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55.婚約から結婚へ
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ライルが失踪したゴタゴタが上手く片付いて、何事も無かったかのように、日常が戻った。
そして、トントン拍子に正式に結婚が決まり、式やその他の色々な事が進んでいった。
豪華なパーティーやらなんやらがあっという間に過ぎていって、今はライルと夫婦として生活している。
最初は婚約破棄も危ぶまれるような関係性だったのに、不思議なものだ。
いや……ライルは元々態度が分かりにくかっただけで、婚約破棄をするつもりも、私に意地悪をしているつもりもなかったようだけれど。
勝手に私が誤解していただけだ。
もちろん、今は前よりもライルのことを分かっているつもりだ。
「カレン、今時間あるか?」
今ではかなり見慣れてきた人間の姿のライルが部屋の扉をノックして声をかけてきた。
「大丈夫ですよ。どうしましたか?」
扉を開けて声に応じた。
「む……大したことではないのだが、少し話したいことがあってな」
「あら、なんでしょう?」
「その……最近色々と忙しかっただろう? 体調は大丈夫か?」
「はい。大丈夫ですわ」
「そうか」
一瞬、沈黙が訪れる。
「……庭を、散歩でもしないか?」
「私は良いのですが……ライル様、まだ忙しいのでは……」
「うむ。そうなのだが……少し、息抜きがしたくてな」
「まあ、たまには息抜きも必要ですね」
ライルに少しだけ待ってもらって、共に庭に出た。
空高く太陽が出ていて、陽射しが熱いくらいだった。
「良い天気ですね」
「うむ。雲ひとつないな」
「……あそこで一休みでもしますか?」
「おお、あの木のところか。ちょうど良いな」
木漏れ日の漏れている影に入る。
ちょうど座れそうなところがあったので、座って休むことにした。
周りの空気がひんやりと心地が良かった。
「……なんだか、カレンとゆっくり話せるのも久しぶりな気がするぞ」
「最近は顔を見るだけで、会話はありませんでしたからね」
パーティーなどでは公の場のため、あまり個人的な会話はできない。話したとしても、事務的というか儀式的というか、そんな感じだ。
「……息抜きというのは嘘で、カレンとの時間が恋しくなってな」
「え?」
「猫の時はいつでも近くにカレンがいたが、今は違うだろう?」
「ええ、まあ」
「……寂しいというか……甘えたくなってな……」
ライルの手が私の手と重なった。
そして。軽くもたれかかるように体を預けてきた。
柔らかな髪が頬をくすぐった。
「……なんだか、懐かしいですね」
「何がだ?」
「前に散歩した時です。あの時はライル様は猫でしたけれど……その時のことを思い出しました」
「俺も、同じことを考えていたぞ」
暖かくて、爽やかで、心地よい空間。
流れる風が気持ちいい。
「……撫でてもいいですか?」
「……うむ」
猫を撫でるのとは全然気恥しさが違ったけれど、感触はまるで似ていた。
しばらく撫で続けていると、ライルはいつの間にか眠っていた。
人間に戻っても、猫っぽい。
「今日だけではなく、いつでも甘えてもらっていいのですけれど……ね」
呟いた声は風の音に紛れて、消えていった。
猫だろうが人間だろうが、甘えて欲しい。そう思うくらいには、ライルのことを好きになっているのだ。
……実をいえば私も、寂しかったし。
猫の時はライルに甘える気がなくても、猫だとできないことがあったから世話を焼けたし、一緒に過ごす時間も長かった。
最初はライルのことが嫌いで、何故婚約なんかと思っていたけれど。今は……婚約できて、夫婦になれて良かったと思う。
「……本当に、良い天気ですね……」
こんな穏やかで平和な日々がずっと続けば良いのに。ずっと、ずっと……。
草木の匂いや甘い花の匂いを感じながら、そんなことを願っていた。
澄み切った青い空はどこまでも続いていた。雲ひとつない。雨が降る気配もない。
ライルと私の人生もこんな風に。
そして、トントン拍子に正式に結婚が決まり、式やその他の色々な事が進んでいった。
豪華なパーティーやらなんやらがあっという間に過ぎていって、今はライルと夫婦として生活している。
最初は婚約破棄も危ぶまれるような関係性だったのに、不思議なものだ。
いや……ライルは元々態度が分かりにくかっただけで、婚約破棄をするつもりも、私に意地悪をしているつもりもなかったようだけれど。
勝手に私が誤解していただけだ。
もちろん、今は前よりもライルのことを分かっているつもりだ。
「カレン、今時間あるか?」
今ではかなり見慣れてきた人間の姿のライルが部屋の扉をノックして声をかけてきた。
「大丈夫ですよ。どうしましたか?」
扉を開けて声に応じた。
「む……大したことではないのだが、少し話したいことがあってな」
「あら、なんでしょう?」
「その……最近色々と忙しかっただろう? 体調は大丈夫か?」
「はい。大丈夫ですわ」
「そうか」
一瞬、沈黙が訪れる。
「……庭を、散歩でもしないか?」
「私は良いのですが……ライル様、まだ忙しいのでは……」
「うむ。そうなのだが……少し、息抜きがしたくてな」
「まあ、たまには息抜きも必要ですね」
ライルに少しだけ待ってもらって、共に庭に出た。
空高く太陽が出ていて、陽射しが熱いくらいだった。
「良い天気ですね」
「うむ。雲ひとつないな」
「……あそこで一休みでもしますか?」
「おお、あの木のところか。ちょうど良いな」
木漏れ日の漏れている影に入る。
ちょうど座れそうなところがあったので、座って休むことにした。
周りの空気がひんやりと心地が良かった。
「……なんだか、カレンとゆっくり話せるのも久しぶりな気がするぞ」
「最近は顔を見るだけで、会話はありませんでしたからね」
パーティーなどでは公の場のため、あまり個人的な会話はできない。話したとしても、事務的というか儀式的というか、そんな感じだ。
「……息抜きというのは嘘で、カレンとの時間が恋しくなってな」
「え?」
「猫の時はいつでも近くにカレンがいたが、今は違うだろう?」
「ええ、まあ」
「……寂しいというか……甘えたくなってな……」
ライルの手が私の手と重なった。
そして。軽くもたれかかるように体を預けてきた。
柔らかな髪が頬をくすぐった。
「……なんだか、懐かしいですね」
「何がだ?」
「前に散歩した時です。あの時はライル様は猫でしたけれど……その時のことを思い出しました」
「俺も、同じことを考えていたぞ」
暖かくて、爽やかで、心地よい空間。
流れる風が気持ちいい。
「……撫でてもいいですか?」
「……うむ」
猫を撫でるのとは全然気恥しさが違ったけれど、感触はまるで似ていた。
しばらく撫で続けていると、ライルはいつの間にか眠っていた。
人間に戻っても、猫っぽい。
「今日だけではなく、いつでも甘えてもらっていいのですけれど……ね」
呟いた声は風の音に紛れて、消えていった。
猫だろうが人間だろうが、甘えて欲しい。そう思うくらいには、ライルのことを好きになっているのだ。
……実をいえば私も、寂しかったし。
猫の時はライルに甘える気がなくても、猫だとできないことがあったから世話を焼けたし、一緒に過ごす時間も長かった。
最初はライルのことが嫌いで、何故婚約なんかと思っていたけれど。今は……婚約できて、夫婦になれて良かったと思う。
「……本当に、良い天気ですね……」
こんな穏やかで平和な日々がずっと続けば良いのに。ずっと、ずっと……。
草木の匂いや甘い花の匂いを感じながら、そんなことを願っていた。
澄み切った青い空はどこまでも続いていた。雲ひとつない。雨が降る気配もない。
ライルと私の人生もこんな風に。
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