皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー

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番外編:ミオの秘密

皇帝への奉仕 ※

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 母である皇后が後宮の政治に精神をすり減らした経験から、若き皇帝は臣下を選り好みし、忠誠心を試すきらいがあった。そんな中、俺のような一介の騎士に余りある裁量を与えたのは、政治とは無縁にも関わらず忠義を尽くす職務だったという部分が大きかった気がする。

「ミゼル卿、今日はこれで全てか?」

「はい、陛下。明日は午前の予定はございませんので正午に迎えに上がります」

 俺が押印済みの書類をまとめている間に皇帝は隣の寝室に向かう。皇帝の寝室は執務室からしか入れない戸を挟んだ奥側にあり、近衛兵は執務室の外扉にのみ2名配置されている。裁量が与えられるまで、この執務室にすら入室を許されなかった。書類を鍵付きの戸棚にしまい、退室しようと思った時、皇帝が咳払いする。

 俺は慌てて皇帝が開けたままの寝室の戸をくぐった。陛下がいつもの椅子に腰掛ける間に、畳まれたまま置いてあるシーツをすっぽり被る。途中鎧に引っかかるのでかなり大振りに広げなければならない。

 そして皇帝の腰掛けた椅子の手すりの両側にシーツの端をかけたら、なるべく事務的に履物の紐を解く。服の上から触って変な癖を覚えさせてはならないし──。

──俺が特別な好意を寄せていることを勘づかせてはならない。

 ことの発端は乳母の相談だった。夢精を繰り返しているから手淫の方法を教えるか、女をあてがってほしい、というあけすけな相談。

 精神をすり減らした陛下の母君に代わって、身の回りの世話は乳母が行っていた。しかしその乳母は男の経験がなかったのだ。父親役になり得る臣下もおらず、皇帝と歳も近く頻繁に出入りする俺が適任だった。今、頭から被るシーツもその乳母が用意している。

 紐を解いたら、手早く肌着をずらしてその熱源に触れる。何度も奉仕をしてきたというのに、この瞬間だけは指先が痺れる。今日もその鋒から蜜が垂れ、茂みからは男の香りが漂っていた。

 手淫は上手く教えることができなかった。正確に言えば、陛下は襲いくる未知の快感に怯え、最後まで果たすことができなかったのだ。乳母にはそれを何度も詰られ、陛下も戸惑っているようだった。だから口で奉仕をするようになった。

 陛下の立派になった雄に舌先をつけたら、そのまま喉の奥まで飲み込んでいく。

 最近は顔つきからも幼さが消え、立派な青年になった。俺がこんな奉仕をしなくても、一度恐怖を超えてしまったならば手淫でもはたせるはず。それでもこうやって奉仕をさせるのは、手淫よりもこちらの方が気持ちがいいからだ。

 陛下の立派な雄を飲み込んでは吐き出し、そうして何度も何度も喉の奥が焦がれる。

 陛下は寝室に呼ぶときも、奉仕の最中も、奉仕の後も、声をかけてはくださらない。そして滅多に目を合わせることもなければ、俺に指一本触れてはくださらない。こうして奉仕している間も。

 当然だ。陛下は恥をしのんで俺に機会を与えてくださり、俺は仰せつかったまでの関係。劇的な出会いを果たしたわけでもなければ、政治に染まっていないだけの臣下。なにより男だ。

 だが、期待してしまうのだ。お互い秘めたものがあるのかと。羞恥でも効率でもなく、もっと違うなにかで俺が選ばれているのかと。

 シーツの上からでもいい。一度でも頭を撫でてくれたら。一度でもそのシーツをめくってくれたら。一度でも──



「レジー、レジー? お腹痛い?」

 締め付けられられるような動悸とともに目覚め、視界がさまざまな色に染められていることにびっくりして飛び起きた。息を整えながら振り返ると、ベッドの上に竜神が丸まっていた。シトシトと雨は降るのに部屋は明るい。僅かな朝日に照らされた鱗が蒼くも翠にも輝いていた。

「また炎症おこしちゃったかな?」

 竜神は俺を抱く時に雨を降らす。長雨は農作物に病をもたらすことから、毎晩違う土地に連れ去られていた。しかし今度は日照りが続いた。だから今日は日中仕事を休み、2人でゆっくりしようと決めていたことを思い出す。

 竜神は起き上がり裸の俺を膝にのせた。そして背中を何度か撫でたあと回復魔法の詠唱をはじめる。

「ミオ、違う。腹は痛くない」

「寿命が俺と同じになったからといって、不死身になったわけじゃないんだ。これからだってずっとここに負担がかかるんだから大切にしなきゃ」

 竜神はそう言って背中から手を這わせ、尻の割れ目に指を添わせた。

「違う、本当に違うんだ」

 俺はミオの自慢のフサフサの胸にしがみついた。本気の声色を察してか、窄まりに当てられた竜神の指がピタリと止まる。

「レジーの心臓の音すごい。怖い夢でも見た?」

 竜神とともに寝ながら、皇帝の夢を見たことにひどく罪悪感を覚え、首を振りながら更に竜神の胸に顔を埋めた。フサフサな毛の奥から漂う熱気と安心する匂いに、心がほろほろと崩れるような感覚に囚われる。

「どんな夢を見たか当ててあげようか? 帝国にいた頃の夢だろ?」
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