自慰観察依頼

大田ネクロマンサー

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加藤という男(1)

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男は多分、時間より前に到着し、エンジンを止めて待っていた。車に乗り込んだ時、車内が外気と変わらないくらい空気が冷たかったので、それがわかった。

私が乗り込むなり男は察する。

「あの場所、誰かに見られたの?」

私はこれを無視した。それに男は少し笑った。

「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ」

それは待ち合わせの場所のことを言っているのか、私自身に言っているのかわからなかった。

少し車を走らせたところでマンションの地下駐車場に入っていく。男の家なのだろう、マンションは思った以上に豪華だった。
男は車を降りながら言う。

「家賃補助が出るから借りているだけで、俺の持ち物じゃないよ?」

男に誘われるまま、私は男の家へ上がる。
都内でも地価の高い場所であり、高層階であった。
エレベーターを降り、男の部屋に入るやいなや男は言う。

「不躾で悪いんだけど、寒いから先に風呂に入らないか?」

そう言って男は風呂にお湯を溜めるボタンを押してコートを脱いだ。

私は玄関先から直接風呂へ行き、脱衣所で服を脱いだ。男はスーツをハンガーにかけていた。

「家賃高いだけあって、お湯が溜まるのだけは早いから、先に入っちゃって」

男は自分の服を脱ぎながら言う。
私は昨日風呂に入っていなかったこともあり、お湯に浸かる前に体や髪の毛を洗った。

そうしている間に男は先に湯船に浸かって、私が来るのを待っていた。
私はいつも通り男の股の間に入り込み、男の胸に手と耳を当てた。

「もう会ってくれないと思ったよ」

男は言う。私はそれを聞いていた。色々と話さなければならないことはあるのに、男に会ってしまえば、全て杞憂な気がしたのだ。
男は先に湯船に入っていたせいか額から汗が落ちて、それを手で拭った。汗を拭った後、私の目の前の湯に手を下ろした。いつもは私に気を使って男は湯船の縁を掴んでいる。自宅だということもあって気が緩んでいたのかもしれない。
そういったなんの意図もなく、投げ出された男の手はとても魅力的に見えた。私はそっと男の胸から耳を離し、男の人差し指を口に含んだ。
男は少し体を硬直させた。

「いつもこうやって咥えてくれているんだね」

私の顔がよく見えるように、男はゆっくり自分の手を正面に持って行く。私は男の胸に戻り、横を向く形で男の指をしゃぶっていた。お湯の中でもお互いのペニスが硬くなっていることがわかった。

男は注意深く私の口から自分の指を出したり、入れたりする。
そして私の口の中で、舌の外周を優しくそっとなぞる。
私は頭の奥が痺れるのを感じながら、私の口からゆっくり抜いた男の指を追いかけるように口を開け、舌を突き出す。男の指の先端を舐め戻ってくるように促す。

「今日は指を咥えながらしてもらいたいな」

男はそう言うと、風呂から上がるよう私を促した。

男から受け取ったバスタオルに包まれながら、男の家の中を横断した。デザイナーズマンションで家具もしっかり揃えられた高級な部屋だった。多分家政婦も雇っているのだろう、隅々まで掃除が行き届いていた。私が川本の同僚だと知ったならば、私の年収など大体想像がつくだろうに、男が家賃補助などと言い訳する理由がわからなかった。
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