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傷口
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ーートワ視点ーー
翌日、俺とジークスは新しい行方不明者の似顔絵と情報の書類を眺めていた。
この顔、昨日俺が助けた男と似ている…あの後保護しておけば良かった。
ただ、逃げる相手を捕まえて誘拐犯に背を向けるのは危険だ。
保護より誘拐犯を取り逃した事に責任がある。
腹に触れると、昨日刺された傷があり今でも痛みを感じている。
これから学校だし、病院に行く時間がなかったから自分で手当てした。
相手は誘拐犯だ、ナイフに毒物を仕込んでも可笑しくはない。
あまり意味はなさそうだけど、医務室に少し寄ろうかな。
「この行方不明事件、俺に任せてくれないか?」
「トワが?何故だ」
「ちょっとは俺に花持たせろよ」
資料を掴んで、ジークスに背を向けて自分の部屋に行く。
これは俺が最後までやる必要がある、取り逃したのは俺だからな。
それにきっとあの誘拐犯はまた俺の前に現れる…そんな気がする。
すぐに身支度をして、学園の先生の姿に変わる。
誰かに何かを教えるなんて考えた事もなかったが、なんだかんだで楽しい。
生徒達も優秀で素直で可愛い子ばかりだし…ジークスのような恋愛感情ではなくて…
授業が終わり、教室から出ていく生徒達を出迎える。
「トワ先生!」
「どうした?分からない事でもあった?」
女子生徒三人が俺になにか言いたげでそわそわしていた。
あー、これはあれかな…何度も経験があるから分かる。
緊張しないように優しい声で「大丈夫だよ」と言うと、俺に手紙を渡して行ってしまった。
手紙には思った通り、愛の告白が書かれていた。
付き合ってみないと相手の事を好きになるかどうか分からない。
この子も俺の軽さが分かってて告白してきたんだろう。
でも、今は危険な仕事をしている…止めておこう。
巻き込みたくはないし、今の俺は何の責任もなかった学生時代とは違う。
今はそんな気分じゃないから断りの手紙を書こうと思った。
書くならちゃんとしたものがいいか、自分の部屋に帰ってからしよう。
誰も居なくなった教室を出て、廊下を歩いていた。
視界がぼやけて目眩で身体が横に傾いて壁にもたれ掛かる。
小さく息を吸って吐くが、あまり気分はよくならない。
服を捲って腹に巻いた包帯を見ると、眉を寄せた。
血が滲む包帯の上の肌が紫色に変色していて、植物の茎のように上に伸びていてる気がする。
やっぱり毒物か、調べても分からなかったからオリジナルの調合だろうな。
解毒剤があるか分からないが、とりあえず医務室に行こう。
クロノ先生…だっけ、彼は医者だから分かる事があるかもしれない。
壁に手を付きながら医務室に向かうと、丁度目の前に白衣姿が見えた。
医務室の先生ぐらいしか白衣を着ないから分かりやすい。
頭は天然パーマか?何故か俺は昨日の夜に見た天然パーマの男が頭をよぎった。
とっさに腕を掴んで、クロノ先生は俺の方を見た。
前髪が長いが、隙間から俺を見る瞳は誰よりも鋭く冷たかった。
「あ?」
「クロノ先生…だよな」
「………………どなたか存じませんが、いきなり腕を掴むのは失礼じゃありませんか?」
一瞬だけ本音が見えたが、すぐにクロノ先生は腕を掴む俺の手を指差した。
確かにそうだと手を離して「ごめんねクロノ先生」と笑った。
よく見たらあの夜の男は俺より少し身長が低かったから懐に潜り込めたんだ。
クロノ先生のような大きな身体だと潜り込むより覆い被さられる。
それに髪色も暗くてよく見えなかったとはいえ、クロノ先生のような明るい茶髪ではなかった気がしてきた。
クロノ先生は小さくため息を吐いて、俺を無視して医務室に入ろうとした。
動きを止めて何故か医務室ではなく、横を見ていた。
俺の時とは大違いで嬉しそうに手を振っていた。
「リーンくん!」
「クロノ先生、トワ先生も一緒なんですね」
「たまたまいただけだよ、もう帰りますよね?」
クロノ先生は俺に早く帰ってほしいのか、こちらに圧を掛けていた。
俺が嫌いなのか、リンちゃんがお気に入りなのか分からないがなんか腹が立つな。
俺だってクロノ先生に用事があるんだよ、その用事さえ終われば医務室なんかに寄り付かないさ。
腹を押さえて「いっつ……」と痛みに耐えるとリンちゃんは慌てたように俺に駆け寄る。
さすがに傷口を見せるのはグロいから、クロノ先生をチラッと見る。
半分表情が見えないのに嫌そうな顔をしているのは分かる。
本当に面白い先生だ、心底俺が嫌いって顔をしてる。
リンちゃんがクロノ先生を見ると、クロノ先生は俺の腕を掴んだ。
「腹が痛いならすぐに帰った方がいいんじゃないですか?」
「いやいや、ちょっと見てもらいたいものがありまして」
「…は?」
「リンちゃんも怪我してるの?」
「あ、はい…指をちょっと」
「じゃあ一緒に治してもらおうか」
クロノ先生は俺にだけ聞こえる小さな舌打ちをしていた。
俺とリンちゃんと三人で医務室に入って椅子に座った。
傷口は見ない方がいいとリンちゃんに背中を向けた。
服を捲ってクロノ先生を見ると、顔色が変わった。
その顔はどちらの顔か、知っている傷かあまりのグロさに驚いたか。
俺はまだクロノ先生が夜の男と無関係だとは思っていない。
こんなに顔と雰囲気が似ているんだ、何かしらの関係はありそうだ。
包帯を全て外されて、ナイフで刺された傷口が露わになる。
「これ、いつから?」
「昨日の夜に襲われたんだよ、体調もよくなくて…やっぱり毒物?」
「そうだね、薬塗って安静にしてたら治るよ」
そう言ってクロノ先生は俺に瓶ごと渡してきて「自分で塗って」と言われた。
そこまで面倒は見れないか、まぁ前の傷だから一人でも濡れるけど…
瓶の中から薬を出して、痛みに耐えながら丁寧に塗る。
少し楽になったかも、クロノ先生が作った薬か?
きっとリンちゃんがいなかったら薬すらくれなかったんだろうな。
後ろを向いているリンちゃんの背中を指でなぞると「うひゃっ!」という可愛い声が聞こえた。
翌日、俺とジークスは新しい行方不明者の似顔絵と情報の書類を眺めていた。
この顔、昨日俺が助けた男と似ている…あの後保護しておけば良かった。
ただ、逃げる相手を捕まえて誘拐犯に背を向けるのは危険だ。
保護より誘拐犯を取り逃した事に責任がある。
腹に触れると、昨日刺された傷があり今でも痛みを感じている。
これから学校だし、病院に行く時間がなかったから自分で手当てした。
相手は誘拐犯だ、ナイフに毒物を仕込んでも可笑しくはない。
あまり意味はなさそうだけど、医務室に少し寄ろうかな。
「この行方不明事件、俺に任せてくれないか?」
「トワが?何故だ」
「ちょっとは俺に花持たせろよ」
資料を掴んで、ジークスに背を向けて自分の部屋に行く。
これは俺が最後までやる必要がある、取り逃したのは俺だからな。
それにきっとあの誘拐犯はまた俺の前に現れる…そんな気がする。
すぐに身支度をして、学園の先生の姿に変わる。
誰かに何かを教えるなんて考えた事もなかったが、なんだかんだで楽しい。
生徒達も優秀で素直で可愛い子ばかりだし…ジークスのような恋愛感情ではなくて…
授業が終わり、教室から出ていく生徒達を出迎える。
「トワ先生!」
「どうした?分からない事でもあった?」
女子生徒三人が俺になにか言いたげでそわそわしていた。
あー、これはあれかな…何度も経験があるから分かる。
緊張しないように優しい声で「大丈夫だよ」と言うと、俺に手紙を渡して行ってしまった。
手紙には思った通り、愛の告白が書かれていた。
付き合ってみないと相手の事を好きになるかどうか分からない。
この子も俺の軽さが分かってて告白してきたんだろう。
でも、今は危険な仕事をしている…止めておこう。
巻き込みたくはないし、今の俺は何の責任もなかった学生時代とは違う。
今はそんな気分じゃないから断りの手紙を書こうと思った。
書くならちゃんとしたものがいいか、自分の部屋に帰ってからしよう。
誰も居なくなった教室を出て、廊下を歩いていた。
視界がぼやけて目眩で身体が横に傾いて壁にもたれ掛かる。
小さく息を吸って吐くが、あまり気分はよくならない。
服を捲って腹に巻いた包帯を見ると、眉を寄せた。
血が滲む包帯の上の肌が紫色に変色していて、植物の茎のように上に伸びていてる気がする。
やっぱり毒物か、調べても分からなかったからオリジナルの調合だろうな。
解毒剤があるか分からないが、とりあえず医務室に行こう。
クロノ先生…だっけ、彼は医者だから分かる事があるかもしれない。
壁に手を付きながら医務室に向かうと、丁度目の前に白衣姿が見えた。
医務室の先生ぐらいしか白衣を着ないから分かりやすい。
頭は天然パーマか?何故か俺は昨日の夜に見た天然パーマの男が頭をよぎった。
とっさに腕を掴んで、クロノ先生は俺の方を見た。
前髪が長いが、隙間から俺を見る瞳は誰よりも鋭く冷たかった。
「あ?」
「クロノ先生…だよな」
「………………どなたか存じませんが、いきなり腕を掴むのは失礼じゃありませんか?」
一瞬だけ本音が見えたが、すぐにクロノ先生は腕を掴む俺の手を指差した。
確かにそうだと手を離して「ごめんねクロノ先生」と笑った。
よく見たらあの夜の男は俺より少し身長が低かったから懐に潜り込めたんだ。
クロノ先生のような大きな身体だと潜り込むより覆い被さられる。
それに髪色も暗くてよく見えなかったとはいえ、クロノ先生のような明るい茶髪ではなかった気がしてきた。
クロノ先生は小さくため息を吐いて、俺を無視して医務室に入ろうとした。
動きを止めて何故か医務室ではなく、横を見ていた。
俺の時とは大違いで嬉しそうに手を振っていた。
「リーンくん!」
「クロノ先生、トワ先生も一緒なんですね」
「たまたまいただけだよ、もう帰りますよね?」
クロノ先生は俺に早く帰ってほしいのか、こちらに圧を掛けていた。
俺が嫌いなのか、リンちゃんがお気に入りなのか分からないがなんか腹が立つな。
俺だってクロノ先生に用事があるんだよ、その用事さえ終われば医務室なんかに寄り付かないさ。
腹を押さえて「いっつ……」と痛みに耐えるとリンちゃんは慌てたように俺に駆け寄る。
さすがに傷口を見せるのはグロいから、クロノ先生をチラッと見る。
半分表情が見えないのに嫌そうな顔をしているのは分かる。
本当に面白い先生だ、心底俺が嫌いって顔をしてる。
リンちゃんがクロノ先生を見ると、クロノ先生は俺の腕を掴んだ。
「腹が痛いならすぐに帰った方がいいんじゃないですか?」
「いやいや、ちょっと見てもらいたいものがありまして」
「…は?」
「リンちゃんも怪我してるの?」
「あ、はい…指をちょっと」
「じゃあ一緒に治してもらおうか」
クロノ先生は俺にだけ聞こえる小さな舌打ちをしていた。
俺とリンちゃんと三人で医務室に入って椅子に座った。
傷口は見ない方がいいとリンちゃんに背中を向けた。
服を捲ってクロノ先生を見ると、顔色が変わった。
その顔はどちらの顔か、知っている傷かあまりのグロさに驚いたか。
俺はまだクロノ先生が夜の男と無関係だとは思っていない。
こんなに顔と雰囲気が似ているんだ、何かしらの関係はありそうだ。
包帯を全て外されて、ナイフで刺された傷口が露わになる。
「これ、いつから?」
「昨日の夜に襲われたんだよ、体調もよくなくて…やっぱり毒物?」
「そうだね、薬塗って安静にしてたら治るよ」
そう言ってクロノ先生は俺に瓶ごと渡してきて「自分で塗って」と言われた。
そこまで面倒は見れないか、まぁ前の傷だから一人でも濡れるけど…
瓶の中から薬を出して、痛みに耐えながら丁寧に塗る。
少し楽になったかも、クロノ先生が作った薬か?
きっとリンちゃんがいなかったら薬すらくれなかったんだろうな。
後ろを向いているリンちゃんの背中を指でなぞると「うひゃっ!」という可愛い声が聞こえた。
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