特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第06章 -大樹の街ハルカナム編-

†第6章† -01話-[ハルカナムの在り方]

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 元々大きな大樹としても、
 冬に花が咲く木としても有名な樹木[ハイリア]。
 そのハイリアが集中して生える林があったのだが、
 いつの頃からかそれぞれの幹の太さがどんどんと大きくなっていき、
 お互いに干渉するまでにその身体は大きく成長した。
 その後も彼らは自分で成長を止める事が出来ずに成長を続け、
 気が付いたときにはお互いの幹が結合を始めた。
 身体の成長と共に根もがっしりとした太さになり、
 周辺の木々の栄養も吸い続けたハイリアの林は、
 完全にその地に自生する植物の王となった。

 しばらくすればその大樹は[グランハイリア]と人々から呼ばれ始め、
 当時のフォレストトーレ王が裁断を下した。

「その大樹は誠にわかりやすく目に付く!
 観光にも使える良い大樹だ!根元に町を作るが良い!」

 王の指示により、
 募集は掛けられ集まった移民の尽力により初めは集落。
 それから村、さらに人々が勝手に集まり始めて、ついには街へと成長したのだ。

「って事らしいですけどね」
「それにしてもマリーブパリア4つ分の大きさっておかしいだろ。
 観光とかにだって限界があるだろうに、この広さはヤバすぎる」

 マリーブパリアからの道中は流石風の国と言うべきか、
 森や林が本当に多くて、
 道が出来ているにも関わらずくねくねと迂回を余儀なくされた。
 出発から数日経つ頃には、
 なんか常に視界に入るオブジェクトがある程度の認識であったが、
 ハルカナムに近づくにつれて明らかに常軌を逸した大樹なのだと理解に及んだ。

 そんな旅の道中でいつでもどこでも主張する大樹が、
 街に入ってから見えなくなるわけもなく、
 俺たちは宿泊する部屋に設置された窓に肘を立てて大樹を遠くから眺める。

「世界規模で見ても王都よりも広い街はここだけですからね」
「ダンジョンがあるにしてもさ、作るの大変だろうに」

 俺こと水無月《みなづき》宗八《そうはち》はその手に持つ氷で出来た双眼鏡で大樹を眺める。
 同じく隣の窓辺で肘を立てながら大樹を観察するのは、
 アルカンシェ=シヴァ=アスペラルダ、愛称はアルシェ。
 隣国アスペラルダの姫君であるが、とある事情により一緒に旅をしているのだ。
 その手にはこれまた同じく氷で出来た双眼鏡が目に当てられており、
 陽の反射でキラキラと輝いていた。
 もちろんこの世界に双眼鏡などあるはずもなく、
 宗八の契約精霊の1人、長女のアクアーリィが作り上げた魔法作品だ。

 愛称アクアの水精霊は、
 以前から使用している[ウォーターレンズ]をさらに改良して、
 個人で利用しやすい双眼鏡という形に昇華させた。
 その知識は繋がりのある主人、
 水無月宗八の記憶から勝手に拝借してこの地にて完成したのだ。

 お互いの思考を読み取れるようになる[シンクロ]という技術を使い、
 サブマスター登録のあるアルシェと3人お揃いで身体から青いオーラを発している。

「あ、枝の所々に家・・・小屋でしょうか?
 それに滑車やはしごも見えますね」
「上手く共生してるんだな。
 観光やランドマークになっているけど、
 あの大きさは生命体としても生き辛いだろう。
 専門家があぁやって定期的にメンテナンスというかバイタルケアというか、
 まぁグランハイリアの調子を見ているんだ」
「へぇ・・・。
 はい、マリエル。交代ね」
「あ、はい。ありがとうございます、姫様」

 アルシェは一通り大樹の確認を済ませると、
 背後のベッドに座っている金髪のカエル少女、
 マリエル=ネシンフラへと双眼鏡を手渡す。

『まりーはいってね』
「はぁーい・・・もうちょっと奥にお願ーい」
『あぁ~い』

 シンクロで互いが繋がっていれば、
 言葉を交わさなくともレンズの調整は可能なのだが、
 マリエルは契約をしていないので、
 口頭でアクアへと調整の指示を出す必要があった。

「ありがとう、アクア。
 マリエルに集中してくれ」
『あい♪』

 マリエルの調整と、
 シンクロを交(か)いする俺の調整という別種の調整を頑張るアクアへ、
 もう十分だと双眼鏡を振って合図を出す。
 それを見てアクアも俺の双眼鏡を解除パージして魔力へと回帰させる。
 そのまま空いた手でアクアを撫でると、アルシェへと目を向けた。

「じゃあ俺たちはメリー達と合流して町長に会いに行くか」
「そうですね、メリー達ならそろそろギルドでの収集も終わっている頃でしょうし、行きましょうか」

 街に到着したのは昼前だった。
 そのまま荷物を影から一旦出してクーの負担を少しでも減らす為に、
 手頃な位置にある宿にチェックインをして、
 俺とアルシェの共有侍女のメリー=ソルヴァと、
 俺の契約精霊の1人、次女の闇精クーデルカ=シュテール。
 この2人には街の詳しい話を確認すべくギルドへと情報収集に出かけさせている。

「メリー、情報は集まった?クーちゃんを連れて戻れる?」
「(おい、ニル。そろそろ出かけるけど、お前どうする?)」
『(色々と見て回りたいですわー!)』
「(わかった。何かあればすぐに影に逃げ込めよ)」
『(わかりましたわー!)』

 アルシェがメリーにイヤリング型遠距離通話アーティファクトの揺蕩う唄ウィルフラタを使い、
 状況確認と今から町長に会いに行く事を伝えている間に、
 もう1人の契約精霊である風精ニルチッイ=イノセンシアに念話で連絡を入れる。
 自由人気質のあるフォレストトーレ国民と同じく自由を愛する彼女は、
 小さい身体と飛べる羽を活かして外へと遊びに出かけているのだ。
 風精霊も多いし遊び相手には困らないし、
 今から会うのは死んでいる可能性もある町長なのだ。
 危険がある場所に連れて行くにはまだまだ心配も多い彼女には、
 このまま適当に遊びながら偶々耳に入る情報に期待しよう。

「お兄さん、メリーとクーちゃんは町長邸で合流するとの事です」
「了解、ニルはこのまま遊んでるってさ。
 マリエルはどうする?付いてきても暇だと思うけど・・」
「じゃあ、直接大樹に行ってもいいですか?」
「どこまで近づけるかわからんけど、
 今日は時間もあるし全部調査に充てようかと思ってるから別にいいぞ。
 気をつけて行ってこい」
「ありがとうございます!アクアちゃん、双眼鏡ありがと。
 もう大丈夫だよぉ」
『あい~』

 じゃあ行きますかね。
 流石に他国の町長まではアルシェは把握していなかったので、
 これが初お披露目となる。
 まぁ、会う前にメリーとクーからある程度の情報提供があるから、
 何も知らずに顔を合わせるという事にはならないだろうけどな。


 * * * * *
「失礼いたします」
「いえいえ、こちらこそこのような対応で申し訳ない。
 ようこそハルカナムへ、アルカンシェ姫殿下」

 町長邸へと入ると、
 俺とアルシェだけが通された部屋にはご老人が1人いた。

「体調が悪いなかお会い頂きありがとうございます」
「フハハ・・。
 他国の姫様とお会いする機会など、
 この歳になっても貴重な事です。
 それも話題の氷の姫君アイスプリンセスが訪問してくださったとあっては、
 無理をしてでもお会いしたいのですよ」
「お褒め頂きありがとうございます。
 こっちは水無月《みなづき》宗八《そうはち》、私の護衛をして一緒に旅をしています」

 アルシェから紹介を受けた俺は黙礼だけをさせていただいた。

「ほうほう。
 して、さっそく本題に映りましょうか。
 もっとお話をしたいところですが、私の体力の事もありますので」
「わかりました、では早速ですが。
 ここ数ヶ月、ゲンマール町長は王都へ行かれましたか?」
「王都ですか?いえ・・・。
 私はこの通りベッドから離れる事が出来なくなっていますので、
 訪れてはいませんが・・・確かに王からの招集は掛かりました。
 なので私の代わりに倅《せがれ》を向かわせたのですが。
 何か問題がありましたか?」
「お兄さん・・・どうですか?」

 このまま話をしても良いのかとアルシェが確認を取ってくる。
 アルシェと町長が話を進めている間に、
 俺はアスペラルダの紋章の入ったマントに潜ませていた、
 クーと何故か邸内に入る前に合流してきたニルに部屋内をサーチさせて、
 話が漏れる可能性を探っていた。

「目を見るにシロだと思う。アルシェは?」
「ペルクさんに比べるとやはり表情が豊かだと感じました。私もシロです」
「あとはベッドを調べる事が出来ればクーのフィールドで隔離できる」
「わかりました」

 部屋の外には当然執事に扮した兵士の方が控えており、
 このまま話をしては関係のない彼らの耳にも入ってしまう。
 出来る限りは確定情報のない話が漏れないように配慮しなければならない。

「では、町長。
 少しベッドを調べさせて頂いてもよろしいですか?」
「はぁ・・その程度ならば構いませんが・・?」
「クーは下を、ニルは上を調べてくれ」
『はい、お父さま』
『かしこまりですわー!』
「おぉ・・!?」

 天蓋付きのベッドの上部へとニルが飛んでいき、
 クーが猫の姿でベッドの下に駆け込んでいく。
 俺の影と懐から飛び出してきた小さな影に驚きつつも目で追っていくゲンマール町長。

「今のは?」
「私の精霊です。
 身体が小さいのでベッドの下と上を調べさせています。
 もう少々お待ちください」
「ん・・うむ」

 戸惑いながら状況に流される町長。
 今のうちに念話で別室に待機しているアクアに指示を出してメリーとマリエルに連絡を伝える。

(「町長はシロ。息子が王都に行ったらしいから調べてくれ」)
(『わかった~、つたえるねぇ~』)
『お父さま、問題ありません』
『こっちもですわー!』
「ありがとう。クー、フィールドを」
『はい!《セーフティフィールド》』

 足下から駆け上り、俺の肩へと落ち着いたクーと、
 天蓋から降りてきて差し出した手の平に着地するニルからの回答を得て、
 盗聴の類いはないと判断した。
 俺の指示に従って、クーが詠唱を唱えると、
 ベッドを含む範囲の空間の位相がズレ込み、
 普段生活をしている世界から隔絶された。

「何が起こったのですかな、姫殿下?」
「少し内緒のお話をしたかったので、
 他の人に聞かれたりしないように安全策をとらせて頂きました」
「ふむ・・・内緒の話ですか・・。
 であれば、私では無く町長代理をしている倅《せがれ》に話された方がよろしいかと」
「そちらはこちらの仲間が調べに言っていますが、
 確信はないので先にゲンマール現町長に確認させていただきます」
「わかりました。
 何をお聞きになりたいのですかな?」
「いま、王都で何が起こっているかわかりますか?」
「王都で、ですか?
 いまは相談役のような立場になっているので詳しくは報告を聞いていませんが、
 呆けた症状の冒険者や商人を見かけると聞いていますな。
 それも王都から流れてきた者ばかりで・・・それが何か?」

 それが何か・・か。
 問題には気づいているけれど、
 その問題の表面しか見えていないというか本質に近づく意思すら湧いていないというか。

「その方達にお会いした事はありますか?」
「直接という意味ではありませんな。
 倅《せがれ》が書面を私に届けに来るので、
 顔を見るのも受付になっている倅《せがれ》だけですからな」
「その息子さんは感情を出したりしますか?」
「・・・いえ、もともと活発では無く勉強ばかりだった事もあって、
 あまり感情を表に出す子ではありませんでした。
 最近は尚更表情もなく仕事の話しかできておりません」

 元から感情が表に出ないのではわかりずらくても仕方ないか?
 いや、うちのメリーだって表情こそ無表情が多いけれど、
 何を考えているかなどは半年も一緒にいるだけで結構読み取れるようになった。
 であれば、表情の動きが少ないと言っても、
 親子であればそれこそ数年来顔を付き合わせているだろう。
 その親が子の表情が尚更ないと言うのは、
 決定打になり得るのでは無いか?

「ゲンマール氏。最近の話になるのですが、聞いてもらえますか?」
「えぇ・・・どうぞ」
「先日、とある冒険者の1人が王都からアスペラルダへ行く途中で、
 正体を見破られて操っている者が身体から出た瞬間に絶命しました。
 その者の目的は何かの情報を探している様子でしたので、
 冒険者など情報集めに利用が出来る立場の者に、
 仮初めの命を与えて情報収集してるという仮説が立ちました。
 これをどう思いますか?」
「・・・・それが倅にも当てはまるのではないか・・、
 そういう話かのう?」
「・・・・そうです。
 その冒険者はある日王に呼ばれて登城し、
 その後から様子が変わったと彼の仲間の証言もあります。
 もし、同じような感想をゲンマール氏が抱いておいでであれば、
 息子さんは敵に利用されているだけの可能性もあります」
「・・・・」
「息子さん自身は普段通りに生活をして、
 ゲンマール氏の代理としてお仕事を頑張っているのだと思われますが、
 もしも、敵に操られており欲しい情報が手に入った場合、
 彼から敵が離れた瞬間が別れの時になります」

 ゲンマール氏は思慮深い瞳を俺に向けながら、
 一切揺るがぬ目でこちらの瞳を覗いている。
 多分この人も瞳からその人間の本質を読み取れるんだろう。
 静かに話を聞き終えたゲンマール氏は、
 ゆっくりと口を開いた。

「姫様のお付きの者が口にするには些か信じられぬ話ではある。
 しかし、確かに王都から帰って以降、
 倅《せがれ》の表情は以前にも増して固いと使用人達からも声が上がっておる。
 私も直接王都で何があったのかと問う事もなく今日まで過ごしてきたが、
 近いうちに私から話をそれとなく振ってみよう。
 それで良いかの?」
「かまいませんが、
 その際に私たちの話は漏らさないようにお願いいたします。
 敵を探っている段階なので余計な情報の漏洩は極力防ぎたい」
「承知した。
 少し頭も整理したいのでな、姫様。
 申し訳ないのですが、本日はここまででよろしいでしょうか?」
「はい、話を聞いて頂きありがとうございました。
 滞在中は大樹の件にも協力出来ると思いますので、
 調査に参加させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「では、こちらで手は回しておきます。
 グランハイリア研究所へ明日にでも顔をお出しください」
「わかりました、ではこれで失礼いたします。
 本日はありがとうございました」
「・・・死人かどうかはステータスのMPが0だった場合確定です。失礼しました」

 クーの魔法を解いて踵を翻す。
 扉を押し開けると両脇に立つ兵士が会釈をしてくるが、
 俺とアルシェは特に反応を返す事もなく来た道をそのまま歩いていく。

「強い人だな・・・」
「ですね・・・」

 息子が死んでいるかも知れない。
 そして、敵に操られて道具として利用されているかも知れない。
 そんな話を聞いても感情を高ぶらせる事はなかった。
 いや、高ぶりはあったのだ・・・あの瞳の動きは、あったのだ。
 それでも嘆く事も動揺する事も表に出さず、
 ただ静かにゲンマール氏は飲み込んだのだ。
 決して俺たちの言葉を真に受けたわけでは無く、
 自身でも抱えている違和感と向き合う覚悟を決めた顔であった。

「早めに結果を出さないとな・・・」
「頑張りましょう・・・」

 アルシェと2,3言葉を交わす間に廊下を通り過ぎ、
 アクアの待つ部屋まで戻ってきた。
 こちらもゲスト扱いをされているので、同じく両脇を兵士が固めていた。
 黙礼をしてドアノブに手を掛けて中に入ると、
 アクアといつの間にか合流していたマリエルが出された飲み物とお菓子を食べながら、
 和みムードを部屋いっぱいに広げてソファに仲良く座っていた。

『あ、ますたー!おかえり~!』
「待たせたな。メリーは行ったか?」
「はい、隊長。メリーさんは連絡を受けてからすぐに出られました」
「じゃあ、息子さんはこの屋敷にはいなかったんですね」
「いないなら、もう用は無いな。
 あとはこっちの調べとゲンマール氏の対応に期待しよう」
「わかりました。マリエル、アクアちゃん、もう出ますよ」
「はぁーい」
『あ~い』

 急いで残りのお菓子を口に頬張り始める2人に呆れつつも、
 思考は次の段階に進む。
 実際のところ魔神族のこの対応は効率的では無い。
 何か他に裏があるんじゃないかと思っている。
 大精霊の分御霊わけみたまであれば情報の送受信が出来るのに対し、
 魔神族の術は同じように魂を分けて情報の収集を行っている様子だが、
 本体との送受信はおろか宿主から離れて持ち帰らないと意味を成さない。

 確かに似た事が出来るという点ではすごい技術だし、
 死体を利用する点も鬼畜以外の何物でも無いのだが、
 それほどの脅威を俺が感じていない。
 メリーとクーの持ち帰った情報から、
 殺す事ができれば一定の範囲にいる操られた魔物は解放されていた。では、人間はどうなのだろうか?
 人間は本当に思考や行動のベクトルを操作されるだけで、
 身体をマリオネットのように使われる事は無いのだろうか?

『お父さま、階段です』
「ん?あぁ、ありがとう」
「また考え込んでいますけど、何か気になる事があったんですか?」
「お兄さん、まとまったら教えてくださいね」
「まぁ気になる事ではあるんだけどな。
 答えが出なかったら夜にでもお前らに話を振るさ」
「わかりました」

 今は落ち着いて話も出来ない為後回しにするが、
 俺だけでは出せないアイデアも、
 彼女たちも交えれば文殊の知恵も出てくるかも知れない。

「おっと・・・」
「お兄さん?どうしました?」
「段差もないのにコケ掛けるなんて器用ですね(笑」
『お父さま、疲れてますか?』
「いや、疲れてはいないんだけど、
 いきなり地面があやふやになったというか・・・なんだろ?」

 町長邸から通りに出た直後に、
 まるで船の上に乗っているかのような浮遊感に襲われた。
 マリエルが言うように段差もない通りの真ん中で、
 何かに足を引っかけるようなドジっ子属性を俺は持ち合わせていない。

「まぁ、いいか・・・」

 それともクーが気にするように実際疲れているのか?
 ふらついた要因は理解できなかったが、大して気にせずに今日は早めに休んでおこうと決めるのであった。


 * * * * *
「息子はどうだった?」
「私ひとりだったので接触は出来ませんでしたが、
 様子を伺った限りでは・・・クロかと」
「・・・そうか」

 ネシンフラ島のオベリスク対処以降、
 別行動をする度に俺を間に挟んだシンクロによって情報共有は実施している。
 その為、メリーには俺とアルシェが接触したペルク氏の情報が伝わっている。
 そのメリーがクロだというのであれば、
 俺たちの予想はほぼ的中したようなものだった。

「他国とはいえ、被害を考えると心苦しいですね・・・」
「町の町長、大勢の冒険者、商人・・・。
 この事件が解決した後にフォレストトーレは持ち直せるのか?」
「国力が一時落ちるのは確実です。
 王が没していたとしても王子が二人いますので、
 どちらかが治めればいずれ元に戻るかと・・・」
「そのうちのお一人、兄王子は勇者に付いていったとの事ですので、
 生存は確実かと」
「弟が城に残ったか・・・。
 フォレストトーレに着いたら居所を探るだけ探るか」

 アルシェと同じ立場の人間がいるなら助け出したい心情がわき上がる。
 無事かはわからないけど、
 アスペラルダと同じく将軍達がいるのだから、
 何かしら対応してくれている事を願う。
 どうにかしてどこかに逃がしておいてくれれば、
 アスペラルダに亡命させる事も可能かも知れない。

「勇者に王子が着いていったなら、
 現状を教えれば王都に戻ってくるんじゃないですかぁー?
 隊長は勇者に対処してほしいんですよねぇ?」
「そうなればとは思っている。
 勇者が魔神族の目を引きつけてくれている間に色々と動けるしな」
『では、明日にでも勇者に付いていった王子宛てにギルドへ伝言をしておきましょう』
「それならば、私が出します。
 他国の姫からの伝言であれば無碍には出来ないと思いますし」

 勇者を誘い出す方法については王子が付いていった事が判明した為、
 目処を立てる事が出来た。
 あとは戦闘前に王都の状況と敵の配置くらいは、
 下調べをして伝えておきたいところだ。
 市民の誘導とか解放に関してはこちらで対応出来るようになっていれば、
 勇者も思う存分敵と戦えるだろうし。

「そうだな、そうしようか。
 他に気になる事とかはあったか?」
「・・・時々ですが、ふらつく事があってですね。
 もしかすると体調が悪くなっているのかも知れません」
「お兄さんも町長邸でふらついていましたね・・・」
「今日は早めに休んで、俺もメリーも症状が続くようなら治療院に行ってみるか」
「かしこまりました」

 まぁ、治療院といっても、
 回復魔法や解毒魔法などを掛けてくれる施設なので、
 どうなるかはわからない。
 酒を飲んで酔っ払った場合は解毒魔法のキュアで治るらしいけど、
 もしこれが神経の話になれば、
 この世界の医学ではどうにもならないだろう。

「じゃあ、今日はもう休むとしようか」
『さんぽは~?』
「今日は止めておくよ。
 とっとと寝て明日大樹の状況を確認して、早めに街を出発する手筈を整えよう」
「わかりました」
「はぁ~い」

 朝から動けた訳では無いが、
 それなりの収穫はあった。
 町長は生存していたが息子が死んでいて、
 明日には大樹の調査を正式に出来るように手配も約束してもらった。
 勇者のメンバーもひとり判明したし、
 そのメンバーのおかげで勇者の対処もなんとかなりそうだ・・・。
 結構忙しいけど、がんばらないとな・・・。
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