【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる

文字の大きさ
14 / 99
第1章

斥候壊滅と掴んだ情報

しおりを挟む
 煙幕が薄れ、岩場の状況が明らかになる。五人の騎士団斥候のうち、二人はすでに地面に倒れ伏し、動かない。残るはリーダー格の男と、プルに足止めされていた兵士二人。しかし、彼らも無傷ではなかった。

「ぐっ……この、化け物どもが……!」

 リーダー格の男は、リンドのブレスで鎧の一部を溶かされ、腕には深い裂傷を負っていた。それでもなお、騎士としての矜持か、あるいは恐怖からか、剣を構え直し、リンドを睨みつけている。残りの兵士二人も、プルの《ウォーターカッター》で細かい傷を負い、《粘着液》で動きを封じられながらも、必死に抵抗しようとしていた。

「もう終わりだ」

 俺は冷静に告げ、最後の仕上げにかかる。
「プル、二人を頼む! リンド、リーダーを!」

 俺の指示に、二匹は即座に行動を開始した。プルは粘着液で動きの鈍った兵士たちに、続け様に水の刃を叩き込む!
「ぐわっ!」
「ぎゃあ!」

 致命傷ではないが、確実に戦意と体力を削っていく。リンドは、負傷したリーダー格の男に容赦なく襲い掛かった。巨体による突進、鋭い爪での薙ぎ払い、そして至近距離からの威嚇の咆哮!

「ひぃっ! く、来るな!」

 リーダー格の男は、先ほどの威勢はどこへやら、リンドの猛攻を必死に剣で受け流すが、その顔には明らかに恐怖の色が浮かんでいた。

 俺はその間に、プルが足止めしている兵士の一人に素早く接近する。兵士は俺に気づき、慌てて剣を振るってきたが、その動きは精彩を欠いていた。俺はその剣を弾き返し、柄頭で鳩尾を強く打ち据える。

「ぐふっ……!」

 兵士は短い呻き声を上げ、その場に崩れ落ちた。残る兵士も、仲間が倒れたのを見て完全に戦意を喪失。プルが放った《ウォーターカッター》が肩を掠めると、悲鳴を上げて剣を取り落とした。

 そして、リーダー格の男も、リンドの圧倒的な力の前に、ついに膝をついた。リンドがその太い首筋に牙を突き立てようとした瞬間、俺は声をかけた。

「そこまでだ、リンド」
「きゅる……」

 リンドは不満そうに喉を鳴らしたが、素直に牙を引っ込めた。リーダー格の男は、助かったことに安堵したのか、あるいは恐怖でか、その場でガタガタと震えている。

 こうして、王国騎士団の斥候部隊五名は、俺たちの手によって完全に無力化された。

 俺は倒れている兵士たちから手際よく武器と装備を剥ぎ取り、【収納∞】へと放り込んでいく。使えそうなものは後で役立つかもしれない。そして、まだ意識のあるリーダー格の男の前に屈み込んだ。

「さて、いくつか聞きたいことがある」
「……な、何を……」
「単刀直入に聞こう。なぜ俺たちを追う? お前たちが探している『アレ』とは何だ?」

 俺の問いに、男は口を固く閉ざした。だが、俺は構わず続ける。
「お前たちの目的は、俺とこのリンドの確保、そして俺が『試練の洞窟』で見つけた結晶石の回収。違うか?」

 俺の言葉に、男は目を見開いた。図星だったようだ。
「な、なぜそれを……!」
「お喋りなオークがいてな。それに、お前たちの行動を見れば大体わかる」

 俺はハッタリをかまし、さらに男の顔に近づいた。すぐ隣では、リンドが低い唸り声を上げている。

「正直に話せば命だけは助けてやる。だが、黙秘するなら……このリンドが、お前を生きたまま喰らうことになるかもしれないぞ?」
「ひぃぃっ! わ、分かった! 話す、話すから!」

 男はリンドの威圧に完全に屈した。彼は震える声で、知っている情報を断片的に語り始めた。
 やはり、結晶石は王国にとって非常に重要な古代遺物――『星霜の結晶』と呼ばれ、強大な魔力を秘めていること。騎士団はそれを回収するために派遣されたこと。俺がそれを持ち去った可能性が高いと判断し、追跡していたこと。
 本隊はすぐ近くまで来ており、隊長は『氷刃』の異名を持つ冷徹で腕利きの騎士であること。そして――

「今回の追跡任務には、勇者アルヴィン様からの強い要請もあった……あの方が、お前のような追放者が『星霜の結晶』を持つなど許されない、と……」

(……アルヴィン!)

 やはり、あの男が裏で糸を引いていたか。追放した俺が、自分たちの知らない強力なアイテムを手に入れたことが許せないのだろう。相変わらず、器の小さい奴だ。

 一通り情報を聞き出すと、俺はリーダー格の男と、意識を取り戻しかけていた他の兵士たちを、彼ら自身のベルトなどで雁字搦めに縛り上げた。

「さて、どうするかな……」

 殺すのは寝覚めが悪い。だが、解放はできない。俺は少し考えた後、彼らを岩場の影にまとめて転がし、猿轡を噛ませた。
「しばらくはここで頭を冷やしてろ。運が良ければ、本隊の奴らが見つけてくれるだろうさ」

 装備も食料も奪われた彼らが、このまま放置されればどうなるかは分からない。だが、それは俺の知ったことではない。俺たちに牙を剥いた報いだ。

 俺は回収した装備の中から、傷の少ない鎧や剣を選び出し、それらも【収納∞】に入れた。時間停止空間に入れておけば、後で修理したり、換金したりできるだろう。

(本隊が近くにいる。しかも、隊長は『氷刃』……厄介な相手になりそうだ。アルヴィンまで絡んでいるとなると、執拗に追ってくるだろうな)

 斥候部隊を壊滅させたことで、奴らはさらに警戒を強めるはずだ。もはや、小細工は通用しないかもしれない。

「望むところだ。だが、次はもっとうまく立ち回らないとな」

 俺は呟き、プルとリンドに視線を送る。二匹は力強く頷き返してくれた。
 俺たちは、騎士団兵たちが残された岩場を後にし、再び森の奥深くへと身を隠すように移動を開始した。
 次なる戦いに備えて。そして、俺たちの反撃のために。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

追放された”お荷物”の俺がいないと、聖女も賢者も剣聖も役立たずらしい

夏見ナイ
ファンタジー
「お荷物」――それが、Sランク勇者パーティーで雑用係をするリアムへの評価だった。戦闘能力ゼロの彼は、ある日ついに追放を宣告される。 しかし、パーティーの誰も知らなかった。彼らの持つ強力なスキルには、使用者を蝕む”代償”が存在したことを。そして、リアムの持つ唯一のスキル【代償転嫁】が、その全てを人知れず引き受けていたことを。 リアムを失い、スキルの副作用に蝕まれ崩壊していく元仲間たち。 一方、辺境で「呪われた聖女」を救ったリアムは自らの力の真価を知る。魔剣に苦しむエルフ、竜の血に怯える少女――彼は行く先々で訳ありの美少女たちを救い、彼女たちと安住の地を築いていく。 これは、心優しき”お荷物”が最強の仲間と居場所を見つけ、やがて伝説となる物語。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...