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20.猫になった婚約者と庭の散歩
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「……むう、これで運動するのも飽きてきたぞ……」
おもちゃを力なく叩きながら、ライルがため息混じりに呟いた。
前ほど興味を無くしてしまったようだ。なにか新しいことがあるわけでもない。ずっと同じことをしていてもつまらないだろう。
「それなら、今日は少しお散歩でもしましょうか?」
「散歩? だが、外に出ていいのか?」
「敷地内のお庭なら大丈夫でしょう」
家の門はきちんと警備がされている。変な輩も侵入はできないはずだ。
それに、庭なら野良猫もよくやって来ていた。だから、お父様やお母様が上から私たちの姿を見ても疑問には思わないだろう。
「ずっと部屋にこもっていたから、外に出るのは久々だ」
「ええ。あ、持ち上げますよ」
「ああ、分かった」
ライルを抱き上げて胸の前に持ってくる。今回は驚かなかったようで、尻尾はいつも通りだった。
「抱き上げられても驚かなくなりましたね」
「流石に慣れたぞ」
それはそうか。ライルが私の元に来てから数週間が経っている。その間、何度も抱き上げることがあった。当然慣れてくるだろう。
ここからだと、中庭から外に出るのが一番近い。
中庭へ続く廊下を早足で歩く。使用人には見つかっても咎められないが、なんとなく人目を避けてしまう。
「おお! なかなか美しい庭だ」
中庭を見てライルが声を上げた。ライルを抱えている私の片腕に、両手を乗せて身を乗り出している。その体制で首を左右に動かして中庭を見回す。
「お庭とはいえ、はぐれないように気をつけないとですね」
「うむ。分かっている」
そっと地面に下ろす。ライルは軽やかに降りた。木の幹の茶色と葉の鮮やかな緑、花達の目を引く赤や黄色。その自然の中にライルがいる。自然と猫、いいコラボレーションだ。
「猫になって日々思うことだが……まるで世界が変わって見えるな」
「あら、そうなんですの?」
「ああ。背が小さいからだろうな、周りのものが大きく見える」
私はその場にしゃがみこんだ。できるだけライルと目の高さを合わせる。
「広くて……大きい。世界が何倍にも広がったようだ」
ライルの言う通りだった。この高さから中庭を見た時と普通に立って見た時では、別世界のようだ。
「それに、この視点だからこそ見えるものもある」
そう言って、ライルは右を見た。私も釣られて右を見る。
茂った生垣の葉の影に鈴蘭が咲いていた。上からでは葉に隠れて見えないようになっていた。
「こうやって見えないものをたくさん見落としているのだろうな、俺は」
「それは……私もですわ。きっと」
多くのことを見落として、見落としたことすらも気づかずに生きているのだと思う。私も、ライルも、他の人も。
おもちゃを力なく叩きながら、ライルがため息混じりに呟いた。
前ほど興味を無くしてしまったようだ。なにか新しいことがあるわけでもない。ずっと同じことをしていてもつまらないだろう。
「それなら、今日は少しお散歩でもしましょうか?」
「散歩? だが、外に出ていいのか?」
「敷地内のお庭なら大丈夫でしょう」
家の門はきちんと警備がされている。変な輩も侵入はできないはずだ。
それに、庭なら野良猫もよくやって来ていた。だから、お父様やお母様が上から私たちの姿を見ても疑問には思わないだろう。
「ずっと部屋にこもっていたから、外に出るのは久々だ」
「ええ。あ、持ち上げますよ」
「ああ、分かった」
ライルを抱き上げて胸の前に持ってくる。今回は驚かなかったようで、尻尾はいつも通りだった。
「抱き上げられても驚かなくなりましたね」
「流石に慣れたぞ」
それはそうか。ライルが私の元に来てから数週間が経っている。その間、何度も抱き上げることがあった。当然慣れてくるだろう。
ここからだと、中庭から外に出るのが一番近い。
中庭へ続く廊下を早足で歩く。使用人には見つかっても咎められないが、なんとなく人目を避けてしまう。
「おお! なかなか美しい庭だ」
中庭を見てライルが声を上げた。ライルを抱えている私の片腕に、両手を乗せて身を乗り出している。その体制で首を左右に動かして中庭を見回す。
「お庭とはいえ、はぐれないように気をつけないとですね」
「うむ。分かっている」
そっと地面に下ろす。ライルは軽やかに降りた。木の幹の茶色と葉の鮮やかな緑、花達の目を引く赤や黄色。その自然の中にライルがいる。自然と猫、いいコラボレーションだ。
「猫になって日々思うことだが……まるで世界が変わって見えるな」
「あら、そうなんですの?」
「ああ。背が小さいからだろうな、周りのものが大きく見える」
私はその場にしゃがみこんだ。できるだけライルと目の高さを合わせる。
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