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エピローグ
250話 オフ会!
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フロアの隅にキャンプと言うか施設と言うか、手造りで設営された様な建物が幾つか見える。
「シノブ殿、オブジェクトに触れるでござる。」
「うん。」
私は皆に促され、巨大なオベリスクに触れる。
触れた瞬間、オブジェクトに刻まれた絵文字の部分が輝き始めオベリスクが鳴動し始め、私達はその場から後退する。
オベリスクが崩れ落ち、悍ましい魔物の腕が一本、また一本と地表に出現し始めた。
地面を掴み地中の影の部分から這い出る様にゆっくりと伸し上がって来る。
「これは暗黒神ザナファです。皆で協力してこのボスを倒しましょう。」
「わ、わかりました!」
皆に視線を向けられた私は思わず返事をしてしまう。
この感じ、何度か経験が有る。
巨大なボスは様々な攻撃をしてくる。
しかしレベル差からかダメージは少ない。
皆も余裕で戦っている様だ。
「そろそろですね。トドメを!」
「は、はい!」「了解!」
「りょ」「ああ!」
「我が暗黒の力で虚無へ帰してやろう」
ミカエルさんの声で、パーティーメンバー全員で1番ダメージの通る特殊能力スキルを使用し暗黒神ザナファの頭部へ攻撃を集中したたみ掛ける。
「オオオオオオオオオオオオオオオ!」
暗黒神の雄叫びと共に視界が大きく揺れ、画面が輝く!
その時に不鮮明だった数々の記憶が水面から浮き上がる様に思い出される。
ミカさん、DOS、サクラ、咲耶、暗黒神ハーデス・・・
皆との思い出、それにアルラトにシャル。
クリス君にセーニア、そしてデイア。
その他にも今までに出会って来た全てのプレイヤー、NPCの人々。
感情が溢れ涙でモニターが揺れる。
これまでプレイして来たゲームでの思い出。
そして、そっくりの異世界で過ごした・・・大切な思い出。
面白さも・・・辛さも・・・喜びも・・・悲しみも・・・
戦いに勝った時の高揚感も・・・負けた時の悔しさも・・・
肉体的な痛みも・・・精神的な痛みも・・・
そして破壊神ヨグトスの感情。
「・・・・思い出した!思い出したよ!皆の事、全部!」
モニターの前で止め処無く溢れ流れる涙。
しかし自分の中にある感情は喜びが1番勝っていた。
突然の言葉に皆も驚き、そして一緒になって喜んでくれた。
「シノブ!」
「シノブ殿!!」
「シノブ!!」
「シノブ!お帰りなさい。」
「ふん、・・・還って来た様だな。」
・
・
・
それから私達は、その場で語り合った。
ゲームでの思い出、異世界での思い出、そしてリアルでの事を。
話は尽きる事が無く徹夜モードへと突入する。
私は改めてフィールドを眺める。
どう考えても私の記憶の中に在るゲームグラフィックよりも綺麗なのだ。
その事を暗黒神ハーデスに尋ねると、なんと此処は異世界として再構築された場所を約1年掛けて修復した場所なんだと話す。
そうかやたらとリアルなグラフィックに違和感を感じていたけど、ここは破壊神ヨグトスが造ったゲーム情報をリアル化したあの世界なのか。
確か会社のサーバー内に存在してるって話だった様な気がする。
「これってさSMO2として販売しても良いんじゃない?これだけ綺麗なグラフックだし、最新のオープンワールドにも引けを取らないと思う。私のパソコンでもラグとか無いし凄い技術だよ。」
私は素直な感想を述べる。
しかし皆はそれは出来ないと言った。
それは、この場所は何が起きてもおかしくないと言う話だからと言う。
詳しく聞くとこの世界は虫や小動物に至るまで全てに個別の進化を遂げたAIで動いていて、しかも謎の技術で超圧縮されたデータなのでプログラム的な干渉が20パーセント程度しか出来ないらしい。
暗黒神ハーデスが言うにはプログラム言語事態が文字化けしているにも関わらず正常に作動している世界だと言う。
要は細かいメンテナンスや再起動、ロールバックといった最低限運営に必要な事が出来ないのでオンラインゲームとして発表する事が叶わないらしい。
「簡単に言うと・・・今の人の手には余る代物なのだ。」
詳しい内容は分からないが、皆が1年掛けてこの世界を修繕は出来たけど破壊神ヨグトスの様に何でもかんでも自由自在にプログラム改竄を出来ないらしい。
余り公に出来ない機密情報なので、結局の所暗黒神ハーデスが管理責任者となり、会社が存続する限りサーバー内にデータとして置いておくらしい。
会議で消去や電源を切る事も案として挙がったが、社長の意向で却下されたらしい。
上司も首を傾げ、社会的問題か会社的な問題かは分からないと言っていたと暗黒神ハーデスが話す。
「だから、この世界は今日で終わりなんだ。正確には我々も含めてプレイヤーがログイン出来るのは今日が最後って事だな。」
「・・・そっか、うん、。」
少しだけ寂しい思いが心を過る。
この異世界で過ごした約1年間は私にとって掛け替えの無い物だ。
むしろ第2の故郷とも思える。
この異世界プログラムを全て解析出来る位、人類の技術力が向上すれば本当の意味で破壊神ヨグトスの目指した次元上昇が叶うのかも知れない。
それは幸福な事か不幸な事かは分からないけど、それが時代が進むって事なんだと思う。
・
・
・
「それよりも・・・オフ会でござる!」
寂しさを打ち消すかの様に、サクラがオフ会をしようと話し出す。
そう言えば、前にそんな話をしていたなと思い出す。
しかも「明日集まろう!」とか言い出す始末。
「いや、流石に無理でしょう?皆も仕事があるでしょう?私は大学が始まるまではまだ時間に余裕が有るけど・・・」
しかし皆は口々に大丈夫だと話す。
ミカさんは留年を決めていて、DOSと咲耶は個人事業主なので自由だと話す。
サクラと暗黒神ハーデスは無理にでも有給休暇を取ると豪語していた。
驚いた事にサクラは北海道の会社を退職し、暗黒神ハーデスの会社へ就職した様だ。
従って今は千葉で暮らして居るらしい。
結局1週間後の日曜日に大阪に集合する事に決まり、なごり惜しかったが私達はログアウトをした。
全員でグループLINEを造り連絡は容易になった。
翌日、私は不意に再度ログインをしてみようとしたがあの世界に入れる事は無かった。
回線は繋がらず、完全にあの世界は途絶されたと感じた。
でも、それで良いのかも知れない。
私達だけの思い出のタイムカプセルと考えよう。
・・・そして、複製異世界レナスディアは長い長い眠りについたんだ。
・
・
・
オフ会前日にミカさんこと如月さんから連絡が有り、そこで衝撃的な話を聞いた。
なんと昔「深紅の薔薇」に所属していて、所在の分かる友人達に連絡を取ったらしい。
その横の繋がりから何人か連絡が付き、都合の良い人は参加するらしいのだ。
当初は私を含め6人で催すオフ会が一気に18人も参加する大きなオフ会となった。
過去に引退した人達もキャラクターを削除しなければギルドメンバーリストに情報が残る。
個人パソコンにその情報ログが記憶される為、キャラクター情報の欄に個人用メールアドレスを記入していた人には連絡が付いたらしい。
接点が少ない人も居たけれど、名前を聞けば大抵は思い出せるはず。
・
・
・
そしてオフ会当日、私は大阪で予約したホテルにチェックインをして皆に無事大阪入りした事を連絡する。
「深紅の薔薇」のグループLINEも18名に増えており、「おつー!」とか「今向かってる!」とか「仕事おわらねー!」と頻りにコメントが入る。
グループLINEの名前は皆キャラクターネームとは違うので、自己紹介した人以外は誰が誰やら分からないカオスな状態だ。
でも、それはそれで面白い。
集合は今夜の19時に指定された居酒屋を貸し切っているらしい。
なんと驚いた事にその場所を経営している人も「深紅の薔薇」のメンバーらしい。
居酒屋店長をしているメンバーが居たとは驚きだ。
そのお店の経路を調べる時にネット検索でお店のホームページを確認した所、経営者の写真が写っておりどう見ても男なのだ。
おいおい!
またネカマが発覚してるよ!
・・・と心の中で笑う。
もはやこの程度では驚かない程に私はあの異世界生活の中で鋼のメンタルを獲得していた。
仲の良い友人女性キャラクター全員が実はネカマで中身が男だったんだから。
今は17時44分、少し早いけどサクラ達との待ち合わせ場所へと足を運ぶ事にした。
大阪の街は賑やかで活気が有る。
本場の関西弁はテレビでしか聞かないので少し新鮮だ。
待ち合わせ場所に到着すると、すぐに2人の男性が話しかけて来た。
最初はナンパか?と思ったが、その中に見覚えの有る顔を見つける。
やせ型のスーツを着て眼鏡をかけた青年、昔家に訪ねて来た事の有る人だ。
「お久しぶりです。暗黒神ハーデスの中の鶴ケ谷稔です。」
「俺は・・・いや拙者はSAKURA。桜田和人・・・でござる。」
もう1人のスーツの男性はあのサクラだった。
緊張しているのか一人称や語尾が弱々しい。
リアルでロールプレイの口調は確かに勇気がいる。
なんたってネットや異世界では良く見知っているがリアルで会うのは初めてなのだから当然だろう。
・・・実は私も少しだけ緊張している。
リアルのサクラは比較的スラっとしていて、皺の無いスーツを綺麗に着こなしていた。
少し癖っ毛のセンターパートで分けている青年で、かなり緊張している様に見えた。
そして、異世界で良く聞いていたサクラの声そのままだった。
「初めましてって言うのも違うよね。あはは、何だか不思議な感じ。サクラとハーちゃんと会えて嬉しいよ。」
嬉しさを素直に伝えると2人は緊張の糸が切れた様に安堵し饒舌になる。
サクラは終始ロールプレイで喋ると豪語していたが、ハーちゃんは厨二口調は絶対にしないと話していた。
「さぁ!シノブ殿!大阪の街を冒険するでござる!」
「うん、行こう!」
「本当にござる口調で行くのな・・・まぁ、良いですけどね。」
「旅の恥はかき捨てでござる!!」
時間に余裕が有ったので私は2人の案内で大阪の街を見物して回る。
サクラ達は3日間有給休暇を取り前日入りしていたらしく、近場の観光名所を案内して貰った。
これもリアル世界の冒険。
3人パーティーで「大阪の街」を散策しているんだ。
そう考えると、日常と違った感じで周囲を見る事が出来る。
あの世界とこの世界、どこも違いは無い。
・・・多分ね。
「シノブ殿、オブジェクトに触れるでござる。」
「うん。」
私は皆に促され、巨大なオベリスクに触れる。
触れた瞬間、オブジェクトに刻まれた絵文字の部分が輝き始めオベリスクが鳴動し始め、私達はその場から後退する。
オベリスクが崩れ落ち、悍ましい魔物の腕が一本、また一本と地表に出現し始めた。
地面を掴み地中の影の部分から這い出る様にゆっくりと伸し上がって来る。
「これは暗黒神ザナファです。皆で協力してこのボスを倒しましょう。」
「わ、わかりました!」
皆に視線を向けられた私は思わず返事をしてしまう。
この感じ、何度か経験が有る。
巨大なボスは様々な攻撃をしてくる。
しかしレベル差からかダメージは少ない。
皆も余裕で戦っている様だ。
「そろそろですね。トドメを!」
「は、はい!」「了解!」
「りょ」「ああ!」
「我が暗黒の力で虚無へ帰してやろう」
ミカエルさんの声で、パーティーメンバー全員で1番ダメージの通る特殊能力スキルを使用し暗黒神ザナファの頭部へ攻撃を集中したたみ掛ける。
「オオオオオオオオオオオオオオオ!」
暗黒神の雄叫びと共に視界が大きく揺れ、画面が輝く!
その時に不鮮明だった数々の記憶が水面から浮き上がる様に思い出される。
ミカさん、DOS、サクラ、咲耶、暗黒神ハーデス・・・
皆との思い出、それにアルラトにシャル。
クリス君にセーニア、そしてデイア。
その他にも今までに出会って来た全てのプレイヤー、NPCの人々。
感情が溢れ涙でモニターが揺れる。
これまでプレイして来たゲームでの思い出。
そして、そっくりの異世界で過ごした・・・大切な思い出。
面白さも・・・辛さも・・・喜びも・・・悲しみも・・・
戦いに勝った時の高揚感も・・・負けた時の悔しさも・・・
肉体的な痛みも・・・精神的な痛みも・・・
そして破壊神ヨグトスの感情。
「・・・・思い出した!思い出したよ!皆の事、全部!」
モニターの前で止め処無く溢れ流れる涙。
しかし自分の中にある感情は喜びが1番勝っていた。
突然の言葉に皆も驚き、そして一緒になって喜んでくれた。
「シノブ!」
「シノブ殿!!」
「シノブ!!」
「シノブ!お帰りなさい。」
「ふん、・・・還って来た様だな。」
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それから私達は、その場で語り合った。
ゲームでの思い出、異世界での思い出、そしてリアルでの事を。
話は尽きる事が無く徹夜モードへと突入する。
私は改めてフィールドを眺める。
どう考えても私の記憶の中に在るゲームグラフィックよりも綺麗なのだ。
その事を暗黒神ハーデスに尋ねると、なんと此処は異世界として再構築された場所を約1年掛けて修復した場所なんだと話す。
そうかやたらとリアルなグラフィックに違和感を感じていたけど、ここは破壊神ヨグトスが造ったゲーム情報をリアル化したあの世界なのか。
確か会社のサーバー内に存在してるって話だった様な気がする。
「これってさSMO2として販売しても良いんじゃない?これだけ綺麗なグラフックだし、最新のオープンワールドにも引けを取らないと思う。私のパソコンでもラグとか無いし凄い技術だよ。」
私は素直な感想を述べる。
しかし皆はそれは出来ないと言った。
それは、この場所は何が起きてもおかしくないと言う話だからと言う。
詳しく聞くとこの世界は虫や小動物に至るまで全てに個別の進化を遂げたAIで動いていて、しかも謎の技術で超圧縮されたデータなのでプログラム的な干渉が20パーセント程度しか出来ないらしい。
暗黒神ハーデスが言うにはプログラム言語事態が文字化けしているにも関わらず正常に作動している世界だと言う。
要は細かいメンテナンスや再起動、ロールバックといった最低限運営に必要な事が出来ないのでオンラインゲームとして発表する事が叶わないらしい。
「簡単に言うと・・・今の人の手には余る代物なのだ。」
詳しい内容は分からないが、皆が1年掛けてこの世界を修繕は出来たけど破壊神ヨグトスの様に何でもかんでも自由自在にプログラム改竄を出来ないらしい。
余り公に出来ない機密情報なので、結局の所暗黒神ハーデスが管理責任者となり、会社が存続する限りサーバー内にデータとして置いておくらしい。
会議で消去や電源を切る事も案として挙がったが、社長の意向で却下されたらしい。
上司も首を傾げ、社会的問題か会社的な問題かは分からないと言っていたと暗黒神ハーデスが話す。
「だから、この世界は今日で終わりなんだ。正確には我々も含めてプレイヤーがログイン出来るのは今日が最後って事だな。」
「・・・そっか、うん、。」
少しだけ寂しい思いが心を過る。
この異世界で過ごした約1年間は私にとって掛け替えの無い物だ。
むしろ第2の故郷とも思える。
この異世界プログラムを全て解析出来る位、人類の技術力が向上すれば本当の意味で破壊神ヨグトスの目指した次元上昇が叶うのかも知れない。
それは幸福な事か不幸な事かは分からないけど、それが時代が進むって事なんだと思う。
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「それよりも・・・オフ会でござる!」
寂しさを打ち消すかの様に、サクラがオフ会をしようと話し出す。
そう言えば、前にそんな話をしていたなと思い出す。
しかも「明日集まろう!」とか言い出す始末。
「いや、流石に無理でしょう?皆も仕事があるでしょう?私は大学が始まるまではまだ時間に余裕が有るけど・・・」
しかし皆は口々に大丈夫だと話す。
ミカさんは留年を決めていて、DOSと咲耶は個人事業主なので自由だと話す。
サクラと暗黒神ハーデスは無理にでも有給休暇を取ると豪語していた。
驚いた事にサクラは北海道の会社を退職し、暗黒神ハーデスの会社へ就職した様だ。
従って今は千葉で暮らして居るらしい。
結局1週間後の日曜日に大阪に集合する事に決まり、なごり惜しかったが私達はログアウトをした。
全員でグループLINEを造り連絡は容易になった。
翌日、私は不意に再度ログインをしてみようとしたがあの世界に入れる事は無かった。
回線は繋がらず、完全にあの世界は途絶されたと感じた。
でも、それで良いのかも知れない。
私達だけの思い出のタイムカプセルと考えよう。
・・・そして、複製異世界レナスディアは長い長い眠りについたんだ。
・
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オフ会前日にミカさんこと如月さんから連絡が有り、そこで衝撃的な話を聞いた。
なんと昔「深紅の薔薇」に所属していて、所在の分かる友人達に連絡を取ったらしい。
その横の繋がりから何人か連絡が付き、都合の良い人は参加するらしいのだ。
当初は私を含め6人で催すオフ会が一気に18人も参加する大きなオフ会となった。
過去に引退した人達もキャラクターを削除しなければギルドメンバーリストに情報が残る。
個人パソコンにその情報ログが記憶される為、キャラクター情報の欄に個人用メールアドレスを記入していた人には連絡が付いたらしい。
接点が少ない人も居たけれど、名前を聞けば大抵は思い出せるはず。
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そしてオフ会当日、私は大阪で予約したホテルにチェックインをして皆に無事大阪入りした事を連絡する。
「深紅の薔薇」のグループLINEも18名に増えており、「おつー!」とか「今向かってる!」とか「仕事おわらねー!」と頻りにコメントが入る。
グループLINEの名前は皆キャラクターネームとは違うので、自己紹介した人以外は誰が誰やら分からないカオスな状態だ。
でも、それはそれで面白い。
集合は今夜の19時に指定された居酒屋を貸し切っているらしい。
なんと驚いた事にその場所を経営している人も「深紅の薔薇」のメンバーらしい。
居酒屋店長をしているメンバーが居たとは驚きだ。
そのお店の経路を調べる時にネット検索でお店のホームページを確認した所、経営者の写真が写っておりどう見ても男なのだ。
おいおい!
またネカマが発覚してるよ!
・・・と心の中で笑う。
もはやこの程度では驚かない程に私はあの異世界生活の中で鋼のメンタルを獲得していた。
仲の良い友人女性キャラクター全員が実はネカマで中身が男だったんだから。
今は17時44分、少し早いけどサクラ達との待ち合わせ場所へと足を運ぶ事にした。
大阪の街は賑やかで活気が有る。
本場の関西弁はテレビでしか聞かないので少し新鮮だ。
待ち合わせ場所に到着すると、すぐに2人の男性が話しかけて来た。
最初はナンパか?と思ったが、その中に見覚えの有る顔を見つける。
やせ型のスーツを着て眼鏡をかけた青年、昔家に訪ねて来た事の有る人だ。
「お久しぶりです。暗黒神ハーデスの中の鶴ケ谷稔です。」
「俺は・・・いや拙者はSAKURA。桜田和人・・・でござる。」
もう1人のスーツの男性はあのサクラだった。
緊張しているのか一人称や語尾が弱々しい。
リアルでロールプレイの口調は確かに勇気がいる。
なんたってネットや異世界では良く見知っているがリアルで会うのは初めてなのだから当然だろう。
・・・実は私も少しだけ緊張している。
リアルのサクラは比較的スラっとしていて、皺の無いスーツを綺麗に着こなしていた。
少し癖っ毛のセンターパートで分けている青年で、かなり緊張している様に見えた。
そして、異世界で良く聞いていたサクラの声そのままだった。
「初めましてって言うのも違うよね。あはは、何だか不思議な感じ。サクラとハーちゃんと会えて嬉しいよ。」
嬉しさを素直に伝えると2人は緊張の糸が切れた様に安堵し饒舌になる。
サクラは終始ロールプレイで喋ると豪語していたが、ハーちゃんは厨二口調は絶対にしないと話していた。
「さぁ!シノブ殿!大阪の街を冒険するでござる!」
「うん、行こう!」
「本当にござる口調で行くのな・・・まぁ、良いですけどね。」
「旅の恥はかき捨てでござる!!」
時間に余裕が有ったので私は2人の案内で大阪の街を見物して回る。
サクラ達は3日間有給休暇を取り前日入りしていたらしく、近場の観光名所を案内して貰った。
これもリアル世界の冒険。
3人パーティーで「大阪の街」を散策しているんだ。
そう考えると、日常と違った感じで周囲を見る事が出来る。
あの世界とこの世界、どこも違いは無い。
・・・多分ね。
応援ありがとうございます!
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