【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる

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第1章

夜明けの誓い

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 古代竜の魂が眠る、中央神殿の最深部。その荘厳で、しかしどこか物悲しい空間を後にし、俺たちは再び螺旋階段を上っていた。脳裏には、先ほど響いた竜魂の言葉――世界の危機、星霜の結晶の悪用、リンドの宿命、そして俺たちに託された警告――が重くのしかかっていた。

 神殿の広大なホールに戻ると、崩れた天井の隙間から、夜明けの柔らかな光が差し込み始めていた。埃っぽい空気の中で、光の筋が神々しく揺らめいている。俺もプルも、そしてリンドも、経験したことの重大さに、まだ少し呆然としていた。特にリンドは、竜魂との接触で大きな影響を受けたのだろう、疲労困憊した様子で、しかしその瞳の奥には以前とは違う、深い輝きが宿っているように見えた。

 俺たちが神殿の入り口(崩れた壁の隙間)から外へ出ようとした、その時だった。まるで待ち構えていたかのように、あの遺跡の守人が、音もなく俺たちの前に立ちはだかった。古びたローブのフードを目深にかぶり、その表情は窺えない。

「……戻ったか」
 静かだが、有無を言わせぬ圧力を伴った声が響く。
「警告を無視し、禁断の聖域へ足を踏み入れたな。何を見た? 何を知ったのだ?」

 守人の纏う空気が、以前対峙した時よりも明らかに鋭くなっている。下手に誤魔化せば、即座に敵と見なされるだろう。俺は覚悟を決め、正直に話すことにした。

「……あなたの警告は、正しかった。あそこには、古代の竜の魂が、何かを封じているようでした」
「!」
 守人の纏う空気が、ぴくりと揺れた。

「我々は、その竜魂と接触しました。彼は、我々に世界の危機について……『星霜の結晶』を悪用しようとする動きがあること、そして、この封印も永遠ではないと警告を……」
 俺は、リンドが竜魂に「同胞の末裔」と呼ばれたことにも触れた。

 俺の話を聞き終えた守人は、しばらくの間、沈黙していた。フードの下で、何を考えているのか全く読めない。やがて、彼は重々しく口を開いた。
「……そうか。古き竜は、ついに目覚めの言葉を発したか……。そして、この若き竜を、自らの後継として認めた、と」

 彼の声には、驚きと、諦念と、そしてどこか安堵のような響きも混じっていた。
「私は、長きにわたり、この封印を守るために存在してきた。古き竜の眷属……その末裔としてな。外部の者が、特に『鉄の者たち』がこの聖域に近づき、封印の力を悪用することだけは阻止せねばならぬ、と」

 やはり、彼はただの人間ではなかった。古代竜の眷属……。
「あなたが『鉄の者たち』と呼ぶ、王国騎士団は、確かにこの遺跡の力を狙っているようです。そして、俺たちを追っている」
「うむ。奴らの気配は、日増しに強まっておる。いずれ、この聖域にも到達するやもしれん」

 守人は俺と、そしてリンドを改めて見つめた。その視線は、以前のような警戒心だけではなく、何かを確かめるような色を帯びていた。
「竜魂がそなたたちを選び、警告を託したというのなら……もはや、私がそなたたちを排除する理由はない。むしろ……」

 彼は言葉を切ったが、その意味するところは伝わってきた。敵対ではなく、監視対象、あるいは限定的ながらも協力者として見なす、ということだろう。
「今はただ、力を蓄えることだ、若き竜使いよ。そして、その竜を正しく導け。彼の覚醒は、世界の命運を左右する。……いずれ来るべき時に備えよ。次に奴らが現れた時、ここが戦場となるやもしれん」

 それは助言であり、予言でもあった。守人はそれだけ言うと、再び踵を返し、朝靄の中へと音もなく姿を消した。

 俺は、守人が消えた方向を見つめながら、託された言葉の重みを噛みしめていた。世界の危機、リンドの宿命、騎士団との戦い……追放された俺が背負うには、あまりにも大きなものだ。

 だが、やるしかない。プルとリンドを守るためにも、そして、アルヴィンたちへのけじめをつけるためにも。

「プル、リンド。俺たちのやるべきことは変わらない。強くならなければ。どんな敵が現れようと、打ち破れるだけの力を」
「ぷるっ!(うん!)」
「キュル!(主と共に!)」

 二匹の力強い返事に、俺の迷いは消えた。
 俺たちは拠点へと戻り、新たな日常を始めた。それは、休息と回復の時間であり、同時に来るべき戦いに向けた訓練と情報収集、そしてリンドの覚醒を見守る時間でもあった。

 守人との間に生まれた奇妙な関係。執拗に迫る騎士団の影。そして、世界の運命を左右するかもしれない、古代の秘密。
 朝日に照らされ始めた広大な遺跡群を見渡し、俺は静かに誓った。この場所で、俺たちは必ず強くなる、と。

「世界の危機、か……。追放された俺が、とんだ厄介事を背負い込んだもんだ。だが、やるしかない」

 隣には、かけがえのない仲間たちがいる。新たな使命と覚悟を胸に、俺は遺跡での次なる一歩を踏み出す準備を始めた。

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