【本編完結】嫌味な男と婚約させられた令嬢ですが、ある日その婚約者が猫になっていました

翠月 歩夢

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16.猫になった婚約者と高級ご飯

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「ライル様。今日は新しいご飯にしようと思うのですが、どれが良いですか?」


 私はライルの目の前に、四つの缶を置いた。まぐろ、鶏ささみ、豚肉、牛肉の猫用缶詰である。


「おお、たくさんあるな」
「ええ。この前買ったものです」


 キャットハウスやおもちゃの他にもフードをたくさん購入した。しかし、ライルには最初に渡した粒状のご飯、通称カリカリを渡していた。

 もちろん、ずっと同じものでは飽きがくるだろう。それに、いつまでも安いものを食べさせてはいけない。

 そう思ってはいたものの、ライルが「食べ物を粗末にするのは良くない!」と言い、一袋食べ切ると宣言したのだ。

 だから、今日までこのご飯を開けていなかったのである。


「うーん……俺は今、まぐろが食べたい気分だ」
「分かりました。ではこの缶詰にしましょう」


 缶を開ける。中から美味しそうな匂いがふんわり香った。ライルもその香りに気がついたのか、待ちきれない様子でそわそわしている。

 ライルが食べやすいように皿に移す。人でも食べられそうだ。そう思うくらいに美味しそうな見た目をしていた。


「おお、カリカリじゃない!」
「これはウェットフードですと呼ばれるものです」
「俺が普段食べていたのと変わりないな」
「ええ、人でも食べられそうですわね」


 じっとご飯を見つめたあと、すぐに食べ始めた。最初はマナーがどうとか気にしていたのに、今では躊躇いもない。


「これはなかなか美味しいぞ。あのおやつよりも美味しいかもしれん」
「あら、それは良かったです」


 缶詰に記載されている文字を見る。本マグロ使用、フォアグラ入りと書かれていた。人が食べているものと同じ材料で作られているらしい。味付けは猫用に薄いようだが、それ以外は大差ない。

 ほかの缶詰の記載も読んでみる。最高級牛肉角切りキャビア入り。最高級鶏ササミふかひれ入り。最高級の豚肉ベース、フォアグラとふかひれ入り。

 どれも良い素材を使っていた。カリカリもそういった素材を配合して作っているらしいが、こちらはより高級感がある。


「美味かったぞ」


 綺麗に食べ終え、猫らしく口周りをぺろぺろしていた。

 相当気に入ったのかご満悦のようだ。


「他のを食べるのも楽しみだ」
「ふふ、たくさんありますからね。毎日選び放題ですよ」
「うむ。それは良い」


 ライルは顔を洗い始めた。食事の後はいつもこうしている。ライルが言うには口を拭いている感じらしい。食べっぱなしは落ち着かないとのことだ。

 今日も可愛いなぁと眺めながら、私は缶詰を仕舞いに向かった。
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