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変化
しおりを挟むどうも自分は人に戻れたようだ。
ランドルはぼんやりと考えた。
その瞬間は、ほんの瞬きひとつする間のことで、あまり覚えていない。
木から滑り落ちたフェリシアを追ってジャンプした。
──途中フェリシアの手から飛んだ小さな何かをくわえ──、ただフェリシアを追って飛んだ。
どうやらそのときの小さな物が、妖精の女王の力を蓄えた指輪だったらしい。
そのおかげでフェリシアを守ることができた。
今その指輪は自分の左小指に填まっている。
その後すぐ騎士たちが館から戻ってきて、見つからないようにフェリシアを隠したような気はする。──が、フェリシアの顔ばかり見ていてあまり記憶にない。
無事だと思ったフェリシアが、気を失ってしまったのだ。
館に連れていこうとしていたら、グリッグが戻ってきた。
「あれ? 皇子?」
グリッグは片眉を少し上げたが、特に騒いだりせず、ランドルを館へ促した。
そのまま、フェリシアはまだベッドで眠っている。
人形がその頭の上で飛び回っていた。
グリッグが紅茶のワゴンを押してくると、カップを渡してくれる。
「皇子、体に違和感は?」
違和感──。
「──」
ランドルは首を傾げた。
「そうか、良かったな」
それからグリッグはランドルの顔をまじまじと見た。
「髪。伸びたか?」
────。
ランドルは自分の髪を触ってみた。確かに長い。この一年近く、そのままだったから、か。もしかしたら、背丈も伸びているかもしれない。
面妖な事だ。
「俺と張り合おうってか? ま、俺よりは短いな」
「──そんなつもりはない」
「あ、それだったんだな」
グリッグは小指の指輪を見た。
ランドルも目をやる。
久しぶりに見る自分の手だった。
動かす感触に違和感は無い。懐かしい、という感じも──ない。
ただ、違和感というか、なんというか。
手にはフェリシアの感触だけが残っていた。
あんなに毎日すぐ近くにいたのに。
あれほど抱き上げられたり、頭を撫でられたりしていたのに──。
人に戻って触れたフェリシアは、びっくりするほど華奢で、小さくて──。
この変な感じは、なんだろう。
体がふっと沈みこんだ。気づくとまた猫になっていた。
グリッグは、なあるほど──と言った。
「まだ安定しないんだな。落ち着けば、俺みたいに好きなときに、猫と人と、自由に行き来できるかもな」
「──そうか」
自分の前脚を見ると、人の時小指に填っていた指輪が今は腕輪のように広がって左前脚に填まっていた。
「あ」
小さな声がして、フェリシアが目を覚ました。
そのままばっと起き上がる。
ランドルを見ると、
「……ランディ?」
と呼んだ。
「さっき……、あの、……もしかして、人に……」
なんだか、つっかえながら話している。
「人に戻れた」
そう答えると、視線がグンと上がった。また人になったようだ。上からフェリシアを見下ろしている。
こちらを見上げているフェリシアの頭を撫でた。
「この指輪のおかげらしい。ありがとう」
と、フェリシアの顔がまたおかしい。赤くなって、苦しそうだ。
グリッグが来て目を見開いた。
「フェリ? どうした? なんで息、止めてるんだ?」
慌てたように、フェリの背中を叩く。
「フェリ!」
人形も、フェリシアの髪を引っ張った。
「おい! 息をしろ! フェリ!!」
「フェリ!!」
グリッグに背中を叩かれて
フェリシアはふぅ────っと息を吐いた。
「大丈夫か?」
グリッグがそう声をかけている。
「でもまだ顔が赤い」
ランドルがフェリシアの顔を覗き込み、手を握ると、またフェリシアの呼吸が止まり、顔がますます赤くなった。
「フェリ! だから息を止めるなって!」
グリッグはフェリの両肩を揺さぶり、それからランドルをキッと振り返った。
「皇子! 離れろ! フェリのそばに近寄るな!」
──どうして?
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