【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる

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第1章

古代遺跡の気配

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 鉱山都市ドワーダルを後にした俺たちは、夜の闇に紛れてひたすら東へと向かった。背後には、氷刃率いる騎士団の執拗な追跡が迫っているはずだ。今はただ、彼らの影響圏から一刻も早く離脱し、安全な距離を確保することが最優先だった。

 街道を避け、獣道や森の中を進む。ドワーダル周辺の険しい山岳地帯を抜けるのは骨が折れたが、リンドの飛行能力(まだ短時間だが、岩場や崖を越えるのに非常に役立った)と、プルの的確なナビゲーションのおかげで、追手の目を掻い潜りながら、比較的速いペースで東へと進むことができた。

 数日が経過し、ドワーダルから十分に離れたと感じられる頃には、周囲の風景は一変していた。鉱山の荒々しい岩肌や、開けた草原は姿を消し、代わりにどこまでも続くかのような深い原生林が広がっていた。樹齢数百年はあろうかという巨木が天を突き、昼間でも薄暗い森の中には、神秘的な静寂が漂っている。時折、霧が立ち込める深い渓谷や、苔むした岩々が点在する高原などを通り過ぎた。空気は澄んでいるが、どこか濃密な魔力が満ちているのを感じる。

 夜、森の中で野営する。焚き火の炎が揺らめき、周囲の闇を淡く照らす。プルは俺の膝の上で丸くなり、リンドは大きな体を横たえ、警戒するように静かに周囲の音に耳を澄ませている。時間停止空間のおかげで食料には困らないが、精神的な消耗は確実に蓄積していた。それでも、一時的に追手から解放された安堵感は大きかった。

 この新たな地域には、これまで見たことのない魔物も生息していた。木々の間に現れる、淡い光を放つ精霊のような存在「フォレストウィスプ」は、悪意はないようだが、悪戯に道を惑わせてくる。巨大な蔦(つた)を鞭のように振るい、獲物を捕らえようとする食人植物「ヴァインスナッチャー」との戦闘は厄介だった。リンドの炎ブレスが有効だったのが幸いだ。

 また、古い石像のようなものが点在するエリアでは、石像に擬態していたガーディアンゴーレム(試練の洞窟のものとは別タイプ)に襲われた。これらの魔物との戦闘を通じて、俺たちはこの地域の魔力が濃く、自然や古代の遺物に強く影響を与えていることを実感した。

 さらに東へ進むと、森の様子はさらに変化し始めた。道端に、明らかに人工物と思われる、苔むした石畳や、崩れた石壁の一部が見られるようになったのだ。表面には、見たこともない複雑な文様が刻まれている。

「……いよいよ、近づいてきたみたいだな。古代遺跡群に」

 俺が呟くと、プルが肩の上で頷いた。
「ぷるる……(なんだか、空気が違う……懐かしいような、怖いような……)」
 リンドも、どこか落ち着かない様子で周囲の匂いを嗅ぎ、時折低い唸り声を上げている。竜としての本能が、この土地に眠る古代の力や、あるいは同族の気配(?)のようなものを感じ取っているのかもしれない。

 そして、数日後。ついに俺たちは、その全貌を目にすることになる。
 森を抜け、小高い丘の上に立った俺たちの眼下に、広大な古代遺跡群が広がっていたのだ。

「……これは……」

 息を呑むほどの光景だった。崩れかけた巨大な神殿、天を突くようにそびえ立つ石の塔、円形の闘技場のような建造物、そして無数の住居跡らしき石造りの建物…。それらが、緑の苔と蔦に覆われながらも、かつての壮大な文明の姿を静かに物語っていた。遺跡は一つの時代のものではなく、明らかに異なる様式の建造物が混在しており、長い年月にわたって様々な文明がここで興亡を繰り返してきたことを示唆していた。

 人の気配は全くなく、聞こえるのは風の音と、遠くで鳴く鳥の声だけ。神秘的でありながら、どこか物悲しく、そして底知れない力を秘めているような、不思議な静寂が、この広大な遺跡群を支配していた。

「ここが……古代遺跡群。眠っているのは、ただの石塊だけじゃなさそうだな」

 俺はこの場所に、追手から身を隠す以上の何かがあることを予感していた。新たな発見か、それとも新たな危険か。あるいは、俺たちが追うべき世界の秘密の手がかりが、ここに眠っているのかもしれない。

 俺は隣のリンドの首筋をそっと撫で、プルに視線を送る。
「行ってみよう。まずは、安全な拠点を見つけられそうな場所を探さないとな」

 新たな舞台への期待と、未知への不安。それらを胸に、俺たちは古代遺跡群へと続く、苔むした石畳の道へと、第一歩を踏み出した。
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