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第1章
竜魂の囁き
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中央神殿の最奥、俺たちの前に立ちはだかる巨大な石の扉。そこから漏れ出る清浄で、しかしどこか物悲しい魔力の波動は、俺たちの本能に「この先へ進むべきではない」と警告しているかのようだった。扉の表面にびっしりと刻まれた複雑な文様は、古代の高度な魔法技術と、この場所の重要性を示している。
「……どうやって開ける? 物理的に破壊するのは無理そうだ。それに、強い結界も感じる」
俺が扉を調べ、途方に暮れかけたその時だった。
「キュルル……ルルゥ……」
リンドが、まるで何かに引き寄せられるように、ゆっくりと扉に近づいていった。そして、扉の中央付近に大きく刻まれた、翼を広げる竜のレリーフに、そっと鼻先を擦り付けたのだ。彼の体が、先ほどよりも強く、青白い光を帯びて明滅し始める。共鳴が強まっている!
すると、驚くべきことが起こった。リンドが触れた竜のレリーフが、呼応するように淡い光を放ち始めたのだ! 光は扉全体に刻まれた文様を走り、複雑な回路のように繋がっていく。そして、地響きのような低い音と共に、あれほど堅固に見えた巨大な石の扉が、ゆっくりと、内側へと開き始めた!
(リンドの血筋か……あるいは、彼自身が鍵だったのか!)
俺は驚きつつも、扉の向こう側へと視線を向ける。開かれた扉の先には、下へと続く緩やかな螺旋階段があった。壁には等間隔に魔導ランプのようなものが灯り、奥からはさらに強い、清浄な魔力の波動が流れ出してくる。
「ぷる……(すごい魔力……でも、怖くない感じ……)」
プルが俺の肩の上で呟く。確かに、この魔力は禍々しさとは無縁の、どこか神聖さすら感じさせるものだった。
「行こう。ここまで来たんだ、引き返すわけにはいかない」
俺たちは覚悟を決め、螺旋階段を下り始めた。どれくらい下っただろうか。やがて階段は終わり、広大な地下空間へとたどり着いた。
そこは、神殿のホール以上に壮大な場所だった。ドーム状の高い天井には、星空のような無数の光点が輝き、空間全体を神秘的な青白い光で満たしている。床一面には、眩いばかりに輝く巨大な魔法陣が描かれ、壁際には見たこともないような複雑な古代の魔法装置がいくつも並び、静かに稼働しているようだった。
そして、その空間の中央。巨大な水晶の柱が天を突き刺すようにそびえ立ち、その内部に……何か、巨大な生物の影のようなものが、眠るように漂っているのが見えた。影は竜の形に似ている。そして、その影こそが、この空間を満たす清浄な魔力の源であり、リンドが共鳴していた存在なのだと直感した。
(あれが……石版にあった『封印』の正体……? 巨大な、竜……?)
俺たちが水晶の柱に近づくと、その内部の影がゆっくりと動き、輝きを増した。そして、直接、俺の脳内に声が響いてきた。それは、男とも女ともつかない、厳かで、どこか物悲しい響きを持つ声だった。
『……目覚めよ。我が同胞の末裔よ。そして、異世界の魂を持つ者よ……』
声は、明らかに俺とリンドに向けて語りかけている!
「あなたは……一体……?」 俺は思わず問い返した。
『我は、古き者。かつてこの地に満ちた厄災を、我が身とこの神殿、そして同胞たちの犠牲をもって、この結晶の中に封じ込めた竜……その魂の残滓なり……』
やはり、古代の竜の魂! そして、何かを封印している……?
『そなたたちをここへ導いたのは、運命か、それとも……外の世界で蠢く、悪しき力の予兆か……』
「悪しき力の予兆……? それは、俺たちを追っている王国や、『星霜の結晶』のことですか?」
『星霜の結晶……ふむ、そう呼ばれておるか。あれもまた、古き力の欠片。使い方を誤れば、世界に更なる厄災をもたらす代物……。鉄の者たち…王国とやらは、その力を求め、この遺跡にまで手を伸ばそうとしておるのか……』
竜の魂の言葉は断片的だが、俺たちが追う謎の核心に触れていた。騎士団の目的は、やはりこの遺跡、あるいは『星霜の結晶』に関連する古代の力なのだ。
『異世界の魂を持つ者、レントよ。そなたの持つ力…【収納∞】とやらは、時空に関わる特異なもの。そして、我が同胞の末裔、リンド。そなたには、我らの血と、この地の未来を託すに足る力が眠っておる』
竜の魂は、俺のスキルやリンドの素性まで見抜いているようだった。
『警告しよう。この地の封印は、永遠ではない。そして、星霜の結晶を悪用せんとする者たちの動きは、世界に新たな戦乱の火種を撒こうとしておる。そなたたちは、その渦の中心にいるのだ』
その言葉は、重い使命を告げるものだった。単なる追跡劇や成り上がりではない、世界の命運に関わる戦いに、俺たちは否応なく巻き込まれてしまったのだ。
『リンドよ、我が同胞の末裔よ。そなたの覚醒は近い。だが、その力は諸刃の剣。正しく導かれねば、世界を焼き尽くす炎ともなる……』
竜の魂は、リンドに向かって語りかけ、その体がより一層強く輝き始める! まるで、魂がリンドに何かを託すかのように。
『……時間が来たようだ。封印の力が弱まっておる……。行け、レント、リンド、そして小さき友よ。外の世界の危機を食い止めよ。そして、いつか再びここへ……真の覚醒の時が来たら……』
竜の魂の声は徐々に薄れていき、水晶の柱の輝きも、内部の竜の影も、ゆっくりと元の静寂へと戻っていった。だが、俺たちの脳裏には、その言葉と警告が、重く深く刻み込まれていた。
「古代の竜の魂……リンド……そして星霜の結晶……。俺たちがやるべきことは、まだ山積みってことか」
俺は神殿の最深部で、明らかになった世界の秘密の一端と、託された(あるいは押し付けられた)使命の重さを噛みしめていた。
守人の警告、騎士団の追跡、アルヴィンとの因縁、そして世界の危機。絡み合う糸を解きほぐし、俺たちはどこへ向かうべきなのか。
俺は静かにリンドとプルを見つめ、次なる一歩を踏み出すための決意を、改めて固める必要があった。
「……どうやって開ける? 物理的に破壊するのは無理そうだ。それに、強い結界も感じる」
俺が扉を調べ、途方に暮れかけたその時だった。
「キュルル……ルルゥ……」
リンドが、まるで何かに引き寄せられるように、ゆっくりと扉に近づいていった。そして、扉の中央付近に大きく刻まれた、翼を広げる竜のレリーフに、そっと鼻先を擦り付けたのだ。彼の体が、先ほどよりも強く、青白い光を帯びて明滅し始める。共鳴が強まっている!
すると、驚くべきことが起こった。リンドが触れた竜のレリーフが、呼応するように淡い光を放ち始めたのだ! 光は扉全体に刻まれた文様を走り、複雑な回路のように繋がっていく。そして、地響きのような低い音と共に、あれほど堅固に見えた巨大な石の扉が、ゆっくりと、内側へと開き始めた!
(リンドの血筋か……あるいは、彼自身が鍵だったのか!)
俺は驚きつつも、扉の向こう側へと視線を向ける。開かれた扉の先には、下へと続く緩やかな螺旋階段があった。壁には等間隔に魔導ランプのようなものが灯り、奥からはさらに強い、清浄な魔力の波動が流れ出してくる。
「ぷる……(すごい魔力……でも、怖くない感じ……)」
プルが俺の肩の上で呟く。確かに、この魔力は禍々しさとは無縁の、どこか神聖さすら感じさせるものだった。
「行こう。ここまで来たんだ、引き返すわけにはいかない」
俺たちは覚悟を決め、螺旋階段を下り始めた。どれくらい下っただろうか。やがて階段は終わり、広大な地下空間へとたどり着いた。
そこは、神殿のホール以上に壮大な場所だった。ドーム状の高い天井には、星空のような無数の光点が輝き、空間全体を神秘的な青白い光で満たしている。床一面には、眩いばかりに輝く巨大な魔法陣が描かれ、壁際には見たこともないような複雑な古代の魔法装置がいくつも並び、静かに稼働しているようだった。
そして、その空間の中央。巨大な水晶の柱が天を突き刺すようにそびえ立ち、その内部に……何か、巨大な生物の影のようなものが、眠るように漂っているのが見えた。影は竜の形に似ている。そして、その影こそが、この空間を満たす清浄な魔力の源であり、リンドが共鳴していた存在なのだと直感した。
(あれが……石版にあった『封印』の正体……? 巨大な、竜……?)
俺たちが水晶の柱に近づくと、その内部の影がゆっくりと動き、輝きを増した。そして、直接、俺の脳内に声が響いてきた。それは、男とも女ともつかない、厳かで、どこか物悲しい響きを持つ声だった。
『……目覚めよ。我が同胞の末裔よ。そして、異世界の魂を持つ者よ……』
声は、明らかに俺とリンドに向けて語りかけている!
「あなたは……一体……?」 俺は思わず問い返した。
『我は、古き者。かつてこの地に満ちた厄災を、我が身とこの神殿、そして同胞たちの犠牲をもって、この結晶の中に封じ込めた竜……その魂の残滓なり……』
やはり、古代の竜の魂! そして、何かを封印している……?
『そなたたちをここへ導いたのは、運命か、それとも……外の世界で蠢く、悪しき力の予兆か……』
「悪しき力の予兆……? それは、俺たちを追っている王国や、『星霜の結晶』のことですか?」
『星霜の結晶……ふむ、そう呼ばれておるか。あれもまた、古き力の欠片。使い方を誤れば、世界に更なる厄災をもたらす代物……。鉄の者たち…王国とやらは、その力を求め、この遺跡にまで手を伸ばそうとしておるのか……』
竜の魂の言葉は断片的だが、俺たちが追う謎の核心に触れていた。騎士団の目的は、やはりこの遺跡、あるいは『星霜の結晶』に関連する古代の力なのだ。
『異世界の魂を持つ者、レントよ。そなたの持つ力…【収納∞】とやらは、時空に関わる特異なもの。そして、我が同胞の末裔、リンド。そなたには、我らの血と、この地の未来を託すに足る力が眠っておる』
竜の魂は、俺のスキルやリンドの素性まで見抜いているようだった。
『警告しよう。この地の封印は、永遠ではない。そして、星霜の結晶を悪用せんとする者たちの動きは、世界に新たな戦乱の火種を撒こうとしておる。そなたたちは、その渦の中心にいるのだ』
その言葉は、重い使命を告げるものだった。単なる追跡劇や成り上がりではない、世界の命運に関わる戦いに、俺たちは否応なく巻き込まれてしまったのだ。
『リンドよ、我が同胞の末裔よ。そなたの覚醒は近い。だが、その力は諸刃の剣。正しく導かれねば、世界を焼き尽くす炎ともなる……』
竜の魂は、リンドに向かって語りかけ、その体がより一層強く輝き始める! まるで、魂がリンドに何かを託すかのように。
『……時間が来たようだ。封印の力が弱まっておる……。行け、レント、リンド、そして小さき友よ。外の世界の危機を食い止めよ。そして、いつか再びここへ……真の覚醒の時が来たら……』
竜の魂の声は徐々に薄れていき、水晶の柱の輝きも、内部の竜の影も、ゆっくりと元の静寂へと戻っていった。だが、俺たちの脳裏には、その言葉と警告が、重く深く刻み込まれていた。
「古代の竜の魂……リンド……そして星霜の結晶……。俺たちがやるべきことは、まだ山積みってことか」
俺は神殿の最深部で、明らかになった世界の秘密の一端と、託された(あるいは押し付けられた)使命の重さを噛みしめていた。
守人の警告、騎士団の追跡、アルヴィンとの因縁、そして世界の危機。絡み合う糸を解きほぐし、俺たちはどこへ向かうべきなのか。
俺は静かにリンドとプルを見つめ、次なる一歩を踏み出すための決意を、改めて固める必要があった。
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