【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる

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第1章

翼の覚醒

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 風哭きの頂に、荒れ狂う風の咆哮が響き渡る。リンドは、レントの言葉とプルの助けをヒントに、もはや力で風に抗うことをやめていた。彼は全身の感覚を研ぎ澄ませ、巨大なエネルギーの流れそのものである風を読み、感じ、そして一体化しようと試みていた。

『流れを読む……逆らわず、乗る……!』

 リンドは翼の角度をミリ単位で調整し、尾で巧みに舵を取り、風の力を受け流す。時には風の渦に巻き込まれそうになりながらも、その流れの僅かな隙間を見つけ出し、しなやかな動きで体勢を立て直す。それはまるで、荒れ狂う嵐の中で舞う、巨大な赤い蝶のようだった。

「そうだ、リンド! その調子だ!」
「ぷるる! 風の道が見えるよ! そっち!」

 俺とプルは地上から必死に声援と指示を送る。リンドは俺たちの声を力に変え、徐々に、しかし確実に風との調和を深めていった。最初は翻弄されるばかりだった体が、次第に風の中で安定し、風の流れに乗って自在に高度を変え、滑るように移動できるようになっていく。

 だが、試練はそれだけでは終わらなかった。リンドが風に慣れてきたのを見計らったかのように、頂の中央に立つ巨大な石柱が淡い光を放ち始めた! それに呼応するように、周囲の風はさらに勢いを増し、意思を持っているかのように鋭い風の刃となってリンドを襲い、あるいは巨大な風の竜巻となって彼を飲み込もうとする!

「キュアアッ!?」
 これまでの風とは明らかに違う、明確な敵意を持った攻撃! リンドは再び体勢を崩し、その鱗に浅くない傷を負う!

(ただ慣れるだけじゃない! 風を支配しろ、ということか!?)

 古代竜の声が脳裏に蘇る。『汝が継ぐべきは、破壊の力だけではない。創造の力、守護の力、そして…調和の力』。この風を、ただ耐え凌ぐのではなく、調和し、導く必要があるのかもしれない。

『主よ……!』
 苦しげなリンドの声が響く。

「リンド! お前の力を信じろ! 覚醒した炎の力で、風を従わせるんだ!」
「ぷる! プルも手伝う!」

 俺はリンドに強く呼びかける。プルも、リンドの魔力を増幅させる補助魔法を一生懸命に放つ!
 リンドは俺たちの言葉に応えるように、再び黄金色の瞳を輝かせた! 彼は、ただ風の刃を避けるのではなく、自らが生み出す炎のブレスで風の流れを相殺し、あるいは変化させようと試みる!

 最初はうまくいかなかった。炎は風に掻き消され、あるいは煽られて思わぬ方向へ飛んでいく。だが、リンドは諦めなかった。彼は風の流れを読み、炎の力と翼の動きを精密に同調させ、少しずつ風に影響を与え始めたのだ。

 炎の渦を作り出して風の刃を弾き返し、翼の羽ばたきで気流を操り、竜巻の中心に飛び込んでそのエネルギーを吸収するかのように制御する! それはもはや、風に翻弄される姿ではなく、風と共に舞い、風を導く、天空の王者の姿だった!

 そして、ついにその瞬間が訪れた。リンドが天に向かって高らかに咆哮すると、あれほど荒れ狂っていた風が、まるで彼の意志に従うかのように、ぴたりと凪いだのだ。風哭きの頂に、しばしの静寂が訪れる。

 中央の石柱が、祝福するかのように柔らかな光を放ち、古代竜の魂の声が再び響き渡った。
『……見事なり。汝、風を制し、空と調和する資格を示したり。若き竜よ、汝に真なる風の翼と、天翔ける者の祝福を与えん』

 その声と共に、石柱から放たれた光の粒子が、リンドの翼へと降り注いだ! リンドの翼が眩い光に包まれ、その大きさと力強さがさらに増していくのが分かった! 傷は完全に癒え、翼の先端には風を切るための鋭い爪のようなものが形成され、より洗練されたフォルムへと変化していた。

 光が収まると、リンドは生まれ変わった翼をゆっくりと広げた。以前よりも遥かに軽やかに、そして力強く、彼は風哭きの頂の上空へと舞い上がる。その飛翔は、風と完全に一体化したかのように、自由自在で、美しかった。

『主よ! プル! やったぞ! 空が、風が、我に応えてくれる!』
 リンドの喜びと自信に満ちたテレパシーが響く。

「やったな、リンド!」
「ぷるぷるー! すごい、リンド!」

 俺とプルは、心からの賛辞を送った。最初の試練は見事に突破されたのだ。リンドの飛行能力は、もはや以前の比ではないだろう。これは、来るべき騎士団との戦いにおいて、大きなアドバンテージとなるはずだ。

 風が穏やかになった頂から、俺たちは眼下に広がる広大な遺跡群を見下ろした。美しい景色だが、そのどこかに、まだ騎士団の脅威が潜んでいる。

「最初の試練は突破した。だが、休んでいる暇はない。次へ行くぞ!」

 俺は、新たな翼を得たリンドの背に飛び乗った。プルも続く。
 次なる試練か、あるいは迫りくる決戦か。どちらへ向かうにせよ、俺たちはさらに強くなった。リンドは力強く翼を羽ばたかせ、風哭きの頂を後に、遺跡の上空をかつてないスピードで飛翔していった。俺たちの戦いは、まだ続くのだ。
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