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インセンティブが支払われるということ(1)
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私の会社ではインセンティブが年収を左右するくらい大きなインパクトがある。業界としては中長期的なビジョンを元に戦略を練っているのにもかかわらず、社内の人間はこのインパクトのおかげでインセンティブをいかに最大化するかという短期的なサイクルで仕事をすることになる。
評価で左右される金額に差はあまりに大きく、労働環境の劣悪さから2~3年をターゲットにして評価を最大化し、売り抜けをするように会社を退職する人間が多い。自分の設定した出口に合わせて評価を最大化すればいいので、出口まで巧妙にクライアントや社内の人間までもを出し抜き、自分のスコープを最大化する。アウトプットを飾り立てるのだ。
私がこういった業界の常を今、真夜中のトイレの個室で思い知らされることとなる。
目の前には力づくで私をここに押し込んだ川本がいた。
「私が訴えればお前は懲戒解雇になるんだぞ」
私は狭い個室の中でなるべく川本を見ないように言った。虚勢だった。なぜならばインセンティブは支払われ、もはや川本の籍は明日には会社にないのかもしれないのだから。
最後に男と会ってから2週間経とうとしていた。私は男の言葉に安堵を覚え、川本についてあれからなんら対策を講じていなかった。勝敗は決し、問題は解決済みという認識だった。私は川本の執念を見誤っていたのだ。
「どうして他の男はよくて、俺はダメなんだ」
川本は情けない声を出して私の両肩を掴む。私は身震いをして思わず叫んだ。
「さわるな!」
川本は激昂し私に無理矢理唇を重ねてきた。私は歯を食いしばり川本を押しのけようと胸を押した。
次の瞬間目の前が白くなった。顎を殴られ、脳が揺れたのだ。多分私は口を開けて川本に倒れ込んだのであろう。私は川本に抱きかかえられ、私の口の中に川本の舌が入り込んできた。舌だけにとどまらず、横から川本の指も口の中に突っ込まれ、唾液を奪っていく。
私の腰のあたりから川本が腕を突っ込み私の穴にさっき口に入れた指を強引に入れた。
「やめろ……」
川本は私の髪の毛を掴んで後ろに向かせた。そして棚に顔を何度も打ちつけた。
私が脳の揺れに耐えている間に川本は自分と私の下半身を露出させた。
「足を開け」
男は私の髪の毛を掴んで私の頭を棚に押し付ける。私はこの時、金はいらない、と途中で迫ってくる男たちを思い出していた。
私はなぜ汚い男に欲望を掻き立てるのか今までよくわからなかった。川本とそれらの汚い男が何が違うのかもわからない。私は金を払い痴態を見せることに何を求めていたのだろう。
私は半ば観念していたのだと思う。もうこれ以上、川本を激昂させても意味がない。何も失うものがない者から奪えるものは何もないのだ。
私は腰のあたりにある川本の腕を、抵抗する意思がないことがわかるようにそっと掴んだ。
そして蓋がされた便座に片腕をついて足を広げた。川本は私の頭から手をそっと離し、私の穴に入れた。川本は私の腰に回した手を引き寄せて私の背中に顔を埋めながら言った。
「お前が……好きなんだ……」
私は黙っていた。次の瞬間川本のペニスが私を貫いた。
川本は、お前が悪い、お前が好きだと矛盾を述べながら、猿のように腰を振っていた。その哀れな姿に、自分が痴態を晒している時、男はこういう心境なのだろうか、と考えていた。
私は嫌悪に耐え、川本が自分の中に性液を流し込むまで、呼吸さえ乱さず、ただ待っていた。川本にこの唯一の抵抗が理解できたかはわからない。しかし川本は無言で自分の処理だけ済ませトイレから出ていった。
冷え冷えと開け放たれた戸だけが俺を監視している。その目を掻い潜るように戸を閉めた。
自分の穴をトイレットペーパーで拭うと同時に、川本が床に落としていったトイレットペーパーを眺めた。
その瞬間言いようもない寒気に襲われて、自分の肩を抱き、震えが止まるまでしばらく便座の上から動けなくなった。
誰かがトイレに入ってきた気配がしたので、息を殺して、トイレから出ていくのを待った。
しばらくして、誰もいないことを確認すると、服を整え、私はトイレを出た。
洗面台の鏡に向かい合い、顔を確認したが、視界が歪み、普段どんな顔をしているのか思い出せなかった。ただ殴られた顎はあざになっていない。唇の端が切れているが、たいした傷ではなかった。言わなければ誰にもわからないような傷だ。
私は何度も何度も口をゆすぎ、唇をゴシゴシ洗う。
私は自席に戻りカバンを抱えてそのまま会社を出た。私は男にメッセージを送った。今から行く、と。
男からの返信には、迎えに行くだとか、場所はわかるのかとか、ゴチャゴチャ書いてあったが、私はそれを無視して男の家に向かった。
評価で左右される金額に差はあまりに大きく、労働環境の劣悪さから2~3年をターゲットにして評価を最大化し、売り抜けをするように会社を退職する人間が多い。自分の設定した出口に合わせて評価を最大化すればいいので、出口まで巧妙にクライアントや社内の人間までもを出し抜き、自分のスコープを最大化する。アウトプットを飾り立てるのだ。
私がこういった業界の常を今、真夜中のトイレの個室で思い知らされることとなる。
目の前には力づくで私をここに押し込んだ川本がいた。
「私が訴えればお前は懲戒解雇になるんだぞ」
私は狭い個室の中でなるべく川本を見ないように言った。虚勢だった。なぜならばインセンティブは支払われ、もはや川本の籍は明日には会社にないのかもしれないのだから。
最後に男と会ってから2週間経とうとしていた。私は男の言葉に安堵を覚え、川本についてあれからなんら対策を講じていなかった。勝敗は決し、問題は解決済みという認識だった。私は川本の執念を見誤っていたのだ。
「どうして他の男はよくて、俺はダメなんだ」
川本は情けない声を出して私の両肩を掴む。私は身震いをして思わず叫んだ。
「さわるな!」
川本は激昂し私に無理矢理唇を重ねてきた。私は歯を食いしばり川本を押しのけようと胸を押した。
次の瞬間目の前が白くなった。顎を殴られ、脳が揺れたのだ。多分私は口を開けて川本に倒れ込んだのであろう。私は川本に抱きかかえられ、私の口の中に川本の舌が入り込んできた。舌だけにとどまらず、横から川本の指も口の中に突っ込まれ、唾液を奪っていく。
私の腰のあたりから川本が腕を突っ込み私の穴にさっき口に入れた指を強引に入れた。
「やめろ……」
川本は私の髪の毛を掴んで後ろに向かせた。そして棚に顔を何度も打ちつけた。
私が脳の揺れに耐えている間に川本は自分と私の下半身を露出させた。
「足を開け」
男は私の髪の毛を掴んで私の頭を棚に押し付ける。私はこの時、金はいらない、と途中で迫ってくる男たちを思い出していた。
私はなぜ汚い男に欲望を掻き立てるのか今までよくわからなかった。川本とそれらの汚い男が何が違うのかもわからない。私は金を払い痴態を見せることに何を求めていたのだろう。
私は半ば観念していたのだと思う。もうこれ以上、川本を激昂させても意味がない。何も失うものがない者から奪えるものは何もないのだ。
私は腰のあたりにある川本の腕を、抵抗する意思がないことがわかるようにそっと掴んだ。
そして蓋がされた便座に片腕をついて足を広げた。川本は私の頭から手をそっと離し、私の穴に入れた。川本は私の腰に回した手を引き寄せて私の背中に顔を埋めながら言った。
「お前が……好きなんだ……」
私は黙っていた。次の瞬間川本のペニスが私を貫いた。
川本は、お前が悪い、お前が好きだと矛盾を述べながら、猿のように腰を振っていた。その哀れな姿に、自分が痴態を晒している時、男はこういう心境なのだろうか、と考えていた。
私は嫌悪に耐え、川本が自分の中に性液を流し込むまで、呼吸さえ乱さず、ただ待っていた。川本にこの唯一の抵抗が理解できたかはわからない。しかし川本は無言で自分の処理だけ済ませトイレから出ていった。
冷え冷えと開け放たれた戸だけが俺を監視している。その目を掻い潜るように戸を閉めた。
自分の穴をトイレットペーパーで拭うと同時に、川本が床に落としていったトイレットペーパーを眺めた。
その瞬間言いようもない寒気に襲われて、自分の肩を抱き、震えが止まるまでしばらく便座の上から動けなくなった。
誰かがトイレに入ってきた気配がしたので、息を殺して、トイレから出ていくのを待った。
しばらくして、誰もいないことを確認すると、服を整え、私はトイレを出た。
洗面台の鏡に向かい合い、顔を確認したが、視界が歪み、普段どんな顔をしているのか思い出せなかった。ただ殴られた顎はあざになっていない。唇の端が切れているが、たいした傷ではなかった。言わなければ誰にもわからないような傷だ。
私は何度も何度も口をゆすぎ、唇をゴシゴシ洗う。
私は自席に戻りカバンを抱えてそのまま会社を出た。私は男にメッセージを送った。今から行く、と。
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