89 / 99
第2章
北への針路
しおりを挟む
先ほどの謎の接触者から得た情報と、手渡された奇妙な紋章が刻まれたコインを前に、深く考え込んでいた。氷刃が探す古代の『魔力増幅炉』。王国の不穏な動き。そして、俺たちに接触してきた第三勢力…。事態は、俺が考えていた以上に複雑に絡み合っているようだ。
「ぷる…あの人、全部本当のこと言ってるのかな…?」
プルが不安そうに呟く。俺も同じ疑念を抱いていた。彼らの目的は何なのか? なぜ、俺に情報を与えたのか? 利用しようとしているだけなのかもしれない。
『主よ、あの者の言葉には嘘は感じられませんでした。しかし、何か…隠していることがあるような気配は確かに』
リンドもテレパシーで同調する。覚醒した彼の感覚は、人間以上に鋭敏だ。
(信用しすぎるのは危険だ。だが、氷刃が魔力増幅炉を探しているという情報は、無視できない)
もし、氷刃があのような危険な遺物を手に入れれば、その力は計り知れない。俺たちだけでなく、世界そのものにとって大きな脅威となるだろう。
俺は、エルミナから貰った通信石を取り出した。彼女なら、魔力増幅炉について何か知っているかもしれない。
通信石に意識を集中させ、エルミナに呼びかける。数瞬の後、彼女の落ち着いた声が頭の中に響いた。
『…レントか。どうした? 何かあったか?』
俺は、リューンでの出来事、謎の接触者、そして魔力増幅炉についての情報を簡潔に伝えた。
『……魔力増幅炉じゃと!? まさか、あの禁忌の遺物が、まだこの世に残っておったとは…!』
エルミナの声には、珍しく強い驚きと危機感が滲んでいた。
『あれは、古の大戦で地脈の力を無理やり吸い上げ、強大な破壊兵器の動力源として使われた呪われた装置じゃ。使い方を誤れば、大地は枯れ、周辺一帯を数百年は不毛の地にするほどの危険な代物…。氷刃め、そんなものを手に入れてどうするつもりじゃ…!』
エルミナの説明は、魔力増幅炉の危険性を明確に示していた。やはり、氷刃の計画は絶対に阻止しなければならない。
『謎の接触者については、私にも分からぬ。だが、王国や氷刃以外にも、古代の力を求める闇の勢力は存在する。奴らの言葉を鵜呑みにするでないぞ。常に警戒を怠るな』
エルミナはそう警告した。
彼女からの情報を受け、俺の決意は固まった。
「プル、リンド。俺たちの次の目標は決まった。氷刃より先に『魔力増幅炉』を見つけ出し、奴の手に渡る前に、それを無力化、あるいは破壊する!」
『承知!』
「ぷるっ!」
問題は、その場所だ。接触者は候補地については言及しなかった。だが、エルミナの知識と、これまでの情報を組み合わせれば、ある程度の推測は可能かもしれない。
(氷刃が活動していたのは北の山道…。そして、魔力増幅炉は地脈のエネルギーを利用する…。となると、地脈が活発で、かつ古代の施設が隠されていそうな場所…)
エルミナがくれた遺跡周辺の古い地図と、俺の記憶を探る。ドワーダルから北へ数日行った先に、かつてドワーフが掘り進めたものの、危険な魔物と不安定な地盤のために放棄されたという、古い鉱山跡があるはずだ。そこならば、地脈のエネルギーも強く、古代の遺物が眠っていてもおかしくない。
「…北だ。北の廃坑跡を目指そう」
目的地を定め、俺たちはすぐさま旅の準備を整えた。食料、ポーション、そしてボルガン親方の爆弾も念のため確認する。【収納∞】に必要なものを詰め込み、準備は万端だ。
翌朝、俺たちは監視の目を警戒しつつ、早朝のまだ人通りもまばらな時間帯に、交易都市リューンを後にした。街を出る瞬間、昨日と同じような視線を感じた気がしたが、今は無視して先を急ぐ。
「ぷる…あの人、全部本当のこと言ってるのかな…?」
プルが不安そうに呟く。俺も同じ疑念を抱いていた。彼らの目的は何なのか? なぜ、俺に情報を与えたのか? 利用しようとしているだけなのかもしれない。
『主よ、あの者の言葉には嘘は感じられませんでした。しかし、何か…隠していることがあるような気配は確かに』
リンドもテレパシーで同調する。覚醒した彼の感覚は、人間以上に鋭敏だ。
(信用しすぎるのは危険だ。だが、氷刃が魔力増幅炉を探しているという情報は、無視できない)
もし、氷刃があのような危険な遺物を手に入れれば、その力は計り知れない。俺たちだけでなく、世界そのものにとって大きな脅威となるだろう。
俺は、エルミナから貰った通信石を取り出した。彼女なら、魔力増幅炉について何か知っているかもしれない。
通信石に意識を集中させ、エルミナに呼びかける。数瞬の後、彼女の落ち着いた声が頭の中に響いた。
『…レントか。どうした? 何かあったか?』
俺は、リューンでの出来事、謎の接触者、そして魔力増幅炉についての情報を簡潔に伝えた。
『……魔力増幅炉じゃと!? まさか、あの禁忌の遺物が、まだこの世に残っておったとは…!』
エルミナの声には、珍しく強い驚きと危機感が滲んでいた。
『あれは、古の大戦で地脈の力を無理やり吸い上げ、強大な破壊兵器の動力源として使われた呪われた装置じゃ。使い方を誤れば、大地は枯れ、周辺一帯を数百年は不毛の地にするほどの危険な代物…。氷刃め、そんなものを手に入れてどうするつもりじゃ…!』
エルミナの説明は、魔力増幅炉の危険性を明確に示していた。やはり、氷刃の計画は絶対に阻止しなければならない。
『謎の接触者については、私にも分からぬ。だが、王国や氷刃以外にも、古代の力を求める闇の勢力は存在する。奴らの言葉を鵜呑みにするでないぞ。常に警戒を怠るな』
エルミナはそう警告した。
彼女からの情報を受け、俺の決意は固まった。
「プル、リンド。俺たちの次の目標は決まった。氷刃より先に『魔力増幅炉』を見つけ出し、奴の手に渡る前に、それを無力化、あるいは破壊する!」
『承知!』
「ぷるっ!」
問題は、その場所だ。接触者は候補地については言及しなかった。だが、エルミナの知識と、これまでの情報を組み合わせれば、ある程度の推測は可能かもしれない。
(氷刃が活動していたのは北の山道…。そして、魔力増幅炉は地脈のエネルギーを利用する…。となると、地脈が活発で、かつ古代の施設が隠されていそうな場所…)
エルミナがくれた遺跡周辺の古い地図と、俺の記憶を探る。ドワーダルから北へ数日行った先に、かつてドワーフが掘り進めたものの、危険な魔物と不安定な地盤のために放棄されたという、古い鉱山跡があるはずだ。そこならば、地脈のエネルギーも強く、古代の遺物が眠っていてもおかしくない。
「…北だ。北の廃坑跡を目指そう」
目的地を定め、俺たちはすぐさま旅の準備を整えた。食料、ポーション、そしてボルガン親方の爆弾も念のため確認する。【収納∞】に必要なものを詰め込み、準備は万端だ。
翌朝、俺たちは監視の目を警戒しつつ、早朝のまだ人通りもまばらな時間帯に、交易都市リューンを後にした。街を出る瞬間、昨日と同じような視線を感じた気がしたが、今は無視して先を急ぐ。
113
あなたにおすすめの小説
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
追放された”お荷物”の俺がいないと、聖女も賢者も剣聖も役立たずらしい
夏見ナイ
ファンタジー
「お荷物」――それが、Sランク勇者パーティーで雑用係をするリアムへの評価だった。戦闘能力ゼロの彼は、ある日ついに追放を宣告される。
しかし、パーティーの誰も知らなかった。彼らの持つ強力なスキルには、使用者を蝕む”代償”が存在したことを。そして、リアムの持つ唯一のスキル【代償転嫁】が、その全てを人知れず引き受けていたことを。
リアムを失い、スキルの副作用に蝕まれ崩壊していく元仲間たち。
一方、辺境で「呪われた聖女」を救ったリアムは自らの力の真価を知る。魔剣に苦しむエルフ、竜の血に怯える少女――彼は行く先々で訳ありの美少女たちを救い、彼女たちと安住の地を築いていく。
これは、心優しき”お荷物”が最強の仲間と居場所を見つけ、やがて伝説となる物語。
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる