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第1章
最初の発見と兆し
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東の果てに広がる、古代遺跡群。そこは、想像を絶するほどの静寂に包まれた場所だった。風が崩れた石壁を撫でる音、遠くで響く正体不明の獣の声、そして自分たちの足音以外、ほとんど何も聞こえない。かつてはどれほどの文明が栄え、どれほどの営みがあったのだろうか。今はただ、苔と蔦に覆われた石の残骸が、悠久の時の流れを物語るのみだ。
俺たちはまず、この広大な遺跡群の中で、安全に身を隠し、休息できる拠点を探すことにした。プルが先行して周囲の魔力反応や構造の安定性を探り、リンドは上空から(とはいえ目立たないように低空で)全体の地形を把握する。
遺跡は驚くほど多様だった。天を突くような巨大な塔の残骸、荘厳なレリーフが施された神殿跡、円形に広がる闘技場のような場所、そして無数の住居跡と思われる石造りの建物群。壁画には、見たこともない生物や、神話の一場面のようなものが描かれており、失われた文明の断片が随所に散らばっていた。しかし、その多くは激しく損傷しており、内部も崩落の危険や、魔物の巣窟となっている場所が多かった。
数時間ほど探索を続けた後、俺たちは小高い丘の中腹に、比較的状態の良い石造りの塔を発見した。三階建てほどの高さで、上半分は崩れていたが、一階と二階部分は壁も天井も残っており、風雨をしのぐには十分そうだ。入り口は一つだけで、見張りや防御にも適している。窓からは周囲の遺跡群が見渡せ、接近する者を発見しやすいのも利点だった。
「よし、ここを当面の拠点にしよう」
俺たちは塔の内部を簡単に清掃し、【収納∞】から寝袋や毛布、調理器具などを取り出して、ささやかな生活空間を整えた。地下には、雨水が溜まったのか、澄んだ水を湛えた小さな貯水槽のような場所もあり、飲料水の確保もできそうだ。久しぶりに、少しだけ腰を落ち着けられる場所に安堵した。
拠点を確保した翌日、俺は周辺の探索を開始した。危険な魔物も潜んでいるだろうが、この遺跡について少しでも情報を集めておきたかったのだ。プルを連れ、リンドには拠点の守りを頼んだ。
探索中、俺は崩れた祭壇のような場所で、奇妙な石版の破片を見つけた。手のひらほどの大きさで、表面には複雑な古代文字のようなものがびっしりと刻まれている。俺には全く読めないが、何か重要な情報が記されているような気がした。俺はそれを【収納∞】に大切にしまい込んだ。いつか、解読できる日が来るかもしれない。
拠点に戻ると、リンドがどこか落ち着かない様子で塔の周りをうろうろしていた。
「どうした、リンド? 何かあったのか?」
「キュルル……」
リンドは言葉にならない声で鳴き、特定の方向――遺跡群のさらに奥深く――をじっと見つめている。その深紅の鱗が、月明かりの下で微かに、周期的に明滅しているようにも見えた。
(この遺跡群に来てから、リンドの様子が少しおかしい気がする……。この土地の魔力か、あるいは……竜に関係する何かが、あいつを刺激しているのか?)
伝説の竜であるリンドにとって、この古代遺跡群は、単なる隠れ場所以上の意味を持つのかもしれない。彼の成長や、秘められた力の覚醒に繋がる可能性も……? 俺はリンドの様子を注意深く観察していくことにした。
拠点での生活を始めて数日が経った、ある夜のことだった。見張り番をしていた俺は、遠くの遺跡の影に、微かな光が灯るのを見た気がした。気のせいかと思ったが、肩の上にいたプルが、ぴくりと体を震わせた。
「ぷる……?(今の……人の気配……?)」
俺も、プルと同じ気配を感じ取っていた。それは魔物のものではない。かといって、騎士団のような明確な敵意とも違う。だが、確かに、この静寂に包まれた遺跡群の中に、俺たち以外の「誰か」がいる。
それは、この遺跡に隠れ住む賢者か、あるいは古代の守人か。それとも、同じように遺跡を探索する別の冒険者か。最悪の場合、俺たちを追ってきた騎士団の斥候という可能性も捨てきれない。
俺は静かに剣の柄に手をかけ、気配のした方向を睨み据えた。プルも臨戦態勢をとる。拠点に残してきたリンドにも、念話で警戒を促した。
崩れた建物の影、深い闇の向こうに、再び微かな動きが見えた気がした。
(……何者だ?)
新たな出会いか、それとも新たな脅威か。静寂の遺跡に、再び緊張の糸が張り詰めようとしていた。俺は息を殺し、その正体を見極めるべく、慎重に動き出す準備を始めた。
俺たちはまず、この広大な遺跡群の中で、安全に身を隠し、休息できる拠点を探すことにした。プルが先行して周囲の魔力反応や構造の安定性を探り、リンドは上空から(とはいえ目立たないように低空で)全体の地形を把握する。
遺跡は驚くほど多様だった。天を突くような巨大な塔の残骸、荘厳なレリーフが施された神殿跡、円形に広がる闘技場のような場所、そして無数の住居跡と思われる石造りの建物群。壁画には、見たこともない生物や、神話の一場面のようなものが描かれており、失われた文明の断片が随所に散らばっていた。しかし、その多くは激しく損傷しており、内部も崩落の危険や、魔物の巣窟となっている場所が多かった。
数時間ほど探索を続けた後、俺たちは小高い丘の中腹に、比較的状態の良い石造りの塔を発見した。三階建てほどの高さで、上半分は崩れていたが、一階と二階部分は壁も天井も残っており、風雨をしのぐには十分そうだ。入り口は一つだけで、見張りや防御にも適している。窓からは周囲の遺跡群が見渡せ、接近する者を発見しやすいのも利点だった。
「よし、ここを当面の拠点にしよう」
俺たちは塔の内部を簡単に清掃し、【収納∞】から寝袋や毛布、調理器具などを取り出して、ささやかな生活空間を整えた。地下には、雨水が溜まったのか、澄んだ水を湛えた小さな貯水槽のような場所もあり、飲料水の確保もできそうだ。久しぶりに、少しだけ腰を落ち着けられる場所に安堵した。
拠点を確保した翌日、俺は周辺の探索を開始した。危険な魔物も潜んでいるだろうが、この遺跡について少しでも情報を集めておきたかったのだ。プルを連れ、リンドには拠点の守りを頼んだ。
探索中、俺は崩れた祭壇のような場所で、奇妙な石版の破片を見つけた。手のひらほどの大きさで、表面には複雑な古代文字のようなものがびっしりと刻まれている。俺には全く読めないが、何か重要な情報が記されているような気がした。俺はそれを【収納∞】に大切にしまい込んだ。いつか、解読できる日が来るかもしれない。
拠点に戻ると、リンドがどこか落ち着かない様子で塔の周りをうろうろしていた。
「どうした、リンド? 何かあったのか?」
「キュルル……」
リンドは言葉にならない声で鳴き、特定の方向――遺跡群のさらに奥深く――をじっと見つめている。その深紅の鱗が、月明かりの下で微かに、周期的に明滅しているようにも見えた。
(この遺跡群に来てから、リンドの様子が少しおかしい気がする……。この土地の魔力か、あるいは……竜に関係する何かが、あいつを刺激しているのか?)
伝説の竜であるリンドにとって、この古代遺跡群は、単なる隠れ場所以上の意味を持つのかもしれない。彼の成長や、秘められた力の覚醒に繋がる可能性も……? 俺はリンドの様子を注意深く観察していくことにした。
拠点での生活を始めて数日が経った、ある夜のことだった。見張り番をしていた俺は、遠くの遺跡の影に、微かな光が灯るのを見た気がした。気のせいかと思ったが、肩の上にいたプルが、ぴくりと体を震わせた。
「ぷる……?(今の……人の気配……?)」
俺も、プルと同じ気配を感じ取っていた。それは魔物のものではない。かといって、騎士団のような明確な敵意とも違う。だが、確かに、この静寂に包まれた遺跡群の中に、俺たち以外の「誰か」がいる。
それは、この遺跡に隠れ住む賢者か、あるいは古代の守人か。それとも、同じように遺跡を探索する別の冒険者か。最悪の場合、俺たちを追ってきた騎士団の斥候という可能性も捨てきれない。
俺は静かに剣の柄に手をかけ、気配のした方向を睨み据えた。プルも臨戦態勢をとる。拠点に残してきたリンドにも、念話で警戒を促した。
崩れた建物の影、深い闇の向こうに、再び微かな動きが見えた気がした。
(……何者だ?)
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