【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした～追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

第１章

終焉の光

　人ならざる力で迫るアルヴィンを前に、俺は最後の切り札に全てを賭けることを決意した。仲間たちの想いを、そして俺自身の全てを、この一撃に！

「……リンド、プル、エルミナさん！ もう一度だけ、力を貸してくれ！ 俺に、全てを賭ける時間を！」

　俺の覚悟に応えるように、傷つき倒れていた仲間たちが最後の力を振り絞る！
『主よ！ 我らの全てを！』
「ぷるるっ！ レントに、みんなの力を！」
「…託そう、若き希望よ！」

　リンドの覚醒した竜の力、プルの純粋な精霊の力、そしてエルミナが操る遺跡の古代魔力が、光の奔流となって俺へと注ぎ込まれる！ それを受け止め、俺はスキル【収納∞】を限界を超えて発動させた！

　もはや単なる収納ではない。俺の周囲の空間が激しく歪み、時間停止空間の奥底に眠っていた混沌としたエネルギー――これまで俺が吸収し、貯蔵してきた全ての力が、仲間たちの想いと共鳴し、一つに融合していく！

「うおおおおおおっ！！」

　俺の体は内側から溢れ出す凄まじいエネルギーに耐えきれず悲鳴を上げる！ 髪は白銀に輝き、瞳は星屑を宿したように煌めく！ 『星穿』の剣身が、その膨大なエネルギーを吸収し、もはや直視できないほどの眩い光を放ち始めた！ これが、【収納∞】の…いや、俺自身の真の力の一端なのか！

「な、なんだその力は！？ ありえん！ そんな力が存在してたまるか！」

　俺から放たれる、清浄でありながら根源的、そして混沌としたエネルギーの奔流に、アルヴィンは初めて本能的な恐怖を覚え、叫んだ。彼の歪んだ力、星霜の結晶の禍々しいオーラですら、この輝きに押されている！

「だが、負けん！ 俺は神になるのだ！ この力で、全てを支配する！」

　アルヴィンもまた、後退を許さなかった。彼は取り込んだ星霜の結晶の力を、もはや制御を放棄して暴走させ、その身をさらに異形なものへと変貌させる！ 黒い結晶が全身を覆い尽くし、巨大な闇の翼が生え、その手には凝縮された暗黒物質のような破壊の球体が形成されていく！

「消えろレントォォォ！ 『終焉の闇黒星（エンド・オブ・ダークスター）』！！」

　アルヴィンが、世界そのものを飲み込まんばかりの、最大最後の破壊エネルギーを放つ！

　対する俺もまた、仲間たちの想いと、スキルの真価、そして『星穿』の全てを込めた最後の一撃を放つ！

「いけええええっ！ 『無限星穿（インフィニティ・スターゲイザー）』！！！！」

　俺が掲げた『星穿』から放たれたのは、星屑の奔流！ それはアルヴィンの放った『終焉の闇黒星』と、中央神殿前の広場で真正面から激突した！

　―――！！！！！！

　音は消え、光だけが世界を白く染め上げる！ 凄まじいエネルギーの衝突は、空間そのものを震わせ、遺跡全体が悲鳴を上げているかのようだ！

　どれほどの時間が経っただろうか。
　やがて、眩い光がゆっくりと収まっていく。

　そこに立っていたのは……俺だった。
　『星穿』は俺の手の中にあり、その輝きは収まっているものの、確かな存在感を放っている。俺自身の姿も、白銀に輝いていた髪や瞳は元の色に戻り、全身はボロボロで、立っているのがやっとの状態だった。

　そして、アルヴィンは――。
　俺の『無限星穿』は、彼の『終焉の闇黒星』を打ち破り、その歪んだ力を浄化し、消滅させていた。力の源を失い、取り込んだ力の反動を受けた彼の体は、異形化した結晶が崩れ落ち、元の…いや、それ以上に弱々しい姿へと戻りつつあった。

「馬鹿な……俺が……勇者である俺が……こんな……追放したはずの、ゴミに……」

　彼は、信じられないといった表情で、ゆっくりと崩れ落ちていく自分の体と、そして俺の姿を交互に見つめた。その瞳に浮かぶのは、憎悪か、後悔か、あるいはただの虚無か。
　最期に彼が見たのは、俺の後ろで、傷つきながらも俺を支えようと駆け寄ってくる、プルとリンドの姿だったのかもしれない。

　アルヴィンは、何も言えず、ただ呆然としたまま、その体は砂のように崩れ、風に吹かれて跡形もなく消え去っていった。彼が取り込んでいた星霜の結晶の欠片もまた、その輝きを失い、ただの石ころとなって地面に転がった。（リンドかエルミナが、後でそれを回収し、封印するだろう）

　元凶は、滅びた。
　追放から始まった俺の戦いは、ついに終わったのだ。

「……はぁ……はぁ……終わった……のか……？」

　勝利を噛みしめる間もなく、俺の体は限界を迎えた。膝から崩れ落ち、意識が急速に遠のいていく。スキルを限界まで酷使した代償は大きい。

「レント！」
『主よ！』

　プルとリンドが、必死に俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。エルミナも駆け寄ってくる気配がした。
（……ああ、みんな、無事なんだな……よかった……）

　仲間たちの声を聞きながら、俺は安堵感と共に、深い眠りへと落ちていった。
　激戦の跡が残る古代遺跡に、穏やかな春の日差しが、ただ静かに降り注いでいた。