勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。

イコ

文字の大きさ
34 / 38
王国内乱編

飼い主?

しおりを挟む
 《side トオル》

 テオスとの一騎打ちに勝利したその夜、俺たちは獣人の集落で歓迎の宴を開かれることになった。集落の中心には大きな焚き火が焚かれ、魔物の肉が串に刺されて炙られている。肉の香ばしい匂いが漂い、食欲をそそる。

「トオルさん、どうぞ召し上がれ!」

 ラオが得意げに肉を差し出してくれる。焼き加減も程よく、脂がじゅわりと滴るような見事な仕上がりだった。俺は一口かじり、旨みが口いっぱいに広がるのを味わいながらラオに微笑んだ。

「ありがとう、ラオ。これは美味しいな」

 フルフルも同じように、魔物の肉を夢中でかじっている。彼女はこの宴にすっかり馴染んでいて、他の獣人たちと楽しそうに笑い合っている。

 宴が深夜まで続いた後、俺たちは一晩の宿を提供されることになった。木造の簡素な家だったが、心地よい温かみが感じられる場所だ。疲れがたまっていた俺は、フルフルと一緒に布団に横になり、そのまま深い眠りに落ちた。

 翌朝、微かに射し込む朝日とともに目を覚ました俺は、何かが体に触れている感覚に気づいた。重みを感じて目を開けてみると、フルフルが俺のお腹の上に寝そべっていた。その小さな体が俺を枕にして、気持ち良さそうに寝息を立てている。

「ん……フルフル……?」

 それだけならまだしも、視線を横に移すと、両腕にも何か柔らかい感触が伝わってきた。驚いてよく見ると、ラオとテオスが俺に抱きつくように寝ていたのだ。

「え、ちょ、ちょっと待て……」

 状況を飲み込むのに時間がかかり、俺は軽くパニックに陥った。布団の中で獣人兄弟が俺に抱きつき、フルフルまでが無防備に俺の上で眠っている状況に、どうしても冷静でいられなかった。

「お、おい、ラオ、テオス、起きてくれ!」

 俺が声をかけると、ラオがゆっくり目を開け、眠たげに顔を擦りながら俺を見上げた。

「あ、おはよう、トオルさん……」

 テオスも目を覚まし、俺に気だるそうな視線を向ける。

「お前ら、どうして俺に抱きついて寝てるんだ?」

 俺がそう尋ねると、ラオは少し照れたように笑い、テオスも肩をすくめて答えた。

「だって、トオルさんは僕たちの飼い主なんだから」
「え、か、飼い主……?」

 予想外の答えに、俺は驚きのあまり声が裏返ってしまった。ラオはうなずきながら続ける。

「そうだよ、トオルさんが僕たちを倒したんだから、もう僕たちの主人だって決まったんだ」

 テオスも同意するように頷いた。

「強い者が弱い者を従える。それが俺たち獣人の掟なんだ。俺とラオはお前のものだ」

 この真剣な説明に、俺は思わず頭を抱えた。獣人たちの文化はこういうものだとは聞いていたが、まさか自分が彼らの「飼い主」になるとは思ってもみなかった。

「いやいや、俺はそんなつもりでお前たちと戦ったわけじゃ……」

 俺が説明しようとすると、ラオが俺の腕にさらにしがみついてきた。その無邪気な笑顔と、テオスの誇らしげな表情に、なんだか反論する気力も失ってしまう。

「……分かった、俺が飼い主ってことでいいから、もう少しだけ寝かせてくれ……」

 こうして俺は、ラオとテオス、そしてフルフルに囲まれたまま、少しだけ眠り直すことにした。

 翌日、俺たちは集落に別れを告げてグシャ領に戻った。獣人たちは名残惜しそうに見送ってくれ、ラオとテオスも一緒に俺たちと戻ることになった。

 領地に到着すると、ブラフが出迎えてくれた。しかし、俺の隣に寄り添うラオとテオスの姿を見るなり、ブラフの表情が険しくなった。

「トオル、君がどこで何をしていたかと思えば……随分可愛い男の子を連れてきたね」

 ブラフの冷ややかな言葉に、俺は少し焦りながら説明を試みた。

「ああ、いや、こいつらはラオとテオス。獣人の森で知り合って、それで……まあ、いろいろあって、俺の“仲間”になったんだ」

 ブラフはじっとラオとテオスを見つめ、ふっと小さくため息をついた。

「仲間、ね……君はいつも魅力的な存在を集めるのが得意だな」

 ブラフの口調には、ほんの少し嫉妬が混じっているように感じられた。彼が俺にこういう感情を向けることは珍しいが、それだけに彼の心中が少しだけわかる気がした。

「えっと、ブラフ? 怒ってる?」

 俺が尋ねると、ブラフは目を逸らしながら首を横に振った。

「怒ってなんかないよ。ただ、君があまりにも他人を引き寄せるから、少し心配なだけだ」

 その言葉に、俺は思わず笑ってしまった。

「ブラフ、お前が心配することなんてないさ。俺にとって、お前が大事なことは変わらない」

 俺がそう言うと、ブラフは少し赤くなったように見え、そっぽを向いて何も言わなくなった。

「トオルさん! これからもよろしくね!」

 ラオとテオスが笑顔で俺に抱きつき、フルフルも嬉しそうに腕を組んできた。

 その光景を見て、ブラフは再びため息をつきながらも、どこか温かい目で俺たちを見守ってくれていた。



あとがき

どうも作者のイコです。

本日から、BLコンテストの投票が開始されます。
応援してくださるととても嬉しいです!
これからも頑張って書きますので、よろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

処理中です...