【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる

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第1章

決断

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 騎士団斥候を無力化した岩場から、俺たちは迅速に離脱した。奴らが残した痕跡は全て消し、追跡の手がかりとなりそうなものは極力残さないように注意を払う。今はただ、距離を取り、身を隠すことが最優先だ。

 プルは常に周囲の気配を探り、わずかな異変も見逃さないように神経を尖らせている。リンドもその鋭敏な五感で、遠くの物音や匂いを捉えようとしていた。俺は二匹からの情報を頼りに、森の中を縫うように進む。開けた場所を避け、木々が密集し、地形が複雑な場所を選んで移動を続けた。

 時折、プルが特定の方向を指し示し、警戒を促すことがあった。遠くで、複数の人間が組織的に動いている気配。あるいは、微かに漂ってくる魔力の残滓。騎士団の本隊が、斥候部隊からの連絡がないことを不審に思い、捜索範囲を広げているのだろう。直接姿を見ることはなかったが、包囲網が徐々に狭まっているような、嫌な圧迫感があった。

 数時間移動した後、俺たちは小さな滝の裏にある、僅かな空間を見つけて一時的に身を隠すことにした。水の音が外部の音を遮断し、入り口も狭いため、隠れ場所としては悪くない。

「ふぅ……少し休もう」

 俺は【収納∞】から毛布と保存食を取り出す。時間停止空間に入れておいたパンは焼きたてのように柔らかく、水は冷たいままだ。プルには木の実を、リンドにはオークの干し肉を与える。短い休息だが、体力を回復させ、思考を整理するには十分だった。

(斥候部隊の情報が正しければ、本隊は斥候よりも遥かに手強い。隊長の『氷刃』に加え、魔法使いもいるとなると、正面からの戦闘は避けたいところだ)

 アルヴィンが絡んでいる以上、追跡は執拗になるだろう。この広大な森で完全に身を隠し通すのは難しいかもしれない。逃げ続けるだけでは、いずれ追い詰められる。

(どうする……?)

 いくつかの選択肢が頭に浮かぶ。辺境のさらに奥地へ逃げるか。どこか守りやすい場所に籠城するか。あるいは……。

(奴らの目的は『星霜の結晶』……俺が持っていると思われている、あの結晶石だ。奴らがそれを追うなら、その欲望を利用できないか?)

 危険な賭けになる。だが、最も可能性があるとすれば、これかもしれない。騎士団本隊を、俺たちが有利に戦える場所、あるいは奴らにとっても危険な場所へとおびき寄せるのだ。

(例えば……もっと強力な魔物がいるエリアとか、あるいは……『試練の洞窟』のさらに奥とか)

 あの洞窟には、まだ探索していないエリアが広がっている。騎士団が何かを探していた以上、奥にはさらなる秘密や危険が眠っている可能性が高い。

 俺は思考を巡らせ、新たなスキルの応用についても考えた。時間停止空間は、戦闘中にどう使える? 敵の足元に一瞬だけ重い岩を出現させて動きを止めるとか? あるいは、高速アイテム出し入れを利用して、ポーションによる回復と攻撃を同時に行うとか?

 プルやリンドの力も、まだ底が見えない。特にリンドは、経験値を吸収するごとに、その内に秘めたる竜の力が解放されつつあるのを感じる。何か特定のきっかけがあれば、さらなる覚醒もあり得るかもしれない。

「……よし、決めた」

 俺は顔を上げ、隣で休息していたプルとリンドに視線を送った。
「逃げるのは終わりだ。これからは、俺たちが奴らを誘導する」

「ぷる?(誘導?)」
「きゅる?(どうやって?)」

 二匹が不思議そうに俺を見る。
「奴らは『星霜の結晶』を追っている。その手がかりをわざと撒きながら、俺たちが選んだ『舞台』へと誘い込むんだ。そこが、奴らの墓場になる」

 危険な作戦だ。一歩間違えれば、俺たちが壊滅する可能性もある。だが、このまま逃げ続けるよりは、ずっと可能性があるはずだ。

「危険な道になる。だが、俺たちならやれるはずだ。……ついてきてくれるか?」

 俺の問いに、プルは力強く「ぷる!」と鳴き、俺の肩に飛び乗った。リンドも、「キュルルゥ!」と決意のこもった声で応え、その大きな体を俺に擦り付けてきた。

(ありがとう、二人とも)

 心強い仲間たちの存在が、俺の覚悟をさらに固める。
 俺たちは休息を終え、再び滝壺の裏から外へと出た。

「まずは、奴らを誘い込むのに最適な『舞台』を探そう。そして、反撃の準備を始めるんだ」

 俺たちは、騎士団の追跡を警戒しつつも、これまでとは違う目的を持って、再び森の中へと歩き出した。
 反撃の狼煙を上げるための、最初のステップを踏み出すために。

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