【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる

文字の大きさ
35 / 99
第1章

運び屋を追え、闇のアジトへ

しおりを挟む
 宿屋に戻った俺は、三日月亭での潜入で得た情報を整理していた。王国の諜報機関がドワーダル市内で暗躍し、特殊な魔道具を受け渡そうとしていたこと。そして、奴らが俺の存在と『星霜の結晶』の件を把握していること。状況は思った以上に厄介だった。

(あの魔道具……一体何なんだ? 武器か、何かの装置か? いずれにせよ、奴らが隠密に運ぼうとしている以上、ろくな物ではないだろう)

 放置しておけば、この街、あるいはそれ以上の規模で何か良からぬことが起こるかもしれない。俺は、あの魔道具の行方を追跡し、可能ならその目的を探り、場合によっては奪取することを決意した。

 だが、俺の潜入によって、三日月亭での受け渡しは中止、あるいは延期された可能性が高い。運び屋が誰で、次にどこへ現れるのか? 手がかりは少ない。

 俺は再び情報収集に動いた。ボルガン親方に、それとなくあの魔道具の形状(複雑な機構を持つ、黒光りする武具のようなもの)について尋ねてみたが、「そんなもんは聞いたことがねぇな。古代の遺物か、あるいは禁忌の代物かもしれん。関わらん方が身のためじゃぞ」と、逆に心配されてしまった。
 ギルドでも、「変わった魔道具」に関する噂を探ってみたが、有力な情報は得られない。敵は巧妙に事を進めているようだ。

(となると……やはり、三日月亭周辺を張り込むしかないか)

 受け渡し場所を変更する可能性もあるが、一度設定した場所をそう簡単には変えないかもしれない。俺は、運び屋が再び現れるのを待つことにした。

 翌日から、俺は三日月亭周辺の監視を開始した。プルに協力を頼み、交代で、あるいは連携して、周辺の建物の屋根の上などから、酒場へ出入りする人物を注意深く観察する。リンドには引き続き厩舎で待機してもらい、いざという時に備えてもらった。

 そして、監視を始めて二日目の夕暮れ時。動きがあった。
「ぷるっ!(あれ……あの人、昨日も見かけた……荷物が怪しいかも!)」
 プルの念話が飛んでくる。プルが指し示したのは、大きな麻袋を担ぎ、フードを目深に被った、一見するとただの行商人風の男だった。だが、その動きには妙な警戒心があり、時折鋭い視線で周囲を窺っている。そして、担いでいる麻袋は、大きさの割に妙に重そうだ。

(……間違いない。あれが運び屋、そしてあの麻袋の中に『荷物』が!)

 男は三日月亭には入らず、近くの裏路地で別の黒服の男と短い言葉を交わした後、すぐにその場を立ち去り、街の外れへと向かい始めた。受け渡し場所を変更したのか、あるいはこれから別の場所へ運ぶのか。

「追うぞ、プル!」
「ぷる!」

 俺たちは密かに男の追跡を開始した。男はかなり用心深く、何度も立ち止まっては周囲を確認したり、わざと入り組んだ道を選んだりして、追跡を撒こうとしている。だが、プルの索敵能力と、俺自身の隠密行動のスキルがあれば、見失うことはない。

 追跡劇は、ドワーダルの薄暗い路地裏から、活気のある市場の喧騒を抜け、やがて街の外壁近く、ほとんど使われていないような寂れた倉庫街へと続いた。
 男は周囲を最後にもう一度確認すると、その倉庫街の中でも特に古びて大きな倉庫の一つへと、音もなく滑り込んだ。

(ここか……!)

 俺は倉庫から少し離れた場所の影に身を潜め、内部の様子を窺う。倉庫の窓は固く閉ざされ、入り口には見張りが二人立っている。さらに、倉庫の屋根や周辺の建物にも、複数の監視の気配を感じる。厳重な警戒態勢だ。

 そして、倉庫の内部から、微かに、だが確かに、あの三日月亭で見た魔道具と同じ、不気味な魔力の波動を感じ取れた。

「ここが奴らのアジトか、それとも中継地点か……。あの魔道具を、ここでどうするつもりだ?」

 運び屋を追い、ついに敵の拠点らしき場所にたどり着いた。だが、警戒は厳重で、内部にどれだけの敵がいるかも分からない。正面から突入するのは無謀だろう。

(……まずは、内部の情報をもう少し集める必要があるな)

 俺は、この倉庫への潜入、あるいは強行突入を覚悟しつつ、まずは夜が更けるのを待ち、内部の状況を探るための計画を練り始めた。プルも俺の隣で、小さな体を震わせ、これからの戦いに備えているようだった。
 掴んだ尻尾は、思いのほか大きな獣に繋がっているのかもしれない。だが、もう引き返すつもりはなかった。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

追放された”お荷物”の俺がいないと、聖女も賢者も剣聖も役立たずらしい

夏見ナイ
ファンタジー
「お荷物」――それが、Sランク勇者パーティーで雑用係をするリアムへの評価だった。戦闘能力ゼロの彼は、ある日ついに追放を宣告される。 しかし、パーティーの誰も知らなかった。彼らの持つ強力なスキルには、使用者を蝕む”代償”が存在したことを。そして、リアムの持つ唯一のスキル【代償転嫁】が、その全てを人知れず引き受けていたことを。 リアムを失い、スキルの副作用に蝕まれ崩壊していく元仲間たち。 一方、辺境で「呪われた聖女」を救ったリアムは自らの力の真価を知る。魔剣に苦しむエルフ、竜の血に怯える少女――彼は行く先々で訳ありの美少女たちを救い、彼女たちと安住の地を築いていく。 これは、心優しき”お荷物”が最強の仲間と居場所を見つけ、やがて伝説となる物語。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

処理中です...