?
それこそレイドボスと遭遇したとかなのだろうか。

「何が有ったんでしょうか?」

「ふむ、想像も出来ないでござる。」

「サクラ様とこうして2人で話すのは久しぶりの様な気がします。呪いが解けて本当に良かったですね。」

「うん?ああ、いや~そうでござるな。あっはっは!」

元々中身が男で変声飲料【シヌイ・コーク】を使っているネカマだなどと口が裂けても言えない。

そう言えばストレージ一杯に買い込んだ【シヌイ・コーク】の在庫が少ない。
ギルドメンバーで1人当たり毎日約2本飲んでいるので消費量は半端無い。

1度アニマ国に仕入れに行きたいモノだが・・・
元々ゲームに存在しない大陸なので転生装置自体が存在してなさそうな感じだった。

暫くクリス殿と話していたが、転送装置に入った全員が戻って来る事は無かった。

2人で話をしていると、ある瞬間に周囲の雰囲気が一瞬で変わった事に気が付いた。

「サクラ様。気配が・・・」

「ああ、囲まれているでござる。」

周囲を複数のモンスターに囲まれているの様な感覚が有る。

【索敵】が使えるシノブ殿が居れば、もっと早くに気が付く所だが・・・
殺気を持った結構な数の敵に包囲されている様な感じだ。

瓦礫の隙間を縫うようにゾロゾロと姿を現したのは街の人々の死骸だった。
不死種アンデッド系か・・・ゾンビ的な奴だ、しかし多い。

強くは無いと思うが、統制が取れている様子なので何者かが町中の死骸を操って我々に向けている感じがする。
拙者はクリス殿に背中を預ける様に剣を構える。

「何処かに操っている奴が紛れているはずでござる。雑魚は頭部だけを狙うでござる。」

「分かりました。しかし多いですね。街中の死体が集まっているって事は無いですよね。」

クリス殿が嫌な事を言う。

何千人いると思ってんだ、流石に体力的に持たなそうな気がする。

早い所、司令塔となっているモンスターを倒さなければ。
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