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気高き翼
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しおりを挟む一瞬の動作に反応が出来なかった。
ユイセルといるとどうも無防備になる自分が不思議で仕方ない。
空気に晒された下半身。
ユイセルの花を慈しむ指先が、するりと自らの後孔を探っている。
「ゆゆゆ、ユイセル?!」
あまりのことに客観的に描写せざるを得なかった事実に、たじろいで布団をずり上がる。
しかし、その体は熱のこもったユイセルの腕に簡単に縫い留められてしまった。
「……ここに、リアの中に、入りたい」
あられもしない場所に指先で触れられ、艶っぽく囁かれた言葉にやっと合点がいく。
ユイセルはするつもりなのだ、自分と、繁殖行為を。
「……っそん、な、いきなり……っ」
「……だめ?」
「くっ……卑怯だ……っ」
子犬のような目で見上げられてミナリアは思わず顔を背けた。
興奮で上気して潤んだ瞳と、緩んだ頬がミナリアの心を揺るがす。
全身で自分を愛おしいと伝えてくる自分の男を拒絶など出来るはずがなかった。
「……待て」
腹を括ったミナリアは、ユイセルに待てをさせると、手のひらを握ってその中に魔素を固めた。
開いたそこに、親指大の丸い玉。
つるりとした表面は、鏡のようにユイセルの顔を映した。
「これは……?」
「……遠征の時に使う洗浄丸だ。……中に、触れるのだろう?」
真国騎士団が魔素を練って作る必携品。
後孔からそれを納めることで不浄の一切を消すそれは、この後の行為を受け入れるのにきっと役に立つ。
ユイセルはそれを受け取ると、ごくりと生唾を呑んでミナリアの下肢に手をかけた。
「じゃ、あ……うつ伏せに、するね」
「待て、義足を外す……」
左右の重さの違う体は、ユイセルには扱いづらいだろうことを思い、ミナリアは体を起こして義足の繋ぎ目へと手を伸ばした。
「……っん、」
特注の義足の価値は、その回路にあった。
神経を模した回路は、ミナリアの意思となり自由に動かすことが出来る。
しかし、残ったミナリアの神経と回路を繋ぐ部分は非常にデリケートだ。
付けるのも外すのも、文字通り神経を使う。
「は……っ」
神経と回路を繋ぐ魔術式を解く作業は、神経に潜り込んだ細い糸をずるりと抜き取るのに近い。
深くまで潜り込んだそれは、ミナリアの神経を内部から擦り上げて、ミナリアの体を悪戯に跳ねさせた。
「んぅ……っん、」
唇を噛んでその感覚に耐え、漸く義足を外したミナリアは、先程ユイセルとの口付けに溺れていた直後のように胸を上下させていた。
くったりとベッドに預けた背中まで息を吸い込んで、安堵とともにユイセルを見上げる。
みっともなく歪んでいただろう顔は、ユイセルだから明かしたものだ。
そうでなければ、ミナリアのプライドが許せない。
「終わった、ぞ……?」
見上げたユイセルの顔が思ったよりも至近距離にあって、ミナリアはびくりと体を硬くした。
「リア……」
「はい……」
ユイセルの据わった目に、思わず敬語になる。
ため息を吐いたユイセルは、がしっとミナリアの肩を掴んだ。
「……義足外したのは、俺以外に見せちゃ駄目だからな」
「え、あ、もちろん」
元よりそのつもりで。
「やくそく」
「……ユイセルだから、見せたんだ」
ユイセルの言葉に目を逸らしながら頷く。
だからミナリアは自分の言葉がユイセルを煽った事実に気が付かなかった。
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