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第1話
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小鳥の囀りが木霊する中、目に痛い程の光を放つ太陽を浴びて目を覚ます。今日は土曜日で、授業もバイトも無いのでゆっくりする事が出来る。
伸びをして身体を解し、日課のストレッチをして朝食の準備をしようと立ち上がった時、声を掛けられる。
「おはようございます」
「きゃあっ!」
声の主を見ると、目を細め微笑みを浮かべている白髪の男性がいた。そういえば昨日、何故か私の家にやってきて一週間置いてくれなどと言われたのだった。
「あの、昨日のは一体どういうことなんですか?」
床に引かれているログの上に座り、彼に反対側へ座るようへ促してから尋ねる。勢いで変なことになってしまったが私は何一つ彼から聞いていないのだ。
「そうですね……実は俺、月の住人なのですが少々罪を犯してしまいまして。その結果、地球に落とされ罪を償ってくるようにと命じられたのです」
至って真面目な表情で、淡々と彼は述べる。だが、その内容は全く現実味が無い。もしかして、私はこの人に騙されているのだろうか。そう勘繰ってしまう程には突飛な話だった。
「月の住人……? 罪……?」
気になった単語を復唱し聞き返すと、彼は肯定するように一度頷き、付け加えるように再び話し始めた。
「恥ずかしい事をお聞かせすることになってしまいますが……私は月にいた頃、周りの方々の好意に甘え、炊事も掃除もせず、はたまた働きもせず……それでいて恋路にうつつを抜かすような者だったのです」
要するにモテていて、ヒモのような生活をしているにも関わらず浮気は頻繁にするような人だということか。確かに、それは誰かしらの怒りを買いそうなものである。
「そういうわけで、殿上人と呼ばれる方々から顰蹙を買い、地球に落とされたのです。そして償う方法として、地球での生活を学び、月の住人として正しい振る舞いをできるようになれ……と」
親が子に一人暮らしをさせて、自立を促すようなものか。そして立派な社会人となれと。だが、それで何故私の元へ来る必要があるのだろうか。
「あー……事情はまあ、分かりました。でもちょっと、その、にわかには信じられないと言いますか……」
そう口にすると、男性は明らかに落ち込んだ様子で項垂れてしまった。
「そうですよね……皆そうなんです。悲鳴はあげられるし、警察は呼ばれるし……」
なかなか苦労しているようだ。私もそうだが、突然こんな話をされて信じる人の方が稀だとは思うし、言うまでもなく怪しがるだろう。
「でも、俺にはもう貴女以外に話を聞いてくれるような人なんていないんです。何でもしますから……お願い出来ませんか?」
声色は依然として落ち着いたままだが、表情は懇願しているような顔で言った。私が黙りこくっていると彼はまた昨夜と同じように私の手を優しく包み込み、目を合わせてくる。
「分かったよ……分かったから、離してくれるかな……」
もうどうにでもなれという気持ちで彼の頼みを了承する。今までだって何度か所謂ダメ男と付き合っていた事があるのだから……そう自分に言い聞かせることにした。
「本当ですか! ありがとうございます」
白く綺麗な歯を見せるように、三日月形に造られた唇と輝いて見えるトパーズの瞳がとても印象的な笑顔だった。
「俺はラパンと言います。どうぞ、気軽に呼んで下さいね」
ラパンは笑顔なまま言い、続けて私の名前を尋ねてきた。私は質問に答えるため、口を開いて言葉を紡ぐ。
「私は聖羅。よろしくね」
挨拶を交わし、何でもするとの事だったのでその日は家事の一つである料理を教えてみた。ラパンは物覚えが早く、教えた側から出来るようになっていた。
伸びをして身体を解し、日課のストレッチをして朝食の準備をしようと立ち上がった時、声を掛けられる。
「おはようございます」
「きゃあっ!」
声の主を見ると、目を細め微笑みを浮かべている白髪の男性がいた。そういえば昨日、何故か私の家にやってきて一週間置いてくれなどと言われたのだった。
「あの、昨日のは一体どういうことなんですか?」
床に引かれているログの上に座り、彼に反対側へ座るようへ促してから尋ねる。勢いで変なことになってしまったが私は何一つ彼から聞いていないのだ。
「そうですね……実は俺、月の住人なのですが少々罪を犯してしまいまして。その結果、地球に落とされ罪を償ってくるようにと命じられたのです」
至って真面目な表情で、淡々と彼は述べる。だが、その内容は全く現実味が無い。もしかして、私はこの人に騙されているのだろうか。そう勘繰ってしまう程には突飛な話だった。
「月の住人……? 罪……?」
気になった単語を復唱し聞き返すと、彼は肯定するように一度頷き、付け加えるように再び話し始めた。
「恥ずかしい事をお聞かせすることになってしまいますが……私は月にいた頃、周りの方々の好意に甘え、炊事も掃除もせず、はたまた働きもせず……それでいて恋路にうつつを抜かすような者だったのです」
要するにモテていて、ヒモのような生活をしているにも関わらず浮気は頻繁にするような人だということか。確かに、それは誰かしらの怒りを買いそうなものである。
「そういうわけで、殿上人と呼ばれる方々から顰蹙を買い、地球に落とされたのです。そして償う方法として、地球での生活を学び、月の住人として正しい振る舞いをできるようになれ……と」
親が子に一人暮らしをさせて、自立を促すようなものか。そして立派な社会人となれと。だが、それで何故私の元へ来る必要があるのだろうか。
「あー……事情はまあ、分かりました。でもちょっと、その、にわかには信じられないと言いますか……」
そう口にすると、男性は明らかに落ち込んだ様子で項垂れてしまった。
「そうですよね……皆そうなんです。悲鳴はあげられるし、警察は呼ばれるし……」
なかなか苦労しているようだ。私もそうだが、突然こんな話をされて信じる人の方が稀だとは思うし、言うまでもなく怪しがるだろう。
「でも、俺にはもう貴女以外に話を聞いてくれるような人なんていないんです。何でもしますから……お願い出来ませんか?」
声色は依然として落ち着いたままだが、表情は懇願しているような顔で言った。私が黙りこくっていると彼はまた昨夜と同じように私の手を優しく包み込み、目を合わせてくる。
「分かったよ……分かったから、離してくれるかな……」
もうどうにでもなれという気持ちで彼の頼みを了承する。今までだって何度か所謂ダメ男と付き合っていた事があるのだから……そう自分に言い聞かせることにした。
「本当ですか! ありがとうございます」
白く綺麗な歯を見せるように、三日月形に造られた唇と輝いて見えるトパーズの瞳がとても印象的な笑顔だった。
「俺はラパンと言います。どうぞ、気軽に呼んで下さいね」
ラパンは笑顔なまま言い、続けて私の名前を尋ねてきた。私は質問に答えるため、口を開いて言葉を紡ぐ。
「私は聖羅。よろしくね」
挨拶を交わし、何でもするとの事だったのでその日は家事の一つである料理を教えてみた。ラパンは物覚えが早く、教えた側から出来るようになっていた。
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